2025年版 「世界の都市総合力ランキング」2位に躍進した東京の課題とは

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2025年12月17日、一般財団法人森記念財団都市戦略研究所が「世界の都市総合力ランキング2025」(Global Power City Index 2025:GPCI-2025)を発表しました。

この調査は2008年から実施されており、今回で18回を数えます。そして、今回の話題は何といっても、2016年から9年連続で3位だった東京が、2位の座を維持し続けてきたニューヨークを抜いて2位に浮上したことです。

そして1位はロンドンですが、東京はロンドンを追い抜くことができるのでしょうか。東京が乗り越えるべき課題を探ります。

上位3都市の強みと弱みを比較する

「世界の都市総合力ランキング」の作成にあたっては、「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」という6分野について、27指標グループ・72の指標が設けられ、それぞれについて偏差値方式でポイントを付けていきます。その総合ランキングで東京が2位に浮上し、これまで2位を維持していたニューヨークが3位に後退。1位は引き続きロンドンでした(図表1)。

総合順位の変遷では、調査発表が開始された2008年から2011年までは、ニューヨークが1位を保持していましたが、2012年にロンドンで夏季オリンピックが開催されたことを機に、ロンドンが1位に浮上して現在に至ります。

上位3都市の傾向を比較すると、前述の6分野のうち、ロンドンとニューヨークは圧倒的に強みのある分野を持っているのが特徴です。

たとえばロンドンであれば、「文化・交流」と「交通・アクセス」が1位で、偏差値が80と最高値を示しています。「文化・交流」分野については、「スタジアム数」が1位、「コンテンツ輸出額」と「アート市場環境」「美術館・博物館数」が2位、「ハイクラスホテル客室数」が3位。「交通・アクセス」分野では、「国際線直行便就航都市数」と「国内・国際線旅客数」がいずれも1位。「航空機の発着回数」「自転車での移動のしやすさ」がともに2位です。

一方ニューヨークですが、3位にランクダウンしたとはいえ、6分野のうち「経済」分野、ならびに「研究・開発」分野は1位を維持しており、偏差値では「研究・開発」分野が最高値です。「経済」分野においては、「GDP」「上場株式時価総額」が1位、「ワークプレイス充実度」が3位と高位ですが、「ビジネスサポート人材の多さ」が35位と低位であること、「GDP成長率」が6ランク下がって25位、「政治・経済・商機のリスクの低さ」が11ランクダウンして15位に後退した点は気になります。

「研究・開発」分野では、「研究者数」と「研究開発費」が1位、「主要科学技術賞受賞者数」と「スタートアップ数」が2位になるなど、「経済」分野も合わせて、いかにもニューヨークらしい強みが現れています。

では、こうした中で東京の強みは何でしょうか。東京の6分野のポイントを見ていくと、「居住」分野は2ランク上がって1位にランキングされ、「文化・交流」分野は6分野の中で最高値ですが、ロンドンに及ばないもののパリを抜き2位に躍り出ました。

「経済」分野では前年の10位から12位に後退しましたが、「環境」分野は11ランク上がって7位になりました。また、「研究・開発」分野の順位は前年同様3位を維持しています。

このように、東京はロンドン、ニューヨークに比べて突出した強みはありませんが、バランスの良さが光っています。かつて1位だったこともある「経済」分野は、この10年でランクダウンが続いていますが、ほかの5分野が総じてバランス良く上位にランキングされている点が、東京を総合力で2位に押し上げたと考えられます(図表2)。

1位になるための東京の改善点は?

では、東京がロンドンを抜いて、総合力ランキングで1位になれる日は来るのでしょうか。そのためには、現在の東京の弱点を確認しておく必要があります。

まず、総合力で一番弱いのは、順位が12位で偏差値も60と低い「経済」分野です。指標別に見ると、「GDP成長率」は22位と低いものの、前回調査に比べて24ランクアップしており、近年の日本経済の回復ぶりが現れています。

ただ、2位の「GDP」、3位の「上場株式時価総額」「世界トップ500企業」は前回調査に比べてスコアを落としている点が気になります。もっとも「上場株式時価総額」に関しては、2025年秋口から日本の株価が大きく上伸しているため、マーケットの堅調ぶりが続けば、2026年調査で改善される可能性はありそうです。

意識して改善しなければならないのは、ランキング中・下位にある「賃金水準の高さ(29位)」「優秀な人材確保の容易性(40位)」「ワークプレイス充実度(26位)」から成る『ビジネス環境』です。特に円安が進む中、日本企業の外貨建て賃金水準は総じて低めになりがちなため、海外からの優秀な人材確保に支障を来すおそれがあります。今後、日本企業がどこまで賃上げ対応できるかが、注目点でしょう。

経済と同様、前回調査に比べて順位を落としたのが「交通・アクセス」です。順位を1つ落として6位でした。「国内・国際線旅客数」や「航空機の発着回数」に改善が見られ、「公共交通機関の利用のしやすさ」は1位にランクされているものの、「空港アクセス時間の短さ」は5ランクダウン。大きな課題といえそうです。

3位の「研究・開発」分野においては、「スタートアップ数」がスコアを大きく伸ばして3ランクアップの4位。これにより『イノベーション』に対する評価が高まったものの、一方で「研究開発費」が48都市中、最も大きくスコアを落としました。また、「研究者数」や「世界トップ大学」は前回調査に比べてランクダウンしており、『研究集積』や『研究環境』の改善が課題となっています。

前回調査に比べて順位を1つ上げ2位になった「文化・交流」は、「観光地の充実度」や「ナイトライフ充実度」「外国人訪問者数」で高い評価を得る一方、課題としては、伸びしろが大きい「コンテンツ輸出額」(13位)を今後、どうランクアップさせていくかでしょう。高市政権の日本成長戦略会議で取り上げられた「重点投資対象17分野」にはコンテンツが含まれており、国策化される中で今後の動向が注目されます。

その他、「環境」分野は18位から7位へと大きく飛躍しました。今回から指標内容が変更された「環境への取組」(9位)「企業のサステイナビリティ評価」(2位)「生物多様性」(24位)などが寄与しています。しかし、大きくダウンした「1人あたりのCO2 排出量の少なさ」の見直しは急務といえそうです。

東京が世界一を目指すには、確かな強みとなった「文化・交流」分野を武器に、「経済」を立て直すことがキーポイントです。ビジネス環境の整備を行い弱みを克服し、都市経済をさらに成長させるイノベーションの芽を育てていくことが求められています。

[編集]株式会社ボルテックス コーポレートコミュニケーション部
[制作協力]株式会社東洋経済新報社

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