テレワークの浸透によるオフィスを縮小・移転
|メリット・デメリットと注意すべきポイントは?
目次
テレワークの浸透でオフィスを縮小・移転するべきかな・・・
実際のメリット、デメリットを詳しく知りたい・・・
失敗しないための注意点も知りたい・・・
これまでは全社員がオフィスに出社して仕事をすること当たり前でしたが、今やテレワークの浸透により自宅などオフィス以外の場所でも仕事ができるようになりました。
昨今オフィスを縮小したり、郊外へ移転する企業も増えてきており、オフィスの在り方についても見直しを検討している企業が増えてきています。
この記事ではオフィスを縮小・移転することのメリット・デメリット、そしてオフィスを縮小・移転することで起こりうるリスク、そして縮小・移転の実例から見えてくる傾向や課題をご紹介し、最後に財務体質を見直すうえでの購入という選択肢についてもご紹介しています。
オフィスの縮小・移転で失敗しないために、ぜひ参考にしてください。
今のオフィス市場の需要や動向とは?
オフィスの縮小・移転について考える際に、まず知っておく必要があるのが現在のオフィス市場の需要や動向です。
オフィス市場の現在の状況や今後の見通しを知ることは、企業にとってどのような選択をするべきかの判断材料となります。
まずは現在のオフィス市場の状況や動向についてまとめていますので見ていきましょう。
オフィスの空室率は上がり賃料が下がっている
オフィスビル仲介大手の三鬼商事の発表によると、都心5区のオフィスの空室率は2020年6月までは1%台ととても低い水準でしたが、現在は新型コロナウイルスの影響でテレワークの浸透含め社会情勢が変わったこともあり6%近くまでに上昇しています。
それにともないオフィスの賃料も下降トレンドに入ってきています。
また、新たな再開発により今後大規模なオフィスビルが増えていくことが予想され、その結果2次空室が増えていくことが懸念されています。
出典:東京 | オフィスマーケット情報 | オフィス移転・賃貸ビルの仲介なら三鬼商事株式会社
テレワークの浸透でオフィス縮小・移転が増加
「働き方改革」はとても重要な課題のひとつであり、この働き方改革をきっかけにテレワークを導入する企業が増えました。
さらに2020年に入り新型コロナウイルスが流行したことでテレワーク導入の動きは加速し、パーソル総合研究所の研究調査によると緊急事態宣言前の2020年3月には正社員のテレワーク実施率は13.2%だったのに対し、同年11月には24.7%がテレワークを実施しています。
また、本社から離れた場所にサテライトオフィスを設置するという考え方もあり、多様な働き方が生まれています。
出典:「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」|パーソル総合研究所
オフィスを縮小してもライトサイジング(適正化)する流れが主流
テレワークが導入され会社に出社する社員が減ったからといって、安易にオフィスを縮小すればいいわけではありません。
オフィスという場所は生産性の向上やコミュニケーションによるチームワークの強化など、企業を経営するうえでは欠かせない役割を担っています。
そのためただ単にオフィスを小さくするのではなく、企業にとって重要な役割を担う部分はそのままに企業の規模や業務内容に合わせて働く環境を整えるオフィスのライトサイジング(適正化)が主流となっています。
オフィスワークで経営者が感じる課題とは?
オフィスワークのメリットとして、対面で仕事を行うことができるのでコミュニケーションが取りやすいという点や、仕事上の相談や疑問点の確認などすぐに行える点があげられます。
しかし、一方でオフィスワークにおける課題もあるのが実情です。
ここでは経営者が感じるオフィスワークの課題についてまとめました。
1.固定費がかかる
まずあげられる課題がオフィスの賃料が高いことです。
オフィスの賃料は毎月かかる固定費であり、アクセスしやすい立地であったりオフィスの面積が広いほど賃料も高くなることがほとんどです。
毎月の固定費を抑えることができれば、当然ながらコストの削減に繋がりますので企業にとってプラスとなります。
また、業績がいいときは問題ないとしても、業績が下がると賃料は重い足かせになってしまいます。
2.不要な面積が発生している
次にあげられるのは不要な面積が発生していることです。
テレワークや時差出勤などが普及し、働き方が多様化してきたことにともない、それまで使っていたオフィス内でも使っていないスペースが出てきています。
この不要な面積にもコストはかかっていますので、経営者としては削減したいと考えるのは当然といえます。
最後に、昨今の社会情勢に合わせた柔軟な働き方に合っていないということです。
従来は全社員が会社に出社して仕事を行うオフィスワークが主流でしたが、今や情報通信技術の発達により、場所や時間を選ばなくても仕事ができるようになりました。
働く側にとっても柔軟な働き方ができるということは、長期的に仕事ができることに繋がりますのでとても大切なポイントです。
今後テレワークが浸透していけば、今のような都心部で高い賃料を払ってまでオフィスを構えるメリットが少なくなるというわけです。
テレワークでオフィスを縮小させることのメリット・デメリットとは?
ここまでを見るとテレワークが主流となっていくのであれば、オフィスを縮小した方がメリットがあるのでは?と思うかもしれません。
しかし、メリットだけではなく正しくそのリスクも把握しておかないと、縮小によって余計に会社の経営を圧迫してしまったり、業務に支障が出る可能性も出てきます。
ここではオフィスを縮小させることでどのような影響があるのかをメリットとリスクの面からみていきたいと思います。
オフィスを縮小するメリット
まずはオフィスを縮小することでどのようなメリットがあるのかについてご紹介します。
メリット1.オフィスのコスト削減になる
オフィスを縮小させることの一番のメリットは、何といってもコスト削減に繋がることです。
オフィスの規模が小さくなることでそれまで支払っていたオフィスの賃料は安くなります。
さらにオフィスの規模が小さくなればその分、光熱費も下がります。
賃料や光熱費のような毎月かかる大きな固定費を抑えることで経費を削減することができ、それが企業の利益や経営力の高さに繋がる点は、とても大きなメリットといえます。
メリット2.新たな働き方を導入できる
オフィスを縮小することで、当然それまでとは違った働き方をすることになります。
従来は決まった時間に決まった場所で仕事をしていましたが、テレワーク導入やサテライトオフィスの利用で新たな働き方が生まれます。
新しい働き方を導入することで、会社で働く人材が集まりやすくなったり、家庭の事情などで仕事を続けることができなかった社員が継続して働くことも可能となるわけです。
またリアルなコミュニケーションを通じて、新しいビジネスチャンスの発掘に繋がるというケースもあります。
昨今では自分に合った働き方を求めて転職をする人が増えているため、人材の確保は企業にとってとても重要な課題といえます。
新たな働き方を導入することで人材確保につながる点は企業にとってメリットといえるでしょう。
メリット3.コロナ禍などによる感染リスクを下げる
2020年に入ってから日本でも猛威をふるっている新型コロナウイルスなど、人や物を介して広がっていく感染症の場合、オフィスに多くの人が集まること自体にリスクが生じます。
社内で感染症が広がってしまうと業務がストップしてしまい、企業にとっても大きな損失に繋がりますので極力避ける必要があります。
オフィスの縮小をして会社に出社する人が少なくなれば、実質的に感染症のリスクは減ります。そのため企業にとってもプラスになるといえるでしょう。
オフィスを縮小するデメリット
オフィスの縮小にはメリットがありますが、同じように業務効率が低下して生産性が下がるというデメリットもあります。
生産性の向上はとても重要な項目ですが、オフィスの縮小によって起こる「コミュニケーション不足」の問題や「新たな人的コストや経費の発生」は業務効率の低下を招く可能性があります。
また、テレワークは労働環境が個人によって異なることに加え、業務状況の把握がオフィスワークほどスムーズではありません。
そのためオフィスワークを行っていたときより業務効率の低下を招きやすいことがデメリットと言えます。
個人や部署としての業務効率が低下することは会社全体の生産性が低下することに繋がります。
オフィスの縮小を行う上で、どのように業務効率をあげ会社全体の生産性をあげるのかは重要な課題と言えるでしょう。
オフィスの移転・縮小事例とその課題
今後の見通しがはっきりと分からない中では、オフィスを縮小するか決断が難しいと思います。
そこで気になるのが実際にオフィスを縮小・移転している他企業の情報ではないでしょうか。
どのようなやり方で行っているのか、縮小したことでどのような影響があるのかはとても有益な情報です。
ここでは企業の事例をもとに、オフィスの縮小・移転の方法と効果、課題ついてご紹介していきます。
実際の事例を知ることでより具体的にオフィスの縮小・移転について考えやすくなるので、ぜひ参考にしてください。
既存オフィスを解約し縮小移転を進めた企業の例
オフィスの縮小・移転と聞いて一番最初に思い浮かべるのが、もともとあった既存のオフィスを解約して縮小・移転するという方法です。
実際にこの方法でオフィスの縮小・移転を行った企業3社の事例について見てみましょう。
富士通株式会社は移転をしてオフィス面積50%見直し
富士通株式会社では「Work Life Shift」という新しい働き方を率先して行っています。
これは時間や場所にとらわれずテレワークを主体とした働き方を基本にすることに加えて、オフィスの在り方についても自由に選択できるようにするというものです。
この「Work Life Shift」にともなって、富士通株式会社では2022年度末までにオフィス面積を50%減らすことが発表されています。
従来のオフィス面積を半減し、これからの時代に合わせた柔軟な働き方を取り入れるというわけです。
出典:「ニューノーマルにおける新たな働き方「Work Life Shift」を推進」
株式会社コロプラは移転をしてオフィス規模60%縮小
株式会社コロプラも2022年の2月にオフィスを縮小移転する企業のひとつで、現在本社のある恵比寿ガーデンプレイスから東京ミッドタウンへ移転すると発表しました。
これまでのオフィス規模から60%縮小し、子会社である「株式会社360Channel」と「株式会社コロプラネクスト」も同じ東京ミッドタウンへ集約することが発表されています。
規模を縮小し、子会社も含めて同じ場所に移転することでより労働生産性を高めることが掲げられており、今の流れに沿った転換といえます。
出典:「コロプラ、本社移転のお知らせ~「東京ミッドタウン」に移転~ 」
PIXTA社は移転をしてオフィス面積3分の1へ縮小
新型コロナウイルスの流行にともない1日に出社する社員数が従来の10分の1以下となったことから、2021年2月8日に本社を縮小移転すると発表したのがPIXTA株式会社です。
300坪ほどあったオフィスから移転し、3分の1の面積に縮小しています。
自席をなくしたり、オンライン会議用に個人ブースを設けて新たな働き方に対応するオフィスへ変更していることに加え、コミュニケーションをとるためのフリースペースは残すといった従来のオフィスの役割も維持するつくりになっているのが特徴です。
PIXTA株式会社では仮にコロナが終息したとしても、リモートワークを中心とした働き方に移行する方針なので、新たな働き方に合わせたオフィスの縮小移転を行ったことが分かります。
出典:「面積を3分の1に。ピクスタ社、オフィス縮小移転のお知らせ」
実例から見えてきた課題
以上の事例からもわかるように、目立った縮小・移転をしている企業の多くはIT関連の企業であり、その他の業種、業態の企業は大きく動いていないというのが現状です。
このことから、オフィスの縮小・移転、そしてテレワークの浸透にはいくつかの課題があることがわかります。
パーソル総合研究所の発表によると、テレワークをしていない理由について「テレワークを行える業務ではない」が45%と半数近くを占めており、業種別の実施率では情報通信業が55%と半数以上が実施している一方で、そのほかの業種では1割~3割程度にとどまっているということがわかりました。
つまり、業種業態によって大きく実施率が左右されてしまうのがテレワークであり、縮小・移転を考えるうえで課題となっているということです。
出典:「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」|パーソル総合研究所
テレワークでオフィスを縮小移転する際の注意点9つ
現在のオフィス市場や今後の動向、そして実際の企業の事例を見ても、今後オフィスを縮小移転することを前向きに検討する企業の方もいるかと思います。
その際、前述したオフィスの縮小移転のデメリット、課題のほかに、具体的に気を付けなければいけない注意点があります。
ここでは特に気を付けたい9つの注意点についてご紹介します。
- 部署ごとの働き方を調べる
- 従業員の意思や希望を聞く
- 働く場所と生産性についての評価をする
- 最適なオフィス面積を評価する
- オフィスの在り方や役割などの定義を見直す
- テレワークに必要なツールの確認をする
- 既存オフィスの契約を確認する
- 将来の経営戦略や事業戦略、採用戦略を見直す
- 既存オフィスの縮小移転する以外なプランも検討する
このように通信インフラの整備のほかにも、社内の状況を正確に把握することや今後の経営の見通しを立てるといったさまざまな視点で注意することがあります。
オフィスを購入することで、財務体質の見直しを行う
さて、今まではオフィスの縮小・移転についてまとめてきましたが、実際に移転を考えるときに検討したいのがオフィスを購入するという考え方です。
オフィス自体を購入することで会社の財務体質の見直しを図ることができます。
これはどういうことかというと、たとえば購入したオフィスを賃貸として貸し出すといことです。
賃貸として貸し出すことで本業以外での利益を確保することができ、強い財務体質になるというわけです。
特にオフィスが需要のある立地にあれば、長期にわたって不動産収入を得ることができるのは大きな強みとなります。
万が一本業での業績が思わしくなくても、不動産収入や賃料収入といった本業とは別の事業で利益を生み出すことができれば、総合的に見て会社のマイナスは少なくなります。
また、移転した際に長期間オフィスを賃貸することと比較し、購入した場合のキャッシュアウトの費用が少なくなるケースがあります。
これは賃貸の場合、賃料を払った分すべてが支出となりますが、購入した場合は最終的に企業の財産としてオフィスが残り、結果、メンテナンスコストやローンの金利コストなどを支払うだけになるためです。
さらに財産として残ったオフィスを前述のように活用することができます。
企業にとってはリスクヘッジになりますので、オフィスの縮小・移転のほかにもオフィス購入を行うのも会社の利益に繋げるための1つの方法です。
まとめ
ここまでテレワークによるオフィスの縮小・移転についてのメリット・デメリット、そして注意点などについて紹介してきました。
テレワークの浸透に加え、コロナ禍の影響で社会や生活様式も大きく変わってきています。そのため、今後より場所や時間にとらわれない柔軟な働き方が求められるようになってくるでしょう。
目まぐるしく変わっていく社会の中で、オフィスの在り方をどのように考えるのかは非常に大切なポイントであり、ほとんどの企業が考えなければならない課題ともいえます。
オフィスの縮小・移転についても単なるコストの削減だけではなく、しっかりと企業に合わせて行うことで新たな働き方による企業の生産性の向上や人材の確保に繋がるはずです。
この記事を通して企業にとってプラスとなるオフィスの縮小移転の方法を考えていただければ幸いです。