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第1回 東京の価値はコロナ後にどうなる?

目次

経済の激動期を生き抜くために

 新型コロナウイルスのパンデミックの出口が見えはじめたと思いきや、世界各地で起きている紛争など、世界経済は依然として落ち着きを見せません。

 この大きなうねりに淘汰されて落ちていく企業もあれば、むしろバネにして上がっていく企業もあります。このような経済の激動期を生き抜くうえで必要なのは、何でしょうか。それは、「期待」ではなく「実際=リアル」を見据える目であり、企業に投資をするうえでも求められる姿勢です。本連載では、どのように現在の世界と日本の経済のリアルを見つけるべきか、そのうえでどのような視座が求められるかを考えていきたいと思います。

インフレ/円安をどう捉えるか

 実際に現在の景気動向をどう捉えればいいのでしょうか。とくにいま、皆さんが関心を向けているのはインフレ問題でしょう。とはいえ、日本に関しては欧米諸国と比べれば物価は上がっていない状況なので、まさしく冷静に事態の推移を見守らなければいけません。

 また、円安について考えると、大企業製造業にとってはプラスであり、日経平均株価も上向きに進むでしょう。一方で、中小企業にとっては、どこまで円安で恩恵を受けられるかといえば心もとない。むしろ、コスト高で圧迫されることのほうが多いかもしれません。輸出企業であればまだしも、地域密着型のサービス業などを手掛けている場合はなおさら影響を受けやすいでしょう。

 とはいえ、もちろん小売業も悲観的になる必要はなく、戦略次第では危難を乗り越えられます。たとえば、子供用品を販売する西松屋は業績が好調ですが、本来であれば厳しい業態です。それでも彼らは、節約志向が高まり「安くていいもの」を求めている国民の消費マインドを、しっかりと捉えている。このように、現在の流れを追い風にしている企業は、たしかに存在しているのです。

インバウンドが爆発的に盛り上がる

 私はいま、日本はひとつの転換点を迎えているとみています。というのも、岸田政権が新型コロナウイルスの水際対策に関して、入国者数の上限を現行の1日1万人から2万人への緩和を検討しているように、G7並みに国境を開くと語っているからです。

 私の見立てでは、これからインバウンドは爆発的に盛り上がります。そして、政府や日銀が円安を容認しているのは、それを見越した政策ではないでしょうか。すなわち、サービス業や地方の企業を救うために、円安にして海外からお金を落としてもらおうという考えです。企業側はその可能性をしっかりと認識するべきでしょう。

 インバウンドが盛り上がれば、一大商圏としてあらためて注目されるのが東京です。世界では、コロナ禍が終わったらどこに旅行に行きたいかと尋ねたアンケートで、やはり日本が人気です。パンデミック下でも街が荒れておらず、衛生面は安心できて、政情も安定しているからでしょう。

近年では「安い日本」と批判されてばかりですが、俯瞰してみれば、コロナ後の日本は海外にない魅力があり、私は価値が上がるとみています。とくにお金が落ちるのが、首都・東京です。少なくとも現在の政府の政策をみれば、「日本はもう世界から見向きされていない」というメディアの論調に流されるべきではないし、企業であれば表と裏をつかみとることで、自分たちの経営の指針を考えることができはずです。

海外からの日本企業の評価

海外からの目線について付言すれば、日本企業に対する評価もさほど変わっておらず、安く売られ過ぎているというのがマーケットの認識です。現在では世界で紛争が続くなか、円安でコストが増加しているという保守的な見方が多いので、日本企業を買う理由がありません。でも、次の決算期の今夏のタイミングで、むしろ円安の恩恵を受けるかもしれないという空気が生まれれば、日経平均株価が上がって日本企業は買いだという声が増えるはずです。

 現にいま最高益を上げていると発表している企業も存在します。依然として製造業は円安の恩恵を受けておらず、業績にも株価にも反映されていませんが、何かのきっかけがあれば現在の市場の不透明感は打破される予兆はあるのです。

 一方で製造業などを中心に懸念されているのが、中国リスクなどでしょう。最大のテーマは半導体の確保になりますが、日本全体の話でいえば、世界を代表する半導体メーカーである台湾のTMSCを熊本に誘致したので、徐々にリスクを分散しようという流れには向かっています。国内でサプライチェーンを確保している姿勢をみせているのは安心材料であり、ひとつのよい兆しです。

コロナ禍以降、むしろ東京の魅力は増している

 先ほどコロナ後の東京の価値についてお話ししましたが、私が印象に残っているのが、東京大学大学院経済学研究科教授の佐藤泰裕氏が『Wedge 2021年8月号』に寄稿した「新型コロナでも止められぬ東京一極集中を生かす政策を あなたの知らない東京問題 膨張続ける都市の未来」というレポートです。このレポートの論旨は単純明快で、コロナ禍で都心の魅力は落ちていないこと検証しています。

最初に読んだときには、あまりにも世間で語られていることと正反対だったので驚きましたが、しっかりとデータに基づいた内容で、最終的には大きく頷かされました。論文によると、多くの人が感染リスクを冒してでも都心へと移動していることが、携帯電話の位置情報からわかっています。

 たしかにコロナ禍以降、東京から地方へと移住している人は増えました。しかし、ここが重要なポイントなのですが、移り住んだ先は東京から3時間以内の場所に留まっているといいます。これは要するに、何かあったら東京のオフィスに出勤できることを前提として、引っ越し先を選んでいる人がほとんどだということです。

 この研究成果をふまえると、むしろ東京を中心とした大雇用圏は、より広がっていることを意味します。つまり、東京の影響力はむしろ増しており、その意味でもコロナ禍を経て魅力が高まっているとさえいえるのです。ならば、一時期、「都心のオフィス機能は最終的にはすべてなくなるのではないか」という議論がありましたが、東京にオフィスを置くことには今後も大きな意味があるし、文化として残るでしょう。

「選択と集中」のために必要な潔さ

 最後に、私が注目している企業として、貸会議室を展開するティーケーピー(TKP)について紹介したいと思います。コロナ禍でDXが進んだことにより、その延長線上でコストを削減して筋肉質な経営体質にして、利益率を高めた会社は少なくありませんが、ティーケーピー もそのひとつです。

 ティーケーピー は以前には会議室だけではなく、ホテルの宴会場などの運営も手掛けていました。いわゆる高単価事業であり、現在もいくつか運営していますが、コロナ禍以降は縮小して貸会議室事業に注力しました。私はいくつもの企業を取材してきた経験から、危機に直面したときには「祖業に立ち返る」ことが打開するひとつの方法であると思います。

 ティーケーピーの河野貴輝社長にお話を聞いたとき、「貸会議室以外の事業は、危機から回復したときにもう一度やり直せばいい」と発言されていたのが印象的でした。「祖業に立ち返る」とは口でいうほど簡単ではありません。ティーケーピーも貸会議室に高単価事業を組み合わせたから成長してきたにもかかわらず、それを切る決断をしたことで、利益率を回復させて黒字化しています。

 コロナ禍にせよ、世界の紛争にせよ、日本企業を取り巻く状況は悪化するばかりではありません。いまこそ、自社の強みや特性を認識したうえで、「選択と集中」を考えるべきですし、経営者は潔く判断しなければなりません。その先に、おそらくは各企業にとっての活路が見えてくるはずです。

お話しいただいた方

馬渕磨理子(まぶち・まりこ)様
◎経済アナリスト/日本金融経済研究所代表理事◎

PROFILE 京都大学公共政策大学院修士課程修了。トレーダーとして法人の資産運用を担う。その後、金融メディアのアナリスト、FUNDINNOで日本初のECFアナリストとして政策提言に関わる。フジテレビ、日経CNBC、プレジデント、ダイヤモンド、Forbes JAPAN、SPA!などで活動。主な書籍に『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』 『株・投資ギガトレンド10』など。

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