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第2回 企業の「多様性」と「持続性」を考える

目次

海外展開が唯一の正解ではない

 本連載の第1回にあたる前回、日本や東京の価値は新型コロナウイルスの影響によって、下がっているどころか上がっているとお話ししました。それでも、とくに中小企業の立場から、いま以上の収益をあげるために販路を拡大しようと考えるならば、人口減少している日本よりは海外に打って出ようと考える経営者は決して少なくないものと思われます。

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 たしかに、その選択は「間違い」ではありません。たとえば外食チェーン店を展開するサイゼリヤは昨年10月、2022年8月期の売上高が前期比19%増の1500億円、営業損益は70億円の黒字(前期は22億円の赤字)を見込むと発表しましたが、それを牽引するのは海外事業で、営業利益の内訳をみると国内事業の10億円に対し、アジア事業は58億円を占めました。

 このように、人口が増加している海外にシフトするのは有効な戦略です。しかしそれは、「海外に展開すれば成功が約束される」という単純な話ではありません。サイゼリヤにしても、長年にわたり着実に海外展開を進めてきたわけで、とくに中国では現地とコミュニケーションをとってリスクヘッジをしながら店舗を拡大したことが奏功しました。

 一方で、パイが縮小していくばかりの日本国内だけでは、事業を行っていくのは難しいのでしょうか。最近ではいわゆるグローバル型あるいはサプライチェーン型の企業を目指すことが、規模拡大と生産性向上に鑑みて「正解」のように語られますが、そうした考え方ははたして正しいのでしょうか。

「地域資源型」と「地域コミュニティ型」の企業

 昨今ではダイバーシティの重要性が叫ばれていますが、私は中小企業の成長のあり方にも、多様性が認められる時代がすぐそこにまで訪れていると感じています。そしてこれからは、「地域資源型」や「地域コミュニティ型」の企業の価値が上がっていくことになるでしょう。

 地域資源型の企業とは、地域に拠点を置きながら、同時に地域の外でもサービス業を展開する企業のことで、成長曲線としてはたしかに緩やかになりがちです。一方で地域コミュニティ型の企業とは、地元に密着した飲食や小売など人びとの生活に深く根差した企業のことで、こちらは成長というよりも存続そのものに価値を見出すことができます。

 このような地域資源型や地域コミュニティ型の企業は、まぎれもなく地域経済を支える存在であり、雇用も生み出しています。私たちは、どうしても目覚ましい成長を遂げる一部のグローバル型企業に目を向けてしまいがちです。しかし、日本社会全体のことを考えるならば、とくに事業承継などの問題も生じている現在では、地域経済を回す企業が存在していることもきわめて重要なのです。

 だからこそ私は、地域の企業にもプライドをもってほしいし、成長が緩やかだったり横ばいであったりしても、存続していること自体に価値を見出してほしいと考えています。世界的にSDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、持続可能性が大切という考えは企業に対しても向けて然るべきではないでしょうか。

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日本企業と「持続性」の相性

 地域の企業にとっても参考になるケースとして紹介したいのが、前田建設と前田道路が統合したインフロニアの取り組みです。建設業の基本は請負ですが、それではなかなか利益がでません。そこでインフロニアは発想を変えて、建設だけではなく運営管理まで手掛けるように方向転換しました。「脱請負」です。

 すると、企業側にはどんなメリットがあるのか。利益が継続的に入ってくるようになるので、持続性を担保できるのです。もちろん、最初から運営管理に関するノウハウがあるわけではありませんでしたが、そこでインフロニアは他社と連携してITを導入して対応することで、新しい持続的なビジネスモデルを構築しています。その手法やマインドは、全国の中小企業にとって学ぶ点が多いのではないでしょうか。

 実は、日本企業は「持続性」と相性がいいともいわれていて、実際に海外と比べて「100年企業」が多い傾向があります。私自身、さまざまな経営者と会話をしていても、以前ほどアメリカナイズされた考えの方は少なく、闇雲に成長主義を目指すよりも企業を継続させることが大切という意識は強まっているように思います。

>ボルテックスの考える「100年企業戦略」とは

投資するうえで見極める経営者の3パターン

 実際に日本の地域を見渡せば、有望で活力ある企業は少なくありません。地域資源型の企業であれば、たとえば滋賀県に本社を置く小売チェーンである平和堂は金融との連携など新しい試みにも挑戦しており、地域から大きな存在感を放っています。

 そうした中小企業に投資する際には、たとえば財務体質などをどのようにみるべきなのでしょうか。以下はあくまでも私の考え方ですが、まず大前提として負債をことさらマイナスには捉えていません。もちろん、キーエンスや任天堂のような「無借金経営」が素晴らしいことはいうまでもありませんが、他方で借入や資金調達をしながら投資できる体制をつくることも経営では重要になります。

 大事なのは、お金の使い方です。とくにスタートアップの企業をみていると、それが上手ではない会社が少なくないように思う。私がみているかぎりでは、経営者には大きく三つのパターンにわけられます。

一つ目はなかなかお金を使わない経営者です。たとえば、せっかく3,000万円を資金調達したのに、まったく使わない経営者もいます。もちろん、それでは企業はいつまで経っても成長しません。二つ目はその逆で、公私混同で浪費する経営者も存在しており、そうした企業ではお金を借入しておきながら多額が経費で飛んでいきます。

 最後の三つ目がしっかりと計画を立てる経営者で、営業人材や技術者を確保し、マーケティングにもお金をかけます。広告にしても、打つ前にWebサイトを整えておきます。というのも、カスタマーからの問い合わせの受け皿がないうちに、テレビやタクシーの車内CMを流しても意味がないからです。このように、お金の使い方の順序を間違えていない企業は、投資する価値があるとみるべきでしょう。

 なお、ひとつだけ注意していただきたいのは、投資に関しては不動産のケースはまた特別な世界だということです。株は基本的に公開情報ですが、商品が唯一無二である不動産はある意味ではクローズドなマーケットであり、経営者の手腕や人脈、そして信頼性がモノをいう世界です。だからこそ、まずは企業の信頼性をみることが大切になるのです。

クラウドファンディングがなぜ有効か

 当たり前の話ではありますが、経営者に求められるのは、結局のところ中長期的なビジョンです。借入も資金調達も重要な戦略ですが、お金を手に入れたあと、何に投資をするのかを事前に考えなければいけません。また、これは中小企業の方々とよく話すのですが、いまならばクラウドファンディングも有効な手段になります。

 クラウドファンディングの利点は、いわば株主になる一歩手前として、企業が描いているビジョンを応援してくれる人を募ることができる点です。寄付者にとっては決して厳しい縛りではないですし、企業側からすれば上手に活用すれば数百万円を調達できる可能性があるわけです。

 小売業であれば、ビジネスは商品とサービスの対価で交換であり、その過程でファンがついて、永続的なコミュニケーションが生まれます。その継続性こそが、マーケティングの観点からみても中小企業にとっては大切になる。クラウドファンディングとはつまり、持続性のある企業には不可欠なファンをつくるための有効な選択肢なのです。

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お話しいただいた方

馬渕磨理子(まぶち・まりこ)様
◎経済アナリスト/日本金融経済研究所代表理事◎

PROFILE 京都大学公共政策大学院修士課程修了。トレーダーとして法人の資産運用を担う。その後、金融メディアのアナリスト、FUNDINNOで日本初のECFアナリストとして政策提言に関わる。フジテレビ、日経CNBC、プレジデント、ダイヤモンド、Forbes JAPAN、SPA!などで活動。主な書籍に『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』 『株・投資ギガトレンド10』など。

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