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Seiko House Ginzaの誕生で
銀座はさらに一歩先へ

目次

2022年6月10日、銀座のランドマークとして名高い和光本館が、「Seiko House Ginza」として生まれ変わりました。銀座のシンボルともいえる時計塔を擁し、歴史的価値も高い建造物のリニューアルは、銀座の街にどのような変化をもたらすのでしょうか。コロナの収束も期待される中、街の風格、ブランド力、活気はより一層向上するのでしょうか。商業施設新聞編集長であり、全国の都市開発の現状に明るい高橋直也氏にうかがいました。

他の追随を許さない圧倒的なブランド力

 江戸時代から商売の街として栄えた銀座は、いつの時代も新しい文化を生むハイカラな街であり、ハレの場として親しまれてきました。大きな駅ビルがあって駅周辺だけで用が足りてしまうような街とは異なり、銀座には、わざわざ行くところ、街そのものを楽しむところという性質があると思います。その証拠に、銀座の街を歩いている人はみな着飾っており、街自体が、訪れる人にとっての表現の場になっています。ファッションストリートとしての顔も持っているのです。
 
 常に華やかさと風格を維持しつつも、銀座は時代とともに変化を続けています。最近では、インバウンドによる爆買い需要のほか、ユニクロ、ダイソー、#ワークマン女子など、低価格帯ブランドの進出が目立っています。こうした現象は、銀座に進出することで自社のブランドイメージを上げたいという企業の思惑の表れであり、その戦略で大成功を収めたH&Mという前例もあります。銀座にはそれほどに絶大なブランド力があり、銀座に出店することには多大な価値があるのです。
 
 コロナ禍の影響も少なからずあります。自粛生活でECが急拡大し、たいていのものはネットで購入できる時代ですから、一流の品、最先端の流行を取り揃えているだけでは、人を呼び寄せる吸引力は維持できません。そこで銀座においてもミュージアムやナイトクラブなど、コト消費(体験型消費)を展開する企業が増え、ハイアットセントリック銀座や、マリオット・インターナショナルが運営する東京エディション銀座(2022年開業予定)といった高級ホテルの開業で、「滞在する街」としての魅力にも期待が高まっています。東京エディション銀座は銀座中央通りに立ち並ぶハイブランドショップの目の前にある好立地で、14階のルーフトップバーは、銀座のナイトライフの人気スポットになるでしょう。

Seiko House Ginzaの開業で
銀座への注目度が一層高まる

 そんな中ついに、銀座を象徴する名建築でありアイコン的存在として銀座4丁目交差点の一角で歴史を刻んできた和光本館が、セイコーホールディングスグループの発信拠点「Seiko House Ginza」に生まれ変わりました。セイコーの前身である服部時計店が、この地に時計塔を建て営業を開始したのが1894年。その後、改築中に関東大震災の被害を受け、1932年に新たに誕生したのが現在の二代目の建物で、2009年には経済産業省により「近代化産業遺産」に認定されています。今回、建物の歴史的価値と和光の店舗はそのままに、これまでクローズドだった5〜7階および屋上をリニューアルし、匠の技を体験できる工房や、時計塔の鐘の音を聞きながら銀座の街並みを見渡せるスカイガーデンなど、開放的な施設を展開しています。
 
 Seiko House Ginzaの誕生には多くの意味があります。まず長引くコロナ禍で出控え傾向にあった富裕層や高齢者を、再び銀座に呼び込むきっかけになります。また、Seiko House Ginzaがカンフル剤となって、近隣のラグジュアリー系ブランドにも恩恵が波及し、銀座全体のイメージ向上になることも期待できます。そうなれば、新たに銀座に進出したい、旗艦店を出店したいという企業も増え、さらに銀座に注目が集まるという好循環が生まれるのではないでしょうか。
 
 課題があるとすれば、銀座の街には「人がたまる場所」が少ないということです。銀ブラという言葉があるくらいで、観光やショッピングで練り歩くのが基本で、人が動き続けているような印象のある街です。前述のようにSeiko House Ginzaをはじめとする体験型施設が増え始めていますが、屋外には、人のたまり場となるようなスペースは多くないのが実情です。

周辺エリアの大規模再開発によるシナジー効果

 その視点で今後注目しておきたいのが、KK線(東京高速道路)の再生です。「銀座インズ」「銀座ファイブ」といった商業施設の上を走るこの道路は、廃止されることになっており、その跡地を歩行者中心の公共的空間にしようという案が持ち上がっているのです。銀座の中心からは少し離れる場所ではありますが、このプランが実現すれば、人の流れも大きく変わることが予想されます。
 
 また、日本橋、日比谷、築地など周辺エリアではすでに、大規模な再開発が進んでいます。日本橋では近年、シネマ・コンプレックスの開業などで、街の年齢層が大きく広がっており、今後は川沿いが人の集まるスポットになっていきます。日比谷でも「内幸町1丁目街区」という大プロジェクトが進行中で帝国ホテルの建て替えも控えています。築地もまだ時間はかかりそうですが、都の「築地まちづくり方針」の下、新しい文化を創造・発信する拠点として生まれ変わろうとしています。今後の変貌が気になるところです。
 
 こうした周辺エリアの進化は、銀座にもインパクトを与えます。銀座をこれまでよりも広い範囲で楽しむスタイルが、定着する可能性を秘めているからです。インバウンド客が全盛だったときに気づいたことですが、従来は銀座観光といっても純粋な銀座エリアのみで完結していて、その周辺まで足を延ばす人はあまり見受けられませんでした。しかし銀座は日本橋、日比谷、築地など発展していく街の中心に位置します。周辺の発展によって、銀座は広域銀座圏としての魅力を発信することができます。
 
 その上でなお、銀座四丁目交差点一帯には銀座の核として、超然とした象徴として、存在感と強力な求心力を保ち続けるエネルギーがあります。Seiko House Ginzaの向かいにある、銀座三越の活気を見れば、やはり銀座は別格な場所なのだとうならずにはいられません。コロナ禍でインバウンド客は激減しましたが、将来的に戻ってきますし、そのときには一層グレードアップした銀座が、訪れる人々を歓待することになるでしょう。

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お話しいただいた方

高橋直也 様
たかはし・なおや
1983年生まれ、札幌市出身。新卒で大手人材紹介会社に入社し、法人営業に従事。2010年10月に産業タイムズ社に入社し、一貫して商業施設新聞を担当。2021年1月から編集長。

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