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新ランドマーク・東急歌舞伎町タワー開業で
歓楽街・新宿歌舞伎町のエンタメ機能が厚み増す

目次

2023年4月14日、東京新宿・歌舞伎町に、国内最大級のホテル×エンターテインメント超高層複合施設・東急歌舞伎町タワーが開業します(ホテル開業は5月19日)。国内有数の繁華街であり歓楽街でもある新宿歌舞伎町が、高さ225m(地上48階、地下5階)のランドマーク誕生によって、どのような進化・変貌を遂げていくのか、都市計画がご専門の東京大学大学院工学系研究科准教授・中島直人氏にお聞きしました。

誰もが楽しめるエンターテインメントシティの復活

 東急歌舞伎町タワーの特徴は、オフィス機能を持たない一方で、エンターテインメント機能が充実していることです。上層階はホテル、中層階には8スクリーンの映画館、演劇・音楽・映像などの多彩なコンテンツを発信できる900席の劇場、1500名収容のライブホール、そして3フロア5エリアで構成されるナイトエンターテインメント施設には、音楽、DJ、空間演出、パフォーマンスなど、さまざまなコンテンツが集結します。次世代エンターテインメントフードホールなど、飲食店も独自の文化発信を目指しています。

 歌舞伎町タワーは1956年に新宿東急文化会館として開業、2014年に閉館した複合娯楽施設「新宿TOKYU MILANO」の跡地を中心に立地しています。戦後の復興期、東京都建設局長として復興計画の立案を手掛けた都市計画家の石川栄耀は、後に自ら歌舞伎町と名付けることになる新宿の外れのこの地に、芸能広場のある理想的な文化地域としてのアミューズメントセンターを作ることが大事だと考えました。そのおかげで、家族連れでも娯楽を楽しむことができる街が誕生したのです。しかし、1970年代から風俗関係の店などが増え、次第に怖いイメージが広まっていきました。2001年の雑居ビル火災で多くの犠牲者が出たのを契機に、行政と地元の人たちが一体となり、「エンターテイメントシティ歌舞伎町」に向けて、歌舞伎町を誰もが安心して遊べる街に再生するための取り組みを開始しました。歌舞伎町タワーは、その取り組みのひとつの到達点かもしれません。

 靖国通り側の入り口から進んでいくと最も奥に位置し、歌舞伎町の象徴ともなっているシネシティ広場に面しているという点はとても重要な特徴です。歌舞伎町タワーに設置された大型屋外ビジョンや屋外ステージとシネシティ広場を一体活用した、音楽やスポーツ、演劇イベントの開催も可能です。一方で、シネシティ広場の反対側は西武新宿駅前通りに面しており、こちら側では歩行者が歩きやすいように道路リニューアルが進められました。当初から歌舞伎町は、クルマが入りづらく、歩行者にとっては歩きやすい街に設計されています。タワーと広場が一体化し、さらにタワーの1階を自由に通過して新宿駅東口や大久保方面からのアクセスも向上することで、回遊性が増します。それによって、いろいろな人たちが広場で混じり合うようになるでしょう。住み、働き、遊ぶ人の多様で豊かな営みがあるからこそ、街は観光客にとっても魅力的な場所になり得るという観点から、これは盛り場の繁栄にとって、とても重要なことです。

本物志向の高所得層インバウンドがもたらす効果

 タワー1階には、成田、羽田と直結する空港連絡バスの乗降場が整備されます。また、上層階には、新宿には少ないラグジュアリーホテルが入居します。これによって、とりわけ高所得層のインバウンド需要が喚起されるでしょう。

 高所得層の人たちは、何に対しても「本物の体験」を求めます。元来、新宿には飲食も、ライブハウスなどのエンターテインメントも、そしてあえていえば風俗も、本物が揃っています。歌舞伎町タワーの誕生で、本物のエンターテインメントがさらに厚みを増します。高所得層を満足させられる「本物の体験」が、より豊富になるのです。彼ら彼女らがラグジュアリーホテルから歌舞伎町に繰り出すことで、歌舞伎町は危ない場所だけではない、安心して楽しめる街でもあることが実感されるはずです。靖国通り沿いに連なるネオン風景など、映画に映し出された日本的風景の象徴も歌舞伎町にはあります。「夜は歌舞伎町に行ってみよう」ということが外国人旅行者の流行になるかもしれません。そうなれば、創造性に富む文化的表現の場としての夜、経済活動の場としての夜といった、文化と経済に資する「ナイト・エコノミー」の活性化に歌舞伎町は大きく貢献することになります。

 街の再開発は、建物などのハコモノを作って終わりではありません。そこを訪れる客、地元で商いをしている人たちを巻き込んで、新しいものを作っていくのが本来の目標です。その意味で、歌舞伎町もタワーが完成して再開発が終了ではありません。従来から街で営んでいる飲食店、ライブハウス、さらには風俗店とさえ共存しながら、歌舞伎町という繁華街・歓楽街を盛り上げていかなくてはなりません。

 昔から歌舞伎町には、エンターテインメントやアートに関わる人たちが多く出入りしていました。ただ、その人たちがお互いにつながっている感じは少ないのが実情でした。これからは、エンターテインメント施設の整った歌舞伎町タワーやそこでのさまざまな出来事を通じて、そうした人たちが結びついていけたら、今までにない新しいカルチャーが生み出されていくと思われます。生活者あるいはその街を面白いと思っている人たちが、さらに自分たちの街を面白くしていこうという気持ちが大事なのです。

歌舞伎町にオフィスを構えてクリエイティブな発想を得る

 歌舞伎町には少ないカフェなどに挑戦する若者が出てきても面白いかもしれません。飲食や小売でなく、普通の企業が、あえて歌舞伎町にオフィスを構えるというのもありえるかもしれません。一流企業が集まる丸の内・大手町、セレブな銀座、ITやベンチャーの渋谷とは一味違う、少し危ない刺激のある歌舞伎町で働くことで、今までにないクリエイティブな発想が得られる可能性も探究してみたいところです。歌舞伎町タワーのおかげで、グローバル企業が日本での拠点を歌舞伎町かいわいに移してくるという未来も、あながちありえないことではなくなったのではないでしょうか。

 中央線の電車で新宿方面に向かっていると、新宿のかなり手前から、歌舞伎町タワーがそびえているのが見えます。新宿西口の高層ビル群から離れているので、一層目立ちます。まさに歌舞伎町タワーは、新宿の新しいランドマークです。歌舞伎町には、インバウンドの聖地となったゴールデン街や、大久保エスニックタウンなど、全国のどこにもない独自の雰囲気を備え、観光客に人気のスポットも近くに控えています。これら近隣エリアの人々との交流を深めていけば、歌舞伎町、さらには新宿のポテンシャルがさらに広がっていくでしょう。東京という街には、そうした編集の力しだいで、まだまだ多くの可能性が秘められていると思います。

お話しいただいた方

中島直人 様
なかじま・なおと

PROFILE
1976年生まれ。東京大学工学部都市工学科卒、同大学院修士課程修了。博士(工学)。東京大学大学院助手、助教、慶應義塾大学准教授を経て、2015年4月より東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻准教授。専門は都市計画。主な著作に『都市計画の思想と場所 日本近現代都市計画史ノート』(東京大学出版会)、『アーバニスト 魅力ある都市の創生者たち』(共編著、ちくま新書)、『都市計画家石川栄耀 都市探求の軌跡』(共著、鹿島出版会)。

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