2025年の不動産業界振り返りと2026年の不動産市況の展望【株式会社さくら事務所 会長 長嶋 修 氏】

目次

2025年も不動産価格は堅調に推移しました。マンション価格は高騰し、東京都心の新築マンション平均価格は、1億円に達しています。その一方で、地方の不動産価格は、地方大都市圏、駅近といった条件を満たせない限り、特に若者人口の流出が激しく、持ち家に対するニーズが大きく後退し、日本という大きなくくりで見ると、不動産動向は「二極化」の動きが生じています。2025年の不動産業界の振り返りと、2026年の不動産市況の展望を、不動産コンサルタント・さくら事務所会長の長嶋修氏に伺いました。

お話を聞いた方

長嶋 修 氏ながしま おさむ

株式会社さくら事務所 会長

1967年東京生まれ。1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」を設立。NPO法人日本ホームインスペクターズ協会(JSHI)の創設者・初代理事長として、日本のホームインスペクション普及と制度化に大きく貢献。第三者性を堅持した不動産コンサルタントの第一人者として、不動産購入のノウハウや政策提言に言及し、TV出演や執筆活動に加え、YouTubeチャンネルでも不動産・政治・経済などの情報発信を精力的に行う。

二極化が進んだ2025年の不動産

普通の会社員にとって、都心に新築マンションを買うのは「叶わぬ夢」であることを、改めて実感させられた2025年。12月の調査時点で、情報源によってブレはあるものの、1億円超えが当たり前になってきました。

誰が買っているのでしょうか、都心のマンションを諦めた人たちは、どこに住まいを求めようとしているのでしょうか、そして地方はどうなっているのでしょうか。「2020年にコロナ禍に突入して、リモートワークが広がり、オフィス不要論や地方移住に注目が集まった中で、都心のマンションは暴落するなどと言われていましたが、緊急事態宣言が明けた直後に回復傾向に入り、2025年は一段と上昇しました。ただし、世界の都市におけるマンション価格の上昇率を見ると、1位が大阪市、2位が福岡市でした。東京はだいぶ高めになった分だけ上昇率が落ち着いて、割安な大都市に資金が流れたと見ることができます。日本の不動産価格が割安というのはすべてに言えることで、特に大都市圏においてはマンションも戸建も、物流施設、ホテル、オフィスビルも、値上がりしました」

ただ、その一方で二極化が進んだのも事実で、首都圏をはじめとする大都市圏の不動産が堅調であるのに対し、その外縁部、あるいは地方は何も起きていないのが現実のようです。

「例えば東京23区内のマンションでも、世田谷区のバス便のような立地になると、上がらないどころか、下がっていたりもします。住宅地も駅前の価格は高いのですが、徒歩15分以上、あるいはバスを使わなければ行けない場所になると価格は上がっていないです。ましてや高度経済成長期に流行ったベッドタウン、都心からドア・ツー・ドアで1時間から1時間半かかるような立地ではなおさらです。富裕層、内外の投資家、相続対策などで不動産の購入意欲が強い人たちが求めるのは、とにかく立地なので、都心、大都市圏、駅近の物件に需要が集中しているのです」

2026年以降も堅調続く不動産市況

では、2026年の不動産市況はどうなるでしょうか。長嶋氏は、2025年を通じて価格が上昇した物件は、さらにもう一段高になる可能性が高いと予測します。

「オフィスビルもマンション・戸建も、とにかく2025年に価格が上がった不動産は、さらにその値上がりに加速がつくと見ています」

では、急落するリスクはないのでしょうか。

「そのリスクは低いと考えています。なぜなら、日本の不動産は割安だからです。購買力平価で見た円の実力は1ドル=110円程度ですから、今の為替レートは明らかに円安ですし、円高に振れて1ドル=110円になったとしても、それでも日本の不動産価格は割安ですから、外国人投資家からの買いは持続します。また、金利水準ですが、日本銀行は物価が上がっているのにもかかわらず、利上げを見送り続けています。この状況であれば、当面の間は政策金利が2%、3%まで上昇することはないでしょう。となれば、現在買われている不動産の価格は、さらに上昇する可能性が高いと考えられます」

長嶋氏は、2026年以降の注目材料として、金融システムにパラダイムシフトが起こることを挙げています。どういうことなのでしょうか。

「今、私たちが利用している金融の仕組みは、無限膨張システムと言ってもよいでしょう。信用創造という言い方もありますが、簡単に言ってしまうと、銀行が貸出を繰り返すことによって、世の中にある銀行全体の預金量が、最初に預けられた預金の額に対して何倍にも膨れ上がっていくことを意味しています。この仕組みは、まだモノが不足している時期、あるいは人口がどんどん増えている時期にはうまく機能したのですが、現在の先進諸国において、モノ不足に陥っている国は存在しませんし、世界的に人口増加のペースも落ちてきています。そうなると、今の無限膨張システムに則った金融の仕組みは機能しにくくなりますし、最悪の状況を想定すると、日米欧の先進諸国において、国家財政が破綻に追い込まれる恐れも生じてきます」

しかし、国家財政の破綻が現実化した場合、不動産などの資産価値に対してネガティブな影響はないのでしょうか。

「仮に国家財政が破綻したりすれば、当然のことですが、国債は単なる紙切れになってしまいます。金融システムのパラダイムが大きく転換すれば、私たちが日常生活で使用している現金そのものの価値もどうなるかわかりません。しかし、実物資産は別です。国債などペーパー資産の価値はバーチャルですが、不動産の価値はリアルです。金融システムのパラダイム転換や国家財政破綻といった先行き不透明感が強まる時代には、実物資産の価値が見直されやすいので、不動産にとってはむしろポジティブだと考えられます」

住まいはセカンドベストを狙う

2026年以降も堅調な推移が期待できる不動産市況ですが、そうなるとますます都心の好立地にある物件の購入は難しくなります。これから不動産を購入する人、特に住まいを探している人たちは、どうすればよいのでしょうか。

「都心でマンションを買うのはもはや簡単なことではないと思います。30歳前後でこれから住まいを購入する予定があって、特に都心などの大都市圏で働いている人たちは、セカンドベストの立地を狙っていくといいでしょう」

セカンドベストの立地とは、都心5区あるいは7区以外で駅から徒歩10数分の距離にある物件。都心から離れて郊外の神奈川県、埼玉県などになると、駅からの距離が若干近くなり、徒歩10分程度の距離にある物件を指すそうです。

「ただし、最寄り駅までバス移動を必要とする土地は、できれば選ばないほうが無難です。人口が街の中心部に集中する一方、外縁部の需要が低下していくため、資産価値が下がってしまうおそれがあるからです」

一方、オフィスはどうでしょうか。コロナ禍が一段落し、100%のリモート勤務は無くなったものの、働き方の多様化により、週2日、3日のリモート勤務を実施している企業は少なくありません。

「結局のところ、オフィスも立地で選ばれる傾向は今後、ますます強まっていくでしょう。リモートワークが普及したことによって、働く人たちの間に、オフィスへの出勤に時間と労力をかけることに疑問が生じました。そのうえでオフィスに出勤してもらうためには、ますますオフィスの立地が重要になります。全社員が週5日勤務のうち2、3日は出社するなら、オフィス面積を縮小するなど、柔軟に対応することも必要でしょう」

日本の不動産市況は、オフィス、住宅の別を問わず、好立地か否かによって、ますます二極化が拡大していくことになりそうです。

[編集]株式会社ボルテックス コーポレートコミュニケーション部
[制作協力]株式会社東洋経済新報社

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