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本記事に掲載された情報は、2019/08/01時点のものです。掲載されている情報は、予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
遺産相続について考え始めたとき、最初に気になるのは、子供への相続はどれくらいの割合になるのか?孫へも相続できるか?など、相続人となる親族の範囲やその優先順位、そして遺産分割の割合です。遺産相続に関しては、相続人の間で争いごとが起きないようにと、民法で基準となるルールが定められています。また、「自分には財産が無いから相続とは無関係だ」と思われる方も多いと思いますが、実は借金や連帯保証人の権利義務など「マイナスとなる財産」も相続することが法律で定められているのです。このような場合は「相続放棄」が可能ですが注意点もあります。今回は遺産相続や相続放棄について、詳しく解説していきたいと思います。
1. 遺産相続できる範囲はどこまでか?法定相続人の順位とは
遺産相続について詳しく解説していく前に、まず遺産相続の基本について覚えておきましょう。そもそも遺産相続とは、亡くなった方が保有していたお金や不動産などの財産を家族が引き継ぐことをいいます。民法では遺産相続ができる人のことを法定相続人と呼び、その範囲と順位を定めています。
法定相続人の範囲と優先順位としては、最優先となるのが「配偶者」です。配偶者は優先順位とは無関係に必ず相続することになります。配偶者以外の法定相続人については、次のように優先順位が定められています。
第一順位 | 「子」 「子」が亡くなっている場合:「孫」 「子」も「孫」も亡くなっている場合で「ひ孫」がいる場合:「ひ孫」 |
---|---|
第二順位 | 「父母」 「父母」が亡くなっている場合:「祖父母」 「父母」も「祖父母」も亡くなっており「曾祖父母」がいる場合:「曾祖父母」 |
第三順位 | 「兄弟・姉妹」 「兄弟・姉妹」が亡くなっている場合:「甥姪」 |
2. 遺産相続で子供や孫がもらえる割合は?
民法では、法定相続人が複数人の場合にそれぞれの相続人が遺産を相続できる割合についても定めています。これを「法定相続分」と呼びます。それでは遺産相続の割合の例を見てみましょう。
2-1. 妻と子供が遺産相続する場合
妻と子供が遺産相続する場合、法定相続分は妻が2分の1、子供が2分の1となります。
2-2. 妻と子供2人が遺産相続する場合
妻と子供2人が遺産相続する場合、法定相続分は妻が2分の1、子供は2人のため法定相続分となる2分の1のさらに2分の1なので、4分の1ずつとなります。
2-3. 妻と両親が遺産相続する場合
子供がおらず妻と両親が遺産相続する場合、妻が3分の2、両親が3分の1となります。(父が6分の1、母が6分の1)
2-4. 妻と孫1人がいて子供がすでに死亡している場合の遺産相続
子供がすでに亡くなり孫が遺産相続する場合、妻が2分の1、孫が2分の1となります。
2-5. 子供がいて妻がすでに死亡している場合の遺産相続
妻がすでに死亡している場合、子供がすべての遺産相続を受けることになります。子供が複数人の場合は均等に分配します。
2-6. 妻も子供もいない場合の遺産相続
妻も子供もいない場合は、両親(父母)がすべての遺産相続を受けることになります。(父が2分の1、母が2分の1)
2-7. 子供なしで妻・両親が死亡している場合の遺産相続
妻、両親がすでに死亡していて子供なしの場合は、兄弟・姉妹がすべての遺産相続を受けることになります。兄弟・姉妹が複数人の場合は均等に配分します。
2-8. 離婚した妻との間に子供がいて、再婚もしている場合の遺産相続
離婚をした妻との間に子供がおり、現在は再婚している場合の遺産相続では、現在の妻が2分の1、離婚をした妻との間の子供が2分の1となります。離婚をした妻はその時点で配偶者ではなくなるため、遺産相続を受ける権利はありません。
以上が法定相続分の基本的な遺産相続割合の例となりますが、必ずしも法定相続割合のとおりに相続しなければならない訳ではなく、遺言書や相続人同士の話し合いによって相続割合を変えることも可能です。
3.子供に遺産相続させたくない場合
遺産相続をお考えになる方の中には、何かしらの理由があって子供に遺産相続させたくないという方がいらっしゃいます。例えば、子供の年齢が若く財産の無駄遣いをしてしまいそうである、または子供から虐待や重大な侮辱を受けていた、子供の非行行為に改善が見られないなどの理由です。また、借金などマイナスの財産があるため、子供に遺産相続したくないという方もいらっしゃいます。
ここで、遺産相続の対象となる財産の種類としては、
- 現金、預貯金
- 不動産、投資信託、株
- 貴金属
などのプラスとなる財産と、
- 借金
- 未払家賃など
- 連帯保証人の権利義務
などのマイナスとなる財産の両方が対象となります。
遺産相続の対象となる財産 | |
---|---|
プラスとなる財産 | ・現金、預貯金 ・不動産、投資信託、株 ・貴金属 など |
マイナスとなる財産 | ・借金 ・未払家賃 ・連帯保証人の権利義務 など |
民法上、子供がいる場合、必ず子供にも法定相続分の遺産を受ける権利が発生します。その上で子供に遺産相続させたくない場合は、遺言書に「子供には遺産相続しない」旨を記載するという方法があります。しかし、子供には「遺留分」と呼ばれる遺産相続を受ける権利が認められており、遺留分を主張されることで子供に遺産が渡る可能性があります。遺留分の主張に対抗するためには、「遺産相続をさせない理由」が鍵となります。遺言書に子供から虐待を受けた、重大な侮辱を受けた、非行行為で多大な迷惑を被ったなどの理由を明記し、相続人から排除する制度を利用する方法です。民法では、相続欠落事由をいう制度が定められていて、相続欠落事由に該当した相続人は、相続する権利を失うことになります。
そしてもうひとつ、「子供自身に遺産相続を放棄させる」という方法があります。
4.遺産相続・遺産放棄に期限はある?
遺産相続に関わる手続きの中には、期限が定められているものがあります。期限が定められているケースでは、期限を過ぎてしまうことで不利益を生んでしまう可能性もあるため注意が必要です。具体的に期限が定められているケースを見てみましょう。
4-1. 遺産相続を放棄する場合の期限
財産の一切を引き継がないことを相続放棄といいます。相続を放棄することで、プラスとなる財産も借金のようにマイナスとなる財産もどちらも引き継ぐ必要がなくなります。
よくあるケースとしては、借金などのマイナスとなる財産がプラスとなる財産を超えてしまっている場合に相続放棄が選択されることがあります。プラスとなる財産だけ引き継ぎ、マイナスとなる財産は引き継がない、ということができないため、遺産相続をすることで相続人に損失が出てしまうような場合が起こり得るためです。
この相続放棄には手続きをする期間が定められており、「自分に相続する財産があると判明した時点から3カ月以内」と決まっています。相続放棄をするためには「相続放棄の申述」などの書類を家庭裁判所へ提出する必要があります。
4-2. 遺産相続を限定承認する場合の期限
遺産相続には「限定承認」と呼ばれる手続きがあります。限定承認とは、借金などのマイナスとなる財産があった場合、残された財産でマイナスとなる財産を清算してしまい、もしプラスとなる財産が残れば、それを相続人が相続するという遺産相続の方法です。
この限定承認の手続きにも期限が定められており、「自分に相続する財産があると判明した時点から3カ月以内」と決まっています。遺産相続を限定承認するためには「限定承認の申述」などの書類を家庭裁判所へ提出する必要があります。
遺産相続の限定承認で注意しなければならないのは、相続人が複数いる場合です。相続人が複数いる場合(共同相続人といいます)、遺産相続を限定承認する手続きは、相続人全員で行わなければいけません。例えば共同相続人のうち、普通の相続(単純承認)をしたいという人が一人でもいる場合、他の相続人も限定承認の手続きができなくなってしまうのです。そのため、複数の相続人で限定承認を行う場合は、共同相続人全員の意思を確認し、協力して手続きを行う必要があります。
4-3. 熟慮期間とは
相続放棄、限定承認には期限があることを解説しましたが、気になる点としては「自分が相続する財産があると判明した時点から3カ月以内」という期間の開始のタイミングではないでしょうか。
「自分が相続する財産があると判明した時点から3カ月以内」という期間のことを「熟慮期間」と呼びます。この熟慮期間で鍵となるのが、「自分に相続財産があると判明した時点」という点です。
例えば、自分の父(もしくは母)が死亡したとき、父(もしくは母)に遺産があることを知らなければ、そもそも相続について考えることはありませんし、当然ながら相続放棄という考えなど浮かびもしないでしょう。このようなケースの場合、何らかのきっかけにより父(もしくは母)に遺産があることが判明するまで熟慮期間は開始されません。
この「遺産」には借金などのマイナスとなる財産も含まれることはすでに解説しましたが、
死亡した父(もしくは母)にマイナス財産を含む遺産があったとしても、それを知らなかったと主張することはできます。
しかし、もし父(もしくは母)宛に借金の督促状などが郵便で届いていたけれども、自分には関係がないだろうと内容を確認していなかったという場合、「相続人は遺産にマイナス財産があることを知れる状況にある」と判断され、熟慮期間がカウントされてしまう可能性が高いのです。熟慮期間が過ぎてしまうと、相続放棄、限定承認の手続きができなくなってしまい、万が一遺産の中に多額のマイナス財産があった場合、それを支払う義務を課せられてしまいます。そのため、被相続人のマイナス財産(借金など)の有無については、事前によく確認することが大事です。例えば、金銭消費貸借契約書や督促状などの書類が保管されていないか、被相続人が保有している不動産の登記簿謄本に抵当権や根抵当権が設定されていないか、銀行口座から借金の返済と思われる定期的な支払いがなされていないかなども確認した方がよいでしょう。さらに、相続人であれば、被相続人の銀行やクレジット会社、消費者金融からの借り入れの有無について、信用情報機関に開示請求を行うことも可能です。
一方、熟慮期間には延長を申し立てることもできるようになっています。家庭裁判所に対して熟慮期間伸長の申し立てをし、認められれば3カ月から半年程度の期間、熟慮期間を延長することができます。熟慮期間伸長の申し立てが認められる理由としては、相続人が海外在住のため物理的に相続手続きに時間がかかってしまう場合、相続財産が膨大・複雑なため調査に時間がかかってしまう場合、相続人が多く協議に時間がかかってしまう場合などがあります。
5.最後に
今回は、遺産相続で子供や孫がもらえる割合、遺産相続の権利がある範囲やその優先順位、遺産分割の割合、遺産相続放棄などについて解説してきました。遺産相続放棄の期限「熟慮期間」には注意が必要です。遺産相続において相続人、被相続人の両者ともに不利益を生まず、相続への準備も着実に行うためには、被相続人が亡くなる前から話し合いの場を持ち、計画的に遺産相続を進めていくことが重要となります。相続問題や相続の負担を抑えるため、生前贈与で何年にも渡って少しずつ遺産を親族に贈与してしまうという方法を取られる方も少なくありません。
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渋谷本社、自由が丘オフィスを拠点に、東京都心及び、城南地区の地主や資産家に対し、『民事信託も活用した相続・相続への準備、不動産の売買や贈与時の提案』といった資産税コンサルティングを手がける。
毎週末、不動産に関する税務相談会も行っており、ただの税務理論だけでなく、不動産の現場にも精通する知識と経験を備えている。
マックス総合税理士法人(http://www.max-gtax.com/)
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