目次
「不動産特定共同事業法」(通称「不特法」)という法律を耳にしたことはありますか?
株式や投資信託などの金融商品と並んで根強い人気を持つ投資対象のひとつが「不動産」です。
不動産投資とは、不動産を保有することで賃貸収入などの収益を得る、保有する不動産が値上がりしたタイミングで売却し利益を得る、ということを目的とした投資手法です。プロの投資家から、経営者、会社員、そして「これから投資を始めてみたい」という投資初心者にも人気の高い不動産投資ですが、現物の収益用不動産の購入には、数千万円から数億円といった多額の資金が必要です。
そこで1980年代に、高額な不動産を分割して小口化し、複数の投資家の共同事業として収益を分配する不動産小口化商品を使った事業が生まれましたが、バブル崩壊を経て、投資家保護と事業の健全な発展を目的に制定されたのが「不動産特定共同事業法(不特法)」です。そして、この不特法に基づき運営される事業を「不動産特定共同事業」といいます。
今回はこの不特法の仕組みやこれまで実施された法改正などについて解説していきたいと思います。
1. 不動産特定共同事業法の基礎知識
これから投資を始めたい、不動産投資に興味がある、という方は「不動産特定共同事業法」について理解を深めておくことをおすすめします。まずは「不特法」の基礎知識から解説していきましょう。
1-1. 不動産特定共同事業法とは?
「不動産特定共同事業法」とは、「不動産特定共同事業」の健全な発展と、投資家の保護を目的として、1995年4月に施行された法律です。
この法律により「不動産特定共同事業」を運営するには、国土交通大臣などの許可が必要になりました。
不動産特定共同事業とは、事業者が、複数の投資家から出資を受けるなどをして集めた資金で収益不動産を取得・運用し、そこから生まれた収益を投資家に分配する事業のことをいいます。
この不動産特定共同事業の運営ルールを定めた不特法は、1995年の施行以降、不動産特定共同事業のさらなる発展と普及を目指し、2013年、2017年、2019年に一部法改正が行われています。
1-2. 施行の背景と法律の目的
不動産特定共同事業法(不特法)が施行された目的は、不動産特定共同事業の適正な運営と不動産投資家の利益の保護を図ることにあります。
不特法が施行される以前の1980年代に不動産小口化商品の販売が急増しましたが、1991年のバブル崩壊により経営基盤の脆弱な事業者の倒産が相次ぎ、投資家が甚大な損失を被ってしまうというケースが増加し、法規制の必要性が高まりました。そのために、投資家を保護するために作られた法律が「不動産特定共同事業法(不特法)」です。
不特法により、不動産特定事業を運営するためには国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要となる許可制度が設けられ、健全な事業運営ができると認められた事業主だけが不動産特定共同事業を運営できるようになりました。
【参考】不動産共同事業者(許可制)
第1号事業者 | 不動産特定共同事業契約を締結し、契約に基づいて運営される不動産取引から得られる利益等の分配を行う事業者 |
---|---|
第2号事業者 | 不動産特定共同事業契約締結の代理もしくは媒介をする事業者 |
第3号事業者 | 特例事業者の委託を受け、不動産特定共同事業契約に基づいて運営される不動産取引に係る業務を行う事業者 |
第4号事業者 | 特例事業者が当事者となる不動産特定共同事業契約締結の代理・媒介をする事業者 |
【参考】不動産特定共同事業法の許可を受けるための主な要件
① 資本金(出資額)が各事業者に必要な金額を満たしていること
- 第1号事業者:1億円
- 第2号事業者:1,000万円
- 第3号事業者:5,000万円
- 第4号事業者:1,000万円
② 宅地建物取引業者免許を受けていること
③ 不動産特定共同事業を営むための必要な財産的基礎があり、かつ適切に事業を遂行できる人的構成があること
④ 不動産特定共同事業契約約款の内容が基準を満たすものであること
⑤ 事務所ごとに「業務管理者」を配置していること
- 業務管理者とは宅地建物取引主任者であり、次のいずれかに該当する人のことです。
- 不動産特定共同事業の業務において3年以上の実務経験を有する者
- 公認 不動産コンサルティングマスター
- ビル経営管理士
- 不動産証券化協会認定(ARES)マスター
2. 不動産特定共同事業法改正のポイント
不動産特定共同事業法に設けられたさまざまな要件や規制によって、これまで不動産特定共同事業に参入できる事業者は限られていました。しかし、参入事業者の要件緩和などによって個人投資家がより参入しやすい環境を整えるため、2013年、2017年、2019年の3回に渡り、不動産特定共同事業の一部法改正が行われました。それぞれの法改正のポイントをご紹介します。
2-1. 2013年の不特法改正ポイント
2013年の改正により、特別目的会社(SPC)を活用した倒産隔離型の事業を可能とする「特例事業」の制度が導入されました。これにより、特例事業は例外的に不動産特定共同事業の許可を得なくても、一定事項の届け出のみで不動産特定共同事業の運営ができるようになりました。
しかし、税制面や制度面での課題は依然として残っていたため、2013年の改正では、実際に特例事業の普及促進には至りませんでした。そこで、2017年、2019年にさらなる改正が行われました。
2-2. 2017年の不特法改正ポイント
2017年の改正では、特例事業の制度面の課題解決を目的とした規制緩和が行われました。
これまで限定されていた特例事業者の範囲が拡大され、中小企業でも特例事業者として参入できるようになり、さらにクラウドファンディングを可能とする環境整備が行われたことで、不動産特定共同事業の活性化がより一層促されました。
2-3. 2019年の不特法改正ポイント
2019年には、不動産特定共同事業と同法に基づく不動産クラウドファンディングにおいて、より一層の活性化を目的とした改正が行われました。
電子取引業務ガイドラインの策定、不動産特定共同事業法施行規則の改正によって、長期・安定型で投資家保護が適切に図られた不動産クラウドファンディング商品組成の促進や、個人投資家の不動産特定共同事業参加を促進しています。
これらの改正で、不動産特定共同事業の適正な取引環境の整備が行われたことから、不動産特定共同事業への投資環境は、より一層活性化されたといえます。
特に2017年の改正と2019年の改正は、中小の事業者や個人投資家にとってのメリットが大きかったことから、今後、さらなる市場の活性化が期待されます。
そこで、2017年と2019年の改正について、もう少し詳細をご説明していきましょう。
3. 不動産特定共同事業法に関する2017年の改正内容
2017年に改正された法律のポイントについて解説していきます。
3-1. 不動産特定共同事業の活用の一層促進
① 小規模不動産特定共同事業の創設
これまでの不動産特定共同事業には許可制度が設けられており、一部の事業主にしか運営することのできない事業になっていました。その改善策として2017年の改正で創設されたのが「小規模不動産特定共同事業」です。小規模不動産特定共同事業が創設されたことにより、資本金や出資金などの要件が緩和され、許可制度ではなく登録更新制度(5年)に変更となり、地方の中小規模の事業者が参入できるようになりました。
② クラウドファンディングに対応した環境整備
近年、様々な分野において資金調達の新しい手法として注目されるクラウドファンディングに適応するために、2017年の改正ではクラウドファンディングに対応した環境整備が盛り込まれました。主たるものとしては、次のとおりです。
- インターネットを通じて資金を集める仕組みを扱う事業者について、必要な業務管理体制に関する規定を整備
- 投資家に交付する契約締結前の書面など、インターネット上での手続きに関する規定を整備
3-2. 良質な不動産ストックの形成を推進するための規制の見直し
① プロ投資家向け事業の規制の見直し
2017年の改正では、プロ投資家向け事業における約款規制の廃止、機関投資家などのスーパープロ投資家のみを事業参加者とする場合の特例等の創設(適格特例投資家事業の創設)が行われました。さらなる成長が見込まれる分野において良質な不動産ストックを形成し、都市の力の向上を図ることが目的となっています。
② 特別目的会社(SPC)を活用した事業における事業参加者範囲の拡大
さらに、特別目的会社(SPC)を活用した特例事業における事業参加者の範囲が拡大され、一般投資家が参加しやすくなりました。
4. 不動産特定共同事業法に関する2019年の改正内容
2019年の改正では、不動産クラウドファンディングの活性促進を目的として、不動産特定共同事業に関する5つの施策が盛り込まれました。
- 「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」の策定
- 不動産特定共同事業法施行規則の改正
- 不動産特定共同事業への新設法人の参入要件の明確化
- 不動産流通税の特例措置の延長・拡充
- 特例事業者の宅建保証協会への加入を認める
どの施策も事業者にとってのメリットが高く、不動産クラウドファンディングにおける今後ますますの発展が期待されます。これらの改正が市場に与える影響としては、次のようなものが考えられます。
4-1. ホームページ等での取引に対し、適正な運営の確保と投資家の利益の保護を強化
不特法の電子取引業務ガイドライン策定により、ホームページ等で電子取引業務を行う不動産特定共同事業者に対して守るべきルールが明確化されました。
顧客情報の漏洩や顧客財産の流出等を防止するための体制整備、事業計画の内容、資金使途その他に関する適切な審査の実施、クーリングオフ制度など、投資家を保護するために事業者が順守すべきことが明確に定められています。
4-2. 長期・安定的で投資家保護が適切に図られた投資商品の提供を促進
2019年に行われた不動産特定共同事業法施行規則の改正によって、対象不動産変更型契約における不動産売却後の金銭の運用が柔軟化されました。これにより、資産の入れ替えを行いながら長期・安定的な運用を可能とする対象不動産変更型契約と、個人が投資しやすいクラウドファンディングを組み合わせることで、個人の資産形成を促進し、投資家保護が適切に図られた投資商品の組成が期待されています。
この取り組みにより、今後、これまでにない新しい投資商品の提供・充実が予想されます。
4-3. 不動産特定共同事業への参入活発化よる不特法に基づく新商品開発の可能性
これまで、不動産特定共同事業の許可を得るためには、「直前3期分の計算書類の提出」が必須となっていたため、設立後3年未満の法人にとっては許可がおりにくいという実態がありました。しかし、2019年の改正で、新設法人であっても不特事業の許可を得ることができる例が明確化されたことから、新設法人を活用した早期事業化も可能となりました。また、登録免許税・不動産取得税の軽減措置が2年間延長や、一定の要件を満たす特例事業者の加入を認めるなどの措置により、不動産特定共同事業への参入事業者は今後さらに増加し、活発化することが予想されます。
これにより、今後より多くの投資商品や、これまでにない新しい投資商品の提供が開始されることが予想されます。
以上が、不動産特定共同事業法の基礎知識と2017年と2019年の改正の概要です。
聞きなれない言葉や難しい表現も多いと思いますが、投資家であるご自身を守るためにも不動産投資を始める前には、法律(ルール)や仕組みを理解しておきましょう。
出典:【報道発表資料】不動産クラウドファンディング 規制の明確化等により使いやすく ~不動産クラウドファンディングに係るガイドラインの策定等~ - 国土交通省
5. 不動産特定共同事業法に則った小口化商品「Vシェア」
ここまで不動産特定共同事業法の大前提となる基礎知識を解説してきました。それでは具体的に不動産特定共同事業に則った弊社の小口化商品を例にご紹介していきます。
5-1. 「Vシェア」とは
弊社の「Vシェア」とは、個人ではなかなか購入することが難しい都心エリアの商業地にある優良オフィスビルを弊社が小口化し、1口100万円単位・5口以上(最低口数は変更となる場合があります)から不動産の小口購入ができるように設計された商品です。資産運用として多くの方にご利用いただいていることはもちろん、1口単位で保有者を調整することができるため、生前相続(生前贈与)や相続へのお取り組みとしてもご活用いただける特徴を持っています。
≫ ボルテックスが考える資産運用支援とは ≫ ボルテックスが考える相続支援とは5-2. 不動産特定共同事業法に準拠した投資対象をお探しなら
投資の歴史を見てみますと、投資をすすめる者と投資家との間にある情報格差を巧みに操り、投資家の不利益となってしまうような事例が多数存在していたことは事実です。しかし一方で、不動産特定共同事業法の施行を筆頭に、投資家の保護を第一の目的としながら投資事業・投資産業の健全な発展が実現していることも事実なのです。
不動産特定共同事業法に準拠し、事業者として監督官庁からの許可も得ている弊社の「Vシェア」も、当然のことながらお客様にメリットを得ていただきたく開発された商品です。不動産特定共同事業について、「Vシェア」についてさらに詳細を知りたいという方は、弊社までお気軽にお問い合わせください。
- 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。掲載されている情報は、予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
- 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、資産運用・投資・税制等について期待した効果が得られるかについては、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。弊社では、何ら責任を負うものではありません。
不動産小口化商品「Vシェア」の商品詳細、収益シミュレーション、
物件に関する資料をお送りいたします。
保有資格:ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、終活アドバイザー(終活アドバイザー協会) 他
1961年東京都出身。早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。長年、顧客の相続や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。
FPオフィス ノーサイド(https://fp-noside.jimdo.com/)
不動産投資の記事一覧に戻る