目次
本記事に掲載された情報は、2020/06/03時点のものです。掲載されている情報は、予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
今回は相続と生前贈与にどのような違いがあるのか、生前贈与のメリットや手続きについても解説していきたいと思います。
1. 相続に関しては生前に考えておくべき!法定相続分・遺留分とは?
まずは、財産所有者(被相続人)の死後、民法に従って財産を相続する「法定相続」について説明していきましょう。
1-1. 法定相続分・遺留分とは
生前贈与しない場合、被相続人がお亡くなりになった時点で遺産分割が始まります。被相続人が遺言を残し、遺産分割の仕方を決めている場合は、 基本的にその遺言に書かれた内容に従って遺産分割を行います 。しかし、遺言による遺産分割をする際に注意しなければならない点は「遺留分」です。遺留分とは、被相続人の配偶者、子供、親など、相続人の権利を最低限保護することを目的に定められた制度のことで、これによって相続人は、被相続人の遺産のうち一定割合を必ず相続することができます。
例えば、父親が亡くなり、法定相続により母親、子供で遺産分割しようとしたところ、父親の遺言により「親族でない第三者にすべての財産を相続する」と記載されていたというようなケースです。この場合、遺言の内容よりも配偶者、子供の遺留分の方が優先されることが民法に定められています。被相続人の遺言がない場合は、民法に定められた遺産分割の基準である「法定相続分」を目安に、相続人同士が協議して決めることになります。
1-2. 法定相続の懸念点・デメリットは?相続税や相続争い
生前贈与をしなかった場合や遺言による死後の遺産分割の仕方を決めていない場合、被相続人が亡くなると法定相続を目安に遺産分割が始まります。法定相続は民法に定められた遺産分割の方法ではありますが、相続人にとって懸念点やデメリットが発生する可能性があります。
第一の懸念点は、相続により取得した財産には相続税がかかるという点です。相続した財産の総額が多ければ多いほど相続税率は比例して上がっていきます。具体的には、法定相続分に応じる取得金額が1,000万円以下の財産を相続した場合の相続税率は10%、3,000万円以下の財産を相続した場合の相続税率は15%、5,000万円以下の財産を相続した場合の相続税率は20%…という形で財産の総額によって相続税率は上がり、6億円以下の財産で50%、6億円を超える場合は55%の相続税がかかってくるのです。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
続いて第二の懸念点は、相続人の間で遺産分割についての争いが起きてしまう可能性があるという点です。「私の方が父親(被相続人)の介護をしていたから多くもらう権利がある」「自分は長男だから相続する財産総額の2分の1を受け取りたい」などと、相続人同士が主張し合い争いとなり、家庭裁判所に持ち込むようなケースにまで発展してしまうことも少なくありません。
1-3. 相続に関しては生前に考えておくべき!生前にできることは?
相続に関しては、その財産の総額が多ければ多いほど、生前にある程度考えておく方がよいでしょう。まずは被相続人を含め、ご家族で相続の方法について話し合いの場を持つことです。具体的には、配偶者、子供などの親族へ財産を残す割合、また相続によって取得する財産にどの程度の相続税が課せられるのか、また取得した財産の使い方などについてです。そして、ふたつ目に考えておくべきことが「生前贈与」についてです。生前贈与をすることのメリットについて、次項で解説していきます。
2. 生前に贈与することのメリット
「生前に贈与する」とは、生きているうちに自分の財産を贈与することです。生前贈与は法律で認められた行為です。
2-1. 生前贈与と通常の相続(法定相続)の違いとは?
財産所有者が健在なうちに、財産を親族などへ贈与することを「生前贈与(単に贈与ともいう)」といいます。財産所有者が亡くなってから初めて相続の手続きが行われる「法定相続」との最大の違いは、財産所有者がご自身の意思で財産を贈与することができる点です。
2-2. 贈与税と相続税の違いとは?
贈与税とは健在する財産所有者が誰かに財産を贈与した際に、財産を取得した人に課せられる税金です。一方相続税とは、財産所有者が亡くなった際に相続した財産に課せられる税金です。
一般的には、財産を取得した金額が同額であれば、贈与税の方が相続税よりも高い税率が設定されています。相続税・贈与税ともに「非課税限度額」と呼ばれる非課税枠が定められています。端的にいえば、「いくらまでの金額であれば、相続税(もしくは贈与税)はかからない」ということです。相続税の場合には、取得した財産の総額が「基礎控除額」を超えなければ相続税はかかりません。基礎控除額の計算式は、「基礎控除額=3,000万円+600万円× 相続人の人数」です。例えば、相続人が配偶者と子供2人の場合、4,800万円の相続までは非課税、相続税はかからないということです。
下記記事で、生前贈与(暦年贈与)した場合としなかった場合の税金シミュレーションをご紹介していますのでご参照ください。
2-3. 子・孫へ生前に贈与することもできる(相続時精算課税制度)
子・孫に対して生前に贈与する場合、「相続時精算課税制度」を選択することで、2,500万円までは非課税となり、子や孫が贈与税を負担することなく生前に贈与することが可能です。
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子または孫に対し、生前に財産を贈与する際に選択できる特例のことで、生前に贈与する財産の種類や金額、回数に制限はないため、現金でも不動産でも、2,500万円以内であれば、非課税で贈与できるというメリットがあります。
相続時精算課税制度を選択した場合、将来、父母または祖父母が亡くなり、いざ相続となったときに、相続する財産の額に、この制度を利用して贈与された財産の額を加えて相続税の金額が計算されます。ただし、すでに生前贈与されている財産については贈与時の時価で算出されるため、例えば将来的に値上がりしそうな不動産などを子・孫に生前に相続しておくことで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。
なお、いったん選択すると選択した年以後贈与者が亡くなる時まで継続して適用され、暦年課税に変更することはできず贈与税の110万円非課税は使えません 。
3. 生前贈与する方法は?非課税限度額や手続きの方法も
続いては、生前贈与する方法について具体的に解説していきます。
3-1. 現金手渡しで生前贈与する場合
生前贈与をする方法のひとつに、現金手渡しによる方法があります。いわば「お小遣い」のような感覚で、日常的に現金で手渡ししている財産のことです。
被相続人の死後、相続税の税務調査が入った場合、被相続人の預金通帳を調査されます。その際に、使途不明の高額な出金がある場合、その使途について調べられることがあります。仮に非課税限度額の範囲内の贈与がされていたとしても、現金手渡しの場合、それが生前贈与であったという確たる証拠がないため、相続税の課税対象とされてしまう可能性があります。
そのため、現金手渡しは避け、銀行振込での生前贈与にし、さらには贈与契約書を作成しておくことをおすすめします。
現金を生前贈与する際に利用すべき制度としては、「暦年贈与」と呼ばれる制度です。これは、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与総額が110万円以下であれば非課税となる制度です。この暦年贈与の制度を使って、所有財産を5年、10年と分割して贈与していくことで、贈与税(相続税)を抑えることが可能となります。1年間の贈与総額が110万円以下であれば、暦年贈与には申告の必要はありません。また、年間110万円以上の暦年贈与を行う場合は、110万円を差し引いた金額について課税対象となります。
暦年贈与以外にも、夫婦や親子などの扶養義務者が被扶養者に対して、日常的に、生活費や教育費といった使用目的で財産を現金手渡ししている場合も課税対象となりません。ただし、生活費や教育費として社会通念上相当とされる金額の範囲内に限ります。また、受け取った現金を被扶養者が生活費や教育費以外の目的で使用した場合は贈与税の課税対象となる可能性があるため注意が必要です。
概要 | 必要手続き | 申告書類 | 注意点 |
---|---|---|---|
扶養義務者からの生活費や教育費は非課税 | なし | なし |
|
年間110万円以下は非課税(暦年贈与) | なし | なし |
|
3-2. 扶養家族や孫への教育資金として生前相続する場合
生活費のほか、扶養家族のための教育費も、必要な金額をその都度渡していれば贈与税の課税対象とはなりません。また、孫などへの教育資金として一括贈与された場合は1,500万円まで非課税となる特例制度も定められています。教育資金の非課税特例を受けるためには、「教育資金非課税申告書」を金融機関経由で所轄税務署に提出する必要があります。
概要 | 必要手続き | 申告書類 | 注意点 |
---|---|---|---|
1,500万円までの一括贈与は非課税 |
|
|
父母又は祖父母から30歳未満の直系卑属(子や孫)への贈与が対象 |
3-3. 不動産を生前相続する場合
生前相続の方法として、不動産を生前に贈与するという方法があります。この方法で適用される制度のひとつに、婚姻期間が20年以上の夫婦間で不動産(自宅として実際に住んでいる)の贈与が行われる場合、不動産の評価額が2,000万円までは課税対象とならないという制度があります。この制度の適用を受けるためには、贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までに、贈与後の居住用不動産の登記事項証明書、居住用不動産を評価するための書類(固定資産評価証明書など)、戸籍謄本、戸籍の附表の写しを揃えて税務署へ申告する必要があります。
そしてもうひとつ、不動産による贈与に限りませんが「相続時精算課税制度」があります。この相続時精算課税制度とは、前記のとおり2,500万円まで非課税となります。この制度の適用を受けるためには、相続時精算課税選択届出書、相続人の戸籍謄本などの書類を揃え税務署に提出する必要があります。
概要 | 必要手続き | 申告書類 | 注意点 |
---|---|---|---|
夫婦間贈与なら2,000万円まで非課税(夫婦間贈与の特例) | 贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告をする |
|
婚姻期間20年以上の夫婦間かつ居住用不動産又は購入資金の贈与が対象 |
相続時精算課税制度を選択した場合は2,500万円まで非課税 | 贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告をする |
|
60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の直系卑属(子や孫)への贈与が対象 ※ マイホームの場合には父母の年齢制限なし |
4. 最後に
今回は、生前贈与と法定相続の違い、生前贈与のメリットや非課税限度額、手続きの方法について解説してきました。生前贈与には「Vシェア」がおすすめです。「Vシェア」は、個人では購入することが難しい都心エリアの商業地にあるオフィスビルを弊社が小口化し、1口100万円単位・5口以上(最低口数は変更となる場合があります)から不動産の小口購入をすることを実現した商品です。資産運用として多くの方にご利用いただいていることはもちろん、1口単位で複数の相続人へ分けて贈与することができ、相続税評価を引き下げられるというメリットがあるため、非課税限度額内での生前贈与の方法としてご活用いただける商品です。「Vシェア」についてより詳細にご覧になられたい方は、下記ページをご参照ください。
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渋谷本社、自由が丘オフィスを拠点に、東京都心及び、城南地区の地主や資産家に対し、『民事信託も活用した相続・相続への準備、不動産の売買や贈与時の提案』といった資産税コンサルティングを手がける。
毎週末、不動産に関する税務相談会も行っており、ただの税務理論だけでなく、不動産の現場にも精通する知識と経験を備えている。
マックス総合税理士法人(http://www.max-gtax.com/)
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