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事業承継税制とは?メリット・デメリットと適用要件を解説

目次

事業承継税制とは

事業承継税制とは、事業承継にかかる相続税・贈与税の納税を猶予・免除する制度です。子供や親族に事業を引き継ぐ親族内承継のほか、従業員などに引き継ぐ親族外承継にも適用できます。

事業承継税制が制定された目的

自社株式にかかる相続税の80%が猶予されるなど、税の負担を軽減することで事業承継を支援する狙いがあります。適用には要件があり手続も複雑なため、専門家のアドバイスを受けながら進める必要があります。

事業承継税制の種類

事業承継税制には主に「一般措置」と「特例措置」の2種類があり、次のように異なります。

一般措置 特例措置
計画の策定 不要 要提出
適用期限 なし 10年以内(2027年12月31日まで)
対象株式 総株式数の最大3分の2まで 全株式
納税猶予割合 贈与:100%
相続:80%
100%
承継パターン 複数の株主から1人の後継者のみ 複数の株主から最大3人の後継者まで可能
雇用確保要件 承継後5年間、平均8割の雇用維持が必要 弾力化
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 なし あり
相続時精算課税の適用 60歳以上の者から18歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与 60歳以上の者から18歳以上の者への贈与

参考:経営承継円滑化法申請マニュアル【相続税、贈与税の納税猶予制度の特例】

一般措置とは

一般措置とは、総株式数の3分の2を上限に、贈与税の納付を全額、相続税の場合は80%猶予できる制度です。事前の計画の策定は不要です。

特例措置とは

特例措置とは、10年の期間限定で贈与税と相続税の納税が100%猶予される制度です。令和6年(2024年)3月31日までに「特例承継計画」を策定・提出することが条件で、特例承継計画の提出は相続発生後でも可能です。なお、特例措置の適用期限は2027年(令和9年)12月31日となっています。提出期限と適用期限を間違えないように注意しましょう。

>事業承継税制に必要な特例承継計画とは|書き方と提出方法を解説

事業承継税制を活用するための要件

事業承継税制には、贈与税・相続税それぞれに次のような要件があります。

会社の主な要件 後継者の主な要件 先代経営者の主な要件
贈与税 次のいずれにも該当しないこと
1.上場会社((特例)経営贈与承継期間内に、先代経営者(贈与者)が死亡した場合に限る)
2.風俗営業会社
3.資産管理会社(一定の要件を満たすものを除く)
相続開始のときにおいて次の条件を満たしていること
1.会社の代表権を有していること
2.後継者および後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有していること
3.後継者と特別の関係がある者(ほかの後継者を除く)の中で最も多くの議決権を保有していること
相続税 次のいずれにも該当しないこと
1.上場会社
2.中小企業者に該当しない会社
3.風俗営業会社
4.資産管理会社(一定の要件を満たすものを除く)
1.相続開始の日の翌日から5カ月を経過する日において会社の代表権を有していること
2.相続開始のときにおいて、後継者および後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することとなること
3.相続開始のときにおいて後継者が有する議決権数が特定の条件を満たすこと(特例措置の場合)
4.相続開始の直前において、会社の役員であること(条件あり)
1.会社の代表権を有していたこと
2.相続開始直前において、被相続人および被相続人と
特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと

参考:経営承継円滑化法申請マニュアル【相続税、贈与税の納税猶予制度の特例】

事業承継税制を活用するメリット

事業承継税制は、自社株の贈与税・相続税の納税が猶予され、さらに次の後継者に相続・贈与をした際は納税が免除になるのがメリットです。

事業承継税制を活用するデメリット

事業承継税制は、手続が複雑で要件が多いことが主なデメリットです。主なデメリットに関して順に解説します。

手続が複雑で時間を要する

事業承継税制の特例措置を受けるためには、特例承継計画の策定・提出が必要です。さらに、納税猶予開始から5年間は毎年、5年経過後は3年に1回、「継続届出書」の提出をしなければなりません。

猶予を受け続けている間は書類を提出する必要があり、変更があった際には、変更届の提出も必須です。変更届により、要件を満たした状態で事業を行っているかどうかを確認します。

猶予開始後に必要書類を提出しなかった場合、猶予が取消となるので注意が必要です。

特例承継計画のほか、猶予開始後に提出する「年次報告書(都道府県庁へ提出)」および「継続届出書(税務署へ提出)」のテンプレートは中小企業庁のWebサイトで配布されています。

記載する内容については、顧問税理士など専門家と相談して決定する必要があります。

廃業した際は利子を加えて納付しなければならない

特例措置を適用中に廃業した場合は、猶予されていた税金に加えて利子税を納付しなければなりません。ただし、売上の減少などのやむを得ない理由があり、条件を満たした場合は納付が免除されます。

取消事由に該当すると猶予が打ち切られる

次のような、25項目ある「認定取消事由」に該当すると猶予が打ち切られます。

▼認定取消事由一部抜粋

  • 後継者(受贈者)が死亡した場合
  • 認定承継会社の代表者を退任した場合(代表権の制限を含む)
  • 雇用の平均8割維持要件を満たさなくなった場合
  • 議決権同族過半数要件を満たさなくなった場合(条件あり)


参考:第4章 認定の取消しについて

特例措置の場合、売上減などにより事業の継続が困難になった場合は、相続税または贈与税額を再計算します。その結果、当初の納税猶予額を下回った際は差額の納税が免除されます(免除となるのは差額分のみ)。

事業承継税制の手続の流れ

事業承継税制の手続は、次のような手順で進めます。ここでは特別措置の流れを基準に解説いたします。

【特例措置のみ】特例承継計画を作成・提出

特例承継計画とは、事業承継税制の特例措置を受けるために必要な書類です。一般措置の場合は不要です。令和6年(2024年)3月31日までに提出しなければ一般措置になるので注意しましょう。提出は郵送で行います。

経営者の退任・株式の贈与

先代の経営者が退任し、後継者に株式の贈与を行います。特例承継計画には、株式を承継する時期を記載する項目があります。贈与の際は「贈与契約書」を2通作成し、経営者と後継者が双方で保管します。

都道府県知事の認定

贈与が実行されたら、都道府県庁に事業承継税制の認定申請を行います。特例措置の場合は、特例承継計画も添付します。申請期限は、贈与・相続で異なるため注意が必要です。都道府県による審査の結果、問題がなければ認定書が交付されます。

贈与税の申告

都道府県による認定が完了したら、税務署に贈与税・相続税の申告を行います。贈与税の申告期限は特に短く設定されているため、できる限り早い段階で専門家のアドバイスを受けることが大切です。

事業継続要件の維持と書類提出

猶予開始から5年間は、1年ごとに書類の提出が必要です。「年次報告書」は都道府県庁へ、「継続届出書」は税務署へ提出します。5年経過後は、3年に1回「継続届出書」を税務署へ提出します。

次の後継者の事業承継時に納付が免除

先代経営者から後継者、さらに次の後継者へ事業承継をした際に税務署へ申請することで、納税が「猶予」から「免除」になります。

特例承継計画の提出期限延長について

令和4年4月1日施行の改正省令により、特例承継計画の提出期限が1年延長されました。

改正前:令和5年(2023年)3月31日
改正後:令和6年(2024年)3月31日

延長されたのは提出期限のみで、適用期限である2027年(令和9年)12月31日に変更はありません。間違えないように注意しましょう。

事業承継税制は制度が複雑で、事業承継に詳しい専門家とともに手続を進めることが不可欠です。ボルテックスでは、事業承継の支援を包括的に行っています。お困りごとがあれば、お気軽にお問い合わせください。

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監修者

金子 賢司かねこ けんじ

CFP

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

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