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不動産投資を最近始めた方の中には、「確定申告が必要なのか」「どんな手順で確定申告を進めるのか」などの点が気になっている方も多いのではないでしょうか?一方、確定申告すると還付が受けられるケースもあります。
この記事では、不動産投資で初めて確定申告をする方がいつまでにどのような手順で確定申告すればいいのか、また確定申告しなかった場合のデメリットについて解説します。
1. 不動産投資には確定申告が必須
会社に勤めているサラリーマンの方の場合には、年末調整で所得税等の還付や徴収などが行われているため、確定申告とは無縁という方も多いと思います。しかし、不動産投資による不動産所得がある場合には、確定申告が必要になります。
不動産所得の金額は、「総収入金額-必要経費」で求めます。総収入金額に含まれる主な収入や必要経費に含まれる主な経費は以下の内容となっています。
総収入金額 | 必要経費 |
---|---|
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「総収入金額から必要経費を引いてマイナスであれば確定申告しなくていいのでは?」と思った方もいるのではないでしょうか。空室が長く続いて収入が減少したり、大きな修繕費用が発生してマイナスになった場合は申告する義務はありません。しかし、不動産所得がマイナスの場合には給与所得と損益通算して払いすぎた所得税等の還付が受けられます。
※土地に係る借入金利子は損益通算不可
例えば、給与所得が800万円、扶養控除などで200万円の所得控除を受けた方は600万円が課税所得となり、所得税は以下のようになります。
600万円(課税所得)×20%(税率)-42.75万円(控除)=77.25万円
一方、不動産所得が減価償却などで100万円の赤字となっている場合には、損益通算によって総所得は800万円-100万円(不動産所得のマイナス)=700万円となり、課税所得と所得税は以下のようになります。
700万円-200万円(所得控除)=500万円(課税所得)
500万円(課税所得)×20%(税率)-42.75万円(控除)=57.25万円
(注)復興税については未考慮
よって、77.25万円-57.25万円=20万円の税金の還付が受けられます。
赤字だからという理由で確定申告しないのではなく、損益通算による恩恵を受けるために確定申告した方がよいと言えるでしょう。
1-1. 確定申告とはどのようなものか
確定申告とは、1月1日~12月31日までの1年間における個人の所得を計算し、それに基づいて税金を算出し支払いを進める手続きです。2019年1月1日~12月31日までの所得は、2020年2月17日(月)~3月16日(月)までの確定申告期間内に申告・納税します。
※本来は3月15日までとなりますが、2019年分については15日が日曜日になるため明けの16日(月)が期限となっています。
確定申告の提出方法や作成方法は以下の3つから選択します。
- 申告書を入手して、手書きで記入してから書類を提出(郵送または税務署に持参)
- 専用サイトで書類を作成して、印刷した書面を提出(郵送または税務署に持参)
- e-Tax(インターネット)で送信
1-2. 確定申告しないとどうなるのか

不動産投資で確定申告するメリットは、先ほども触れたように不動産所得が赤字の場合に、ほかの所得と損益通算して払いすぎた分の税金の還付が受けられることです。一方、不動産所得が生じているにもかかわらず確定申告しない場合には、以下の3つのペナルティに該当する可能性があるので注意が必要です。
- 無申告加算税(期限内に申告をしなかった)
- 重加算税(隠蔽しようとした)
- 延滞税(期限内に納税しなかった)
確定申告が必要な状況で申告していなかった場合は、無申告加算税として実際の税額以上に税金を納めなければなりません。そのようなトラブルを防ぐためにも、不動産所得の有無にかかわらず、確定申告をするようにしましょう。
2. 不動産投資の具体的な確定申告の手順とは

確定申告には、青色申告と白色申告の2種類あります。青色申告とは、一定の期限までに青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署へ提出し、複式簿記により記帳していることにより適用できる申告方法です。青色申告には、65万円(2020年分以後、電子申告等でない場合には55万円)又は10万円の特別控除が受けられる他、赤字を3年繰り越せる等といった特典があります。一方で、記帳が複雑で手間がかかるといったデメリットがあります。
白色申告とは、簡易帳簿で帳簿付けをする申告方法です。白色申告には、簡易帳簿なので申告手続きが容易というメリットがありますが、青色申告のような特別控除や赤字を3年繰り越せるというメリットがありません。帳簿作成や申請に時間と手間はかかりますが、青色申告の方が良いと言えるでしょう。
不動産投資を始めて不動産所得が発生した場合には確定申告が必要ですが、どんな手順で確定申告を進めていけばいいのでしょうか。確定申告の手順は以下の3つです。
- 提出書類の準備
- 確定申告書の作成
- 税務署に提出
それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
2-1. 提出書類の準備
不動産投資によって不動産所得が発生した場合には、まず以下の書類を準備する必要があります。
【必要書類】
- 不動産の購入契約書
- 固定資産税通知書・不動産取得税納付書
- 保険証券(火災保険、地震保険など)
- ローンの明細書
- 賃料入金明細書
- 修繕に関する見積書・請求書・領収書
- 賃貸契約書
- ほかの収入に関する書類
- 水道光熱費・交通費などの経費の領収書
- 源泉徴収票 など
確定申告期間になってから書類をすべて準備しようとすると、準備が完了するまでに時間がかかってしまい、申告期間が過ぎてしまう可能性もあるので、前もって準備しておきましょう。
2-2. 確定申告書の作成
確定申告書の作成は国税庁のHPから進めることが可能です。不動産所得の確定申告には、不動産所得用の収支内訳書を使用します。不動産所得用の収支内訳書の書き方は、まずは該当する箇所にそれぞれ記入します。特に収支内訳書の太枠の箇所に該当する金額がある場合には、必ず記入が必要です。
賃貸期間や貸し付け面積などの細かな項目もあるため、事前にどのような項目があるのか確認するほか、次年度も速やかに作成できるように作成した確定申告書のコピーを手元に残しておくことをおすすめします。
2-3. 税務署に提出
税務署に提出する方法には、e-Taxを活用してインターネット経由で提出する方法のほか、PDFファイルを印刷し、記入した書類を税務署に郵送・持参する方法があげられます。
記載内容に間違いがあった場合は再提出が必要になるため、確定申告期限ギリギリの提出にならないようにしましょう。作成に慣れていない最初のうちは、税務署に持参してその場で不備がある部分を修正した方が無駄を省けるかもしれません。
3. 税理士に依頼するのも選択肢のひとつ

不動産投資の確定申告は、書類の準備や作成に時間がかかります。サラリーマン不動産投資家のように兼業で不動産投資をしている方の中には、確定申告のためにわざわざ有給休暇をとって手続きを終わらせる方もいます。しかし、時間をかけて手続きしても、書類に少しでも不備があれば再提出になるので注意が必要です。
そのため、不動産投資家の中には、自分自身で確定申告するのではなく税理士に依頼して確定申告してもらう方もいます。税理士への報酬支払いが発生することにはなりますが、確定申告の手間も書類準備をしてしまえば後は税理士に任せることができるため、自分の時間をゆっくり確保できるほか、申告内容に関する税務署からの問い合わせ等についても税理士が間に入ってくれるので、大きなトラブルを回避しやすくなります。
4. まとめ
確定申告は手間と時間がかかると感じる方も多いようです。しかし、これを怠ると無申告加算税・重加算税・延滞税のようなペナルティを課され、必要以上に税金を支払わなければならない可能性も出てきます。また、損益通算により税金の還付が受けられることもあるため、不動産投資をしている方は必ず確定申告をしましょう。
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税務の取扱に関する監修
マックス総合税理士法人マックスソウゴウゼイリシホウジン
渋谷本社、自由が丘オフィスを拠点に、東京都心及び、城南地区の地主や資産家に対し、『民事信託も活用した相続・相続への準備、不動産の売買や贈与時の提案』といった資産税コンサルティングを手がける。
毎週末、不動産に関する税務相談会も行っており、ただの税務理論だけでなく、不動産の現場にも精通する知識と経験を備えている。
マックス総合税理士法人(http://www.max-gtax.com/)
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