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本記事に掲載された情報は、2021/09/24時点のものです。掲載されている情報は、予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
遺産相続でもめる原因は、遺産の額が多いからだと思っていませんか?
実は、家庭裁判所の調停件数のうち、約8割が5,000万円以下の財産の揉めごとだといわれています(データ出典:平成30年度司法統計より)。つまり「遺産争族」は遺産の額が少なくとも誰にでも起こりうる身近なことであり、誰しもが準備をしっかりとしておく必要があるのです。
この記事では、遺産相続でもめる原因とトラブルを回避するための方法について解説します。
1. 遺産相続でもめる原因やパターン
まずは、遺産相続でもめる原因やよくあるパターンを紹介します。
1-1. 遺言書が残されていない
遺言書は、亡くなった方(被相続人といいます)が生前、自らの財産を「誰に」「どの財産を」「どれくらい」引き継がせるかなどを書いた書面をいいます。
そのため、遺言書が残されていない場合、相続人(遺産を受け取る権利を持つ人のことをいいます)は、そもそも相続の対象となる財産がどこにどれくらいあるのかを探すところから始めなければなりません。また、生前に「〇〇はお前に譲るから」などの口約束が交わされていた場合も、遺言書がなければ証明することができないため、遺産分割協議でもめる可能性が高くなるでしょう。
1-2. 相続人の人数が多い
相続人とは、遺産を受け取る権利を持つ人のことをいいます。
遺産を相続人で相談して分けることになった場合は、相続人全員が集まって遺産分割協議を行う必要があります。人数が多ければ多いほど協議がまとまりづらいだけでなく、そもそも全員が集まるのが難しかったり、音信不通の相続人や認知症の相続人がいたりして遺産分割協議がなかなか進まないケースも多くなります。
1-3. 不動産などの分けにくい相続財産がある
遺産のなかに不動産などの分けにくい財産が含まれている場合、遺産相続はもめやすい傾向にあります。なぜなら現金や預貯金は額が一義的に決まることから相続人の人数で1円単位まで均等に分けることもできますが、不動産は評価額が多義的であることから、評価を巡って争いになったり、立地や形状、接道状況などを巡って争いになることがあります。
特に相続財産の中で不動産が実家の土地と建物というケースは多く、例えば相続人の一人が実家に同居しており相続後も居住を望むものの、代償金を支払えないような場合は、相続によって住む家を失う可能性もあるため、もめる原因になるでしょう。
1-4. 遺言書が残されている場合でも揉めることがある
遺言書が残されていない場合にもめることが多いことは先程お話しましたが、遺言書が残されている場合でも、もめることがあります。
遺言書は、作成方法に厳格な法律上の要件があり、その要件を満たしていない場合、最悪の場合、遺言書が無効となり、遺言書が残されていない場合と同様の状況になることがあるのです。
また、遺言書の内容が曖昧であったり、分け方をきちんと書いていないような場合には、その遺言書の内容を前提としつつも話し合いをせざるを得ず、結局遺産分割協議を行うことになるのです。
1-5. 生前贈与が行われていた
生前に特定の相続人に対して生前贈与(特別受益)が行われていた場合も、それ以外の相続人から不平等との主張が出て、もめる原因になります。
この場合、そのような不平等との主張を踏まえて調整するために、生前贈与を受けた相続人の相続分から特別受益分が減額されるなどの処置がとられるのが一般的ですが、生前贈与を受けた相続人が特別受益をすんなり認めるとは限らないため、特別受益をめぐって裁判などの争いに発展する可能性も十分考えられます。
1-6. 兄弟の一人に親の介護を任せていた
親の遺産を兄弟で相続する場合、兄弟の一人に親の介護を任せっきりにしていたというケースもあるかもしれません。この場合、親の介護を一人で負担していた相続人やその配偶者などが、「自分が介護をしてきたのだから、遺産を多くもらいたい」と主張することは十分に考えられます。
民法には「寄与分」という制度があります。寄与分とは、亡くなった人の財産の維持または増加に無償で特別の貢献をした相続人が、遺産分割で特別な処遇を受けられるという制度のことです。
しかし、例えば兄弟の一人が寄与分を主張した場合、ほかの兄弟がそれに対してすんなりと納得するとは限りません。介護をしながら実家に住み、家賃も支払わないばかりか親から金銭的な援助を受けていたというような場合などは特にもめる原因となるでしょう。
1-7. 内縁関係にある配偶者や、想定外の相続人が現れる
被相続人に内縁関係にある配偶者がいる場合や、想定外の相続人が突如現れるといったケースでも、遺産相続でもめる可能性が高くなります。
内縁関係の配偶者は、たとえ何年もの間連れ添った仲だとしても、法定相続人としては認められません。そのため、遺言書などが残されていなければ、いくら主張をしても財産を受け取ることは難しくなるでしょう。
また、遺産相続の手続き開始後に、それまで存在が明らかでなかった前妻との間の子といった想定外の相続人が現れるケースも存在します。この場合、これまでその存在すら知らなかった相手といきなり遺産分割協議をしなければならないわけですから、話し合いが難航するのも致し方ないといえるでしょう。
1-8. 相続税の負担が高額
遺産相続によって取得した財産には相続税が課せられます。
相続税の額は相続人によって変わってくるため、同じ額の財産を平等に分割したつもりでも、相続税の負担額が異なることに対して不平等さを主張する相続人がでてくる可能性があります。
また、特定の相続人に財産が集中しまうと相続税の負担が高額になり、相続税が払えないといったことにもなりかねません。
2. 遺産相続でトラブルを回避するための方法
ここまでは、遺産相続でもめる原因やパターンについて紹介してきました。ご自身が亡くなった後、遺産相続で親族がいがみ合うようなことはできれば避けたいところでしょう。
ここからは、遺産相続でトラブルを回避するために、生前にできる方法をいくつか紹介します。
2-1. 相続の対象となる財産を明確にする
遺産相続でトラブルを起こさないために、まずは相続の対象となる財産を明確にしておきましょう。プラスの資産だけでなくマイナスの資産(負債)もまとめた「財産目録」を作成しておくと、遺産分割協議がスムーズに進むことが多いでしょう。
2-2. 分けにくい財産を分けやすい財産に変える
分けにくい不動産などの財産がある場合は、分けやすい財産に変えておくのもひとつの方法です。例えば、分けにくい不動産は売却して現金化したり、有価証券や不動産小口化商品に変えたりしておくことで、複数の相続人に対して平等な分割がしやすくなります。
ただし、不動産は現金や有価証券よりも相続税評価額が下がる傾向にあるため、売却してしまうことでメリットが得られなくなる点がネックといえます。また、不動産を売却すれば譲渡所得税等を支払う必要も出てきます。
不動産小口化商品であれば、現物不動産と同様に相続税評価額の引き下げ効果を受けられる可能性があるため、不動産を売却して別の財産に変える場合は、現物不動産同様の効果が見込める不動産小口化商品に変えるのがおすすめです。
2-3. 相続人の範囲と相続割合を把握しておく
遺産相続でトラブルを回避するためには、正しい知識を備えておくことも大切です。
例えば、遺言書によって第三者への遺贈を望む場合、法定相続人の範囲や順位、それぞれの相続割合を正しく把握しておけば、法定相続人の遺留分侵害を防げるため、トラブルを上手に避けることができるでしょう。
2-4. 遺言書を作成する
遺産相続で大切な家族や親族がもめることを避けたいと考えるのであれば、遺言書を残すというのもひとつの方法です。
遺言書を書いておけばトラブルを完全になくせるというわけではありませんが、家族や親族にご自身の意志を伝えることができます。
2-5. 生前贈与を活用する
遺産相続でのトラブルを回避する目的で、生前贈与を活用する方も増えています。
生前贈与であれば、贈与する相手や財産、時期を自由に決めることができ、贈与税の基礎控除(年間110万円)や非課税特例を活用することで、将来的に相続人にかかる負担を軽減することも可能です。
2-6. 家族信託を活用する
家族信託とは、財産を保有する人が、本人が元気なうちに、その財産管理を銀行ではなく信頼できる家族に託すという民事信託のことをいいます。
財産を保有する人が、万が一認知症などで判断能力や意思決定力を失ってしまった場合でも、家族信託契約をしておけば、信頼する家族が財産保有者本人の意思を受け継ぎ、その後の財産管理や分配をスムーズに行うことができるため、遺産相続のトラブル回避に役立ちます。
- 【家族信託®︎】は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です
3. 遺産相続でもめたくない!平等に分ける方法はある?
遺産相続でもめる原因やパターンを紹介してきましたが、遺産相続でもめる原因は、主に不平等さにあるといってもよいでしょう。前述のとおり、相続する財産に不動産などの分けにくい財産が含まれる場合は、特にトラブルに発展しやすい傾向にあります。
遺産相続で複数の相続人に対して平等に財産を分ける方法としておすすめなのが、1口単位で複数の相続人に平等に分割することができる不動産小口化商品の活用です。
弊社の不動産小口化商品「Vシェア」は、個人ではなかなか購入することが難しい都心の商業地にある中規模オフィスビルを、1口100万円単位で5口(500万円)から購入いただける商品です。「Vシェア」は現物不動産と同様、相続税の評価額を引き下げられる場合があります。
1口単位で複数の相続人に分けて相続することができ、相続税の負担を考慮しながら、次世代に資産を引き継ぐことが可能なため、相続へのお取り組みとして広くご活用いただいております。
「Vシェア」についてより詳しくご覧になりたい方は、下記ページをご参照ください。
4. 最後に
今回は、遺産相続でもめる原因やトラブルを回避する方法について紹介してきました。
遺産相続で大切な家族や親族がもめることや、トラブルによって争いに発展することを避けるためには、できるだけ早めのお取り組みを行うことをおすすめします。
相続のタイミングはいつやってくるか分かりません。今回紹介した方法もぜひ参考にしていただき、相続人となる家族や親族に負担をかけないようしっかりと準備をしておきましょう。
- 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。掲載されている情報は、予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
- 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、資産運用・投資・税制等について期待した効果が得られるかについては、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。弊社では、何ら責任を負うものではありません。
「相続を争続にさせてはならない」
私は、相続案件や事業承継案件に関し、法律面、税務面、感情面からお客様をサポートすることが、相続に携わる弁護士としての使命ではないかと感じています。生前の相続準備は、争続を防ぐ最大のポイントです。法律や税務上の課題をクリアにしつつ、お客様の思いを最大限に活かした相続を実現します。一方で、相続発生後、万が一様々な課題に直面した場合でも、お客様の状況に応じてサポートいたします。私はこれまで多数の相続案件、事業承継案件に携わり、「お客様に安心していただくための解決」という視点から、最適な解決策を提案してきました。これからも自らの知見と経験を基に、相続や事業承継に関する最新情報を踏まえて日々研鑽を重ねつつ、お客様に寄り添ったリーガルサービスを提供してまいります。
一般社団法人 東京都不動産相続センター(https://fudosan-sozoku.or.jp/)
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