事業承継に専門家は必要?相談内容と選び方・探し方を解説
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中小企業庁の調べによると、全国の社長で70代以上が占める割合は年々増加しており、2018年には全体の28.1%が70代以上となっています。経営者の高齢化が進んでいるのは明らかで、今後数年で多くの経営者が後継者に事業を引き継ぐタイミングを迎えます。
しかし、経営者の多くが事業承継の未経験者であり、何から手をつけていいのか分からない場合が大半です。また、専門知識がないことを理由に、事業承継を諦めてしまう経営者も存在します。
事業承継を成功させる一番の近道は、事業承継にまつわる会計や法律の知識を持つ専門家に相談することです。そこで今回は、事業承継の専門家について、必要性や具体的な相談先を解説します。
残された従業員や取引先が安心して事業を継続できるよう、計画的に事業承継を進めましょう。
事業承継で専門家に相談する理由と必要性
まずは、事業承継にそもそも専門家は必要なのかを考えてみましょう。結論からいうと、専門家の手を借りることは必要です。その理由を解説します。
1. 事業承継は制度・手続が複雑
事業承継は、会社の規模や状況によって、進め方や手続の方法が大きく変わります。そのため、まずは経営資源やキャッシュフローといった会社の現状を整理することから始める必要があります。
具体的には、次のような内容の「見える化」が求められます。
・将来性やリスクを含む業界の見通し
・自社の強み、弱み
・不動産や株式などの資産状況
・負債の内容や規模(簿外債務の有無を含む)
・キャッシュフローの現状と見通し
・従業員の雇用状況
・株主の状況
さらに、事業承継税制や商業登記などの制度に沿って、現状をふまえながら株式譲渡や会社法による手続を検討します。税や法律の知識は必須であり、なかには専門家でなければ正しく理解・活用をすることが難しい制度も存在します。
2. 事業承継によるトラブルの防止
事業承継には株式の移転が欠かせません。しかし、準備が不十分なために株式の相続や贈与でトラブルとなることは、事業承継によくある問題です。
例えば、株式の分散による経営権への影響や、金融機関との融資トラブルなどが代表例で、最悪の場合は、取引先との取引継続が難しくなる事態も想定されます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
>「事業承継で起こりうるトラブル5選|失敗しないための対策と注意点」
3. 事業承継の補助金や制度の活用
事業承継を推進する目的で、各種補助金や、税制優遇のための制度が設けられています。専門家に相談することで、利用できる補助金や制度が分かるのも大きなメリットです。このような制度は、会社を経営しているだけでは触れる機会が少ないため、専門家へ依頼することで活用を検討しやすくなるでしょう。
事業承継に関わる専門家
ここまで、専門家に相談する理由と必要性を解説してきましたが、事業承継はどのような専門家に相談するのが適切なのでしょうか。事業承継の専門家になるための国家資格などは存在しないため、必要な知識や経験を持つ人や組織に依頼することになります。事業承継に関わる専門家は種類が多いため、代表的なものに絞って解説します。
1. 税理士
株式の譲渡に欠かせない自社株式の評価や相続・贈与税の試算を行ってもらえます。また、事業承継における負担軽減のサポートや、事業承継制度などの税制利用、承継後の税務サポートも依頼できます。
2. 弁護士
事業承継には、民法や会社法など、多くの法律が絡みます。弁護士に相談し、会社の状況にあわせた適切な法務アドバイスをもらうことで、トラブルの防止・解決につながります。
3. 司法書士
事業承継の商業登記などの手続を代行してもらえます。また、相続の場合は、相続登記や不動産登記の代行も依頼できます。
4. 中小企業診断士
中小企業診断士は、会社の磨き上げや経営支援、補助金の活用アドバイスなどが可能です。「事業承継5ヶ年計画(中小企業庁によって策定)」や、計画を立案する際のアドバイス、承継後の経営支援にも対応できます。
事業承継に関わる専門家を選ぶときのチェックポイント
事業承継に関わる専門家は、どのような基準で選べばよいのでしょうか。気を付けなければならないのは、専門家にはそれぞれ得意分野があり、税や法律の専門家だからといって、一貫して事業承継に詳しいとは限らないことです。具体的なポイントを解説します。
1. 目的に合った専門家であるか
事業承継の方法は大きく分けると次の3つです。
・子や孫に承継する「親族内承継」
・従業員などに承継する「親族外承継」
・第三者へ売却することで承継する「M&A」
誰に引き継ぐかによって行う手続や施策が変わるため、目的に合わない専門家に依頼してしまうと、期待した効果は得られないでしょう。日ごろから付き合いのある顧問税理士に相談する場合も、同様に注意が必要です。自社のニーズを満たせる専門家に依頼しましょう。
2. 適切な専門知識・スキルを持っているか
ひとくちに専門家といっても、スキルや専門知識の深さは人によって大きく異なります。例えば、個人事業主の税務相談を主としている税理士に、事業承継と法人サポートが適切なのかといわれると疑問が残ります。同じ考え方で、事業承継ではなく創業支援を行っている中小企業診断士が、相談相手として適しているとは限りません。
人によって得意分野が異なるため、専門家だから大丈夫ということはありません。事業承継にまったく関わったことがない専門家もいることを、頭に入れておきましょう。
3. 支払う対価は適切であるか
専門家によっては、法外な費用を請求される場合があります。そのため、相場観を知ることも重要です。しかし、ほとんどの経営者は事業承継を行ったことがないため、相場観といわれても、判断が難しい面もあります。
次章では、事業承継に関わる専門家の探し方を具体的に解説します。事業承継の問題を気軽に相談できるだけでなく、話を進めるなかで費用の相場観も分かってきます。
事業承継に関わる専門家の探し方
事業承継の専門家を探すには、弁護士や税理士を直接探すほかにも、事業承継の支援を行っている機関から紹介してもらう方法があります。外部の力をうまく借り、なるべく早い段階で事業承継の方向性を決めましょう。
1.「事業承継・引継ぎセンター」や「よろず支援拠点」などの公的機関を利用する
事業承継の問題を相談できる公的機関を通じて、専門家の紹介や派遣を行ってもらえるケースがあります。詳しくはホームページをご覧ください。
事業承継・引継ぎセンター:https://shoukei.smrj.go.jp/
よろず支援拠点:https://yorozu.smrj.go.jp/about/
2. 金融機関・取引先から紹介を受ける
融資を受けている金融機関や、既存の取引先から専門家の紹介を受けることもできます。事業を通じて、すでに信頼関係が構築されている相手なので、専門家の紹介においても一定の信頼を確保できます。うまくいけば、事業承継の実績や経験が豊富な専門家とマッチングでき、業界の事情に詳しい専門家を紹介してもらえる可能性もあります。
3. 事業承継支援を行っている企業に相談する
事業承継支援を行っている企業に相談するのもひとつの手段です。一番のメリットは、総合的なサポートが受けられることです。例えばボルテックスでは、税務や会計、法律の専門家と連携し、最適な事業承継のプランをご提案しています。不動産や生前贈与、各種税制優遇などを活用し、円滑な事業承継をサポートしますので、少しでも気になったらお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
事業承継で困ったときは専門家に相談しよう
事業承継の問題をひとりで抱え込んでいませんか。専門家へ相談せずに進めると、一時的な費用は抑えられるかもしれません。しかし、適切に対応できなかったことで結果的に負担が増え、法的な不備が見つかるなどのトラブルにもつながることもあります。
また、近年、M&Aに活路を見出す企業も数多く存在します。後継者候補がいない場合もM&Aを検討する必要がありますが、実施には交渉や手続の難易度も高まるため、専門家によるサポートがある方が安心です。
事業承継には5年から10年の期間が必要だといわれています。なるべく早い段階で、専門家や事業承継の支援機関に相談し、最適な事業承継の方法を検討しましょう。
※期待どおりの税務上の効果が得られない可能性があります。
※税制改正、その他税務的取り扱いの変更により効果が変動する場合があります。