オフィスビル投資に注目!
マンション・アパートへの投資との徹底比較
目次
不動産投資の王道と言えば、区分マンションや一棟物アパートなどの居住用収益物件の運用でした。しかし、不動産価格の上昇基調を受けてオフィスビルを資産運用先として選ぶ人も増えてきています。ここでは、資産運用先として居住用の区分マンションや一棟物アパートと比較してオフィスビルにはどのようなメリット・デメリットがあるか探っていきます。
1.資産運用先としてオフィスビルが注目される背景
不動産投資と言えば「区分マンションやアパートのオーナーになる」というイメージが強いかもしれません。個人投資家の多くは、運用先として区分マンションやアパートを選んでいる傾向です。しかしリーマンショック直後から2010年代前半のころのような「旨味」のある運用先は少なくなってきている地域も多いのではないでしょうか。
たしかに都心にある区分マンションは活発に取引されています。しかし一棟物アパートは郊外に建てられるケースが多く、人口減少の影響で空室リスクに苦しんでいる物件も少なくありません。また2015年1月1日から適用された改正相続税法の影響によりタックスメリットを目論んでのアパートが大量に供給されたことも空室率上昇を招いていると言えます。
そんな中、注目されているのがオフィスビルへの不動産投資です。2012年末から続く緩やかな景気回復を背景に企業業績が大きく伸長したことによって雇用者数の増加によるオフィスの増床需要や業務効率化を目的にオフィスを再編する需要が上昇。それを受けて東京都心部の地価上昇とオフィスビル需要の高まりによるオフィス賃料の上昇が約7年間に渡り続きました。
オフィスビルへの不動産投資は、キャピタルゲインとインカムゲイン双方が狙えるとして一部の投資家の耳目を集めたのです。
2.オフィス用と居住用の比較
まずはオフィス用不動産と居住用不動産を各項目別に包括的に比較してみましょう。一覧にすると以下の通りです。
項目 | オフィスビル | 区分マンション | アパート |
---|---|---|---|
初期コスト | × | ○ | △ |
融資の審査基準 | × | ○ | △ |
管理、修繕費 | △ | ○ | △ |
入居者との費用負担 | ○ | × | × |
空室リスク | △ | ○ | △ |
売却価格 | ○ | △ | × |
・初期コスト
一般的に初期コストが大きくなるのは「オフィスビル>アパート>区分マンション」の順になります。
・融資の審査基準
金融機関から借り入れするための審査基準は、物件価格の並びと同じく「区分マンション>アパート>オフィスビル」の順に通りやすい傾向です。(属性は考慮せず)
・管理、修繕費
区分マンションが低くアパートやオフィスビルは延床面積における費用で考えれば同程度といえます。
・入居者との費用負担
近年居住用賃貸不動産では、入居者とオーナーの負担割合において入居者有利な傾向です。退去時の原状回復費用や設備の修理費用などの場面でオーナーが負担するケースが増えています。一方、オフィスビルでは退去時の原状回復費用は原則テナント側の負担です。
・空室リスク
立地や物件にも依存しますが「アパート>オフィスビル>区分マンション」の順に高い傾向です。
・売却価格
立地や物件によって大きく変わりますが木造が多いアパートよりRC構造の区分マンションやオフィスビルのほうが有利な傾向です。特にオフィスビルは商業地に建っているケースが多いため、立地によっては値上がりしている可能性もあるでしょう。
3.資産運用先としてのオフィスビルのメリット
先ほどの一覧を見てもわかるように、同じ不動産投資でも居住用と事業用ではかなり性格が異なります。その違いを踏まえたうえで資産運用をしなければあてが外れてしまう可能性もあるため注意が必要です。資産運用先としてのオフィスビルのメリットは、以下の点が挙げられます。
3-1.ベースとして高い賃料
オフィスビルの賃料は、区分マンションやアパートの家賃を大きく上回るのが一般的です。オフィスビルはテナントの事業のために供されるので、付加価値を生む場と考えられます。一方、居住用物件は生活の場です。その差が賃料の差となって現れます。賃料が景気の影響を受けて上下しやすいのも特徴です。居住用は生活の場なので家賃は景気動向によってあまり左右されません。
一方、ビジネスの場であるオフィスビルでは、賃料はリニアに影響を受けます。コロナショック発生前の各種経済指標では、賃料は上昇基調にありましたが今後の指標に注意が必要です。
3-2.賃料増額交渉が可能
借地借家法で「賃料の増減請求権」はオーナー、入居者ともに認められていますが区分マンションやアパートなどの居住用物件で契約期間中に増額請求するのは現実的に難しいといえるでしょう。なぜなら実際は現入居者が退去して新しい入居者が決まったときに賃料増額をするケースが多いからです。オフィスビルの場合は、ビジネスの場面なので居住用に比べればハードルは下がります。
ビジネスライクに交渉は可能です。特に賃料上昇局面ではオーナー側に追い風が吹く傾向があります。
3-3.定期借家契約により賃料滞納リスクなどを防げる
建物の借家契約は、普通借家契約と定期借家契約の2つです。定期借家契約とは、契約期間に定めがある借家契約で一定の決められた契約期間が到来すれば借家契約が終了します。もちろん再契約も可能です。普通借家契約の場合、オーナーからの解約や更新の拒絶は「正当事由」がない限りできないものと定められています。
そのため賃料滞納や問題行動があっても入居者から部屋を明け渡してもらうことが非常に困難なのです。その点、定期借家契約はメリットが多いのですが国土交通省の公表している「平成24年度住宅市場動向調査報告書」によると居住用の場合の普及率は3%しかありません。つまり商習慣で普通借家契約が選択されているのです。
逆に事業用では定期借家契約が一般化しています。そのため賃料滞納リスクやテナント信用リスクを回避することができるのです。
3-4.居住用と同じ税制メリットがある
オフィスビルには、区分マンションやアパートと同様の税制上の優遇措置があります。所得税は、経営開始当初は帳簿上損益収支が赤字になることが多い傾向です。しかしこの赤字は他の所得と通算できるため、課税所得が少なくなります。これは減価償却費などの効果による帳簿上の赤字のため、実際に赤字になるわけではありません。
4.資産運用先として居住用マンション・アパートのメリット
オフィスビルに対して、居住用の区分マンションやアパートのメリットは何でしょうか。オフィスビルと比較したときの最大のメリットは、賃料収入が景気動向に左右されることはなく安定していることです。オフィスビルはビジネスの場ですが居住用は生活の場となるため、景気動向によって賃料が上下することはほとんどないと言えるでしょう。
このような資産運用先としてのメリットを区分マンションとアパートに分けて見ていきます。
4-1.区分マンション物件の3つのメリット
・少額から始められる
物件価格がアパートやオフィスビルと比べて安価なため、金融機関からの借り入れを利用すれば自己資金が少額からでも始めることができます。さらに、借入金という他人資本で投資ができることから利益率が高くなるというメリットにもつながります。
・維持管理コストが低い
ランニングコストとなる管理費や大規模修繕積立金など他の区分所有者と出し合って費用を捻出するため、アパートやオフィスビル(一棟物)に比べて維持管理コストは低くなります。これも利益率の増加につながってくるメリットです。一方で、ビル一棟で区分だけの所有であることから、個人の意見で修繕をするといったことが実施しにくい面があることは頭に入れておきましょう。
・流動性リスクが低い
立地や物件によって異なりますが「物件価格が低くなる分、売りたいときに売れない」といった流動性リスクは低くなります。また、今後は少子高齢化が促進することで単身者の増加が考えられます。区分でも単身者マンションだとさらに需要は高くなるでしょう。
4-2.アパート物件の3つのメリット
・利回りが比較的高い
立地や物件によりますが、区分マンションに比べると部屋数の多いアパート物件は家賃収入が多くなることから、利回りは高い傾向にあります。また、中古や都心から離れたエリアのアパートになると購入価格が低くなることから、さらに利回りがよくなります。ただし、中古や地方は空室リスクが高くなることに注意が必要です。
・建物が老朽化しても土地が残る
区分所有ではなく一棟まるごとオーナーの所有物件になるため、仮に建物が老朽化して無価値になっても土地の価値は残ります。その土地に新たな物件を建てたり、土地を売却して資金化したりすることも可能になります。
・賃料収入がゼロになる可能性が低い
区分マンションと違って入居者が複数いるため、分散投資になり賃料収入がゼロになる可能性は低いでしょう。部屋が多いことから満室になることが少なくなるかもしれませんが、少しでも家賃収入があるということは借入金の返済負担が減るということでもあります。
5-1.物件価格の高さ
エリアや規模にもよって異なりますが価格の高さが一番の問題と言っても過言ではないかもしれません。物件によっては数億から数十億、時には100億円以上というスケールになるため、そう簡単には踏み出せないのではないでしょうか。また金融機関からの借り入れを想定しても審査基準はかなり厳しいものになります。
5-2.景気の影響を受けやすい
前にも触れましたが景気悪化・賃料下落局面ではマイナスに働きます。
5-3.テナントの面積が広いと退去の影響が大きい
一棟物アパートのように何部屋かあることは、リスクの分散化になります。オフィスビルも同様ですが物件によってはテナントの面積が広く退去となると影響が大きい場合もあります。
5-4.居住用にはある税制メリットがない
区分マンションやアパートの場合、「住宅用地」として固定資産税・都市計画税の軽減措置が受けられますがオフィスビルは住宅ではないため、同様の軽減措置はありません。
6.資産運用先として居住用マンション・アパートのデメリット
居住用の区分マンションやアパートへ投資する場合のデメリットにはどんなことがあるでしょうか。区分マンションとアパートに共通するのは、定期借家契約が主流のオフィスビルに比べて居住用の多くは普通借家契約のため、賃料滞納リスクや入居者信用リスクがあるということです。
6-1.区分マンション物件の2つのデメリット
・利回りが比較的低い
立地や物件、新築・中古などによって異なりますが、アパートに比べると販売価格が高かったり、家賃収入が1部屋分しかなかったりすることから、利回りは低い傾向です。借入金で購入した場合、利回りが低いということは返済に時間がかかることから、必然的に長期スパンでの資産運用となります。短期で利益を求める場合には向かない物件と言えるでしょう。
・空室になれば賃料収入がゼロになる
「1物件=1入居者」となるため、空室になれば賃料収入はゼロになります。当然のことではありますが、一棟物アパートやオフィスビルと比べると区分マンションはこの点が突出したデメリットになります。そのため金融機関から借り入れして不動産投資を行っている場合は、毎月の返済分を自己資金から捻出することが必要です。
6-2.アパート物件の3つのデメリット
・初期費用が高い
アパートは、土地を含めた建物一棟を購入することになるため、区分マンションに比べると初期費用は高額になりがちです。金融機関からの借り入れを利用するとしても自己資金はある程度用意しなければなりません。自己資金が少ない方には向かない物件と言えるでしょう。
・維持管理コストが高い
区分マンションと異なりアパートは、すべてオーナーが日常の維持管理コストや大規模修繕のための積み立てを負担することになります(入居者が「管理費」として一部負担することが一般的)。そのため維持管理コストは高めです。また、木造アパートや中古の場合は、修繕の発生頻度が高くなることが想定されます。災害で破損したなど突発的な修繕が発生すると家賃収入を上回ってしまう可能性があることは、あらかじめ計算しておきましょう。
・流動性リスクが高い
物件価格が大きい分、区分マンションと比較すると流動性リスクが高くなる点を意識しなければなりません。また、アパートの場合、経年劣化で価格が下がるケースが予想されます。売却しても借入金を下回ってしまうとローンだけが残るという最悪のケースになってしまいます。購入時に十分考えておきたい点です。
7.リスクへの備えとして「区分所有オフィス」
ここまで居住用とオフィスのメリット・デメリットを解説してきました。オフィスビルへ投資をしてみたいと感じた方の中には、例えば「資金が不足していて……」と踏み切れない方もいるのではないでしょうか。
資産運用先としてのオフィスビルのデメリットを回避する選択肢があります。東京都心の商業地に建つ中規模高品位のオフィスビルをフロアごと、または部屋ごとに分譲する「区分所有オフィス」です。オフィスビル物件の最大のデメリットとも言える莫大な初期コストは「区分所有オフィス」の場合、オフィスビル1棟の6分の1から30分の1程度に抑えることができます。
物件価格を抑えられる分、金融機関の融資審査も比較的通りやすくなることが期待できるでしょう。また「区分所有オフィス」によって管理、修繕費のミニマム化も実現することができます。なぜなら区分マンションと同じく管理組合を作ることで長期修繕計画を作成して突発的なコストを平準化することができるからです。
さらに「区分所有オフィス」は都心の好立地にあるため、希少性や流動性が担保され空室リスクにも対応することができます。将来的な値上がりも予想されるため、出口戦略としての売却価格上昇にも期待ができるのです。オフィスビル物件のリスクを多方面からカバーする「区分所有オフィス」は、居住用収益不動産と比較してもアドバンテージを有する不動産投資スキームといえるでしょう。
※「区分所有オフィス」は株式会社ボルテックスの登録商標です