事務所購入時に法人名義のローンを組むには?住宅との違いや審査の注意点
目次
事務所購入に際し、法人名義のローンを組むことに不安を覚える人は多いのではないでしょうか。しかし融資を利用して事務所を購入することには、さまざまなメリットがあります。
審査は住宅ローンより少々複雑なものの、重視されるポイントや注意点を把握しておけば、事前に対策できるでしょう。
本記事では、本記事では、事務所の購入時に法人名義のローンを組むメリットや注意点、金融機関への相談方法などを解説します。事務所購入に向けた準備にぜひお役立てください。
事務所購入時に法人名義のローンを組むメリット
事務所を購入するにはローンを組む方法や、全額自己資金で購入する方法があります。ここでは、法人名義のローンを組むことによって得られるメリットを解説します。
高額な物件を購入できる
ローンを組むメリットは、自己資金のみでは手が届かないような、価値が高い物件を購入できることです。資金が貯まるのを待たずとも、望む条件を満たす事務所を手に入れられます。
求める条件のひとつに、立地のよさをあげる人は多いはずです。高額な物件は、駅から近くアクセスがよい傾向にあります。社員の通勤に便利で、採用面においても効果を見込めるでしょう。
アクセスがよいオフィスは、社員だけでなく顧客や取引先が来訪する際にも喜ばれるはずです。
融資を受けて条件のいいオフィスを購入することで、ビジネスを加速させられます。
手元に資金を残せるためリスクに備えられる
事務所購入の際に融資を受けると、資金を温存できるため、リスクに備えられます。キャッシュを一気に減らさずに済むため、ゆとりある経営を実現できるでしょう。
金融危機や自然災害、建物や設備の修繕など、トラブルや突然の出費に備えてキャッシュには余裕を残しておきたいものです。
最低限必要な手元資金は「限界利益」を用いた計算方法で算出できます。限界利益とは、売り上げから変動費を引いたときに残る利益です。すべての固定費を回収できる地点を示す指標になります。
<限界利益を求める計算式>
年間の限界利益 = 年間売上高 - 年間変動費
余裕ある資金繰りを実現し、いざというときのリスクに備えられるのは、融資を受けるメリットです。
新たに借り入れを起こせる場合もある
事務所購入時に利用する不動産購入ローンは、すでに購入している別の物件を担保として、新たに借り入れをできる場合があります。
たとえば、すでに住宅を購入していると仮定します。仮に住宅ローンの借入上限額が5,000万円の場合、実際のローン残高が2,000万円であれば、残りの3000万円は余力があるとみなされるということです。
住宅ローンでは物件の価値やさまざまな条件をもとに、その不動産を担保として借りられる上限金額が設定されます。
上限金額の範囲内で余裕があれば、その住宅に第二抵当権を設定することによって、新たに借入をできるという仕組みです。
ただし、上限いっぱいまで借り入れできるとは限りません。金融機関は、依頼者の信用力や担保にする不動産の価値を審査して、融資する額を決定します。
次の章では、審査の基準や重視されるポイントについて具体的に解説します。
事務所購入の法人名義のローン審査で重視されるポイントや注意点
融資を受けて事務所を購入する場合、金融機関の審査に通過する必要があります。基準は金融機関によって大きく異なりますが、見られるポイントはある程度共通しています。
法人としての信用
法人としての「信用」は、金融機関から融資を受ける際に最重要視されるポイントです。
- 現在の経営状況
- 過去の返済状況
- 事業計画の健全性
これらを見て、返済能力があるかどうか総合的に判断されます。
売り上げに対する返済額の割合が高すぎると、審査の通過は難しくなります。事業として黒字体質であることが求められ、2期連続で赤字が続くと不利になる場合が多いです。現在の経営が好調でも、過去に返済遅延などがあった場合、審査に影響が出る可能性があります。
過去の決算情報をどこまで遡るかは、法人の規模や融資金額によっても変わります。
不動産の担保価値
金融機関は、申込人が購入する物件の「担保価値」を見極めて、抵当権を設定します。借り入れできる金額は、物件の担保価値に左右されます。
<一般的な担保価値の計算式>
担保価値=時価 × 掛け目
時価とは、その時々に市場で成立している物件価格のことです。土地と建物の評価によって決まります。
※土地の評価で考慮される要素…公示地価、路線価、固定資産税評価額
建物の評価で考慮される要素…再調達原価、経年劣化
掛け目とは、担保価値を時価より低めに評価するための掛け率のことです。金融機関は、担保として設定する不動産の時価が下がるリスクを考慮し、価値をあえて低く見積もります。掛け目による担保価値の計算は、貸付金を全額回収できない場合に備えたリスクヘッジを目的としています。
注意点として、耐用年数を超えたビルを購入する場合、融資を受けにくい傾向があります。保有しているほかの不動産を担保に入れるよう求められることもあるので、購入する物件の耐用年数は事前に確認しておきましょう。
ビルの耐用年数に関して詳しく知りたい人は、こちらの記事を参考にしてください。
>ビル耐用年数とは?寿命との違いや耐用年数を超えたときの注意点を解説
代表者の個人的な信用
代表者の個人的な信用も、審査の対象です。法人としての基準をクリアしていても、代表者の個人的な資産背景に問題があれば、融資を受けられない可能性があります。
クレジットカードやローンの利用状況、返済履歴を調べられ、信用情報が良好でない場合には融資を断られてしまうケースもあります。
<マイナス評価の可能性がある具体例>
- 所得税・法人税・住民税など各種税金の未納がある
- 水道光熱費や家賃、その他の支払いが遅れている
- 複数の金融機関から借り入れがあり、返済が間に合っていない
- 破産や代位弁済など、過去に債務整理を実施している
- 直近でカードローンや各種ローンを複数申し込んでいる
融資を受けるには、法人としての信用、個人としての信用、どちらも満たすことが重要です。そのうえで、債務状況や決算情報に応じて融資額が決定されます。
事務所の購入時にローンを借入可能な金融機関
融資の借入先として考えられるのは、自社のメインバンクだけではありません。その他金融機関に申し込んだり、不動産会社から紹介を受けたりもできます。
金融機関によって審査内容や期間は異なるので、事務所購入に向けて、複数機関に融資を打診するのも有効です。
ここでは、事業用融資を取り扱っている各金融機関の特徴を整理します。
政府系金融機関
民間企業だけでなく、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫(商工中金)など、政府系の金融機関も融資制度を整えています。
日本政策金融公庫は国が全額出資しており、商工中金は政府と民間が共同出資しています。
名称 | 設立 | 主な業務 | 資本金 貸付残高 | 従業員数 | 店舗等数 |
株式会社 日本政策金融公庫 | 平成20年 10月 | ・国民一般向け業務 ・農林水産業者向け業務 ・中小企業者向け融資・証券化支援保証業務 ・中小企業者向け証券化支援買取業務 ・信用保険等業務 ・危機対応円滑化業務 ・特定事業等促進円滑化業務 | 資本金:11.6兆円 貸付残高:28.8兆円 | 7,436名 | 154 |
株式会社 商工組合中央金庫 | 平成20年 10月 | ・中小企業等協同組合等及びその構成員に対する金融の円滑化を図るための出融資 ・主に中小企業を対象とする危機対応業務 | 資本金0.2兆円 貸付残高9.6兆円 | 3,515名 | 106 |
財務省「政府関係金融機関」をもとに弊社にて作成
(https://www.mof.go.jp/policy/financial_system/fiscal_finance/financial_institution/index.html)
一定の条件に該当する場合、優遇条件での融資を行っていることが特徴です。また、法人の場合、無担保の融資制度を利用できる可能性もあります。
メガバンク
「メガバンク」という呼称に明確な定義はなく、巨大な収益規模や資産を有する銀行および銀行グループを指します。現在は「みずほ銀行」「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」が日本三大メガバンクと称されています。
メガバンクは、全国各地に支店があるため、居住地や勤務先を問わず相談しやすい点がメリットです。
地方銀行
地方銀行の定義は、「全国地方銀行協会」の会員であることです。主な取引先は個人や中堅・中小企業で、地域金融の担い手としてさまざまなサービスを展開しています。
普段から取引がある地方銀行も選択肢のひとつです。融資の条件は、各銀行によってさまざまな特色があります。
信用金庫
信用金庫は地域の人々が会員となり、地域の発展や相互扶助を目的とする共同組織です。営業先は一定の地域に限定され、中小企業や個人への融資を行っています。
融資の対象となるのは原則として会員(組合員)のみですが、制限つきで非会員への融資も実施しています。
事務所購入なら区分所有オフィスがおすすめ
事務所購入において、資金調達と並んで重要なのが物件選びです。ここでは、選択肢のひとつとして「区分所有オフィス」をご提案します。
区分所有オフィスとは、都心の商業地に建つビルをフロアごと、あるいは部屋ごとに分割して保有できる手法です。リスクを考慮した新しい不動産保有の手法として、注目を集めています。
区分所有で事務所を購入するメリットについて解説します。
一棟保有よりグレードの高いオフィスを購入できる
区分所有オフィスは、ビルの1フロアや一部分のみを保有するため、同等の価格であれば一棟保有する場合よりもグレードの高いオフィスを購入できます。
グレートの高いビルは設備や施設も整っている傾向にあるため、社員の生産性アップや満足度の向上も期待できるでしょう。
必要なスペースにあわせて購入できる
一棟保有の場合、実際に使用する面積と建物の面積が一致せず、スペースが余ることもあるでしょう。余分なスペースを有効活用するには、賃貸への転用を考える必要があります。
その点、会社の規模に応じたオフィスを選べる区分所有なら、デッドスペースの活用方法について頭を悩ませる必要がありません。無駄のないオフィス構築ができるのも、区分所有オフィスの魅力です。
売却もしやすい
区分所有オフィスは、商業地として人気のエリアを中心に展開されています。場所によっては、不動産としての価値が下がりにくく、売却に有利といえます。需要の高さに比べて供給が少ないため、早期に買い手が見つかることを期待できるでしょう。資産性、流動性が非常に高い保有方法といえます。
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