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J-REITは少額から始められる不動産投資手法として注目されています。投資家から集めた資金で不動産を購入・運用し、その収益を分配する仕組みの投資方法です。
物件選びや管理を専門家に任せられる点もJ-REITの特徴です。不動産投資に対してハードルが高く不安に感じている方にとって、選択肢のひとつとなるでしょう。
本記事では、J-REITの仕組みやメリット・デメリット、そしてどのような人に適しているかを解説します。J-REITの特徴を理解し、自分に合った投資方法を選択してください。
REIT(リート)とは?
はじめにREITの仕組みを把握しておきましょう。
REITの仕組み
REIT(Real Estate Investment Trust)は、多くの投資家から集めた資金で不動産を購入し、その不動産から得られる賃貸収入や売却益を投資家に分配する「不動産投資信託」です。
J-REITとは
J-REITとは、日本の証券取引所に上場しているREITを指します。2001年に制度が開始され、REITに「JAPAN」の頭文字をつけてJ-REITと呼ばれるようになりました。
また、日本には証券取引所に上場していない「私募REIT」と呼ばれるREITも存在します。私募REITは一般投資家向けではなく、特定の投資家向けに募集・運用される場合が多く、情報開示が限定的です。
「REIT」と「REITファンド」の違い
REITファンドとは、複数のREITに分散投資する金融商品で、投資信託として販売されています。J-REITだけでなく海外REITにも投資が可能です。なお、REITファンドは必ずしも上場しているわけではありません。
REITとREITファンドの主な違いは、投資対象です。REITファンドが複数のREITに投資するのに対し、REITは個別の不動産投資信託です。投資家は特定のREITを選択します。
J-REIT(Jリート)とほかの投資方法との違い
投資商品は、J-REIT以外にもさまざまなものがあります。
J-REITと共通点のある以下の投資方法について、それぞれの特徴やJ-REITとの違いを説明します。
- 現物不動産投資
- 不動産小口化商品
- 株式投資
現物不動産投資との違い
現物不動産投資とは、マンションやアパート、戸建て住宅といった実物の不動産を購入し、家賃収入や売却益を得る投資方法です。
J-REITとの違いは所有権にあります。J-REITでは投資家に不動産の所有権はありませんが、現物不動産投資では投資家が所有権を持ちます。
運営方針を自分で決定できる点や、資産として不動産を保有できる点が、現物不動産投資のメリットです。しかし、初期投資額が大きく、物件管理の手間がかかるというデメリットも存在します。
不動産小口化商品との違い
不動産小口化商品とは、特定の不動産を1口数万円から100万円程度に小口化して販売する投資商品です。投資家は投資額に応じて賃料収入や売却益を受け取ります。
J-REITとの違いは、投資家が投資先の物件を自分で選べる点です。J-REITの場合は、あくまでもJ-REITの選定に留まり、自分で物件を選べません。不動産小口化商品なら、少額から投資物件の選定などの経験を積むことができます。
株式投資との違い
株式投資とJ-REITは、どちらも証券取引所に上場しているという共通点がありますが、投資対象が異なります。
株式投資は企業に出資する形で株式を保有し、配当金や株価の値上がりによる利益を得る投資方法です。一方、J-REITは不動産の運用による賃貸収入や売却益を得る手法です。
REIT・J-REITの投資対象
ここでは、REITやJ-REITの投資対象となる物件種類や国・地域について説明します。
REIT・J-REITの投資対象となる物件種類
REITやJ-REITの投資対象となる不動産は多岐にわたります。主なものとして、以下の物件種類があげられます。
- オフィスビル
- 住宅
- 商業施設
- 物流施設
- ホテル
- 医療施設
物件の種類によって、収益の安定性やリスクが異なります。
例えば、住宅は比較的安定した需要を見込めますが、商業施設などと比較すると賃料上昇の幅は小さくなります。一方、商業施設やホテルは景気の影響を受けやすいものの、高収益が期待できる場合もあります。
物件種類の特性を理解し、自身のリスク許容度や投資目的に合わせて選択しましょう。
REITがある国・地域
J-REITは日本国内の不動産が対象ですが、REITは多くの国・地域で展開しています。以下はREITのある国・地域の一例です。
- 米国
- オーストラリア
- 英国
- カナダ
- シンガポール
- インド
- フィリピン
- 中国
米国はREIT発祥の地であり、最大の市場規模を誇ります。アジアではシンガポールや香港のREIT市場が発達しており、近年はインド、フィリピン、中国でも上場REIT市場が始動しています。
分散投資の観点から、複数の国・地域のREITに投資することもあるでしょう。ただし、海外のREITを選ぶ際には、投資対象の国・地域の経済状況や為替リスクなどを総合的に判断することが重要です。
J-REITのメリット
前項まで、ほかの投資方法との違いやJ-REITの投資対象をお伝えしました。ここであらためてJ-REITのメリットを押さえておきましょう。
- 少額から不動産投資を始めることができる
- 分散投資の効果を得ることができる
- 専門家による運用で手間がかからない
- 流動性が高く売買しやすい
少額から不動産投資を始められる
J-REITのメリットのひとつは、少額から不動産投資を始められることです。
通常、マンションやアパートなどの現物不動産投資では、多額の初期投資が必要となります。投資初心者にはハードルが高いでしょう。しかし、J-REITであれば数万円から投資を始めることが可能です。
資金に余裕がない方でも、オフィスビルや商業施設といった物件に投資でき、不動産投資のメリットを得ることができます。
分散投資の効果が得られる
J-REITには、オフィスビルや商業施設、住宅など多様な物件を組み込んだ商品が多くなっています。
そのため、地域や用途の異なる複数の不動産に投資することで、リスクが分散される点がメリットです。特定の地域や物件の収益が下がっても、別の不動産が堅調なら、全体のダメージを抑えられます。
専門家による運用で手間がかからない
J-REITは専門家によって運用されるため、個人投資家が物件管理に時間や労力を割かなくてよいこともメリットです。
現物不動産投資では、建物の修繕計画や入居者対応などを自身で行うケースもあり、日々の管理や突発的なトラブルに追われるリスクがあります。
一方、J-REITの場合は運営会社が不動産の選定や管理を行うため、投資家は分配金の受け取りや売買のタイミングに集中できます。
流動性が高く売買しやすい
J-REITは証券取引所に上場しているため、株式と同様の方法で売買できる流動性の高さが魅力です。
現物不動産を保有している場合は、売却には時間がかかり、すぐに現金化できないリスクがあります。その点、J-REITは短期間で売買を完了できるため、急に資金が必要になった場合にも対応しやすいのがメリットです。
J-REITのデメリットとリスク
J-REITを始める際には、メリットだけでなくデメリットやリスクを知ったうえで投資判断をしましょう。
- 不動産市況の影響を受けやすい
- 運用する投資法人の倒産や上場廃止のリスクがある
不動産市況の影響を受けやすい
J-REITは、経済情勢や不動産市場の動向に左右されます。不動産価格の下落により、保有物件の売却価格や賃料収入が減少するリスクがあります。
例えば、経済不況時には物件の空室が増えて賃料収入が減少するかもしれません。その状況が続くと、投資家への分配金が減少したり、元本割れする可能性があります。
運用する投資法人の倒産や上場廃止のリスクがある
J-REITは、投資法人が運営を行うことで投資家に分配金を支払う仕組みです。その投資法人が経営不振に陥った場合は、倒産や上場廃止のリスクも考えられます。
仮に投資法人が倒産すると、投資家への配当が減少するだけでなく、出資した資金が回収困難になる可能性があります。
こうした事態を回避するためには、投資先の財務状況や運用実績を確認することが大切です。複数の投資先に分散投資を行い、ひとつのJ-REITへの依存度を下げることもリスク管理の有効な方法となります。
J-REITへの投資方法
J-REITへの投資は、基本的に株式と同じ流れで行います。
まずは、証券会社に口座を開設します。その後、証券会社の窓口やインターネット取引システムで、上場されたJ-REITの銘柄を指定して注文を出す仕組みです。
購入したいJ-REITの銘柄コードや価格帯を指定すれば、需要と供給がマッチした時点で取引が成立します。
購入後は、保有口数に応じて分配金を受け取れるほか、市場価格が上昇した場合には、売却によってキャピタルゲインを得られる可能性があります。
J-REITに向いている人
不動産投資にはさまざまな投資商品があり、個人によって適しているものが異なります。
ここまでの内容をふまえて、J-REITに向いている人を確認してみましょう。
J-REITに向いている人
J-REITに向いているのは、以下のような人です。
- 流動性の高い証券市場で売買したい人
- 複数の不動産に分散投資したい人
J-REITは、投資先を分散してリスクを抑えたい方に適しています。現物不動産投資では多額の初期投資が必要ですが、J-REITなら数万円から投資が可能で、複数の不動産に分散投資できます。
また、必要なときに現金化しやすい点を重視する方にも、流動性の高いJ-REITが向いています。
まとめ
J-REITは、少額から不動産投資を始められる投資手法です。専門家による運用で手間がかからず、分散投資の効果が期待できるため、不動産投資初心者にも適しています。一方で、J-REITでは不動産の所有権を保有できないといったデメリットもあります。
同じ不動産分野の投資もさまざまな種類があります。その中で、ご自身の投資スタンスに合った投資方法を選択することが大切です。
J-REIT以外に、少額の資金から始められて相続・贈与へのお取り組みにも活用できる不動産投資としては、不動産小口化商品もおすすめです。
「不動産小口化商品」についてさらに詳細を知りたいという方は、下記の記事に詳しくまとめています。
また、弊社では不動産小口化商品「Vシェア」を展開しています。
不動産小口化商品「Vシェア」は、個人では購入することが難しい都心エリアの商業地にあるオフィスビルを小口化し、1口100万円単位で、5口(500万円)から投資が可能です。分散投資の方法のひとつとして、不動産小口化商品の活用も検討してみてはいかがでしょうか。
- 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。掲載されている情報は、予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
- 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、資産運用・投資・税制等について期待した効果が得られるかについては、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。弊社では、何ら責任を負うものではありません。

監修者
橋本 秋人はしもと あきと
FPオフィス ノーサイド代表
ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
保有資格:ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、終活アドバイザー(終活アドバイザー協会) 他
1961年東京都出身。早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。長年、顧客の相続や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。
FPオフィス ノーサイド(https://fp-noside.jimdo.com/)
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