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兄弟姉妹が亡くなったときの遺産相続の割合は?注意点とトラブル予防法を解説【弁護士監修】

相続 遺産相続

遺産相続
写真:丸山 純平

記載内容の内、法務に関する内容の監修

丸山 純平

東京幸せ相続相談センター 理事
丸山弁護士法人 丑和総合法律事務所 代表弁護士

目次

兄弟姉妹が亡くなって、他の兄弟姉妹が遺産を相続する際は、公平に遺産分割ができるように法律上各相続人の相続割合(法定相続分)が定められています。しかし、相続人の中に被相続人(故人)の介護をしていたり生前贈与を受けていたりする人がいる場合、法定相続分での遺産分割を行うことに合意しない兄弟姉妹がいることもあります。これが原因となり、遺産分割協議が進まなくなってしまうケースも少なくありません。
本記事では、兄弟姉妹間での遺産分割協議における注意点を解説します。兄弟姉妹のよくある遺産相続トラブルや予防方法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

被相続人の兄弟姉妹が相続するときの相続割合

遺産分割の内容は、法定相続分を目安にして決められるのが一般的です。法定相続分とは、法律で定められた各相続人の相続割合のことです。
ここでは、被相続人の兄弟姉妹が相続するときの相続割合をケース別に紹介します。

被相続人に子供や親がいない場合

民法では、被相続人の配偶者は必ず相続人となるように定められています。配偶者以外の法定相続人は、以下の相続順位によって決められます。

第1順位 被相続人の子供(子供が亡くなっていれば孫)
第2順位 被相続人の親(親が亡くなっていれば祖父母)
第3順位 被相続人の兄弟姉妹

配偶者以外の法定相続人は、上の順位の人が亡くなっている場合、もしくは相続を放棄している場合に相続権を得られます。つまり、被相続人の兄弟姉妹が相続人となるのは、相続の第1順位の被相続人の子供、第2順位の被相続人の親祖父母がいない場合です。兄弟姉妹の相続割合は、配偶者の有無によって異なるため、ケース別の相続割合を見ていきましょう。

被相続人に配偶者がいる場合

被相続人に配偶者がいる場合の法定相続分は、以下のとおりです。

配偶者の法定相続分 4分の3
兄弟姉妹の法定相続分 4分の1(これを兄弟姉妹の人数で等分する)

たとえば、遺産総額が5,000万円の場合、配偶者の法定相続分は3,750万円、兄弟姉妹の法定相続分は1,250万円となります。兄弟姉妹が複数人いる場合には1,250万円を人数に応じて等分します。兄弟姉妹が2人の場合は625万円ずつ、4人の場合は312万5,000円ずつとなります。

被相続人に配偶者がいない場合

被相続人に配偶者がいない場合は、兄弟姉妹のみが相続人となりますので、各人の法定相続分は人数に応じた割合となります。たとえば、遺産総額が5,000万円の場合、兄弟姉妹が2人であれば2,500万円ずつ、4人であれば1,250万円ずつの法定相続分となります。

被相続人の子供や親が相続放棄した場合

被相続人の子供や親、祖父母がいたとしても、全員が相続放棄をすると兄弟姉妹に相続権が移ります。相続放棄とは、被相続人の資産や負債などを引き継ぐ権利や義務をすべて放棄することです。被相続人の子供や親、祖父母の全員が相続放棄をした場合は、兄弟姉妹に相続権が移りますので、遺産を各人の法定相続分で分割することを検討します。
たとえば、遺産総額が5,000万円の場合、兄弟姉妹が2人であれば2,500万円ずつの法定相続分となります。ただし、上の順位の相続人全員が相続放棄している場合、相続財産には借金などの負債が含まれている可能性もあるため、兄弟姉妹も相続放棄を検討する必要があります。

遺言書に兄弟姉妹へ相続させることが明記されていた場合

有効な遺言書が存在し、その遺言書に「兄弟姉妹へ相続させる」と明記されている場合は、被相続人の子供や親がいても兄弟姉妹は遺産を相続することができます。ただし、兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」が認められているため、兄弟姉妹が相続することにより遺留分を侵害する場合、トラブルに発展する可能性があります。なお、遺留分とは、兄弟姉妹以外の配偶者や子供、親などの法定相続人が相続できる最低限の割合のことです。

相続人 遺留分
直系尊属のみ 各法定相続分の3分の1
直系尊属のみ以外 各法定相続分の2分の1

遺言によって法定相続人が相続する割合が遺留分を下回った場合、兄弟姉妹以外の法定相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使することで、自らの遺留分を主張できます。

兄弟姉妹が遺産相続するときの注意点

兄弟姉妹が遺産相続するときの注意点は、以下のとおりです。

  • 遺留分が認められていない
  • 代襲相続が次の代までに限定されている
  • 相続税額が2割加算される

それぞれ詳しく解説します。

遺留分が認められていない

兄弟姉妹には、遺留分が認められていません。そのため、仮に遺言によって兄弟姉妹が遺産を相続することになったとしても、相続することになった遺産以上の財産を受け取る権利を主張できないのです。

代襲相続が次の代までに限定されている

兄弟姉妹の代襲相続は、次の代までに限定されています。代襲相続とは、例えば被相続人の子供が亡くなっている場合に孫が、孫が亡くなっていればひ孫という形で相続権が引き継がれる制度のことです。被相続人の子供や孫といった直系卑属は、途切れるまで代襲相続ができます。一方、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合の代襲相続は、兄弟姉妹の子供(被相続人の甥や姪)までに限定されています。

相続税額が2割加算される

被相続人の兄弟姉妹が相続するときは、以下のように相続税が2割加算されるため注意が必要です。

兄弟姉妹の相続税の加算金額 = 各人の税額控除前の相続税額×0.2

例えば、被相続人の兄の税額控除前の相続税額が100万円の場合は、2割加算によって相続税が120万円となります。

遺産相続でよくある兄弟間トラブル

被相続人の介護をしていたり、生前贈与を受けたりしていた兄弟姉妹がいると、法定相続分での遺産分割に合意しないことから、遺産分割協議が進まなくなってしまう場合があります。
ここでは、兄弟姉妹が相続する際によくあるトラブルを紹介します。

被相続人の介護をしていた兄弟姉妹が寄与分を主張する

被相続人の介護をしていた兄弟姉妹がいる場合、「寄与分」を主張することがあります。寄与分とは、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持や増加のために特別な貢献をした相続人が主張することができ、寄与分が認められた場合には自己の相続分にその寄与分を加えた割合が相続分となる制度のことです。
兄弟姉妹の1人が寄与分を主張した場合には話し合いによる解決を行うことになりますが、交渉が難航すると遺産分割調停での協議に移行する場合もあります。

連絡が取れない兄弟姉妹がいる

遺産分割協議には、相続人全員が参加する必要があります。兄弟姉妹間での相続において連絡が取れない兄弟姉妹がいたとしても、その兄弟姉妹を抜きにして遺産分割協議を進めることはできません。連絡が取れない兄弟姉妹がいる場合は、捜索等をする必要が生じ、遺産分割協議が進まなくなることがあります。

生前贈与を受けた兄弟姉妹がいる

生前贈与を受けた兄弟姉妹がいる場合、その生前贈与は、被相続人から生前に受け取った利益であるとして「特別受益」に該当する可能性があります。特別受益に該当する場合、その生前贈与につき相続分の前渡しがあったとして、計算上生前贈与分を持ち戻して相続人各自の相続分を算定することになります。
しかし、生前贈与を受けた人が、特別受益を加味した相続財産の分割に異議無く合意するとは限りません。遺産分割協議で特別受益について合意できなければ、遺産分割調停での協議に移行する場合もあります。

遺言書の相続割合に納得できない人がいる

有効な遺言書が存在し、その遺言書に記載されている相続割合が相続人間で差がある場合、相続割合が少ない兄弟姉妹が不満を感じる可能性が高いです。たとえば、相続人のうち、1人の兄弟姉妹に全財産を相続させる旨、遺言書に記載されていると、財産を受け取れない他の兄弟姉妹とトラブルになる可能性が高まります。

不動産の分割方法で揉める

不動産は、遺産分割でトラブルになりやすい財産といわれています。なぜなら、現金や預貯金と異なり評価額が一様ではなく、また相続人が複数いる場合には単純な分割が難しい場合が多いからです。そして不動産の分割方法には、以下の4つがあります。

現物分割(土地の分筆を含む) 不動産を現物のまま分割し、各相続人が不動産を取得する
換価分割 相続人全員で不動産を売却し、売却代金を分割する
代償分割 相続人の1人が不動産を現物取得する代わりにほかの相続人に各相続分相当額を代償金として支払う
共有分割 不動産を複数の相続人で共同保有する

相続財産の中で不動産が物理的に分割しづらい場合や評価額で合意できない場合は、現物分割が困難となり、換価分割や代償分割を選択することになります。しかし、希望条件で不動産を購入してくれる相手を見つけることが困難な場合や、現物取得をする相続人に代償金を支払えるだけの資金力がないことも少なくありません。そのような状況が続くと、遺産分割協議が進まなくなってしまいます。
また、共有分割を選択すると、不動産を売却するときには共有者全員の同意が必要となるばかりか、使用や管理を巡って問題となることもため、共有する際のリスクを考慮する必要があります。

兄弟姉妹の遺産相続でトラブルを防ぐ方法

兄弟姉妹の遺産相続トラブルを防ぐためには、以下の方法が効果的です。

  • 生前から話し合っておく
  • 遺言書を作成する

それぞれ詳しく解説します。

生前から話し合っておく

兄弟姉妹でスムーズに遺産分割をするには、相続について話し合っておくことが大切です。また介護を分担しておけば相続人間の不公平感が生じにくくなる可能性も期待できます。さらに音信不通の兄弟姉妹がいる場合には事前に捜索することで、相続発生時に慌てることなく対応できることもあります。

遺言書を作成する

有効な遺言書がある場合は、原則として記載内容にしたがって遺産分割を進めることになるため、兄弟姉妹間で相続トラブルに発展するリスクを抑えられます。尚、遺言書を作成する際は、法定相続人各自の遺留分を踏まえておくことが大切です。
遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。公証役場で作成され、その原本が保管される公正証書遺言を選択すれば、書き間違いや紛失等の心配も少なくなります。また、自筆証書遺言については法務局での保管制度も設けられています。

※以上が弁護士監修の記事となります。


遺産相続はトラブルが起きやすい

兄弟姉妹の遺産相続トラブルを防ぐためには、可能な限り早くから準備しておくことが大切です。親族で相続について話し合う場を設けたり、相続資産をあらかじめ分割しやすい財産に置き換えたりして、相続がスムーズに進むようにしておきましょう。

遺産相続に関する4つのトラブル事例についてまとめたコラムもあります。ご参考になりましたら幸いです。

  • 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。掲載されている情報は、予告なく変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
  • 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、資産運用・投資・税制等については、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。弊社では、何ら責任を負うものではありません。
写真:丸山 純平

記載内容の内、法務に関する内容の監修

丸山 純平まるやま じゅんぺい

東京幸せ相続相談センター 理事
丸山弁護士法人 丑和総合法律事務所 代表弁護士

プロフィール
掲載記事

「相続を争続にさせてはならない」
私は、相続案件や事業承継案件に関し、法律面、税務面、感情面からお客様をサポートすることが、相続に携わる弁護士としての使命ではないかと感じています。生前の相続準備は、争続を防ぐ最大のポイントです。法律や税務上の課題をクリアにしつつ、お客様の思いを最大限に活かした相続を実現します。一方で、相続発生後、万が一様々な課題に直面した場合でも、お客様の状況に応じてサポートいたします。私はこれまで多数の相続案件、事業承継案件に携わり、「お客様に安心していただくための解決」という視点から、最適な解決策を提案してきました。これからも自らの知見と経験を基に、相続や事業承継に関する最新情報を踏まえて日々研鑽を重ねつつ、お客様に寄り添ったリーガルサービスを提供してまいります。
一般社団法人 東京都不動産相続センターhttps://fudosan-sozoku.or.jp/

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