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分散投資の始め方:第3回

分散投資は意味がない?分散投資の有効性を考える【FP執筆】

分散投資

写真:橋本 秋人

記事執筆

橋本 秋人

FPオフィス ノーサイド代表
ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント

目次

「不動産小口化」完全ガイド

連載『分散投資の始め方』第1回、第2回では、資産運用の基本的な考え方であるリスク分散と、そのための手法のひとつである分散投資について解説をしてきました。長期投資において分散投資は、リスク軽減を図るための有効な手段であると言えます。
しかし、なかには分散投資は意味がないという主張を唱える人もいます。それはどのような理由からなのでしょうか。今回は分散投資否定論について解説しながら、分散投資の意味について考えます。

1. 分散投資否定の理由とは

分散投資を否定する理由として最もよくあげられるのは、「分散投資は儲からない」というものです。
確かに、分散投資は、性格が異なる複数の投資対象に投資をする投資手法のため、同時にすべての投資対象が利益を生じるとは限りません。
それは、もともと分散投資を取り入れる大きな理由は、リスクを分散させることが目的だからです。
投資商品の一部が値下がりしても、同時に反対の動きをする投資商品も持っていれば、値下がりする投資商品だけを持っているのに比べるとマイナス幅が抑えられることになります。

しかしその反面、相場が値上がりする局面においては、分散投資では、値上がりする投資商品と同時に足を引っ張る値下がり商品も持っているために、利益の幅も抑えられてしまうことになります。
また、リーマンショックのように、マーケット全体が暴落してしまうような局面では、たとえ分散投資を行っていたとしても、投資対象全体が大きく値下がりしてしまう場面も出てきます。
このような理由から、分散投資を否定する主張もでてくるのです。

2. 集中投資のメリットとリスク

分散投資と対照的な投資手法が「集中投資」です。

集中投資とは、ひとつの投資対象に絞って資金を集中する投資手法のことです。
集中投資の最も大きなメリットは、投資対象が大きく値上がりすれば、短期間で大きな利益が期待できることです。また投資対象がひとつのため、その投資対象の値上がりがそのまま投資全体の利益となります。
集中投資では、ある投資商品の価格が低い時点で投資を行い、相場を常にチェックしながら、その投資商品が高くなったタイミングで売却をすることによって利益の確保を目指します。
もちろん相場全体の動きも見ますが、集中投資では、投資商品の個別性が強く相場全体に連動しない場合も多いため、投資対象のみを重点的にチェックしていれば良い分、詳細に分析することが可能です。

反面、集中投資の最も大きなリスクは、投資対象がひとつのため、価格の変動も大きく、予想よりも実際のパフォーマンスが悪いと直接大きなダメージを受けることです。

また、集中投資では、投資対象を選択するために、詳細の情報を入手し分析する力量が必要であること、常に相場をチェックし続け売買のタイミングを計らなければならないという難しさもあります。
一言でまとめると、分散投資が『ローリスク・ミドルリターン』の投資手法であるのに対し、集中投資は『ハイリスク・ハイリターン』の投資手法と言えます。
また、集中投資はプロが行う投資手法で、分散投資は、初心者でも比較的容易に行える投資手法とも言えるでしょう。

3. それでも分散投資は必要か

投資の世界では、「卵は一つのカゴに盛るな」という有名な格言があります。
ひとつのカゴにすべての卵を盛ってしまうと、カゴが落ちたときにすべての卵が割れてしまいますが、卵を別々のカゴに分けておけば、そのうちの一つのカゴを落としても割れる卵はひとつですむので大きな損失は防げるという意味です。すなわち、一つの投資対象だけに投資をする集中投資より、複数の投資対象に投資をすることによりリスクが分散できる分散投資に優位性があるとされています。

また、分散投資は、短期的には大きな利益が期待できない反面、長期投資において、よりその有効性を高められます。
長い間には、投資環境もさまざまに変化します。
過去の歴史を振り返っても、中長期的には世界のどこかで、政治的・軍事的な地政学的リスクや大地震といった天災などは必ず起こっています。
長期的な分散投資では、そのような下落局面があったとしても、長い投資期間で見ると一時的な現象でしかなく、投資期間が終わってみれば、きちんと利益を確保できていれば良いという視点で投資を行うことができます。
さらに、分散投資、長期投資、積立投資の3つの手法を組み合わせることにより、相場の下落局面においては、投資商品を割安で取得することができます。これをドルコスト平均法と言いますが、長期投資で資産形成をするにあたって最も適した手法のひとつと言えるでしょう。

つまり「分散投資は儲からない」という主張に対しては、「確かに分散投資は短期的には儲からないかもしれないが、長期的には集中投資よりも儲かる可能性が高くなる」と言うことができます。
実は、この考え方は、資産運用を行いたい多くの人にとって重要なポイントです。

4. 分散投資は「長期間をかけ、確実に増やしていきたい資金」に向いている手法

そもそも分散投資と集中投資は、その目的が異なります。
分散投資は、「リスク分散の必要性」で解説した通り、長期間をかけ、確実に増やしていきたい資金に向いている手法です。教育資金、住宅資金、老後資金などがそれにあたります。
これらの資金は、短期的に大きく増やす必要はありません。時間をかけながらでも、リスクを抑えながら確実に増やしていくことが大切です。
それに対し、集中投資は短期間に大きな利益を得たいという目的のために行う投資手法で、じっくりと時間をかけて行う手法ではありません。

資産形成の目的によって、分散投資と集中投資を使い分けることはもちろん必要ですが、多くの場合は分散投資が資産形成に対して適切な投資手法と言えるのではないでしょうか。

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  • 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。掲載されている情報は、予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
  • 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、資産運用・投資・税制等について期待した効果が得られるかについては、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。弊社では、何ら責任を負うものではありません。
写真:橋本 秋人

記事執筆

橋本 秋人はしもと あきと

FPオフィス ノーサイド代表
ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント

プロフィール
掲載記事

保有資格:ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、終活アドバイザー(終活アドバイザー協会) 他

1961年東京都出身。早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。長年、顧客の相続や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。
FPオフィス ノーサイドhttps://fp-noside.jimdo.com/

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