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不動産投資を最近始めた方の中には、「確定申告が必要なのか」「どんな手順で確定申告を進めるのか」などの点が気になっている方も多いのではないでしょうか?一方、確定申告すると還付が受けられるケースもあります。
この記事では、不動産投資で初めて確定申告をする方がいつまでにどのような手順で確定申告すればいいのか、また確定申告しなかった場合のデメリットについて解説します。
この記事の要点まとめ
- 不動産投資で所得が発生した場合、確定申告が必要で、赤字でも損益通算により税金の還付が受けられる可能性がある。
- 確定申告は「書類の準備」「申告書の作成」「税務署への提出」の3ステップで進める。
- 申告を怠ると加算税や延滞税などのペナルティが発生するため、早めの準備と正確な申告が重要。
1. そもそも確定申告とは
確定申告とは、1月1日〜12月31日までの1年間に得た所得をもとに、税額を計算して申告・納税する手続きです。
通常、確定申告の期間は翌年の2月16日〜3月15日となっており、該当する人はこの期間内に税務署に申告を行う必要があります(※締切日が土日祝日の場合は翌営業日まで延長されます)。
確定申告の提出方法や作成方法は以下の3つから選択します。
- 申告書を入手して、手書きで記入してから書類を提出(郵送または税務署に持参)
- 専用サイトで書類を作成して、印刷した書面を提出(郵送または税務署に持参)
- e-Tax(インターネット)で送信
2. 不動産投資には確定申告が必須
会社に勤めているサラリーマンの方の場合には、年末調整で所得税等の還付や徴収などが行われているため、確定申告とは無縁という方も多いと思います。しかし、不動産投資による不動産所得がある場合には、確定申告が必要になります。
不動産所得の金額は、「総収入金額-必要経費」で求めます。総収入金額に含まれる主な収入や必要経費に含まれる主な経費は以下の内容となっています。
総収入金額 | 必要経費 |
---|---|
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「総収入金額から必要経費を引いてマイナスであれば確定申告しなくていいのでは?」と思った方もいるのではないでしょうか。たしかに空室が長く続いて収入が減少したり、大きな修繕費用が発生してマイナスになった場合は、申告の義務はありません。しかし、不動産所得がマイナスの場合には給与所得と損益通算して払いすぎた所得税等の還付が受けられる可能性があります。
※ただし、土地に係る借入金利子は損益通算できません。
例えば、給与所得が800万円、扶養控除などで200万円の所得控除を受けた方は600万円が課税所得となり、所得税は以下のようになります。
600万円(課税所得)× 20%(税率)- 42.75万円(控除)= 77.25万円(所得税)
一方、不動産所得が減価償却などで100万円の赤字になっている場合は、損益通算により総所得が次のように変わります。
800万円(給与所得)- 100万円(不動産所得の赤字)= 700万円(合計所得)
700万円 - 200万円(所得控除)= 500万円(課税所得)
500万円(課税所得)× 20%(税率)- 42.75万円(控除)= 57.25万円(所得税)
(注)復興特別所得税は考慮していません。
この結果、77.25万円 - 57.25万円 = 20万円の税金が還付されます。
赤字だからといって確定申告をしないのではなく、損益通算のメリットを受けるために申告した方が良いと言えるでしょう。
3. 不動産投資の具体的な確定申告の手順とは
不動産投資を始めて不動産所得が発生した場合には確定申告が必要ですが、どんな手順で確定申告を進めていけばいいのでしょうか。確定申告の手順は以下の3つです。
確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告とは、一定の期限までに青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署へ提出し、複式簿記などの要件を満たして記帳している場合に適用される申告方法です。青色申告には、65万円の特別控除(電子申告や電子帳簿保存を行わない場合は55万円または10万円になることがあります)や、赤字を3年間繰り越せるなどの特典があります。一方で、記帳が複雑で手間がかかるというデメリットがあります。
白色申告とは、簡易帳簿による記帳が認められる申告方法です。2020年分以降は白色申告でも帳簿の記帳義務がありますが、青色申告ほど複雑ではありません。白色申告は手続きが比較的容易ですが、青色申告のような特別控除や赤字の繰越控除はありません。記帳や申請に一定の手間はかかりますが、節税面を考えると青色申告の方が有利と言えます。
不動産投資を始めて不動産所得が発生した場合は、確定申告が必要になります。では、どのような手順で確定申告を進めればよいのでしょうか。確定申告の手順は大きく以下の3つです。
- 提出書類の準備
- 確定申告書の作成
- 税務署への提出
それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
3-1. 提出書類の準備
不動産投資によって不動産所得が発生した場合には、まず以下の書類を準備する必要があります。
【必要書類】
- 不動産の購入契約書
- 固定資産税通知書・不動産取得税納付書
- 保険証券(火災保険、地震保険など)
- ローンの明細書
- 賃料入金明細書
- 修繕に関する見積書・請求書・領収書
- 賃貸契約書
- 給与所得や副業など他の収入に関する書類(源泉徴収票など)
- 水道光熱費・交通費などの経費に関する領収書(不動産所得に関連するものに限る)
申告期間(通常は毎年2月16日~3月15日)が近づいてから慌てて準備すると間に合わない可能性があるため、できるだけ早めに準備しておきましょう。
3-2. 確定申告書の作成
確定申告書は国税庁の「確定申告書等作成コーナー」からオンラインで作成可能です。不動産所得の申告には「不動産所得の収支内訳書」を使います。収支内訳書の該当欄に正しく金額を記入することが重要です。
賃貸期間や貸し付け面積など細かい項目もあるため、事前にどのような項目があるか確認しておくとスムーズです。また、来年以降も速やかに作成できるよう、作成した申告書のコピーを手元に保管しておくことをおすすめします。
3-3. 税務署に提出
申告書の提出方法には、以下のような方法があります。
- e-Tax(電子申告)による提出(マイナンバーカード方式やID・パスワード方式があります)
- 作成した書類を印刷し、税務署に郵送または持参
書類に誤りがあった場合は修正や再提出が必要になるため、申告期限ギリギリの提出は避けましょう。初めての場合は、税務署に持参して相談しながら提出すると安心です。
4. 確定申告しないとどうなるのか
不動産投資で確定申告するメリットは、先ほども触れたように不動産所得が赤字の場合に、ほかの所得と損益通算して払いすぎた分の税金の還付が受けられることです。一方、不動産所得が生じているにもかかわらず確定申告しない場合には、以下の3つのペナルティに該当する可能性があるので注意が必要です。
- 無申告加算税(期限内に申告をしなかった)
- 重加算税(隠蔽しようとした)
- 延滞税(期限内に納税しなかった)
- 過少申告加算税(期限内に申告はしたが税額が不足していた)
確定申告が必要な状況で申告していなかった場合は、無申告加算税として実際の税額以上に税金を納めなければなりません。そのようなトラブルを防ぐためにも、不動産所得の有無にかかわらず、確定申告をするようにしましょう。
5. 税理士に依頼するのも選択肢のひとつ

不動産投資の確定申告は、書類の準備や作成に時間を要します。兼業のサラリーマン投資家の中には、有給休暇を取得して手続きを行う方もいらっしゃいますが、書類に不備があると再提出が必要となるため注意が必要です。
このため、自ら申告を行わず税理士に依頼する投資家もおります。税理士への報酬は発生しますが、書類の準備さえ整えればあとは税理士に任せることができ、自身の時間を有効に活用できます。また、税務署からの問い合わせについても税理士が対応するため、トラブルの回避につながります。
6. まとめ
確定申告は手間や時間がかかると感じる方も多いでしょう。しかし、怠ると無申告加算税・重加算税・延滞税といったペナルティが課され、必要以上の税金を支払うリスクがあります。また、損益通算により税金の還付を受けられる場合もあるため、不動産投資をされている方は必ず確定申告を行いましょう。
不動産投資は、資産形成における大切な選択肢のひとつです。このコラムで得られた知識を活かし、より確かな一歩を踏み出すためには、メリットだけでなく、それにともなうリスクについても深く理解しておくことが大切です。ご自身の判断において、安心して投資を進めていただけるよう、リスクに関する情報もしっかりと把握しておくことをお勧めします。
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税務の取扱に関する監修
マックス総合税理士法人マックスソウゴウゼイリシホウジン
渋谷本社、自由が丘オフィスを拠点に、東京都心及び、城南地区の地主や資産家に対し、『民事信託も活用した相続・相続への準備、不動産の売買や贈与時の提案』といった資産税コンサルティングを手がける。
毎週末、不動産に関する税務相談会も行っており、ただの税務理論だけでなく、不動産の現場にも精通する知識と経験を備えている。
マックス総合税理士法人(http://www.max-gtax.com/)
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