事業用不動産とは?メリット・デメリットと購入時の流れを解説
目次
事業用不動産とは
事業用不動産とは、利益の獲得を目的として保有・利用される不動産のことです。オフィスや店舗などの商業用の不動産と、マンション・アパート・一戸建てといった居住用の不動産に大別できます。
事業用不動産で得る利益には、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類があり、いずれか、もしくは両方で収益を上げることを目指します。
インカムゲイン | 継続的に得られる利益 |
キャピタルゲイン | 物件を売却することで得られる利益 |
インカムゲインとは継続的に得られる利益のことで、不動産投資においては主に家賃収入を指します。物件を購入し、企業や個人に貸し出すことで家賃を得る投資方法です。立地や周辺環境などさまざまな条件を考慮し空室リスクが低い物件を選べば、安定的に利益を出すことが期待できるでしょう。
事業用不動産を運用するメリット
事業用不動産を運用するメリットは、主に以下の3つのメリットがあります。詳しく見ていきましょう。
1. 大きな自己資金がなくても投資できる可能性がある
不動産投資に対して、「数百万、数千万円単位の自己資金が必要」というイメージを持っている人も多いでしょう。しかし、銀行借り入れを利用すれば、大きな自己資金を準備することなく不動産投資を始めることが可能です。
融資の可否や上限額は、物件の価値や申込者の信用情報などさまざまな条件によって決定されます。高年収の会社員や公務員などは審査において信用度が高いとみなされやすく、多額の融資を受けられる可能性があります。また、不動産などの担保がある人は、借入対象の物件以外も担保にでき融資額を大きくできる傾向にあります。
借り入れを活用した事業用不動産は取引金額が増やせるため、レバレッジを大きくかけたい人にとってもメリットがあります。
レバレッジとは、手持ちの資金を使って、より大きな額の投資をする手法のことです。少ない自己資金で多くの利益を出せる可能性があり、株式投資でも一般的に行われていますが、信用取引では約3.3倍のレバレッジが限度です。
事業用不動産の方がレバレッジを大きくかけやすいといえますが、その分リスクも増えることは念頭に置いておきましょう。
2. 継続的な収益が見込める
冒頭で解説した家賃収入によって利益を出すインカムゲインは、月・年単位で継続的に収益を得られるのが大きなメリットです。
安定収入が欲しい人にはおすすめの方法ですが、空室リスクや家賃滞納リスクもあります。物件選びを慎重に行う必要があるうえ、不動産の管理会社に物件の管理を任せる場合は、事業者の手腕も問われます。家賃収入のデメリット・リスクについては、次章で解説しています。
3. 立地がいい物件は景気の影響を受けづらい
投資には、株式・外貨預金・FX(外国為替証拠金取引)・ETF(上場投資信託)など、さまざまな種類があります。投資方法を決める際の基準のひとつに「利回り」があり、投資金額に対する収益の割合を意味します。投資を行う際は、利回りに比例して収益も高くなるのが一般的です。
株式の利回りは2〜3%程度といわれていますが、景気に大きく左右されるのが特徴です。
一方の不動産投資は、立地や物件の種類によって利回りが異なるため、平均値の算出は難しいですが、立地がよい物件は景気の影響を受けづらい点がメリットといえます。
一方のキャピタルゲインとは、物件を売却することで得られる利益のことです。物件の価格が上がれば利益が出る可能性がある反面、価格が大幅に下落することもあるため、インカムゲインに比べてハイリスク・ハイリターンといえます。
不動産投資は、基本的に中長期的な運用となるため、どの方法で利益を出す場合も、将来性を見据えた物件選びが収益を大きく左右します。
事業用不動産を運用するデメリット・リスク
不動産の購入は大きな買い物になるため、デメリットやリスクを理解したうえで適切な選択をすることが求められます。ここでは、事業用不動産を運用するデメリット・リスクを解説します。
1. 投資金額が大きい
事業用不動産投資は物件の購入が前提となるため、投資金額が大きくなります。
不動産購入の資金を借り入れでまかなえば、少ない自己資金でも投資を始めることは可能です。しかし、借り入れた資金は自己負担金という意識が低くなる点に注意が必要です。実際には自己資金だけでなく、借り入れた資金を合わせた金額が総投資額になるため、大きな金額を投資していることを忘れないようにしましょう。
投資では、レバレッジをかけて大きなリターンを狙うことも大切ですが、失敗したときのリスクをしっかりと考えておくことも必要です。
2. 現金化に時間がかかる
不動産は、株式などほかの投資商品に比べて流動性に欠けるのもデメリットのひとつです。「現金が必要になったので物件を売りたい」と思っても、すぐに買い手が見つかるとは限りません。また、現金化するタイミングの相場によっては、損失が出てしまう可能性もあります。
不動産投資に限りませんが、子供の教育資金など、近い将来に使用する予定がある資金は投資に回さないようにするのが鉄則です。
3. キャッシュフローが安定しない可能性がある
事業用不動産に空室があったり、家賃滞納が発生したりすると、安定的な家賃収入を得られず収益性が低下します。
空室リスクを回避する方法として、不動産管理会社が物件を借り上げて運営する「サブリース契約」などがあります。
また、家賃滞納の対策は、家賃保証会社や家賃回収代行の活用、連帯保証人や根保証契約の設定などさまざまです。根保証契約とは、期間や上限額を設定したうえで、将来的に発生する債務を保証することをいいます。
2020年4月1日から保証に関する民法が変更されており、上限額が定められていない個人の根保証契約は無効になります。そのため、場合によっては保証人に対して支払いを求めることができなくなります。
出典:法務省
4. 維持管理費がかかる
事業用不動産には、固定資産税・修繕費用・管理会社への報酬など、物件を維持するための費用がかかります。物件の利回りを見る際は、このような維持管理費も考慮することが大切です。
不動産投資の利回りには複数の種類があり、多くの場合、物件情報に記載されているのは「表面利回り」です。表面利回りとは、年間の家賃収入を物件購入価格で割ったもので、維持管理費は考慮されていません。
一方で維持管理費を考慮して算出した利回りを「実質利回り」といい、不動産投資の利益を考える際は、実質利回りを重視するとよいでしょう。一見、利回りが高く見えても、維持管理費を考えると期待したような利益が出ない場合もあります。
事業用不動産を購入する際の流れ
ここからは、事業用不動産を購入する際の流れを解説します。初めて事業用不動産を購入する際は、各ステップにおけるポイントや注意点もチェックしておきましょう。
1. 予算・投資目的を決める
まずは、投資の目的と予算を決めます。予算を考えるときは、物件購入の費用以外に必要な維持管理費も踏まえて、ローン返済の計画を含めた収支計画書を作成します。売上高やキャッシュフローを数字で把握することで、具体的な予算感がイメージできるようになります。
この時点では予算検討のために概算で作成するので、物件購入時にあらためて正確な収支計画書の作成が必要です。
また、不動産投資の目的によって、取るべき戦略も変わります。給与のほかに副収入が欲しい場合は、家賃収入でコツコツと利益を出せるような投資先がよいでしょう。FIRE(経済的自立と早期リタイア)を考えているのであれば、リスクを取って売却で一気に収益の獲得を目指す方法もあります。
2. 不動産情報を集めて物件を選ぶ
予算と投資の方向性がある程度固まったら、不動産情報を集めて物件を選びます。ただし、物件を選ぶには基礎知識が必要です。不動産投資に関する書籍や事業者が公開している資料などを参考に、基礎知識を身につけて大枠をつかみましょう。書籍を選ぶ際は、初心者向けのものがおすすめです。
事業用不動産の場合は、空室状況が収益に大きく影響します。空室リスクが低い好立地の物件を探してみましょう。特に、都心の主要エリアにある物件は、長期的に見て資産価値が下がりにくいといえます。
3. 仲介する不動産会社を選ぶ
不動産の取引には法律などが絡んでくるため、売主と買主の間に不動産会社が入って調整を行う場合がほとんどです。
仲介する不動産会社を選ぶ際には、物件が次のどのパターンに当てはまるかを確認しましょう。
- 一般媒介
売主が複数の不動産会社と媒介契約を結べる
最もよい条件を提示した事業者と契約できるのがメリット
売主が見つけた買主と契約できる
- 専任媒介
不動産会社1社とのみ契約が可能
売主が見つけた買主と契約できる
- 専属専任媒介
不動産会社1社とのみ契約する点は専任媒介と同じ
売主が見つけた買主とは契約できない点が専任媒介と異なる
売買の自由度が最も高いのは一般媒介で、最も低いのが専属専任媒介契約です。専任媒介や専属専任媒介契約の場合は不動産会社が指定されているため、ほかの業者では仲介できません。
一般媒介であれば、その物件を扱っている不動産会社の中から、最もよい条件を提示してくれた事業者と契約することが可能です。
4. 現地確認する
不動産は、購入前に必ず現地確認を行いましょう。書類では分からない不備や気づきを得られる可能性があります。物件の第一印象や室内の状況、外壁の状態といった物件そのものの印象のほか、次のような周辺環境のチェックも欠かせません。
- 駅からの距離
- 夜間の周辺環境
- 物件周辺の騒音物件周辺の騒音
- 付近の建物(大型の工場など
入居者の視点に立って、その物件を借りたいと思うかどうかを考えるのがポイントです。
5. 買付証明書の提出をする
物件の現地確認が完了した後は、買主が売主に対して購入する意思を示すための「買付証明書」を提出します。買付証明書には、物件名や価格、手付金の情報、支払い方法などを記載します。買付証明書を提出することで、不動産売買契約の交渉が具体的に開始されます。
買付証明書には法的な効力がなく、正式な契約を結ぶまでは、原則としてキャンセルが可能です。ただし、売主にリフォームや改装をしてもらっていたり、広告を止めてもらったりしている場合は、契約前であっても損害賠償が発生する可能性があるので注意が必要です。
6. 不動産投資ローンの事前審査を受ける
買付証明書によって購入の意思を示したら、不動産投資ローンの融資が受けられるかどうか、事前審査に申し込みます。その際に、不動産情報や借主の収入などの情報が必要となります。
融資審査には、「事前審査」と「本審査」の2種類があります。融資の可否や金額は、収入をはじめとした条件によって大きく変わります。希望どおりの融資が受けられないと物件を購入できなくなるため、早めに事前審査を受けることをおすすめします。
7. 不動産売買契約を結ぶ
金額や引き渡し日などの条件について、売主と買主の双方で合意が取れたら、手付金を支払って売買契約を結びます。手付金とは、不動産の売買契約を行う際に、買主が売主に対して支払う金銭のことをいいます。手付金の額は、売主が不動産会社であれば20%が上限となっており、個人の場合は法律上の上限はありません。ただし、売買代金の5%~10%が一般的な相場となっています。
売買契約後に買主側からキャンセルする場合は、手付金を放棄する必要があります。一方、売主側から放棄する場合は、手付金の2倍の金額を支払う必要があります。
また、ローンの審査に通らなかった場合、売買契約をキャンセルせざるを得ないケースも考えられます。そのような場合に手付金が戻ってくる「ローン特約」を付けておくと安心です。ただし、ローン特約の期限は2週間~1カ月と短いため、ローンの審査に通らなかった場合は、なるべく早い段階で不動産会社に申し出ましょう。
8. 不動産投資ローンの契約をする
売買契約後に、不動産投資ローンの本審査・契約を行います。手続は次のような流れで進みます。
- 金銭消費貸借契約(金消契約)
- 所有権移転登記・抵当権設定登記
- 融資実行
金銭消費貸借契約(金消契約)とは、金融機関と物件購入者(融資の借主)の間で締結する契約です。ローンの借り入れや返済条件に関する契約を結びます。
金銭消費貸借契約とほぼ同時に登記手続を開始し、抵当権が設定されると融資実行となります。
9. 不動産が引き渡される
すべての手続が終わり、実行された借入金によって物件代金の支払いを済ませると、不動産が引き渡されます。
少額で事業用不動産が運用できるおすすめの方法
一般的に不動産投資には多額の資金が必要ですが、近年は少額で事業用不動産が運用できる投資法が人気を集めています。ここでは、おすすめの少額不動産投資法を解説します。
1. 不動産小口化商品
不動産小口化商品とは、特定の不動産を1口数万円~数百万円に小口化したものです。都心のオフィスビルなど、通常なら投資金額が数億円単位になるような好立地物件に、個人単位でも投資できるのが大きなメリットです。
ボルテックスの「Vシェア」では、希少性の高い東京都心のハイグレードオフィスビルを取り扱っています。一定条件をクリアした物件を取得しているため、長期的に資産価値や収益の安定性を維持できます。不動産の管理はボルテックスが行うため、手間もかかりません。
「Vシェア」について、詳しくはこちらのページをご覧ください。
2. 不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングとは、インターネットを通じたクラウドファンディングによって、集めた資金で物件を購入する不動産投資の手法です。プロが選んだ優良物件に、1口1万円程度の少額から投資できるのがメリットです。
ローリスクで不動産投資を始めたい人におすすめの方法ですが、人気がある物件は、すぐに投資枠が埋まってしまうことが難点です。場合によっては、抽選が行われることもあります。
事業用不動産の運用はメリット・デメリットへの理解が大切
事業用不動産に限らず、投資にリスクは付き物です。事業用不動産を購入する際は、メリット・デメリットを理解し、自分の予算や投資の方向性に合った物件を選ぶことが大切です。不動産投資を成功させるためには、買主自身が不動産投資に対する知識を深めることも必要です。わからないことはそのままにせず、プロに相談しながら事業用不動産で資産形成を目指しましょう。
事業用不動産は投資だけでなく、自社利用として購入も可能です。
「オフィス賃料がもったいない」とお考えの経営者は、下記ページをご覧ください。
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