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第4回 企業は「現状維持=衰退」の覚悟をもて

目次

オリエンタルランドが導入した新サービス

 前回の本連載では、昨今好調な企業の一例として、外食チェーン「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの事例を紹介しました。コロナ禍や物価高など企業にとっては難しい局面が続くいま、それを逆手に取った発想と戦略が求められますが、もうひとつ私が注目している企業を上げるならば、ディズニーブランド施設を運営しているオリエンタルランドです。

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 「餃子の王将」が値上げに踏み切ったのと同様、オリエンタルランドも入園料を値上げしています。その一方で、子供向けの半額キャンペーンなどさまざまな工夫を凝らしているのですが、私が感心させられたのが、依然としてコロナ禍以降の入場制限を継続しているとともに、今年の5月から「ディズニー・プレミアアクセス」という新サービスを導入したことです。

 「ディズニー・プレミアアクセス」は、2,000円(1名1回・大人子供価格共通・原則キャンセル不可)でアトラクションをスムーズに体験できる新サービスであり、利用者はパーク入園後に体験したいアトラクションを並ばずに予約できます。たしかにディズニーといえば、とても楽しいけれども列に並ぶのが億劫に感じる方がいると耳にします。そこでオリエンタルランドは新しいサービスを導入したのですが、これがたいへん好評です。

顧客の「満足度」をどう高めていくか

 ディズニーは、何を重視してこのサービスを始めたのでしょうか。それはおそらく、来園者の「満足度」でしょう。実際にこのサービスを利用した人に話を聞くと皆が一様に「楽しかった」と口にしています。未だに入場制限を設けている理由も、やはり来園者一人ひとりの満足度を高めるためでしょう。コロナ禍前は思い切った措置をとりにくい風潮がありましたが、いまでは逆手にとって制限し続けることで、まさしくピンチをチャンスに変えようとしたわけです。

 オリエンタルランドの中期経営計画の数字をみると、2024年度の年間来場者数の目標を2,600万人程度に設定していますが、これはコロナ禍以前を比べると2割ほど低い数字です。その代わり、1人当たりの売上を上げるために付加価値をつけようと考えているわけで、実際にさまざまな工夫を凝らしている。この戦略の柔軟性は、さすがはオリエンタルランドというべきでしょう。いずれにせよ、ロイヤリティあるお客様の満足度をいかに高めるかという戦略は、成熟した企業のひとつの戦い方です。

 この「付加価値のつけ方」こそが、各企業がいま求められていることです。日本はアメリカに比べて商品やサービスの値上げが進んでいませんが、これは原材料費などの高騰を企業が負担しているわけで、当然ながら利益は圧迫されます。以前と比べれば国民も企業の値上げをことさらネガティブに捉えないようになりましたが、本来はオリエンタルランドのような循環が健全で望ましいはずです。

「雇用の流動性」議論への違和感

 もうひとつ、いま企業に求められていると語られるのが、人への投資です。たとえば賃上げも議論されていますが、私はコストが上がっている以上は商品やサービスを値上げするとともに、一部は強制的に賃上げに取り組んでもいいと考えています。実際、ゲーム業界では新入社員の初任給が27万円の企業もあると聞きますし、そうした流れが生まれている。これは裏を返せば、それだけの条件を提示しないと優秀な人材を抱え込めないという話でもあります。

 一方で私が違和感を覚えているのは、「人への投資」という文脈が転職ありきで語られがちという点です。企業として従業員への投資を充実させて、その従業員がスキルアップして、より条件がよい企業に転職する――。そうして雇用を流動させるのが正しいと考えられがちですが、本当に現実的でしょうか。経営者にとって、投資が最終的に自社に還元されなければ、そう簡単に納得できる話ではないでしょう。

 もちろん私も、企業はいま以上に従業員に投資すべきだと考えています。しかし本来めざすべきなのは、その従業員がプライドをもって自分たちの組織に残り、新しい時代にも活躍する人材となることです。そうした議論を経ることなく、闇雲に雇用の流動性をめざしてしまえば、とくに中小企業の経営者が恩恵を受ける機会は減り、どうしてもズレを感じてしまうはず。私たちは雇用の流動化と個々人のスキルアップを中小企業の成長とともに考えるべきではないでしょうか。

経営陣の相乗効果で成長する企業へ

 「付加価値をつける企業戦略」から「従業員への投資」まで、時代とともに経営者が向き合うべきテーマはじつに多岐にわたります。そのすべてを一人で考えるには、さすがに無理があるでしょう。また、変化が不規則な世界では、そもそも一人ではなく多様な視点をもって経営に臨むべきですし、その意味でいえばCFO(最高財務責任者)の存在が重要になるでしょう。

 それでは、経営者はどのようなCFOをキャスティングすればいのか。CFOにも二種類あって攻めの人と守りの人がいますが、あまりにも活動を締め付けるタイプだと投資にも及び腰になりますから、企業は成長しにくくなります。従業員や設備への投資、あるいは広告宣伝などを打てないとなると、企業は尻すぼみになるし人材が流出する恐れがある。しばしば「現状維持=衰退」と語られますが、然るべき場所にはお金を使うバランス感覚がないと、企業とは活力を失っていくものです。

私はさまざまなセミナーなどで登壇する機会がありますが、そうした場で未だにDX化に躊躇っている方と出会う機会は少なくありません。企業の規模感に合わせる必要はありますが、やはり速やかに投資すべきジャンルです。その決断を下す際、CFOは大きな役割を果たすでしょうし、私の感覚でお話しするならば、生え抜きに相応しい人材がいないのであれば、銀行マンや会計士に任せるのが適切でしょう。

 もちろん、経営者の手腕で企業が成長するケースはありますが、組織とは経営陣が折り重なって、相乗効果で大きくなるものです。むしろ、一人の判断で方向性を決めているようでは、かえって小さくまとまる傾向がある。それをふまえたうえで、どのような人材をCFOに迎えるべきか、それもまた経営者の決断が問われるところだといえるでしょう。

従業員の忠誠心をどう高めるか

 先ほど、締め付けるタイプのCFOは避けるべきとお話ししましたが、これは企業活動全般についていえることです。いまでは、コンプライアンスの遵守に鑑みてルールが増えるばかりで、企業活動も社員のマインドも内向きになる一方です。これは企業の規模の大小に関係ないでしょう。

 翻って、ビジネスパーソンに自社の活動について話を聞くと、経営者はもちろんのことプロジェクトなどの担当者は目を輝かせて話し始めることが珍しくありません。やはり、自分たちの取り組みを社会に発信したいという欲があるのでしょう。その姿をみるにつけ、日本の企業やビジネスパーソンは窮屈な空気感に押し込められているものの、本当は自分たちの活動に自信をもっているし、発信欲も旺盛なのだと感じさせられます。そしてその発信欲を満たしてあげれば、自ずとモチベーションは湧いていくでしょう。

 縁あって自分が勤めている会社にプライドをもっている人はたくさんいるし、ならばそのプライドをより高めることによって、その従業員はやりがいを感じます。自分の活動を上手く外に向けて発信できれば、より忠誠心が高まるでしょう。これは「人への投資」にもつながる話で、人が次から次へと他社に転職するサイクルから脱却するヒントにもなり得ます。

ですから私は、中小企業の経営者の方とお話しするときには、社員のプライドを掘り起こすことが大事だし、それがリーダーの役割だとお話ししています。そして、社員が惰性とプライドのどちらを胸に働いているかをみれば、その企業が成長するか否か、さらにいえば投資するべきか否かもわかるものなのです。

お話しいただいた方

馬渕磨理子(まぶち・まりこ)様
◎経済アナリスト/日本金融経済研究所代表理事◎

PROFILE 京都大学公共政策大学院修士課程修了。トレーダーとして法人の資産運用を担う。その後、金融メディアのアナリスト、FUNDINNOで日本初のECFアナリストとして政策提言に関わる。フジテレビ、日経CNBC、プレジデント、ダイヤモンド、Forbes JAPAN、SPA!などで活動。主な書籍に『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』 『株・投資ギガトレンド10』『収入10倍アップ 高速勉強法』など。

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