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住宅取得資金贈与は最大1,000万円非課税|特例の概要や申請方法を徹底解説

生前贈与

写真:萱谷 有香

監修者

萱谷 有香

叶税理士法人 東京事務所代表
税理士・上級相続カウンセラー

目次

子供や孫へマイホーム購入資金を援助したいとお考えの方のなかには、「住宅取得資金の非課税の特例」に興味をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

住宅取得資金の非課税の特例は、贈与や将来的な相続への備えとして有効な手段のひとつですが、利用するにあたって把握しておくべき注意点もあります。本記事では、住宅取得資金の非課税の特例について、概要や注意点を紹介します。

住宅取得等資金贈与の非課税特例とは

住宅取得等資金の非課税の特例とは、父母や祖父母など直系尊属からの贈与で、住宅の新築や取得、増改築をおこなう場合に利用できる特例です。
特例を利用することで、贈与税の基礎控除110万円に加え、最大1,000万円までの贈与にかかる贈与税が非課税となります。

2024年改正のポイント

2024年度の税制改正により、住宅取得等資金贈与の非課税特例について、以下の点が変更されました。

1. 適用期限の延長
特例の適用期限が3年間延長されました。
従来は2023年12月までにおこなわれた贈与に適用される特例でしたが、3年延長されたことにより、2026年12月の贈与まで適用されます。

2.省エネ等住宅の要件の変更
非課税限度額が1,000万円に引き上げられる省エネ等住宅の要件が、以下のように変更されました。

  • 改正前:断熱等性能等級4以上、または一次エネルギー消費量等級4以上
  • 改正後:断熱等性能等級5以上、かつ一次エネルギー消費量等級6以上

改正後の基準は、いずれも「ZEH水準」に相当します。

住宅取得資金贈与の非課税枠の上限額

住宅取得等資金贈与の非課税特例を利用する場合、非課税枠の上限額は、以下のように住宅の種類によって異なります。

住宅の種類非課税枠の上限額
省エネ等の住宅1,000万円
上記以外の住宅500万円

省エネ等住宅とは

非課税枠が最大1,000万円になる「省エネ等住宅」とは、住宅の区分に応じた省エネルギー・耐震・バリアフリー性能のいずれかの基準(省エネ等基準)を満たしている住宅を指します。

贈与税の申告時に住宅性能証明書などの所定の書類を添付することで、省エネ等住宅として認められます。具体的な基準は以下のとおりです。

家屋の区分 省エネ等基準
省エネルギー性能 耐震性能 バリアフリー性能
新築住宅 断熱等性能等級5以上(※1)
かつ一次エネルギー消費量等級6以上(※2)
耐震等級2以上
または免震建築物
高齢者等配慮対策等級3以上
建築後未使用の住宅
建築後使用された住宅 断熱等性能等級4以上
または一次エネルギー消費量等級4以上
増改築等をした住宅

参考:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

※1 断熱等性能等級のうち、結露防止に関する基準は除きます。

※2 2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または2024年6月30日までに建築された住宅については、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上のいずれかを満たし、住宅性能証明書など所定の書類を贈与税申告書に添付することで「省エネ等住宅」として認められます。

加えて、2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅(※2024年6月30日までに建築されたものを除く)については、住宅性能証明書等に加え、確認済証の写しまたは検査済証の写しの添付も必要です。

住宅取得資金贈与の非課税特例の適用条件【対象者・住宅・贈与方法】

住宅取得資金の非課税の特例を利用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。ここでは以下のポイントを解説します。

  • 特例を利用できる人(受贈者)
  • 特例の対象になる住宅・土地
  • 特例の適用対象外となるケース

特例を利用できる人

住宅取得資金贈与の非課税特例を利用できる人(受贈者)の条件は、次のとおりです。

  • 日本国内に住所がある
  • 贈与を受ける年の1月1日時点で18歳以上
  • 贈与者の直系卑属(子や孫など)
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下(床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅を取得する場合は、合計所得金額が1,000万円以下)
  • 住宅取得資金贈与の旧非課税制度の適用を受けたことがない

受贈者が上記の条件をすべて満たしている場合は、特例の適用を受けられます。

なお、養子は直系卑属に含まれます。養子縁組をしていない場合は、配偶者の親からマイホーム購入資金の援助を受けても特例を利用することはできません。

特例の対象になる住宅・土地

住宅取得資金贈与の特例が利用できる住宅・土地に関する条件は、新築住宅、中古住宅、増改築などによって異なります。

新築住宅の場合

  • 日本国内にある住宅用家屋であること
  • 登記簿上の床面積が40平方メートル以上 240平方メートル以下であること
  • 店舗併用住宅の場合は、登記簿上の床面積の2分の1以上が居住用であること

中古住宅の場合

  • 日本国内にある住宅用家屋であること
  • 登記簿上の床面積が40平方メートル以上 240平方メートル以下であること
  • 店舗併用住宅の場合は、登記簿上の床面積の2分の1以上が居住用であること
  • 昭和57年1月1日以後に建築されたものか、地震に対する安全性基準に適合するものか、贈与を受けた翌年3月15日までに耐震改修により家屋が耐震基準に適合するもの

増改築等の場合

  • 日本国内にある住宅用家屋であること
  • 登記簿上の床面積が40平方メートル以上 240平方メートル以下であること
  • 店舗併用住宅の場合は、登記簿上の床面積の2分の1以上が居住用であること
  • 増改築等の工事費用が100万円以上であること
  • 増改築等の工事費用のうち2分の1以上が居住用部分の工事費であること

増改築等の場合、工事費用が対象となる住宅用家屋に対しておこなわれたものであることを証明する「確認済証の写し」「検査済証の写し」「増改築等工事証明書」などの書類が必要となります。

特例の適用対象外となるケース

受贈者や住宅の要件に該当していても、以下のようなケースは特例の適用対象外となります。

  • 資金ではなく住宅を贈与する
  • 住宅取得資金ではなくローン返済資金を贈与する
  • 贈与した資金を家具・家電の購入に充てた

資金ではなく住宅を贈与するケース

住宅取得資金の非課税の特例は、マイホーム購入資金の贈与で利用できる特例です。資金ではなく不動産の贈与を受けた場合は、住宅取得資金贈与の特例の対象とはなりません。

住宅取得資金ではなくローン返済資金を贈与するケース

住宅ローンの返済を肩代わりしてもらった場合も、住宅取得資金の非課税の特例は利用できません。

住宅取得資金の非課税の特例が適用できるのは、居住用家屋の新築または取得、増改築等の代金に充てるための資金贈与に限定されています。

贈与した資金を家具・家電の購入に充てたケース

住宅取得資金の非課税の特例は、マイホーム購入資金の贈与で利用できる特例です。贈与により受け取った資金を、家具や家電、登記費用などの資金に充てた場合、非課税の対象にはなりません。

住宅取得資金贈与の非課税特例を受けられる時期・期限

住宅取得資金贈与の非課税特例を利用する際は、贈与、居住開始、書類提出の3つに期限や条件が定められています。期限を過ぎると特例を受けられない場合があるため、事前に確認しておきましょう。

以下でそれぞれの時期について解説します。

贈与の時期

住宅取得資金贈与の非課税特例を利用する際に注意したいのが、贈与を受ける時期です。特例を適用するには、居住を開始する前に贈与を受けている必要があります。 入居後に資金を受け取った場合は、特例の対象外となるため注意が必要です。

また、原則として贈与を受けた翌年の3月15日までに居住を開始していなければなりません。新築の場合、土地の手付金や工事契約の着手金など、早い段階で資金が必要になるケースもあります。その場合でも、翌年3月15日までに入居できるかを確認したうえで、贈与の時期を決めることが大切です。

基本的には、居住開始の直前に贈与をおこなうのが安心といえるでしょう。

居住開始の期限

住宅取得資金贈与の非課税特例を受けるには、取得した住宅に入居する期限が設けられています。原則として、贈与を受けた翌年の3月15日までに受贈者本人が新居に居住を開始していなければなりません。

ただし、新築やリフォームの工事が遅れるケースもあれば、中古住宅でも子供の転校や仕事の都合などで、引越しが予定より遅れることもあるでしょう。

翌年3月15日までに確実に居住を開始できるといえない場合は、年末ではなく、年明けに贈与を受けるなど、居住開始に近いタイミングで贈与を受けることをおすすめします。

また、居住開始の判断は、実際に入居しているかどうかの実態によって判断されるため、住民票を移すだけでは不十分です。実態がともなわなければ税務署に否認される可能性が高いでしょう。

期限までに居住開始が間に合わなかった場合

工事の完成が贈与を受けた年の翌年3月15日までに間に合わない場合でも、棟上げが済んで建物として認められる状態にあるなど、一定の条件を満たしていれば特例の適用対象となります。

ただし、この場合でも、贈与を受けた年の翌年12月31日までに実際に居住を開始していることが必要です。

受贈者本人が居住開始できない場合

住宅取得資金の贈与に関する非課税特例を適用するには、原則として、受贈者本人がその住宅に居住を開始することが条件となります。

ただし、仕事の都合などにより本人がすぐに居住できない場合でも、生計を共にする家族が住み始めているなど、一定の条件を満たしていれば特例の対象となる場合があります。

居住の有無は、新居が受贈者の生活の拠点とみなされるかどうかで判断されます。そのため、たとえ受贈者本人が海外転勤中であっても、帰国後にその住宅に住む予定であると認められれば、非課税特例の適用を受けることが可能です。

申告手続きの期限

住宅取得資金贈与の非課税特例を受けるには、贈与税申告書などを提出する必要があります。申告手続きは、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間におこないます。郵送で提出する場合は、消印の日付が提出日として扱われます。

また、贈与を受けた資金は、申告時点までにすべて居住用住宅の取得に使い切っておく必要があります。 未使用の資金が残っていた場合や、期限内に住宅を取得していなかった場合は、贈与税が課税される可能性があるため注意が必要です。

贈与税の申告期限については、以下の記事で詳しく解説しています。

住宅取得等資金贈与の非課税特例の申告手続き

住宅取得資金贈与の非課税特例を受けるには、税務署に贈与税申告書などの必要書類を提出します。

  • 提出先:居住地を管轄する税務署
  • 申告時期:贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日

なお、特例の適用により贈与額の全額が非課税となる場合でも、申告は必須です。

手続きの必要書類

贈与税の申告に必要な書類は、次のとおりです。

  • 贈与税申告書
  • 受贈者の戸籍の謄本または氏名、生年月日、贈与者との関係が証明できるその他の書類
  • 源泉徴収票または前年分の所得税にかかる所得金額が証明できる書類
  • 登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど、新築または取得、増改築等をおこなった居住用住宅についての書類

贈与税申告書は、国税庁ホームページからダウンロードできます。必要書類や添付書類について、詳しくは国税庁ホームページをご確認ください。

住宅取得等資金贈与の非課税特例を利用する際の注意点

住宅取得資金の非課税の特例を利用するにあたって、以下の注意点があります。しっかりと把握したうえで、特例の利用を検討しましょう。

  • 住宅ローン控除の適用額が減る可能性がある
  • 小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性がある

住宅ローン控除の適用額が減る可能性がある

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を所得税や住民税から控除できる制度で、一定の条件を満たすことで適用されます。

住宅ローン控除は、住宅取得等資金贈与の非課税特例と併用可能です。ただし、併用する場合には、控除対象となる住宅ローン残高に制限が生じることがあります。具体的には、以下の1の金額が2より多い場合、2を超える部分については住宅ローン控除の適用ができません。

  1. 年末の住宅ローン残高
  2. 住宅の購入価格 − 住宅取得等資金贈与による非課税贈与額

非課税贈与を利用することで住宅ローン控除の対象額が減る可能性があるため、どの程度の影響があるかを事前に把握しておくことが重要です。具体的な金額については、税理士などの専門家に相談し、シミュレーションを受けることをおすすめします。

小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性がある

「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が生前に居住または事業に使用していた土地を相続した場合に、その土地の相続税評価額が下がる可能性のある制度です。

たとえば、親が住んでいた自宅を子供が相続する際、この特例を活用することで相続税額が下がる可能性があります。 ただし、すでに持ち家がある場合には、親の自宅を相続しても、この特例の適用対象外となります。

将来的に親の自宅を相続する見込みがある場合、住宅取得等資金贈与の非課税特例よりも、小規模宅地等の特例を活用した方が税務上有利になるケースもあります。将来的な相続も考慮して、特例を利用するかどうか検討するとよいでしょう。

住宅取得資金贈与の非課税特例と併用できる制度

住宅取得資金贈与の非課税特例は、ほかの制度と併用することで、さらに税額が下がる場合があります。併用可能な制度には住宅ローン控除のほか、暦年贈与や相続時精算課税制度などがあります。

暦年贈与

暦年贈与とは、1年間(1月1日から12月31日まで)に受け取った贈与額の合計が110万円以下であれば、贈与税がかからない制度です。住宅取得資金贈与の非課税特例とは別枠で利用できます。

そのため、住宅取得資金の非課税枠と暦年贈与の基礎控除額を組み合わせれば、より多くの資金を非課税で受け取ることが可能です。

たとえば、省エネ等住宅の取得にあたり1,110万円の贈与を受ける場合は、以下のように住宅取得資金の非課税枠と暦年贈与を併用することで、全額を非課税で受け取れます。

  • 住宅取得資金の非課税枠:1,000万円
  • 暦年贈与の基礎控除:110万円
  • 合計:1,110万円

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上(※)の子や孫へ財産を贈与する際の制度です。贈与する金額が2,500万円までは非課税となり、相続する際に相続税として精算されます。住宅取得資金贈与の非課税特例との併用が可能です。

たとえば、3,610万円の贈与を受けた場合でも、以下のように住宅取得資金贈与の非課税枠と相続時精算課税制度を組み合わせることで、全額を非課税で受け取ることが可能です。

  • 住宅取得資金贈与の非課税枠:1,000万円
  • 相続時精算課税制度の基礎控除:110万円
  • 相続時精算課税制度の特別控除:2,500万円
  • 合計:3,610万円

※相続時精算課税制度の特別控除分は、相続時に課税対象に加算されます。

ただし、相続時精算課税制度を選択すると暦年課税には戻れなくなるため、慎重な検討が大切です。

最後に

住宅取得資金贈与の非課税特例は、住宅購入を考えている方や、子や孫の住宅購入を支援したい方にとって有効な制度です。最大1,000万円もの贈与が非課税になることで、住宅購入のハードルを大きく下げられる可能性があります。

ただし、制度の適用を受けるためには、さまざまな要件を満たさなければなりません。不安がある方は専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

暦年課税、相続時精算課税制度について気になる方は、それぞれまとめた記事もございます。もしご参考になりましたら幸いです。

  • 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。掲載されている情報は、予告なく変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
  • 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、資産運用・投資・税制等について期待した効果が得られるかについては、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。弊社では、何ら責任を負うものではありません。
写真:萱谷 有香

監修者

萱谷 有香かやたに ゆか

叶税理士法人 東京事務所代表
税理士・上級相続カウンセラー

プロフィール
掲載記事

大学卒業後は、英会話教材を飛び込み営業により訪問販売しておりましたが、一生働ける仕事をしたいと思い税理士を目指しました。
不動産投資に特化した税理士事務所で働きながら、沢山の収益物件について税務と投資の面で多くの知識を得られたことを活かし、自分でも不動産投資を始めました。
現在では5棟の物件を保有しつつ、不動産投資家さんの気持ちがわかる税理士になるよう日々勉強し、色々な情報を集めています。
不動産投資専門の叶税理士法人https://tax.kanae-office.com/

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