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次期後継者へ繋ぐ
経営承継と株式承継の勘所

目次

事業承継の準備は、後継者選び、資産や顧客、ノウハウの引き継ぎなど多岐にわたります。円滑な事業承継を実現するには、漠然と考えるのでなく、早期に全体像を把握することが大切です。

そこで15年で300社以上の事業承継に携わったエスネットワークスの首藤迅亜様に、事例を踏まえながらご説明いただきました。

まず何から始めればよいのかを知ることが、事業承継を計画的に進めるための第一歩となるでしょう。

事業承継成功の3つのポイント

M&A市場は依然活況であり、経営者の高齢化、コロナによる経営環境の激変など考慮すると、今後も増加することが予想されます。しかし、創業者(経営者)の本音は、親族もしくは社内での円滑な事業承継を実現したいということではないでしょうか。創業者(経営者)の想いを実現するために、事業承継の準備をしっかりと進めることが必要です。

事業承継を成功に導く重要な考え方は3つです。

  • 事業承継は難しいものと捉え取り組む
  • 小さな判断や対策を積み重ねる
  • 事業承継は1人では成し得ないと心得る

事業承継で失敗をしている会社はたくさん存在します。「守成は創業より難し」という言葉が古くから残っているように、時代が変わっても、創業者が作り上げたものを次世代が引き継ぎ守ることの難しさは変わりません。事業承継とはそれほど難しいものであると理解して取り組むことが重要です。
また、迷いが生じる問題でもあり、完璧な理想像に向けて取り組みを実施しようとするとなかなか決断できず先延ばしになりがちな問題でもあります。そのため、できるところから着手して、小さな決断を積み重ねるほうが成功に近づくことができます。
そして、事業承継は決して1人では成し得ないものなので、渡す者、受け継ぐ者の最低2名で考えを共有し、コミュニケーションをしっかりと取りながら進める必要があります。この心構えで、早期着手を行うことが重要です。

難しい事業承継ですが、シンプルに捉えれば、誰に経営者を託すかの「経営承継」と、誰に株式を渡すかの「株式承継」、2つを確実に承継できれば事業承継は完結します。それぞれの承継のポイントを整理します。

経営承継の考え方と取り組み

経営承継においては、これさえ実行すれば問題なしというものは存在せず、百社百様の対応が必要となります。とはいえ、共通の考え方は存在します。共通の考え方として、後継者が役割をまっとうできる機会を与える(後継者自身は機会を生み出す)ことだと考えます。

後継者の役割とは、近江商人の「会社は預かりもの」という言葉に集約されていると思います。会社を私物化せず、他人のもののように丁寧に扱い、預かったときよりもきれいにして、お返しする、という考え方です。つまり、預かったときより企業価値を高めて、次の後継者に引き継ぐまでが後継者の役割です。

後継者は自分で会社を立ち上げるわけではありませんので、いきなり自分のやりたいことをやるわけにはいきません。次の順番で経営承継に取り組む必要があります。

  • 土台を知る:自社を正しく理解する
  • 旗を掲げる:リーダーシップを発揮する
  • 人の育成:人を育てることができる人を育てる

自社の理解については、理解しているようで実は正しく理解できていない後継者が多いです。デューデリジェンスといわれますが、客観的な目線で自社の強み弱み、今後のビジネスの機会、脅威となり得るものを把握。M&Aの買手と同じ目線で、できるだけ客観視することで理解が深まりますし、これが今後の経営方針を考える上での材料になります。また、後継者は自社の強みだけでなく弱みにも目を向けなければなりません。先代が一代で築き上げた立派なお城の陰には、少なからず弱みもあります。例えば、強烈なワントップの経営で成長した会社は、NO.2以下が育っていないという弱みがあります。後継者はこの強みと弱み、両方を受け止める必要があります。

そのうえで、ご自身の考えをもって、会社の進む方向性を考える必要があります。場合によっては、複数名の経営幹部候補と考えることもひとつでしょう。目指すべき姿を明確にして、中期経営計画で具体的な数字目標に落とし込みます。具体的にすればするほど意味のある計画となります。その目標を達成するために、各部門や役職の役割も明確になっていくはずです。計画さえ決まれば、これに向けて後継者はリーダーシップを発揮して、率先垂範していきます。

最後に、人の教育です。後継者の育成には時間がかかるため、会社を承継したと同時に育成を始めてもよいくらいですが、とはいえ会社を承継するのはまだ先です。そのため、まずは自分と同じ考えを持つ部下を2人以上育成します。そして、その部下がその下を育成、さらにその下を・・・と社員の育成ができる人の育成と仕組みを構築します。後継者が描くビジョンを同じ言葉で話せる人を増やす取り組みが重要となります。社内でご子息以外に会社を継げる人がいないと悩む社長も多いですが、経営者目線で考える機会を与えることが大切です。経験上、社員が30名いれば必ず1人は、後継者の素質がある人は現れます。

経営に関与する機会がなかった社員や親族に、経営に関与する機会を与えると急激に成長することはしばしばある話です。機会を与えることは、先代経営者の役割だと考えます。

株式承継のポイントと取り組み

歴史があり、利益を蓄積している会社ほど自社株の評価は高くなります。この株式は相続、贈与の対象になり、日本の税率は海外諸国と比較して高いために、株式承継=税金問題と考えがちですが、それは誤りです。節税目線で取り組むと失敗をすることもあります。株式承継は4つの順番でクリアすることが望ましいです。

1.後継者の問題

2.民法の問題(相続での権利)

3.会社法の問題(株式の権利)

4.税金の問題

最初に、後継者が決まらなければ株式を渡すわけにはいきません。ところが、いざ相続が発生すれば、民法では相続人(兄弟)の扱いは平等となります。相続では会社の引き継ぎに関係なく、相続人全員に権利が与えられるのです。道筋をつけておかなければ、後継者以外の親族にも株式が分散することになります。

また会社法の観点では、節税を目的に株式を分散させている会社においては、少数株主を無視しての事業承継は進められません。確実に議決権を後継者に承継する必要があります。

そこまで来てようやく、税金の観点になります。確かに税金は大きい問題ですが、究極は「払えればいい」のです。

節税主眼で考えると失敗する
株式承継の大切な3つのポイント

株式承継のポイントは次の3つです。

  • 株式は分散させない
  • 名実ともに事業承継を行うタイミングで株式を承継する
  • 相続では株式は残さず現金を残す

後継者には、責任と権限の両方を承継する必要があります。そのため、株式についても分散させず、できれば100%の株式を渡すくらいの心持ちが必要です。すでに株式が分散している会社については、株式を事前に集約することが望ましいです。

また、株価の上昇を懸念しての早すぎる株式承継も事業承継のリスクとなります。株式を渡したはよいが会社を承継しないケースや、後継者が若くしてご逝去するケースもあります。会社経営を左右する重要な株式は、社長が社長であるうちはしっかりと保有して、名実ともに事業承継を行うときに渡すことが肝心です。

また、株式を相続で渡そうとせず生前に承継は完結させます。時には株式を換金して、ほかの相続人には現金で残すことが、円滑な株式承継のポイントになります。

持株会社の活用

株式というのは、権利と財産の2つでできています。社長が保有し、後継者に確実に渡すべきは権利部分です。一方財産部分については保有し続けることで税金が高くなるため、権利だけ保有し財産は手放しても事業承継上は問題ありません。むしろ、権利と財産を分けて考えるほうが、事業承継がうまくいくケースもあります。

具体的な方法として、持株会社を活用する方法ですがあります。

社長が100%出資して親会社を作ります。そして新会社で借入を起こし、自身の本体会社(以下B社)の株式を売却。株式を換金して手元に現金を増やします。現金なら何かあったときの相続税の納付もできますし、株式の財産と権利を分けることができます。

権利部分では社長はまだ親会社である新会社を通じて、B社に議決権行使ができます。

その一方で財産ではB社株を手放しているので、手元の個人財産に高額かつ今後値上がりする可能性の高い財産はなくなります。後継者が決まったタイミングで、新会社の株式を渡して事業承継と株式承継を完了させられます。

よく質問を受けるのが、株価の高いB社株を新会社が多く持っていれば、新会社の株価も上がるのでは?という疑問です。ところが新会社は借金の多い会社ですので、借入が多いうちは株価の安い会社でいられます。また借金については、銀行ではなくグループ間、B社からできればなおよいです。作って間もない会社なら返済余力が少なく、銀行への返済は大変だからです。

返済原資について、B社からの配当金を増額してはどうか?という質問もありますが、この場合、本体会社・新会社ともに株価が上がるため望ましくありません。とはいえ、借りたお金は返済しなければいけませんので、持株会社に幾分かの事業収益をつけることは重要です。

持株会社活用の目的は、活用の仕方によっていくつかありますが、私は株式換金のために活用することをお勧めしています。株価の高い企業へと成長させたのは創業者なので、まっとうな対価を得るということは決して間違ってはいないのです。株式を換金して、現金を手元に置くことは、納税資金の確保と相続人の争いを避けるという観点で事業承継に寄与するのです。

事業承継税制は使うべきか?

未上場企業の株式承継で発生する贈与税、相続税を、要件さえ満たせば支払い猶予(または免除)するという、いわゆる事業承継税制を使うべきか相談を受けます。納税猶予制度ともいわれますが、使う場合にはほかの選択肢とあわせて準備と検討を慎重に行う必要があります。

■生前贈与で猶予の主な要件

・贈与時に代表権が移っていること

・後継者が役員就任から3年以上経過

・後継者年齢が20歳以上

・雇用の8割維持(現在緩和)

そのほかの要件を含め満たしている間は贈与税を払わなくてもよいのですが、先代が亡くなったときには株式は相続されたものとします。

■相続時の主な要件

・相続開始5カ月目時点で相続者が代表権を有していること

・対象株式の継続保有

・5年間は雇用の8割維持 上記要件はクリアしやすいと思う方も多いですが、落とし穴もあります。社長の跡継ぎが早くに亡くなった場合、要件が外れます。なぜなら、二代目が先に亡くなると相続人が孫になるからです。相続人となる孫にあたる人が、相続開始5カ月目時点で代表権を有することができる確率は低いでしょう。要件がクリアできなければ、猶予されていた贈与税を納めなければいけなくなりますので、事業承継税制は3代見据えて検討する必要があります。

株式承継の手順まとめ

株式承継の手順はこの4点です。

1.現状分析

2.課題の洗い出しと解決方針の決定

3.対策の選択肢比較(ホールディングス化や事業承継税制、相続か生前贈与など)

4.実行(税理士、司法書士、不動産鑑定士、弁護士、行政書士などプロと取り組む)

まずはしっかりと現状を把握します。その際、株価だけではなく、株主構成、株式取得の経緯など株主との関係値、定款などによる会社法上の取り決め、民法上の権利を確認するための家系図、そもそも事業としての見通しなどを確認します。

次に、株式承継をするにあたっての課題を洗い出します。課題に関しては、経営承継の観点、民法の観点、会社法の観点、税法の観点で考えます。

そのうえで、自社にあった対策方針を検討します。先ほどご説明をした事業承継税制や持株会社方式一つとっても手法はさまざまあり、それぞれの効果と留意点を検証していきます。また、場合によっては株式集約を優先します。

そして最後に実行です。実行の際には、必要に応じた専門家を動かしながら慎重かつ大胆に進めていきます。実行のエビデンスをしっかり残しておくことがポイントです。

まとめ

  • 事業承継は難しいものと捉えて取り組む。
  • 早期着手にまさるものはなし。積極的に後継者との対話を。
  • 後継者が役割を全うできる機会を与える。後継者は自ら機会を生み出す。
  • 事業承継対策は節税対策ではない。争わないための対策も必要。
  • 客観的な目線でのアドバイスをもらう。事業承継期は盲目になりがち。

事業承継はご自身の経営人生の締めくくりです。ご自身の納得のいく事業承継が実現できることを願っています。

※期待どおりの税務上の効果が得られない可能性があります。
※税制改正、そのほか税務的取り扱いの変更により効果が変動する場合があります。
※相続税の圧縮効果を含めた税務の取り扱いについては、個別具体的な事情に応じて適用が異なる可能性がありますので、税理士などの専門家にご相談ください。

事業承継支援とは
相続対策についてお悩みの方へ

監修者

首藤 迅亜 氏

株式会社エスネットワークス グローカル事業本部 2部2グループ長

経営者のご意向にあわせた事業承継計画の策定、事業承継に係る資本政策・組織再編の立案および実行支援、後継者および次期幹部候補の育成支援、次世代の経営体制の構築などに従事し、主に中堅中小オーナー企業の経営者および後継者の支援を行っている。金融機関への出向経験もあり、金融機関、商工会議所をはじめ多方面でのセミナー講師実績多数。経営者に寄り添うスタンスでのコンサルティングには定評があり、事業承継に関与した企業数は300社を超える。

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