「広告」から「企画」へパーパス経営で組織を新たなステージに【株式会社 スコープ 横山 繁 氏】

目次

小売店向けセールスプロモーションなど、総合企画事業を手がける株式会社スコープは、2024年4月にグループパーパス「発想力と実現力で、未来からほめられる仕事を。」を策定しました。これを機に、同社は既存の枠を超えた新規事業を数々リリースするなど、組織変革を実現しています。パーパスを基軸にした経営手法「パーパス経営」を、どのようにして具体的な成果に結び付けたのでしょうか。代表取締役社長の横山繁氏に伺いました。

お話を聞いた方

横山 繁 氏よこやま しげる

株式会社 スコープ 代表取締役社長

1962年、東京都生まれ。明治大学政治経済学部卒業後、総合広告代理店勤務等を経て、1992年に株式会社スコープに入社。2008年、実父であり創業者の横山寬氏の後任として代表取締役に就任し、分散した拠点の統合を図るなど、経営改革を推進する。2024年には「スコープグループパーパス」を策定。積極的な新規事業の展開や組織再編など、パーパス経営を実践している。
https://www.scope-inc.co.jp/

コロナ禍の危機感が組織変革の原動力に

現在、スコープでは2024年に策定したグループパーパス「発想力と実現力で、未来からほめられる仕事を。」の下、意識改革や事業刷新に取り組んでいます。

なぜ、スコープはパーパス経営を実践するのか。発端は危機感でした。2020年、コロナ禍が私たちの事業を直撃しました。スコープの祖業は小売店向けのセールスプロモーション。店内の装飾から什器、POPなどの制作に加え、プロモーション施策の企画やキャンペーンの運用など、小売店の販売促進をトータルで支援してきました。しかし、コロナ禍における外出自粛により、小売店の来客数は大幅に減少。多くの小売店がECなどの対面接客を伴わない事業に活路を見いだします。こうした中で、スコープは店頭プロモーションを中心とした業務の見直しを迫られました。

急速に変化する市場環境、多様化する顧客のニーズ。その中で明日への道筋を見いだすには、私たちがなぜ存在し、顧客にどのような価値を提供すべきかを明確にしなくてはいけません。そこで取り組んだのが、パーパス策定プロジェクトでした。

メンバーは、中堅の女性社員をリーダーに、若手で構成しました。自社の社会的存在意義や提供価値を見いだすには、スコープがどのような強みを有しているのかといった役員へのヒアリングや、創業以来の歴史をさかのぼらなくてはいけません。一方で、これからの時代や市場への見通しといった、未来への眼差しも必須です。だからこそ、若手中心に全社員一丸となった力を集結する必要がありました。

その末に、たどり着いたのが「発想力と実現力で、未来からほめられる仕事を。」です。スコープグループの強みといえば、既存事業を通じて培ってきた「実現力」。リアルやデジタルの垣根を越えた多種多様な手法で計画を具現化し、顧客の信頼を勝ち取ってきました。しかし、不確実性が高まる時代においては、新たなアイデアで市場を切り開く「発想力」がなくてはいけません。既存の強みである「実現力」と、これからの時代に必要な「発想力」をさらに磨くことによって、組織を末長く存続させたい。スコープのパーパスには、そうした強い思いが結実しています。パーパスの浸透へ向けた活動は現在も「パーパス推進委員会」に引き継がれています。

パーパス策定で、自社の「強み」を再発見

続いて、今年1月には、パーパスを基に企業スローガン「The Activator Company.」を発表。世の中が大きく変化する中で、新たな価値や機会を生み出すActivator(仕掛け人)であろうという意気込みを打ち出しました。

パーパスや企業スローガンの導入以降、スコープには新たな風が吹いています。「スコープとは何か」を突き詰めたことで、自社の新たな可能性やポテンシャルを見いだすことができたのです。

その一例が、新規事業の展開です。例えば、次世代デジタル派遣スタッフ「Robot-Michael(ロボット・マイケル)」は、見積書作成や労務管理などの業務を自動化するロボット(RPA)です。クライアントの人手不足や業務の属人化といった課題を解決します。Robot-Michaelの特徴は、スコープのスタッフが業務の棚卸しからロボットの開発・導入まで伴走してサービスを行うことです。そのため、クライアントに最適なロボットを提供できます。

スコープの主軸事業であるセールスプロモーションとロボットの開発。一見すると、関連が薄い事業に思えるかもしれません。しかし、「クライアント企業の現場に入り込み、最適なオペレーションを提供する」という仕事を、スコープはこれまでも手がけてきました。店内装飾の設計や施工には、クライアントの業務への理解や現場スタッフとのコミュニケーションが必要不可欠です。そうした中で蓄積したオペレーション最適化のノウハウは、ロボット開発においても大きな強みになっています。

デジタルや店舗で、現場発の新規事業が続く

また、BtoC送金サービス「WalletCho(ウォレッチョ)」も、スコープの保有するノウハウを基に開発されました。WalletChoは、企業のキャッシュバックキャンペーンの際に、応募者が受取方法をコンビニATM受取、銀行振込、電子マネー、デジタルギフトなどから選択できるサービスです。昨今、生活者の決済手段は多種多様です。しかし、キャッシュバックキャンペーンでは送金先が口座振込などに限られることが多く、応募者の不便につながっていました。スコープは企業のプロモーション施策の企画運営を手がけていたこともあり、送金先にまつわる課題が存在することを以前から把握していました。その知見を基にWalletChoが開発されましたが、現在ではキャッシュバックキャンペーンだけでなく、採用面接時の交通費の支払いやオンラインショッピングの返金対応などにも利用されています。今後、さらなる拡大が期待されるサービスです。

その他、賞味期限管理ツール「Expiry Management(エクスパイリー・マネジメント)」や小売店向け対話型AIコンシェルジュ「コトタグ®️」など、既存事業の知見を生かした新規事業は数多いです。また、デジタルソリューション以外にも、全国4店舗の小売店「munit(ムニット)」も展開中。アジアのコスメ、食品など、幅広い商品を取り扱っており、特に京都の河原町OPA店は韓国コスメでは関西有数の品ぞろえです。ここでは、長年、スコープが手がけてきた店舗づくりのノウハウが十二分に生かされています。

パーパス策定をきっかけに、スコープが数多くの新規事業をリリースできた最大の要因は、パーパスを社員一人ひとりの「自分ごと」にできたからだと思います。実際に、これまで紹介した新規事業は、その多くが現場の社員たちによって考案されたものです。仮に優れたパーパスを掲げたとしても、そこに込められた理念に社員たちが共感していなければ、組織を変革できません。そのため、スコープでは、社員一人ひとりがパーパスに基づいて自らの目的や目標である「マイ パーパス」を定めるなど、浸透施策に力を入れました。自社の未来像であるパーパスを、多くの社員が「自分ごと」として捉えてくれるからこそ、未来に向けた新たな動きが生まれるのだと思います。

現在、スコープは「総合企画企業」を標榜しています。かつては「総合広告企業」を名乗っていましたが、もはやスコープの事業は広告業にとどまりません。今後は、斬新な発想力と確かな実現力で、アイデアやビジネスを「企画」する企業に姿を変えていきます。スコープのパーパス経営は、まだ道半ばです。これからもパーパスを羅針盤にして、「未来からほめられる」新たな価値を生み出し続けていきます。

[編集]株式会社ボルテックスコーポレートコミュニケーション部
[制作協力]株式会社東洋経済新報社

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