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不動産投資を始める際に気になるのが「自己資金はいくら必要か?」という点です。ローンを利用する場合でも、ある程度のまとまった資金を求められることがあります。
本記事では、不動産投資における自己資金の定義や必要額の目安に加えて、少額資金で投資を始める方法、自己資金額に応じた具体的な物件種類まで詳しく解説します。不動産投資の初心者の方が安心して一歩を踏み出せるよう、分かりやすくご紹介します。
不動産投資における自己資金とは?定義と役割

不動産投資において自己資金とは、不動産を購入する際に、ローンを利用せずに自分で用意する現金のことを指します。具体的には、次の2つが自己資金を準備して支払うことが多いです。
- 頭金:物件価格の一部
- 諸費用:物件購入時にかかる手数料など
ここでは、頭金や諸費用の概要のほか、自己資金と預貯金(手元資金)の違いも解説します。
頭金とは物件価格の一部
頭金とは、購入する不動産の価格のうち、ローンを利用せずに自己資金で支払う部分のことです。
たとえば、3,000万円の物件を購入する際に、ローンで2,500万円を借り入れる場合、差額の500万円が頭金です。頭金を多く用意するほど、ローン借入額を減らすことができます。
頭金の金額は一律で定められているものではありませんが、物件価格の10~20%程度が目安とされています。
諸費用とは物件購入時にかかる手数料など
諸費用とは、不動産を購入する際に、物件価格とは別にかかる費用の総称です。具体的には、以下のような費用が含まれます。
- 不動産仲介手数料
- 登録免許税
- 司法書士報酬
- ローン事務手数料・保証料・団体信用生命保険料
- 印紙税
- 火災保険料・地震保険料
- 固定資産税の精算金
- 不動産取得税
不動産仲介手数料や火災保険料などは定額ではなく、物件の価格や規模によって金額が変わります。そのため、物件規模が大きくなれば諸費用も高くなる傾向があり、一般的には物件価格の3%~10%程度が諸費用の目安となっています。
諸費用は、一般的に現金で支払うことが多いものの、金融機関によってはローンに含めて借り入れできる場合もあります。不動産購入を検討する際には、物件価格だけでなく、諸費用も含めて資金計画を立てることが重要です。
自己資金と預貯金(手元資金)の違い
「自己資金」と混同しやすいものに「預貯金(手元資金)」がありますが、この2つは意味が異なります。自己資金は、不動産購入のために「実際に使う」現金を指します。たとえば、頭金や諸費用などです。
一方、預貯金(手元資金)とは、現時点で持っている預貯金全体のことです。また、手元資金とは、生活防衛資金や予備費として不動産購入後も手元に残しておくお金です。
つまり、預貯金の一部を自己資金として支払い、残りが手元資金となります。預貯金のすべてを自己資金として投入するわけではない点を認識しておきましょう。購入後のリスクに備え、一定額の手元資金を残しておくことが、安定した不動産投資をおこなううえで重要です。
不動産投資の自己資金はいくら必要?

不動産投資を始めるにあたり、自己資金がいくら必要か一概にはいえませんが、一般的には物件価格の15~30%程度が目安とされています。たとえば3,000万円の物件であれば、450万円から900万円程度の自己資金が目安です。
この程度の自己資金を用意できると、金融機関の融資の審査で有利になったり、金利優遇を受けられたりする可能性があります。また、借入額を抑えられるため、月々の返済負担を軽減し、キャッシュフローを安定させやすくなります。
ただし、15~30%はあくまで目安であり、物件の種類や購入価格、個人の属性、利用する金融機関によって必要な自己資金額は異なります。自身の資産状況や投資戦略に合わせて、適切な自己資金の割合を検討することが大切です。複数のパターンでシミュレーションをおこない、無理のない計画を立てましょう。
不動産投資で自己資金を多く用意するメリット・デメリット

不動産投資において自己資金を多く用意することには、メリットとデメリットの両方があります。どちらがよいかは、個々の財務状況やリスク許容度、投資の目的によって異なります。
自己資金を多く用意する場合のメリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。
自己資金を多く出すメリット
- 毎月のローン返済額と支払総額を抑えられる
- 金利上昇の影響を受けにくい
- キャッシュフローが安定しやすい
- 融資審査で有利になる可能性がある
- 投資対象の選択肢が増える
自己資金を多く用意する主なメリットは、ローン借入額を抑えられる点にあります。これにより、毎月のローン返済額が減少し、キャッシュフローに余裕が生まれます。総支払利息額も少なくなるため、長期的に見てコスト削減につながります。
また、借入額が少ないほど金利上昇の影響を受けにくくなり、将来的な返済額増加のリスクを軽減できます。さらに、自己資金が多いと金融機関からの信用度が高まり、借入時の審査で有利になったり、よりよい条件で融資を受けられたりする可能性があります。
自己資金が潤沢であれば、投資物件の選択肢の幅も広がるでしょう。自己資金額に応じた購入可能な物件例は、本記事の「不動産投資の自己資金額に応じた購入可能な物件例と価格目安」で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
自己資金を多く出すデメリット
- 手元の現金が減る
- 突発的な支出に対応しにくい
- 自己資金を貯めるまでに時間がかかる
- レバレッジ効果が小さくなる
自己資金を多く用意する場合のデメリットは、手元の現金が大きく減少することです。不動産投資では、購入後も固定資産税の支払いや突発的な修繕、空室発生時のローン返済など、予期せぬ支出が発生する可能性があります。手元資金が不足していると、これらの事態に対応できなくなるリスクがあります。
また、自己資金分をこれから貯める場合には、物件取得までに時間がかかり、機会損失につながるかもしれません。
さらに、自己資金を多く出すと、レバレッジ効果が小さくなる点もデメリットといえます。レバレッジ効果とは、少ない自己資金で大きな収益を狙うことです。
不動産投資の場合は、ローンを借りることで本来持っている金額以上の物件を購入でき、レバレッジを効かせられる点が魅力ですが、自己資金を多く出すとそのメリットは小さくなります。
不動産投資は自己資金が少なくても可能?フルローンの注意点

現時点で資産が多くない、あるいは手元に資金を残しておきたいといった場合に、少額の自己資金で不動産投資ができるのか気になる方もいるでしょう。結論からお伝えすると、自己資金が少なくても不動産投資を始めることは可能です。
自己資金が少ない場合は「フルローン」や「オーバーローン」を使う選択肢があります。ここでは、フルローンとオーバーローンの概要、利用する際の注意点を押さえておきましょう。
フルローン・オーバーローンとは
フルローンとは、物件の購入価格の全額を金融機関からの融資で賄うことを指します。一方、オーバーローンは、物件価格だけでなく、購入時にかかる諸費用も含めて融資を受けます。これらのローンを利用できれば、自己資金がほとんどなくても不動産投資を始めることが可能です。
ただし、融資審査のハードルは非常に高くなります。投資家自身の収入や資産状況、信用情報に加え、購入物件の収益性や担保評価などの条件がよい場合に、金融機関がフルローンやオーバーローンを認めるケースがあります。
不動産投資における自己資金ゼロのリスク
フルローンやオーバーローンは、高いレバレッジ効果が期待できる一方で、借入額が大きくなるため、毎月のローン返済額が高額になる点に注意が必要です。
空室が発生したり、賃料が下落したりすると、賃料収入だけではローン返済を賄えず、預貯金から補填しなければならない「持ち出し」が発生するリスクが高まります。
また、金利が上昇すると返済額が増加し、さらにキャッシュフローが悪化する可能性もあります。突発的な修繕費や設備の故障などの予期せぬ出費が発生した場合、手元資金が少ないと対応が困難になるかもしれません。これらのリスクを踏まえ、余裕のある資金計画が可能な物件を選ぶことが大切です。
不動産投資を少額の自己資金で始める方法

まとまった自己資金を用意するのが難しい場合でも、不動産投資を始める方法はいくつか存在します。ここでは、主な4つの方法を紹介します。
- 不動産クラウドファンディング
- 不動産小口化商品
- REIT(不動産投資信託)
- 中古戸建てや地方物件などの低価格物件
それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、自身の投資スタイルに合わせて検討しましょう。
不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングは、インターネットを通じて専門の企業が不特定多数の投資家から資金を集め、その資金を元手に不動産を取得・運用する仕組みです。
投資家は、1万円程度の非常に少額からプロジェクトに参加でき、運用によって得られた賃料収入や売却益の一部を、出資額に応じて分配金として受け取れます。物件の選定や管理は運営会社がおこなうため、投資家自身の手間はかからない点がメリットです。
ただし、投資である以上、元本は保証されていません。運営会社の信頼性や、投資対象となる不動産の収益性・リスクを十分に確認することが重要です。手軽に始められる反面、途中解約は難しい場合が多い点も認識しておきましょう。
不動産小口化商品
不動産小口化商品は、オフィスビルやマンションといった特定の不動産を1口あたり数十万円から数百万円程度の単位に分割して販売する金融商品です。投資家は、希望する口数を購入することで、その不動産の共同オーナーの1人となり、保有口数に応じて賃料収入や売却益を受け取れます。
一棟購入するのに比べて初期投資額を大幅に抑えられるため、個人投資家でも都心の優良物件などに出資しやすくなる点が大きな魅力です。商品によっては、現物不動産と同様に相続時の評価額が路線価で評価されるものもあります。
ただし、不動産クラウドファンディングと同様に元本保証はありません。空室リスクや価格変動リスクを回避しやすい物件の選定が重要です。
不動産小口化商品については、以下のページで詳しく解説しています。
REIT(不動産投資信託)
REIT(リート)は「Real Estate Investment Trust」の略で、不動産投資信託とも呼ばれます。投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設、マンション、物流施設など複数の不動産を購入し、その賃貸収入や売却益を投資家に分配する仕組みです。
証券取引所に上場されているものも多く、株式と同じように市場でいつでも売買できる流動性の高さが特徴です。数万円程度から購入可能な銘柄もあり、少額から分散投資が実現できます。運用は不動産の専門家がおこなうため、投資家自身が物件管理などをする必要はありません。
ただし、市場で取引されるため、株式と同様に価格変動リスクがあり、経済状況や市場の動向によって価格が上下します。また、投資法人の倒産リスクや金利変動リスクなども存在します。
中古戸建てや地方物件などの低価格物件
都心部の新築物件に比べて、地方にある物件や、築年数が経過した中古戸建てなどは、物件価格が安い傾向にあります。数百万円程度の物件も存在するため、少ない自己資金で不動産投資を始める際の選択肢となるでしょう。
購入価格が安い分、表面利回りが高くなる場合もあります。ただし、地方物件は賃貸需要が都心部より低い可能性があり、空室リスクが高まることもあります。
また、中古物件は購入後に大規模な修繕やリフォームが必要になるケースが多く、想定外の費用が発生する可能性を考慮しなければなりません。購入前には、物件の現地調査のほか、周辺の賃貸市場、将来的な人口動態などを入念にリサーチすることが重要です。
不動産投資の自己資金額に応じた購入可能な物件例と価格目安

用意できる自己資金の額によって、検討できる不動産投資の対象や物件種類は変わります。
自己資金別での対象と種類の一例は次のように考えられます。
自己資金 | 投資対象・物件種類 |
---|---|
100万円 | ・不動産クラウドファンディング ・ REIT ・ 不動産小口化商品(一部) |
500万円 | ・不動産クラウドファンディング ・REIT ・不動産小口化商品 ・ワンルームマンション |
1,000万円 | ・不動産小口化商品(複数口) ・区分マンション ・一棟アパート ・戸建て |
5,000万円 | ・不動産小口化商品(複数口) ・区分マンション ・一棟マンション ・オフィスビル(小規模) |
自己資金の金額ごとに、どのような投資対象が考えられるかを、以下で詳しく見ていきましょう。
自己資金100万円の場合
自己資金 | 100万円 |
---|---|
投資対象・物件種類 | ・不動産クラウドファンディング ・REIT ・不動産小口化商品(一部) |
自己資金が100万円の場合、現物不動産をローンで購入するのは、諸費用などを考えるとややハードルが高いかもしれません。
主な選択肢としては、少額から始められる投資対象が中心となります。具体的には、1万円程度から投資できる不動産クラウドファンディングや、数万円から購入可能なREITがあげられます。また、不動産小口化商品のなかにも、1口100万円程度から購入できるものがありますが、最低購入口数が設定されている場合もあります。
少額投資を通じて、不動産投資の値動きや分配金の受け取りを経験し、知識や感覚を養うことから始めるのが現実的といえるでしょう。
自己資金500万円の場合
自己資金 | 500万円 |
---|---|
購入可能な物件価格 | 約1,700万~3,300万円 |
投資対象・物件種類 | ・不動産クラウドファンディング ・REIT ・不動産小口化商品 ・ワンルームマンション |
自己資金を物件価格の15~30%と想定すると500万円あれば、投資の選択肢は広がります。引き続き、不動産クラウドファンディングやREIT、不動産小口化商品への投資も可能なうえに、現物不動産の購入も視野に入ってきます。
たとえば、地方都市や郊外にあるワンルームマンションや区分マンションであれば、物件価格1,000万~2,000万円程度で販売されている場合があります。500万円の自己資金で頭金・諸費用を支払い、残りはローンとすることで購入できる可能性が考えられます。
金融機関の審査次第ですが、レバレッジを効かせた投資を始めることが可能です。リスク分散を考えると、不動産小口化商品など複数の種類に分けて投資することも有効な戦略といえるでしょう。
自己資金1,000万円の場合
自己資金 | 1,000万円 |
---|---|
購入可能な物件価格 | 約3,300万~6,700万円 |
投資手法・物件種類 | ・不動産小口化商品(複数口) ・区分マンション ・一棟アパート ・戸建て |
自己資金が1,000万円程度になると、さらに多様な投資戦略を検討できます。
中古の区分マンションだけでなく、地方や郊外であれば、比較的小規模な一棟アパートや戸建てなども購入の選択肢に入ってくるでしょう。区分マンション投資と異なり、一棟物件は複数の部屋からの家賃収入が見込めるため、空室リスクを分散しやすいメリットがあります。
ただし、建物全体の維持管理や修繕の責任を負うことになるため、管理の手間やコストが増える点には考慮が必要です。
また、自己資金1,000万円をすべて現物不動産に投じるのではなく、不動産小口化商品に分散投資をし、リスクを抑えるのも有効な方法のひとつです。
自己資金5,000万円の場合
自己資金 | 5,000万円 |
---|---|
購入可能な物件価格 | 約1億6,700万~3億3,300万円 |
投資手法・物件種類 | ・不動産小口化商品(複数口) ・区分マンション ・一棟マンション ・オフィスビル(小規模) |
自己資金が5,000万円の場合は、不動産投資の選択肢が広がります。都心部にある比較的新しい区分マンションや、地方都市にある収益性の高い一棟マンション、あるいは小規模なオフィスビルなども検討の対象となります。
5,000万円もの自己資金があれば、さまざまな投資戦略が可能です。借入額を抑えて大きなレバレッジをかけずに安定収益を目指す戦略や、積極的に融資を活用して投資規模を拡大していく戦略などが考えられるでしょう。
ただし、投資額が大きくなると失敗した場合の損失も膨らむため、より慎重な物件選定とリスク管理が必要です。専門家への相談も有効な手段となるでしょう。
自己資金を抑えて投資可能な不動産小口化商品 「Vシェア」

自己資金を抑えつつ、優良不動産へ投資したいというニーズに応えるのが、ボルテックスが提供する不動産小口化商品「Vシェア」です。
「Vシェア」は、主に都心の商業地に建つオフィスビルを投資対象としています。通常、このような好立地のオフィスビルは取得価格が非常に高額となりますが、「Vシェア」は比較的少ない資金から投資が可能です。
以下では、「Vシェア」の具体的な仕組みや特徴について解説します。
1口100万円・最低5口から都心ビルに投資可能
「Vシェア」の大きな特徴は、1口100万円・最低5口(500万円)から購入でき、投資しやすい点です。通常であれば数億円から数十億円規模となる都心のオフィスビルへの投資が、個人の投資家にとっても現実的な選択肢となります。
投資家は保有する口数に応じて、対象となるオフィスビルから得られる賃料収入や、将来的な売却時の利益を受け取ることが可能です。ビルを一棟購入する場合に比べて初期費用を大幅に抑えられるため、投資のハードルが低いといえます。
また、都心のオフィスビルはテナント需要が安定している傾向にあり、空室リスクを軽減できる可能性がある点もメリットです。
自己資金を抑えた不動産投資でも安定運用は目指せる
不動産投資をおこなう際の自己資金は、頭金や諸費用に充てられ、一般的には物件価格の15~30%程度が目安とされています。自己資金を多く用意すれば返済負担は軽くなりますが、手元資金が減るデメリットもあります。
そのなかで、近年では少額の自己資金から始められる投資方法も増えています。特に、都心の優良オフィスビルに投資できる不動産小口化商品は、安定した需要が見込める傾向にあるため、魅力的な選択肢のひとつといえるでしょう。
ボルテックスが提供する不動産小口化商品「Vシェア」は、1口100万円・5口から、都心のオフィスビルへ投資できるため、自己資金を抑えつつ安定的な収益を目指すことができる可能性があります。
手元の資金を残しつつ、資産運用をおこないたい方は、ぜひ「Vシェア」をご検討ください。
※不動産投資には元本保証がなく、市場環境や運営状況によって損失が生じる可能性があります。
- 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。掲載されている情報は、予告なく変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
- 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、資産運用・投資・税制等について期待した効果が得られるかについては、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。弊社では、何ら責任を負うものではありません。

監修者
吉田 美子よしだ よしこ
Plus-プリュス- 代表
株式会社アドバンス・フィナンシャルプランニング 所属
日本では数少ない独立系FPとして、資産運用、相続、不動産、保険、リタイアメントプランなど年間延べ450組超のコンサルティングを実施。
キャッシュフローによる人生の可視化と正しい知識を身に付けることの重要性を女性FPの視点からお伝えしている。
Plus−プリュス−(https://www.fp-plus.net/)
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