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円安で加速する海外マネーの日本の不動産購入

目次

2022年9月には1ドル144円※を超える歴史的な円安が進み、海外の富裕層から見ると、日本の不動産はお買い得と受け止められています。金融緩和から金融引き締めへと各国の中央銀行が政策金利を上げる中、日本銀行は金融緩和策を維持し続けています。東京や大阪など大都市圏の不動産市況はどう推移するのか、不動産コンサルティング会社さくら事務所の創業者で、現在は会長を務める不動産コンサルタントの長嶋修氏にうかがいました。

※2022年9月5日時点

東京の不動産価格は他の都市より割安

 世界的に見て、2008年のいわゆる「リーマンショック」で始まった世界的な金融危機に際して、米連邦準備制度理事会(FRB)は大規模な金融緩和策を進め、各国が追随しました。

 米国をはじめとする主要国の中央銀行が潤沢な資金供給を進めたことで、余剰資金は投資先を求めて、高い成長力や高金利の新興国へと流入したり、不動産や株式などの市場に流入して金融危機後の世界経済を下支えしたのです。

 日本不動産研究所の国際不動産価格賃料指数によると、世界各国の都市部の高級住宅(ハイエンドクラス)のマンションを前提とした2015年10月時点の価格は、東京を100とした時にロンドンが337、香港が232.5、ニューヨークが173.3、上海が149.9など、軒並み海外の大都市が東京の価格を大きく上回っていました。

 一方、日本は2012年12月に就任した安倍晋三首相が第2次安倍内閣で掲げた一連の「アベノミクス」で、経済成長を目的に大胆な金融政策と機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」を政策運営の柱に掲げました。2013年3月に日本銀行総裁に就任した黒田東彦氏がアベノミクスの金融政策を支持して、2%の物価目標を2年程度で実現するために日銀が供給するマネタリーベースを2年間で2倍にするなど大胆な金融緩和に踏み切ったことで、日本の不動産市場も活況を呈しました。

 コロナ禍前の2019年10月になると国際不動産価格賃料指数は、東京100に対してロンドンが173.5、香港が205.2、ニューヨークが98.63、上海が114.9と、東京との価格差は縮まったのです。つまり、世界のほかの大都市の不動産価格が頭打ちになる一方で、東京の価格はジワジワと上昇を続けていったことが見て取れます。

金融緩和策の維持で欧米系の投資マネーが流入

 ほかの世界の大都市ほど不動産価格が急騰したわけではないものの、よく東京の不動産価格がバブルなのではないかという議論があります。ただ、スイスのUBSによる世界の不動産バブル指数では東京は1.2でバブルのリスクが高い1.5未満を維持しています。現時点では、東京のマンションなど不動産価格はバブルではなく、市場の実勢にあった価格上昇を維持できているといえるでしょう。

 こうした状況下で、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻に端を発した資源価格やさまざまな商品価格の上昇が始まったのです。各国の中央銀行は物価上昇を抑えるために、金融緩和から引き締めに舵を切り、政策金利の引き上げに踏み切りました。

 金利が上昇すれば不動産市場に大きな影響が出るのは間違いありません。すでに世界の主要都市ではマンションなど物件価格が頭打ちで、場所によっては下落に転じているところもあります。

 一方で、日本だけがほかの国と違って金融緩和を続け、低金利政策を維持しています。その結果として、2022年1月初めに115円台だった米ドル対円相場は9月には144円となり、約30円も円安になったのです。これは実に約24年ぶりの安値です。つまり、海外の投資家などから見ると、日本の不動産価格は年初から約9カ月で約25%も割安になったということなのです。日銀の黒田総裁の任期は2023年4月8日までですので、少なくとも任期中に円安基調が変わることはないと見てよいでしょう。

 海外の富裕層や投資ファンドなどは、割安な東京の不動産への関心を高めており、海外マネーが日本に流入し続けています。10年ほど前から中国などアジア系の富裕層が都心のタワーマンションを購入することが多くありましたが、こうした傾向は2018年ごろには下火になっています。アジア系に代わって東京の不動産に関心を寄せているのが欧米系の投資ファンドなどです。特にほかの国が金融引き締めに踏み切ったことで、投資先として東京の優位性はますます高まっているといえます。

大阪と福岡をアジアの金融センターにする構想も

 2020年の緊急事態宣言が発出された頃には不動産取引が半減した時期もありました。ただ、緊急事態宣言が終了すると、在宅勤務が増えたことなどから住まいに対する見直しをしたいという希望もあり、都内のマンション価格は一段と上昇したのです。中古マンションについてもコロナ禍で在庫が減ったことで、取引数自体は減りましたが、価格が落ちることはありませんでした。

 金融緩和策が維持され円安傾向にあることで、海外の投資マネーが東京の物件を購入する流れは、少なくとも2024年か2025年までは続くでしょう。

 東京への一極集中が話題になりますが、大阪や福岡などの大都市についても世界のマネーが注目しています。その理由の一つが政府が推進する世界に開かれた国際金融センターの構想です。2020年7月、政府は骨太の方針で世界・アジアにおける国際金融センターを目指す方針を明記しました。

 ニューヨークとロンドンに続く世界第三の国際金融センター、あるいはアジアの金融ハブとしては、香港やシンガポールがあげられることが多くありました。しかし中国政府の政治的な締め付けで香港から海外企業が流出し始めており、金融センターとしての魅力は半減しています。

 こうしたなか、大阪府は国際金融都市OSAKA推進委員会を設立し、特定の金融機能を担おうと独自の戦略を打ち出し、2050年ごろを目途に国際金融都市としての地位を確立しようとしています。

 福岡市もアジアの主要都市に近い立地と豊かな生活環境等を生かして、国際的な金融機関や関連企業など国際金融機能の誘致に取り組んでいます。2020年9月には企業や大学、県、市等が連携した推進組織「TEAM FUKUOKA(チーム・フクオカ)」が立ち上がりました。

 東京がアジアの金融ハブへと発展し、それを補完する形で大阪や福岡にも金融センター機能が分散することになれば、世界中から金融系の企業や人材が押し寄せるようになり、一層発展していくことも期待できます。

 このように見ていくと、東京をはじめとして大阪や福岡など大都市圏にも海外の投資マネーが流入する余地はまだまだ多くあり、不動産価格は今後も上昇していくことが見込まれます。

お話しいただいた方

長嶋修様
ながしま・おさむ
不動産コンサルタント、さくら事務所創業者・会長

PROFILE
1967年、東京生まれ。1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社さくら事務所(https://www.sakurajimusyo.com)を設立、現会長。現在はグループ会社である「らくだ不動産」(https://www.rakuda-f.com/)の会長も兼任。

業界の第一人者として不動産購入のノウハウにとどまらず、業界・政策提言など精力的に活動。テレビ等へのメディア出演、講演、出版・執筆活動など、さまざまな活動を通じて「第三者性を堅持した不動産コンサルタント」の第一人者としての地位を築く。

2022年6月現在、登録者数6.46万人のYouTubeチャンネル「長嶋修の『日本と世界を読む』」を運営。不動産投資・政治・経済・金融全般についての情報発信をするYouTuberとしても活動中。

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