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国税庁の発表による相続税の税務申告によると、相続財産の金額のうち不動産が占める割合は4割となっています。相続財産の多くを占める不動産が原因でトラブルになってしまう方も少なくありません。今回は、不動産相続時のトラブル事例から、トラブルが起こってしまった後の解決策にはどういった方法があるのか、そして、トラブルを回避するためにあらかじめ押さえておきたいポイントについて解説していきます。
1. 不動産相続時のトラブル事例
1-1. 不動産を相続人たちで共有
一番多いトラブルが、相続人間で不動産を共有したことによるトラブルです。
不動産を売却したり、人に貸したりするとき、不動産を単独で保有していれば、1人の意思で売却・賃貸が可能です。しかし、共有の場合には持分の割合に応じて、できることが制限されています。
例えば、兄弟3人(A・B・C)で相続したとき、相続した不動産を誰も住まないので、人に貸したいというときには、持分割合の過半数の同意が必要なため、AとBが同意をしていれば、Cが反対していても、賃貸することができます。
一方で、不動産を売却したいというときには、共有者全員の同意が必要なため、1人でも反対すれば売却できなくなってしまいます。全員での売却ができない結果、共有者の1人が自分の共有持分だけを売却してしまうということもありえます。そうすると、ほかの相続人は、まったく知らない第三者と共有状態になるというトラブルも少なくありません。
また、共有者が亡くなってしまった場合には、共有持分が相続されますので、共有者がさらに増えてしまい、権利関係が複雑になることもあります。
共有者が持分割合で分割できればよいのですが、不動産を分割することは難しく、安易に共有にしてしまったがゆえに発生するトラブルが多くみられます。
1-2. 相続人たちに平等になるように買った不動産の価値が下がってしまった
不動産を分割することは難しいため、相続人たちに平等に分けられるように不動産をいくつも購入するというケースです。不動産を共有状態にならないように、不動産を分けやすくするという点ではよいのですが、立地や土地の形状、構造や築年数などによって、不動産の価値が下がってしまうこともあります。
万全に準備をしたと思っていても、相続が発生したときには、不動産の価値が下がってしまい、結果的に相続人間で不平等が生まれてしまうこともあるのです。
1-3. 空き家の実家を引き継いだ・売れない山林を相続した
トラブルとは少し外れるかもしれませんが、空き家の実家を引き継いだり、使っていない山林を相続してしまい、売却したくても買い手が見つからないということがあります。
空き家の管理をする手間や費用がかかったり、いらない山林の固定資産税を負担しなければならなかったりするため、放棄をしたいと考える方もいらっしゃいます。しかし、いらない不動産だけを放棄することはできず、相続放棄をする場合にはすべての相続財産を放棄しなければなりません。
1-4. 先代からの相続登記がされていなかった
親から不動産を引き継ぎ、いざ相続登記をしようとした段階で不動産の登記簿謄本を確認したら、祖父のままだったというケースがあります。
この場合、まずは祖父の相続登記をしたうえで、親の相続登記をすることになりますが、祖父の相続に関して、祖父の相続人、つまり親の兄弟と協力して相続登記をすることが必要です。近年では、親族との交流が疎遠になっていることも多く、まず親の兄弟の連絡先がわからない、連絡先を知っていても協力を得られなかったり、親の兄弟も亡くなっていたりということが少なくありません。
すぐに相続登記ができないうえに、相続人が増えて話がまとまらないことありますし、ご自身で手続きするのは難易度が高くなるため弁護士や司法書士への専門家費用も発生し、時間と手間と費用もかかってしまいます。
2. 事後解決策
2-1. 遺産分割
相続人全員で話し合いが可能であれば、遺産分割協議を行い、相続財産のうち誰が何を引き継ぐのかを決めていきます。前述したとおり、安易に共有状態にすることはせず、なるべく単独で不動産を相続するように協議するのが望ましいでしょう。
遺産分割協議が整った際には、もちろん口約束ではなく、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印で押印をしたうえで、書面として残しておかなければなりません。
2-2. 遺産分割(代償分割)
遺産分割協議で誰か1人が不動産を引き継ぐことに相続人間で異論がなければよいですが、不動産の金額が高い場合には、不動産を相続しない相続人からしてみれば、本来もらえるはずの相続額をもらえなくなる可能性があります。
たとえば、長男は不動産、次男は預貯金と有価証券を相続するというように、不動産以外の相続財産があり、うまく分けられる場合には、あまりトラブルにはなりません。
問題は、相続財産の大半を不動産が占めているケースです。長男が相続する不動産に住んでいるというようなときには、長男が不動産すべてを相続する代わりに、次男が相続するはずであった相続分相当額を、金銭で賠償するという方法があります。
2-3. 遺産分割(換価分割)
代償分割ができるほどに長男がお金を持っていればよいですが、長男が賠償できないときや、不動産が多く現物分割をすることが難しいとき、納税資金が足りていないときには、不動産を売却して、その売却代金を相続人間で分配していきます。これを換価分割といいます。
相続人全員が売却の手続きをするケースもあれば、代表相続人へ名義を寄せて、不動産の売却後に売却代金を相続人で分配するケースもあります。
なお、換価分割や代償分割をする場合には、遺産分割協議書の中で、換価分割や代償分割として財産を分ける旨を記載しておかなければ、贈与とみられ、贈与税を課される可能性がありますので、注意しておきましょう。
2-4. 売れない土地は寄付を検討する
売れない土地については、市町村などの自治体に寄付することもできます。ただし、自治体ごとの要件がありますので、その要件を満たしていることが必要です。あまり利用価値がない土地であっても、固定資産税は自治体にとって大事な財源ですので、すべての土地の寄付を受け付けてくれるわけではありません。まずは、担当窓口で相談をしてみましょう。
3. トラブルを回避するために押さえておきたいポイント
3-1. 不動産の共有を避けるため、遺言書を残しているか
これまでに記載したとおり、不動産の共有状態は、相続人間でトラブルになる火種となります。共有にならないように、遺言書を作成して、不動産は誰に取得させるのか明記しておきましょう。また、相続人間で不平等がでてしまうのを懸念する場合には、代償分割できるように、生命保険を利用して代償金を支払う相続人に金銭が渡るようにすることや、預貯金などを計画的に残すことも必要です。
3-2. 相続財産を分割しやすいか
不動産ばかりを保有していると分割しづらく、トラブルに繋がってしまうことも多くあります。しかし、現金や預貯金で残すよりも、不動産で残した方が相続へのお取り組みとして有効とされているのが事実です。
不動産を残すにしても、相続した後に分割しやすいかという視点で、例えば自宅を売却してマンションに住み替え、資産の組み換えをするということもトラブル回避の方法のひとつです。
3-3. 相続へのお取り組みもこまめな見直しを
遺言書を残す・不動産を購入するなど、相続へのお取り組みをしたけれども、中には準備をしたらそのままにしてしまう方がいます。
年月が経てば資産は変動します。新しく資産が増えたときや家族のライフステージが変わったときはもちろんですが、3年に1度は問題がないかこまめに見直しをすることも大切です。
記事執筆:中島 美樹(司法書士)
弊社の不動産小口化商品「Vシェア」は、個人単位ではなかなか購入することが難しい都心の商業地にある中規模オフィスビルを、共有持分として500万円(1口100万円単位・5口以上)から購入いただける商品です。J-REITのような有価証券と異なり、現物不動産とほぼ同様の扱いで資産保有することが可能です。1口単位で複数の子や孫へ贈与することもできるため、生前贈与としてもご活用いただけます。
また、「Vシェア」は現物不動産と同様、相続税の評価額を引き下げることができる可能性があるため、相続へのお取り組みとしても多くご活用いただいています。ぜひご検討ください。
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東京司法書士会所属。司法書士試験合格後、司法書士試験の受験指導の講師を経験。都内司法書士法人で登記業務に従事し、その後独立開業。
年間100件近くの相談実績から、まずは現状を把握していただいたうえで、提案をオーダーメイドしてまいります。人生に何度もあるわけではない相続という経験を、心穏やかに過ごしていただくため、争いを防ぐ財産の分配方法を提案することはもちろん、なぜそのように財産を分配したのか想いの部分を大切にし、相続に心を込めた想いが続く想続を目指し、お客様のサポートをさせていただきます。
一般社団法人 東京都不動産相続センター(https://fudosan-sozoku.or.jp/)
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