自社ビルのメリットとは?賃貸オフィスと比較したデメリットも解説
目次
自社オフィスを構える方法には、大きく分けて賃貸と自社ビルの購入があります。
賃貸と自社ビルの購入にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、中長期的な経営計画をもとに慎重な判断が必要です。
この記事では、自社ビルの保有をお考えの人に向けて、賃貸と比較した自社ビルのメリットだけでなく、デメリットや物件を選ぶ際の注意点などを解説します。
自社ビルを選ぶ際に押さえておきたいポイントもあわせて確認しましょう。
自社ビルについて
自社ビルとは、企業が自ら購入・保有するオフィスや店舗ビルのことです。財務諸表上、自社ビルは固定資産になります。
自社ビルを持つには、中古や新築ですでに建設されているものを購入する方法と、空いている土地を用意して新たに建築する方法の二通りがあります。上場企業の場合は、自社ビルを本社として構え、支店や事業所は賃貸ビルを利用するのが一般的です。
高度成長期では、都心部に自社ビルを持つことが行われていました。自社ビルの購入・保有には大きな資金が必要となるため、自社ビルを持つことは、それを工面できるほど売上や経営が安定していることを意味します。
近年は、経費を抑えるために、売上が拡大しても自社ビルを持たず賃貸オフィスを活用し続ける企業もあります。
自社ビルを持つか持たないかの判断は、中長期的な経営計画に大きく影響します。そのため、メリット・デメリットや自社の状況を踏まえたうえで、慎重に判断する必要があるといえるでしょう。
自社ビルを保有するメリット7つ
自社ビルを保有するメリットには、次のようなものがあります。
- キャッシュアウトが抑えられる
- インフレへの対応策として有効
- 経営計画が立てやすい
- 使わなくなったときに賃貸として貸し出すことができる
- 急きょ資金が必要な際に売却できる場合がある
- リースバックできる可能性がある
- 売却益が得られる可能性がある
それではひとつずつ解説していきます。
キャッシュアウトが抑えられる
自社ビルを購入すると、それまで支払っていたオフィスビルの賃料を支払う必要がなくなり、キャッシュアウトが抑えられます。
金融機関から融資を受けて自社ビルを購入する場合も、賃料と同額かそれ以上の支払いは必要になりますが、支払額から金利分を除いた金額が徐々に純資産化していく点が賃貸と大きく異なります。 賃貸の場合は単純に賃料がキャッシュアウトしていくのみですが、自社ビルを購入することで、それまで賃料として支払っていたキャッシュで自社の資産を構築することが可能です。
インフレへの対応策として有効
インフレが進むと、現金の価値が相対的に下がります。しかし、不動産のような現物資産を持っていると、そのモノ自体に価値があるため、インフレへの対応策になります。
またインフレ下では、基本的にオフィス賃料の相場も上昇する可能性がありますが、自社ビルを購入すれば賃料の上昇の影響を回避できるでしょう。
自社ビルを持つことは、インフレに強い経営体制の構築につながります。
経営計画が立てやすい
オフィスの維持に必要な資金は高額になるため、経営計画に大きく影響します。自社ビルは賃貸契約のように契約期間が定められていないため、中長期的な経営計画が立てやすくなるというメリットがあります。
賃貸契約の契約期間が近づいてくると、オフィスを移転するか、現在の場所に留まるかを決めなければなりません。賃貸ビルを退去する場合は、半年前に解約希望を通知しなければならない契約となっているのが一般的です。そのため、移転を考えるのであれば、1年ほど前から計画を立て始める必要があるでしょう。
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自社ビルを保有していれば、賃貸期間を意識する必要がなくなるため、経営計画だけに集中することができます。
使わなくなったときに賃貸として貸し出すことができる
自社ビルは、そのときの経営状況にあわせて、さまざまな活用方法が考えられます。例えば、自社で使用しなくなったフロアや部屋を他社に貸し出すことで、賃料収入を得ることも可能です。
もしフロアに空きが出た場合は、積極的に他社テナントに貸し出すとよいでしょう。
急きょ資金が必要な際に売却できる場合がある
何らかの理由で急きょ資金が必要になった場合に現金化できるのも、自社ビルの大きなメリットです。
金融機関から融資を受けている場合は、返済できている金額まで現金化が可能です。しかし、いざ売却しようと思ったときに、保有しているビルによっては買い手がつかないこともあります。
自社ビルを選ぶ際は、売却しやすい物件を選んでおくことが重要です。土地の面積が広く、交通や立地に優れ、グレードが高いと評価される物件は希少性があり、たとえ販売価格が高額でも買い手がつきやすい傾向にあります。
また、「バックファイナンス」といって、自社ビルを担保にした借入ができる場合もあります。しかし、返済中は抵当権の第一順位に設定ができないことがあり、借入ができないケースがあるので注意が必要です。
いずれにしても、資産性が高い自社ビルを持つことが重要です。
リースバックできる可能性がある
リースバック(セールス・アンド・リースバック)とは、手持ちの物件を売却して借り直すことを意味します。自社ビル売却後も、同じ拠点を使用したい場合に有効です。
売却と同時に買主と賃貸契約を締結することによって、拠点を変えずに経営を続けることが可能になります。賃貸契約の締結後は、通常の賃貸物件と同様に毎月の賃料を収めます。
ただし、売却後も借り続けられるかどうかは、買主と交渉が必要です。借りられたとしても賃料が割高になるケースもあるため、自社ビルをリースバックする以外に資金調達の方法があれば、そちらを検討した方がよいこともあります。
売却益が得られる可能性がある
経済状況によっては、購入後に自社ビルの資産価値が上がるケースがあります。価値が上がったタイミングで売却をすると、値上がり分の利益が得られます。
反対に、資産価値が下がっているときに売却すると損失が出てしまうため、将来的に資産価値が上がる可能性がある物件を選ぶことが重要です。
自社ビルを保有するデメリット6つ
続いて、自社ビルを保有するデメリットを見ていきましょう。
- 頭金など一時的に支払いが発生する場合がある
- 修繕費や定期的なメンテナンスなどが必要
- 賃料として経費計上できなくなる
- 売却しようとした際に買い手が見つかりづらい場合がある
- 自然災害に遭う可能性がある
- 企業規模の拡縮にともなう迅速な移転ができない場合がある
それではひとつずつ解説していきます。
頭金など一時的に支払いが発生する場合がある
自社ビルを購入する際、金融機関の審査によっては頭金などの一次的な支払いが発生することがあります。
例えば、2億円の自社ビルを購入する場合、頭金の割合が40%であれば8,000万円の支払いが必要です。場合によっては、物件価格の1割~5割が頭金として求められることもあるでしょう。自社ビルのように高額な不動産を購入すると、物件取得時の諸費用も高額になります。 反対に、全額融資が実行される金融機関もあります。
修繕費や定期的なメンテナンスなどが必要
自社ビルを保有すると、物件に関連する設備や外壁の修理・修繕といったメンテナンスが必要になることがあります。建物をよい状態で維持するには設備の定期的なメンテナンスが欠かせないため、突発的なメンテナンスだけでなく、定期修繕に必要な費用についても考慮することが大切です。
自社ビルの修繕については周期が明確に定められているわけではありませんが、おおむね12〜15年程度の周期で大規模修繕を行います。かかる費用は2,000~3,000万円程度が相場となるため、計画的に修繕費を積み立てておく必要があるでしょう。
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賃料として経費計上できなくなる
賃貸の場合は賃料を経費として計上できますが、自社ビルの場合は経費計上できるものが限られます。
具体的には、金融機関への返済にともなう金利や管理費、建物の購入費用などであり、土地の購入費用は経費にできません。また、建物の購入費用は少しずつ減価償却することになるため、購入初年度に経費化できる額が少なくなる場合があります。
賃料分の経費が減った結果、会計上の利益次第では税金が上がる可能性があるので注意しましょう。自社ビル取得前のシミュレーションは、不動産会社に依頼するなどしてしっかりと行うことが重要です。
売却しようとした際に買い手が見つかりづらい場合がある
自社ビルを何らかの理由で売却したくても、買い手が見つからないケースもあります。買い手がつくかどうかは物件の価値によって変わるため、少しでも売却しやすい物件を取得することを意識しましょう。
売却しやすい物件かどうかは、土地の価値と建物の価値の掛け合わせによって決まります。広い土地に建っているビルは面積も広くなるため、優良なテナントを誘致できる可能性が高く、価値が高まります。また、立地や建物のグレードも資産性に大きく影響します。
自然災害に遭う可能性がある
どのような不動産物件であっても、大地震や大津波など避けられない自然災害に遭う可能性は否定できません。最悪の場合、建物が大きく損壊してしまうこともあります。
しかし、建物が大きく損壊しても土地の価値は残ります。土地の価値と建物の価値を合わせたものが不動産の価値となるため、販売価格のうち土地の価値が占める割合が高い物件を選ぶのがポイントです。 土地の価値と建物の価値の割合のことを、「土地建物比率」といいます。
企業規模の拡縮にともなう迅速な移転ができない場合がある
賃貸の場合は、従業員の増加や事業規模の拡大に応じて柔軟に拠点を移すことができますが、自社ビルを保有すると経営拠点の変更が困難になります。
自社ビルが経営計画に与える影響は大きいため、保有を検討する際は未来の会社の姿を見据えたうえで慎重に物件を検討する必要があります。
また、自社ビルを他社に貸し出すことになった場合も想定し、優良なテナントが入りやすい物件を持つことも重要です。
自社ビルを購入する際に注意する3つのポイント
自社ビルを持つ場合は、資産性の高い物件を選ぶことが重要です。次のようなポイントに注意すると、理想的な物件が見つかりやすくなります。
1.交通の便がよく繁華性が高い商業中心地のビルを選択する
商業中心地のビルは空きが少なく販売情報も出回りにくいため、希少性が高いという特徴があります。購買ニーズが高く、資産価値が高い物件が見つかる可能性が高いでしょう。
オフィスビルが数多く立ち並ぶ商業中心地には、銀行や郵便局といったビジネスに欠かせない施設があります。そのほかにもコンビニや飲食店も多く、従業員が働きやすい環境が整っています。
また、商業中心地の価格は、土地建物比率において土地の割合が高いという特徴があります。
東京の繁華性が高いエリアになると、土地の価値割合が70~80%を占める場合があります。万が一、自然災害などで建物が大きく損壊しても、土地の価値が残るのが大きなメリットです。
売買契約書に土地の価格と建物の価格が別々に記載されている場合、その価格の比率がそのまま「土地建物比率」になります。
販売価格しかわからない場合は、地方自治体や税務当局が定めている固定資産税評価額を参考にして、土地建物比率を決定するのが一般的です。
自社ビルを購入したものの、何らかの理由で将来的に売却する可能性もあります。いざ売却したいと思った際に、繁華性の高いエリアであれば買い手が見つかりやすいでしょう。 また、人通りが多く、小売店や商業ビルが密集しているエリアに位置するオフィスビルは、テナントとして貸し出すのにも適しています。集客が見込めるビルはテナントがつきやすく、空室の期間も短くなるため収益性を高めることが可能です。
2.狭い土地のビル(ペンシルビル)ではなく広い土地のビルを選択する
立地が優れたビルであっても、内外装が古く傷んでいるビルや旧耐震基準で建てられたビルなどは、借り手・買い手が見つかりづらいケースがあります。
狭い土地に建つ「ペンシルビル」も同様で、フロアごとの面積が狭くなることから活用の幅が狭まってしまいます。
広い土地に建てられたビルは活用の幅が広く、資産価値も棄損しにくいため、売却や賃貸の際も借り手・買い手ともに見つかりやすいでしょう。
3.グレードが高い → 清潔感があり設備や耐震性を備えている
立地や規模にもよりますが、規格が高くなるほど賃料坪単価が高く取れます。ボルテックスでは、この賃料坪単価を人気のバロメーターと考えています。
そして、規格が高いオフィスビルの特徴としては下記があげられます。
- スペック面(エントランス空間、天井高、OAフロア、空調や環境性能など)
- セキュリティ面(1フロア1テナント、監視カメラ、多層セキュリティなど)
- 共用空間(喫煙室、屋上庭園、休憩スペース、多目的トイレなど)
すべてを網羅している物件は稀ですが、このようにテナント様の職場環境がよくなるオフィスは人気となり、賃料坪単価が高く取れる傾向にあります。
「賃料坪単価が高く設定できるオフィスビル=グレードが高い」となります。
商業中心地で、繁華性の高いエリアで、グレードが高いオフィスビルは高額になる
商業中心地で、かつ繁華性が高いエリアに建つハイグレードなオフィスビルは、自社ビルとして理想的です。しかし、そのような物件は一棟当たり数十億円から100億円を超える場合もあり、資産性が高いとわかっていても現実的に購入が難しいケースが多いといえるでしょう。
ボルテックスが推奨しているのは区分所有オフィス
都心のハイグレードなオフィスビルは一棟購入すると高額になりますが、ボルテックスが推奨する「区分所有オフィス」なら、一棟と比較してお求めやすい価格で購入が可能です。
「たとえペンシルビルでも一棟購入できたほうが資産価値を高められるのでは?」と思うかもしれません。しかし、市場競争力のある商業都市のオフィスビルを購入するなら、一棟のペンシルビルよりも、グレードが高く規模の大きいオフィスビルの1フロアのほうが合理的といえます。
区分所有オフィスを購入し、返済が完了したあとはキャッシュアウトがなくなるため、余剰資金が増えます。その資金をもとに新規事業にトライしてもよいでしょう。また、内部留保にしたり、福利厚生を充実させて従業員へ還元したりと、理想の経営を実現させるための資金として活用できます。
さらに、自社物件を担保にして収益用の不動産を持つことも可能です。
不動産投資を成功させるポイントのひとつが、レバレッジを利用することです。収益性の高い不動産物件を購入しようとすると、手持ちの資金だけでは難しい場合がありますが、自社物件を担保に金融機関から融資を受けることで手持ちの資金の何倍もの投資が可能になります。
この方法を応用して新たな物件を買い増していけば、不動産投資を自社の新たな収益源にすることも期待できます。
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