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【馬渕磨理子氏コラム】
2024年も価値が上がる東京 連載第20回

目次

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日本経済は2024年も堅調

2024年が幕を開けました。今年は1月には台湾総統選、11月には米大統領選挙、そのあいだの夏にはパリ五輪・パラリンピックなど、世界では「ビッグイベント」が立て続けに行なわれます。日本では昨年末から政治が急激に不安定化し、岸田政権の支持率が10%台に落ち込む世論調査も出てきました。それでは、日本経済についてはどのように見通すべきなのでしょうか。

私の考えを先に申し上げると、日本経済は高い確率で、現在の好調の流れを受け継ぐと見ています。各種数字を見ていくと、自動車産業を筆頭に増収増益の企業が多く、半導体関連についてはいまが底で、これからは上向いていくだけでしょう。コロナ禍でダメージを受けていたインバウンドが戻ってきているとは、かねてより指摘されています。加えて、百貨店や飲食業などの小売業界の業績もいい。今年もこれらの流れは大きく変わらないでしょう。

なぜ日本経済の好調が続くのかといえば、その背景が円安にあるからです。1ドル120円から130円が続くかぎりは、いまあげた業界や農水産の輸出などが日本経済全体を引っ張っていくと考えられます。やがてその好影響が中小企業にも波及して、最後は日本全体の賃金の上昇につながる……という流れが生まれれば、まさしく理想的といえるでしょう。

広がり続ける東京中心の雇用圏

以上のような日本経済の好調を紹介すれば、社会はコロナ禍から完全に抜け出しつつあることがわかると思います。そのなかでも日本でとくに特徴的な動きとして、オフィス需要の底堅さがあげられるでしょう。じつのところ、アメリカなどではパンデミック以降もリモートワークが定着しているので、事務所を縮小させている企業は少なくありません。それに比べたら、東京をはじめとする日本の大都市圏のオフィス需要は依然として堅調といえます。

良いか悪いかは措いて、日本人はやはり、オフィスに通うライフスタイルを変えるという意識が希薄なのでしょう。いま通勤時間に電車に乗ればほぼ満員で、コロナ禍前の光景が戻っていると実感する人は少なくないはず。感染対策として一時は全面的にリモート勤務を取り入れていた会社も、さすがに毎日出社を義務づけずとも、たとえば週に3日の出勤を推奨しているようなケースが見受けられます。

また、各種メディアで報じられたように、コロナ禍以降には東京から地方へと移住している人が増えました。その結果、東京の価値が下がるのではないかという声も聞こえてきましたが、その心配も杞憂に終わりそうです。なぜかといえば、都心から地方に移り住むといっても、あくまでも勤務地は東京のままで、必要があれば2~3時間で出勤できる距離の場所に引っ越している人が少なくないことが研究結果として報告されているからです。

近年では都心に直通する電車が増えていることも、そうした流れを加速させているものと思われます。昔と比べて東京にアクセスしやすくなっているわけで、東京を中心とした雇用圏が広がるのは必然です。コロナ禍を経て地方に回帰すると思いきや、東京の影響力はむしろ増しているといえるでしょう。日本人のライフスタイルや価値観が変化するなかでも、やはり東京の価値が下がることはありません。

東京都心で開業が続く大型オフィスビル

とくに新型コロナウイルスが感染拡大しはじめたときには、「都心のオフィス機能は最終的にはすべてなくなるのではないか」という議論がありました。しかし、先ほどもお話ししたように、とくに日本では完全にリモートワークへと移行するのではなく、オフィス勤務や対面の文化が残り続けていますし、今後も同様の流れが続くでしょう。それはつまり、東京にオフィスを置くことには大きな意味があり続けるということを意味します。

実際に、東京では大型オフィスビルの開業が続いています。昨年(2023年)に大きな話題を集めたどころだけをピックアップしても、3月には東京ミッドタウン八重洲、10月には虎ノ門ヒルズステーションタワー、11月には麻布台ヒルズが立て続けにオープンしています。アクセスの良い最新の都内のオフィスビルはむしろ増えているわけで、今後も需要が高まっていくと思われます。

需要が高いのは大型のオフィスビルだけではないでしょう。コロナ禍で働き方が多様化しているのは事実で、企業によってはリモートワークを希望する社員に対応するために、事務所の半分を引き払うようなケースも増えています。また、そうした動きに対応して面積を分けたり契約期間を短くしたりするなど、借りやすい物件が増え始めているのもここ数年の特徴といえるでしょう。

こうした流れは、自分たちの都合に合わせてオフィスを借りられるわけですから、費用を抑えたいスタートアップからすれば大いに歓迎すべき流れでしょう。とくにいま、東京の渋谷では「100年に1度」といわれる再開発が進んでいて、かつての「ビットバレー」の復活に向けた動きが活発化しています。そのなかでも、たとえば東急グループは大型オフィスビルに大手IT企業を誘致するだけではなくて、スタートアップへの支援にも力を入れています。 以上の動きをふまえれば、東京の「価値」は今後も落ちるどころか、上がっていくというのが私の考えです。もうひとつ理由を申し上げるならば、冒頭でもすこし触れたインバウンドの復活も大きな追い風となります。海外では以前より、「コロナ禍が終わったらどこに旅行に行きたいか」と尋ねたアンケートで、やはり日本が人気でした。国際情勢が大いに荒れているいま、治安が安定している日本が注目されるのは自然な流れだといえるでしょう。現にいま東京を歩けば、じつに多くの旅行者に出会うはずです。

企業経営に求められる大きな視点

とはいえ、企業経営という観点から申し上げると、より大きな視点が必要になってくるのも事実です。たとえば、最近では気候変動や災害リスクへの対策の必要性が語られ、なかでもBCP(事業継続計画)の策定については意識的に取り組んでいる企業が増えていますし、合理性に鑑みて東京に拠点を置きつつ、機能をなるべく一カ所に集中させないという考え方が求められるようになるでしょう。

危機管理に対する意識については、投資家が企業を評価するうえでとくに注目している点でもあります。とくにコロナ禍では、競争力を加速させたのがリスクを可視化した会社であり、その一環として国が重要性を指摘しているのがBCPです。現在では、たとえば複数社で連携したり、所属する協会単位でBCPをつくったりする仕組みもある。それで国から認定を受けられれば、安い金利で融資を受けられたり、補助金も優先的に採択されたりします。

もうひとつ、企業にとって重要なキーワードになり続けているのがDX(デジタル・トランスフォーメーション)やSDGs(持続可能な開発目標)ですが、私はあくまでも「ひとつの道具」として認識するべきと考えています。すなわち、現在はDXやSDGsそのものが目的として語られて、企業からすれば義務のように捉えられていますが、本来であれば企業がより輝くためのツールにすぎません。依然として誤解されているような気がしてなりませんが、投資家が見ているのもその点であることを忘れてはいけないでしょう。

《馬渕氏の連載コラム》
第1回 東京の価値はコロナ後にどうなる?
第2回 企業の「多様性」と「持続性」を考える
第3回 三拍子が揃っている日本市場の強さ
第4回 企業は「現状維持=衰退」の覚悟をもて
第5回 インフレ時代、投資家が評価する企業とは
第6回 「金融リテラシー」をどう高めるべきか
第7回 「歴史的円安」という言葉に踊らされないように
第8回 リスクを可視化できる企業が2023年を生き残る
第9回 日銀の金融政策決定会合が意味するもの
第10回 リクルート競争にどう打ち勝つか
第11回 黒字転換する企業は何が違うのか
第12回 上場後に伸び続ける企業、失速する企業
第13回 中小企業経営者が知るべき米国の動き
第14回 なぜ日本の商社に学ぶべきなのか
第15回 日本が自覚できていない「強み」とは
第16回 2024年問題のインパクトに備えよ
第17回 「稼ぐインフラ」が求められる時代
第18回 「中東紛争&台湾有事」と「インバウンド」のゆくえ
第19回 加速していくGXと生き残る企業

お話いただいた方

馬渕磨理子(まぶち・まりこ)

◎経済アナリスト/日本金融経済研究所代表理事/ハリウッド大学院大学客員准教授◎

PROFILE 京都大学公共政策大学院修士課程修了。トレーダーとして法人の資産運用を担う。その後、金融メディアのアナリスト、FUNDINNOで日本初のECFアナリストとして政策提言に関わる。イー・ギャランティ社外取締役。フジテレビ、日経CNBC、プレジデント、ダイヤモンド、Forbes JAPAN、SPA!などで活動。主な書籍に『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』 『株・投資ギガトレンド10』『収入10倍アップ 高速勉強法』『収入10倍アップ超速仕事術』など。

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