TOKYO街COLORS VORTのある街-神保町編-

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東京の都心、千代田区に位置し、オフィスビルが軒を連ねる丸の内や大手町にも近接。それでいて古書店やレトロな喫茶店が点在し、懐かしい風景を残す神保町エリア。歴史的資源を生かした街づくりも進み、個性豊かな街は、歩くたびに新しい発見があります。
100以上の書店や出版社が集う“世界一の本の街”
千代田区の北部に位置する神保町エリアは、世界最大規模と呼び声が高い「本の街」。東西に走る靖国通りと南北を貫く白山通りが交差する「神保町交差点」を中心に、100を超える書店が立ち並んでいます。江戸時代の旗本、神保家の屋敷があったことが地名の由来とされていますが、本の街へと変貌していくのは明治時代に入ってから。かいわいに東京大学の前身である東京開成学校をはじめ、「専修学校(現・専修大学)」や「共立女子職業学校(現・共立女子大学)」などの学校が開設され、学生が多く集まったことから教科書などを扱う書店が増えていったようです。
2026年開業予定で本店ビルを建て替え中の「三省堂書店」は1881(明治14)年、靖国通りの南側に並行する「すずらん通り」に面した「東京堂書店」は1890(明治23)年にそれぞれ創業。また「神田古書センター」の1階に入る古書店「高山本店」や、洋古書専門の「北沢書店」も明治の頃より営んでいます。現在は、洋書のみならず歴史や文学、美術など専門分野に特化した古書店も多数点在し、国内外の本好きが希少な専門書を求めて訪れます。
書店の増加に伴って出版社も次々と誕生しました。法律系書籍に強い「有斐閣」は1877(明治10)年に開業した古書店「有史閣」が前身。大正時代に入ると「岩波書店」や「平凡社」、「小学館」、「集英社」などが創業し、今では大小さまざまな出版社が集積しています。
この「本の街」が一年で最もにぎわうのが、毎年10月下旬から11月上旬の約10日間にわたって開催される「東京名物 神田古本まつり」です。靖国通りに約100台の古書店のワゴンが並び、希少書籍の展示などを実施。期間内にはすずらん通りで全国各地の出版社などのワゴンが200台ほど並ぶ「神保町ブックフェスティバル」も開かれ、掘り出し物を楽しみに例年10万人ほどが来場します。さらに関連イベントとして「神田スポーツ祭り」や「神田カレーグランプリ決定戦」も開催。この期間は大勢の人々が神保町とその周辺にやってきます。
ビジネスパーソンや学生も喜ぶ食の名店がエリアに点在
神保町交差点の真下に東京メトロ半蔵門線および都営地下鉄三田線・新宿線が通る神保町駅があり、御茶ノ水駅や水道橋駅、九段下駅、小川町駅も徒歩10分圏内。各方面からアクセスしやすい神保町は、古きよき名店の味を目当てに訪れる人も多い街です。
神保町の町名は前に「神田」を冠した「神田神保町」となっていますが、これはこのあたりが現在の千代田区になる前まで「神田区」だったことから。そして神保町を含むこの神田一帯は今、「カレーの街」としても知られています。
一帯に400店舗あるといわれるカレー店のうち、最も古いのが1924(大正13)年創業の「スマトラカレー共栄堂」。インドネシアのスマトラ島のカレーをアレンジしたという濃褐色のカレーがファンを魅了しています。昭和の頃にはのちに神田カレーグランプリ初代王者となる「欧風カレー ボンディ(神保町本店)」や、ボリューム満点で懐かしい味と評判の「ライスカレー まんてん」なども開業。バラエティーに富むカレー店がビジネスパーソンや学生の舌を喜ばせています。
本の街だけあって、文豪ゆかりの名店が点在しているのも特徴です。1909(明治42)年創業の「ランチョン」は、作家で英文学者の吉田健一が通ったというビアホール。名物のビーフパイは、ビーフシチューを好んだ吉田が編集者との打ち合わせの時などに片手で食べられるようにしてほしいとリクエストして生まれた料理です。1945(昭和20)年からすずらん通りに店舗を構える「神田神保町天麩羅 はちまき」は、江戸川乱歩や井伏鱒二ら名だたる文豪が愛した店。また、多くの著名人のより所だった「さぼうる」や「神保町ラドリオ」は、どちらもすずらん通りそばの路地にあるレンガ造りのレトロな喫茶店で、書店巡りの後に読書に興じる客も見られます。
神保町は本とカレーに加え「喫茶店の街」とも称され、さぼうるや神保町ラドリオのような老舗のほか、近年は店内のカフェで棚に置いてある本を読みながら喫茶できる「神保町ブックセンター」や、1万冊を超える絵本がそろう「ブックハウスカフェ」など、この地らしいカフェも増えています。
歴史や景観を大切にしたまちづくりが進む
都心にありながらも戦火を免れた建物が残り、ノスタルジックな雰囲気が漂う神保町エリア。再開発においても自然や歴史的資源を生かした街づくりが行われています。2022年10月に開業した「九段会館テラス」もその一つ。1934(昭和9)年に建てられ、国の登録有形文化財に指定された九段会館の老朽化に伴う再開発によるもので、建物の一部を保存・復原するとともに地上17階地下3階建てのオフィスビルを新築。お濠を挟んで西側には科学技術館や日本武道館などがある北の丸公園が位置し、四季の移ろいが感じられる都会の新スポットとなっています。
九段会館テラス向かいの「九段南一丁目地区」でも再開発が進行中です。約2.3haの土地内の一部エリアにて2棟の高層ビルが建設予定となっており、すぐ横を流れる日本橋川を生かし、歩行者が緑と水に親しめる空間づくりを目指します。
また、白山通り沿いにある1928(昭和3)年開業の「学士会館(2024年営業終了)」は2025年春より本格的に再開発に着手。旧帝国大学に当たる国立7大学の同窓組織「学士会」の施設で、冒頭で述べた東京開成学校があった場所に旧館と新館が並び、こちらも国の登録有形文化財です。旧館が曳家(移動)によって保存される一方、新館は隣のビルとともに解体され、2030年頃に大型ビルが完成する予定です。
本にグルメと、多彩な顔を持つ神保町エリア。再開発を経てさらなる新しい顔を見せてくれることが期待されます。






[編集]株式会社ボルテックス コーポレートコミュニケーション部
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