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円滑な事業承継のために知っておきたい株価算定|自社株評価の算出方法

目次

事業承継には悩みがつきものですが、そのなかでも、「どのようにすれば承継における税金を減らせるのか」という疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。

事業承継の税金に大きく影響するのが自社株の評価額です。非上場企業の株式は上場企業のような市場における評価が定まっていないため、株価算定によって自社株を評価します。

本記事では、事業承継における株価算定の基礎知識や計算方法をわかりやすく解説します。自社株評価を下げる可能性がある方法についてもお伝えしますので、自社の事業承継について考える際にお役立てください。

非上場企業の事業承継には株価算定が欠かせない

株価算定とは、株式の価値を算定することをいいます。

上場企業の場合、株価は株式市場による評価が基本となります。一方、非上場企業の場合は株式市場による評価がないため、目的に応じて株価を算定する必要があります。

自社株の承継には税金がかかる

自社株の承継には税金がかかり、納税額は株式の評価額によって変わります。

自社株の承継時に必要な税金の代表例として、経営者側には「譲渡所得税」、後継者側には「贈与税(みなし贈与)や相続税」、加えて、法人には「法人税」があります。売買金額や譲渡など、状況によって納税の必要性や金額は変動します。

相続税は原則、現金で支払わなければならず、経営に影響を与えるほどの納税額となる可能性もあります。自社株の評価を下げて相続税の負担を減らすことで、「税金が高いのでやむを得ず自社株を売る」という事態を回避できる可能性があります。

なお、相続税は要件を満たせば、不動産、船舶、国債証券などによる物納も認められています。

株価算定の決定方法

株価算定の方法は4種類あり、会社の規模などの条件によって適切な計算式が変わります。まずは、自社に当てはまる計算式を判断する方法を確認しましょう。

株価算定の方法は、次の図のような流れで決定します。本章では、その各ステップについて順番に解説し、実際の計算式はこの後の章で紹介します。

株式を取得した人が同族株主であるか

株価算定の方法は、「自社株を取得するのが同族株主かそれ以外か」によって大きくふたつに分かれます。

まずは、「同族株主」の定義を確認しましょう。

“「同族株主」とは、課税時期における評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数30%以上(株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数が50%超である場合には、50%超)である場合におけるその株主及びその同族関係者をいいます。この場合の「株主の1人」とは、納税義務者に限りません。”

出典:国税庁

つまり、筆頭株主グループ(株主の中でも議決権の合計が1番多い株主やその同族関係者によるグループ)の議決権割合が30%以上の場合は「同族株主のいる会社」とみなされ、30%未満の場合は該当しないということになります。

議決権割合が50%以上のグループがある場合は、そのグループだけが同族株主となります。例えば、Aグループが55%、Bグループが35%、Cグループが10%の割合だった場合、Aグループのみが同族株主となり、それ以外のグループは30%を超えていても同族株主には該当しません。

ここまでの条件をふまえて、自社株を取得するのが同族株主以外の場合は「特例的評価方式」が採用され、「配当還元方式」で評価されます。

一方、自社株を取得するのが同族株主の場合は「原則的評価方式」が採用され、細かい条件によって最終的に「類似業種比準方式」「併用方式」「純資産価額方式」のいずれかで評価されます。3つのうち、自社がどの計算式に当てはまるかは、これ以降の章で解説する条件によって決定されます。

特定会社等に該当するか

自社株を取得するのが同族株主の場合に用いられる「原則的評価方式」のなかでも、「特定会社」に該当する場合は「純資産価額方式」で評価を行います。

特定会社とは、次のいずれかの条件に当てはまる会社のことです。

①比準要素数1の会社

【類似業種比準方式で評価する場合の3つの比準要素】

  • 配当金額
  • 利益金額
  • 純資産価額(簿価)

3つの要素のうち、直前期末の比準要素のいずれかふたつがゼロであり、かつ直前々期末の比準要素のいずれかふたつ以上がゼロである会社は「比準要素数1の会社」となります。

②株式等保有特定会社

株式などの保有割合(総資産価額中に占める株式、出資および新株予約権付社債の価額の合計額の割合)が一定の割合以上の会社の場合、該当します。

③土地保有特定会社

土地などの保有割合(総資産価額中に占める土地などの価額の合計額の割合)が一定の割合以上の会社の場合、該当します。

④開業後3年未満の会社

⑤開業前または休業中の会社

特定会社に該当しない場合は、さらに会社規模によって株価算定の方法が変わります。

会社規模はどれくらいか

原則的評価方式の場合は、会社規模の区分があります。会社規模は、大会社・中会社・小会社の3つに大別でき、中会社はさらに大・中・小の3つにわかれるため、区分としては合計5つになります。

自社がどれに当てはまるか確認してみましょう。

従業員が70人以上の会社であれば「大会社」となり、従業員70人未満の会社の区分は次の表で区分を判断してください。

表の①②いずれかの区分で判定します。

▼従業員70人未満の会社の区分

参考:納税協会ニュース 平成29年9月版を参考に作成

会社規模による株価算定の計算方式の違いは次のとおりです。

会社規模株価算定の計算方式
大会社原則、類似業種比準方式で評価する
中会社大会社と小会社の評価方法を併用する
小会社原則、純資産価額方式で評価する

原則的評価方式の株価算定方法

株価算定の決定方法が分かったら、該当するものを選んで実際に計算してみましょう。

特定会社に該当する場合(純資産価額方式)

特定会社に該当する場合は、「純資産価額方式」で計算します。

純資産価額方式とは、会社が保有する資産と負債を算出し、その評価額をベースに資産と負債の差額である純資産額から会社の株価を算出する方式です。貸借対照表の純資産価額に近い金額となります。

▼【純資産価額方式の計算式】

純資産価額=(総資産の時価―負債価額―法人税相当額)÷発行済株式総数

大会社の場合(類似業種比準方式)

大会社の場合、「類似業種比準方式」での計算が原則となります。

類似業種比準方式とは、同じ業種に属する別の上場企業の株価や純資産額などを参考に自社株を評価する方式です。純資産価額方式に比べて評価額が低くなる傾向があります。

▼【類似業種比準方式の計算式】

※次の①~⑤のうちいずれか低い株価

① 相続・贈与月の株価

② ①の前月の株価

③ ①の前々月の株価

④ 課税時期前年の平均株価

⑤ ①の以前2年間の平均株価

中会社の場合(併用方式)

中会社の場合は、類似業種比準方式と純資産価額方式との「併用方式」で計算します。

▼【併用方式の計算式】

評価額=類似業種比準価額×L+1株当たりの純資産価額×(1-L)

中会社は、さらに大・中・小の3つに区分されます。計算式の「L」は、中会社の大(90%=0.9)・中(75%=0.75)・小(60%=0.6)となります。

区分算出方法
中会社(大)類似業種比準価額×0.9+純資産価額×(1-0.9)
中会社(中)類似業種比準価額×0.75+純資産価額×(1-0.75)
中会社(小)類似業種比準価額×0.6+純資産価額×(1-0.6)

小会社の場合(純資産価額方式)

小会社の場合、すでに説明した「純資産価額方式」での計算が原則となります。

小会社であっても例外的に「併用方式」を選択することもでき、その場合の計算式は次のようになります。中会社の場合の併用方式とは計算式が異なるため注意が必要です。

▼【小会社で併用方式を用いる場合の計算式】

評価額=類似業種比準価額×0.5+1株当たりの純資産価額×50%

特例的評価方式の株価算定方法

自社株を同族株主以外が引き継ぐ場合は「特例的評価方式」での評価となり、「配当還元方式」で計算します。配当還元方式とは、過去2年間の平均配当金額を10%の利率で還元し、元本である株式の価額を求める方式です。

▼【配当還元方式の計算式】

配当還元価額=その株式に係る年配当額(注)10%×その株式の1株当たりの資本金などの額50円

(注)年配当金額=直前期末以前2年間の配当金額2÷1株あたりの資本金などの額を50円とした場合の発行済株式数

(注)年配当金額が2円50銭未満となる場合、または無配の場合は2円50銭とする

事業承継のために自社株評価を下げる可能性がある方法

ここからは、事業承継のために自社株評価を下げる可能性がある方法について解説します。事業が円滑に承継され、承継後も事業が成長していくことを見据えて取り組みましょう。

経営者に退職金を給付する

経営者が退職する際に退職金を支払うことで利益が減少し、結果的に株価も下がる可能性があります。会社の規模によっては、経営者の退職金は大きな金額になるため有効な手段といえます。自社株の評価に影響を与えるだけではなく、経営者にとっても退職金を受け取れるメリットがあります。

ただし、退職金を損金に算入できない場合があるので注意しましょう。損金として算入できるのは、功績倍率法などによって算出された「適正な金額」のみとなります。

後継者の役員報酬を増額する

役員報酬も、退職金と同様に損金として計上が可能です。役員報酬を増額すれば会社の利益が減少しますが、定款に沿った範囲で行う必要があります。

役員報酬が増額すると、役員の所得が増えて所得税も上がる点にも留意し、適切に増額することが大切です。

不動産を購入する

不動産を購入し、純資産額を減らすことで自社株の評価を下げる可能性を検討するのも手段のひとつです。

不動産を購入すると自社株の評価が下がる可能性があるのは、土地や建物の評価額が影響するためです。通常、土地の評価額は路線価を基準にするのが一般的ですが、路線価は時価(市場での実勢価格)の8割程度となります。つまり、1億円の土地を購入すると8,000万円程度の評価になり、純資産額を減らすことができる可能性があるということです。

なお、土地の価格が上がった場合は評価額が増加する可能性があります。会社保有の不動産は、3年以内の場合は実勢価格での評価となり、3年超の場合は相続税評価額で評価します。

生命保険を活用する

現経営者が法人契約の生命保険に加入すれば、保険料を損金として計上できます。結果的に自社株の評価が下がる可能性があり、受取人を後継者に設定すれば資金を受け取れます。

ただし、2019年の税制改正により、「最高解約返戻率」の高い法人保険(いわゆる全損・半損)の損金の計上が厳しくなっているので注意が必要です。

「解約返戻率」とは、保険金の払込金額に対して戻ってくる金額の割合を示したもので、解約返戻率が高いほど解約時に戻ってくる金額も高くなります。保険期間において解約返戻率が最も高くなる期間の割合を「最高解約返戻率」といいます。 最高解約返戻率に応じた損金計上の割合が定められたことから、改正前に比べて自社株の評価を大きく引き下げることが難しくなりました。そのため、法人保険に加入すれば課税額が下がるとは限らないので注意しましょう。

事業承継における株価算定は専門家への依頼がおすすめ

日本の相続税の最高税率は55%であり、世界的に見ても相続税の高い国として知られています。自社株を評価する株価算定は相続税に大きく影響するため、自社株の評価が高い状態での事業承継は後継者にとって負担となる可能性があります。

大切に育ててきた会社を次の世代へ引き継ぐことは、経営者が最後に行う重要な仕事です。経営者にとっても後継者にとっても満足のいく事業承継にすることを心がけましょう。

>ボルテックスの考える事業承継支援とは

※期待どおりの税務上の効果が得られない可能性があります。

※税制改正、そのほか税務的取り扱いの変更により効果が変動する場合があります。

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監修者

金子賢司かねこけんじ

資格:CFP

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

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