事業承継や事業継続、不動産事業、オフィス購入なら、
区分所有オフィスの【ボルテックス】

記事を月で絞り込む

連載
専門家5人が語る「争続」の種と解決方法:第2回

弁護士が解説 - 遺産分割協議とは?不動産の遺産分割協議で注意すべき点

相続 不動産を活用した相続

不動産を活用した相続
写真:丸山 純平

記事執筆

丸山 純平

東京幸せ相続相談センター 理事
丸山弁護士法人 丑和総合法律事務所 代表弁護士

目次

相続で揉めないためのお取り組みについて解説する連載『専門家5人が語る「争続」の種と解決方法』。連載第2回の本記事では、弁護士の丸山 純平氏に、不動産の遺産分割協議で注意すべきポイントについて解説いただきます。

1. 遺産分割協議とは

ある方が亡くなられると、その方が持っている自宅(不動産)や預貯金、株式、借地権などの権利、借入金などの負債等(以上を「遺産」といいます)は、ほかの方へ引き継ぐ必要が出てきます。
なぜならば、これらの財産や負債の遺産は、亡くなられた方の「名義」になっており、名義を変えない限り、ほかの方は売ったり、活用したり、使ったり、返したりすることができないからです。
この名義を変える手続のことを「相続手続」といいます。そして亡くなられた方を「被相続人」、相続を受ける方のことを「相続人」といいます。ひとつの相続で被相続人は一人ですが、相続人は一人とは限りません。

相続は「死亡によって開始する」と民法で規定されていることから、被相続人が他界したことで、相続人が遺産を相続することになります。
そしてその遺産を「だれに」「どれを」「どのくらい」「どのようにして」分けるかについて話し合うことを「遺産分割協議」といいます。この遺産分割協議について、民法上も、共同相続人は、原則として協議により遺産の全部または一部を分割することができると規定しています。

2. 遺産分割協議が必要になるケース

まず有効な遺言書がある場合には、原則、遺産分割協議は不要です(但し、その場合でも遺産分割協議が必要になるケースについては後述します)。そのため、有効な遺言書が無い場合に遺産分割協議が必要になります。尚、有効な遺言書がある場合でも、相続人間で合意すれば遺産分割協議が可能となります。
そして遺産分割協議とは、被相続人の遺産の分け方を「話し合う」ことをいいますので、まずこの遺産分割協議が必要となるのは、相続人が複数名いる場合となります。
相続人が一人の場合は、その方が遺産をすべて引き継ぐため、話し合う余地がないからです(もっとも、遺言書があり、相続人以外の方で遺産を受ける人(受遺者といいます)がいる場合は遺産分割協議が必要となることもあります)。

ところで「遺言書」がある場合、被相続人が遺言書に、遺産の分け方を書いていれば、その書き方が有効である限りにおいて、遺産を相続人や受遺者に渡すことができます。もっとも、遺言書がある場合でも、相続人が最低限もらうことのできる割合(遺留分といいます)に満たない場合は、別途、遺留分侵害額請求の問題が出てきてしまい、結局遺産の分割についても話し合いに至る場合があるほか、遺言書で相続割合のみ記載する場合や、そもそも遺言書の方式が民法上の要件を満たしていない場合などは、やはり遺産分割協議が必要となります。

3. 遺産分割協議で注意すべき点

遺産分割協議の進め方や分割の方法について、民法上に特段の定めはありません。
遺産分割について規定しているのは、先ほどお話しした、原則として【協議により遺産の全部または一部を分割することができる】ということと、【分割にあたっては遺産に属する物または権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮する】という抽象的な分け方の記載があるくらいで、遺産分割協議の進め方や分割方法についての規定はないのです。

そのため、まずは相続人間で話し合い、進め方や分割方法について決めていかなければならないのです。もっとも、分割の方法については、基準となるべき相続割合があります。それを「法定相続分」といいます。この法定相続分は当たり前のことですが、相続人となる方のみに認められています。

3-1. 法定相続分で話し合いがまとまらない場合

法定相続分に基づいて話し合いがまとまればよいのですが、法定相続分を上回る相続を主張する人がいたり、特定の遺産を巡って対立したり、生前贈与をはじめとした特別受益や寄与分を主張する人がいたりする場合などでは、なかなか話し合いがまとまらないこともあります。

話し合いがまとまらない場合は、弁護士を入れた話し合いを行い、それでもまとまらなければ裁判所の手続を利用することになります。
遺産分割に関する裁判は「調停手続」と「審判手続」とがあります。そして多くの場合は、まず調停手続を利用します。

調停では、民間人で構成される調停委員を中心に、間に第三者を入れた話し合いを行います。あくまで話し合いですので、相続人が互いに協議し、譲り合うなどして遺産の分割方法を決めていき、最終的には調停条項にまとめて合意に至ります。仮に調停で解決しない場合には、審判手続に移行します。
審判では裁判官が主体となり、相続人の主張やこれまでの経緯を踏まえて事情を調べた上で、法定相続分を軸に、遺産分割の内容を裁判官が決定(審判)します。この審判に不服がある場合は、高等裁判所へ即時抗告という手続を行い、高等裁判所で審査を行います。そしてこの高等裁判所の判断にも不服がある場合や、法令の解釈に違反がある場合には、最高裁判所へ許可抗告の手続を行います。なお、最高裁まで争った場合は、この最高裁の判断で確定となります。
この調停や審判の期間は、内容の複雑さや当事者間の対立の程度などによって変わることから一概にはいえません。ただ、揉めている場合には長期化する可能性が高くなります。

3-2. 借金など分割できるマイナスの財産でも勝手に分割できない

相続ではプラスの財産だけではなく、マイナスの財産(負債といいます)も引き継ぐことになります。そして負債の中でも、借金などは分割可能(=何人かで返済することも可能な場合があります)ですが、相続においては「法律上当然に」分割されます。
すなわち、その借金などについて、「誰が」「どのくらいの割合で」相続するかという点は、遺産分割の対象とはならず、相続人各自の「法定相続分」に応じて当然に分割されます。借金などの貸主(債権者といいます)にしてみれば、例えば、資力のない相続人が負債をすべて相続されてしまうと、著しく不利益を被ることになるからです。
もっとも、相続人全員と債権者で合意に至れば、負債も遺産分割の対象として、相続する人や割合を協議することは可能です。

3-3. 遺産分割協議に期限はあるのか

遺産分割協議に期限はありません。ただし、遺産分割がまとまらないと、相続財産の預貯金の引き下ろしや、不動産の売買などができないため注意が必要です。また、遺産分割がまとまらないまま特定の相続人が長期に遺産を占有し続ける場合には、法律上取得時効が成立してしまうなどの点にも気を付けなければなりません。
一方で、相続放棄や遺留分侵害額請求権、相続回復請求権等には期限がありますので、詳しくは専門家にお尋ねください。

4. なぜ不動産の遺産分割協議は揉めやすいのか

このように、遺産分割について話し合いがまとまらない場合には、弁護士を入れた話し合いを行ったり、裁判所の手続を利用することになります。
そして遺産分割協議の中でも、遺産に不動産が含まれる場合、争いになりやすいのです。

前述のとおり、遺産分割協議では、相続人各自の法定相続分を軸にした話し合いが行われます。例えば、被相続人が母親(父親はすでに他界しているものとします)で、相続人が長男と次男の2人、遺産は母親の自宅(土地建物)がほとんどで、母親の生前から現在に至るまで長男家族がその自宅で母親と同居したケースでみてみましょう。

長男は、当然にその自宅を相続し、住み続けることを希望するでしょう。しかし、遺産は自宅以外に多少の預貯金しかなく、長男の手持ち資金も余りない場合は、その自宅について、長男2分の1、次男2分の1の割合で共有せざるを得ません。しかし、共有になると、管理や負担、活用などに際してその都度長男と次男で話し合わなければならないほか、地代や賃料、賃貸借期間の設定で揉めることも予想されます。
仮に自宅以外にも、多くの預貯金が遺産としてある場合や、長男自身に手持ち資金があったとしても、預貯金や有価証券は評価額が一律に決まるのに対して、自宅である不動産は時価や公示地価、路線価、固定資産税評価額など、評価が分かれるため(「一物四価」などといわれます)、その評価額をめぐって対立することがあります。

このような理由から、不動産に関する遺産分割協議は揉めやすいのです。揉めずに話し合いがまとまればよいのですが、万が一揉めてしまったり、揉めそうな場合には、弁護士をはじめとした専門家へ相談することをおすすめします。

記事執筆:丸山 純平(弁護士)

≫ 相続・生前贈与でお悩みの方はこちら

≫ ボルテックスが考える相続支援とは


弊社の不動産小口化商品「Vシェア」は、個人単位ではなかなか購入することが難しい都心の商業地にある中規模オフィスビルを、共有持分として500万円(1口100万円単位・5口以上)から購入いただける商品です。J-REITのような有価証券と異なり、現物不動産とほぼ同様の扱いで資産保有することが可能です。1口単位で複数の子や孫へ贈与することもできるため、非課税限度額内での生前贈与としてもご活用いただけます。

また、「Vシェア」は現物不動産と同様、相続税の評価額を引き下げられる可能性があります。そのため相続へのお取り組みとして多くご活用いただいています。ぜひご検討ください。

連載コラム

LINEバナー
  • 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。掲載されている情報は、予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
  • 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、資産運用・投資・税制等について期待した効果が得られるかについては、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。弊社では、何ら責任を負うものではありません。
  • 期待どおりの税務上の効果が得られない可能性があります。
  • 評価額は物件により異なります。
  • 税制改正、その他税務的取り扱いの変更により効果が変動する場合があります。
  • 相続税の圧縮効果を含めた税務の取り扱いについては、個別具体的な事情に応じて適用が異なる可能性がありますので、税理士等の専門家にご相談ください。
写真:丸山 純平

記事執筆

丸山 純平まるやま じゅんぺい

東京幸せ相続相談センター 理事
丸山弁護士法人 丑和総合法律事務所 代表弁護士

プロフィール
掲載記事

「相続を争続にさせてはならない」
私は、相続案件や事業承継案件に関し、法律面、税務面、感情面からお客様をサポートすることが、相続に携わる弁護士としての使命ではないかと感じています。生前の相続準備は、争続を防ぐ最大のポイントです。法律や税務上の課題をクリアにしつつ、お客様の思いを最大限に活かした相続準備を実現します。一方で、相続発生後、万が一様々な課題に直面した場合でも、お客様の状況に応じてサポートいたします。私はこれまで多数の相続案件、事業承継案件に携わり、「お客様に安心していただくための解決」という視点から、最適な解決策を提案してきました。これからも自らの知見と経験を基に、相続や事業承継に関する最新情報を踏まえて日々研鑽を重ねつつ、お客様に寄り添ったリーガルサービスを提供してまいります。
一般社団法人 東京都不動産相続センターhttps://fudosan-sozoku.or.jp/

連載
専門家5人が語る「争続」の種と解決方法:第2回
弁護士が解説 - 遺産分割協議とは?不動産の遺産分割協議で注意すべき点
掲載記事一覧

相続の記事一覧に戻る