不動産投資、デザイン、運営を一貫して行う「場づくり」を【U Share 株式会社 代表取締役 社長執行役員CEO 上田 真路 氏】
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「ワクワクする場をつくりたい」。その思いを強く抱いて建築家を目指した上田真路氏は、大手建設会社に入社して早々、現実の壁に直面します。国内外の建築設計や大規模な都市開発業務に従事しながらも、役割が細分化された日本の不動産事業では、自分が理想とする建築や施設を造るのが困難だったのです。
その壁を乗り越えるため、上田氏が導き出した答えの一つが、U Share株式会社のビジネスモデルでした。上田氏が理想とする、ワクワクする場とは何か。東京や地方の不動産をクリエイティブに開発するヒントを伺いました。
面白い場をつくるための「3つの機能」
私たちのビジネスモデルは、自分たちで開発したい場を見つけて資金を投じ、そこにワクワクできる施設をデザインして建築した後、その場を自分たちで管理するところまで一貫して行うことです。それにより、新しい場をつくり、土地の真価を再発明しています。
私が日本の大学で設計を学んでいたときは、街を見てもワクワクする気持ちがまったく湧いてきませんでした。通っていた大学近くの高田馬場は、3点ユニットバスのワンルームマンションばかりでしたし、西新宿などのオフィス街は休日になると閑古鳥が鳴いている。よくいえば機能的ですが、面白みがない。自分でも何かを変えられるのではないかと考えて、大学院修了後、大手建設会社に入社して設計に携わりました。
ただ、建築士といっても自分の好きなように設計できるわけではないという現実に、すぐ直面しました。土地を所有しているオーナーの希望どおりに建物を設計するのが、建築士の役目です。自分自身のオリジナリティーを反映できる部分はそれほどありません。そこで副業として、銀行から融資を仰いで土地を買い、自分の建てたい建物をデザインし、運営することにしてみました。
実際にやって得られた結論は、面白い場をつくるためには不動産投資とデザイン、運営までを一貫して行うのが必須ということ。ここにU Shareのビジネスモデルの原点があります。不動産投資、設計・デザイン、運営という3つの部門を持って日々の業務に当たっているのは、自分たちが理想とする場づくりをしたいという思いからなのです。
その実現に必要なのは、不動産投資の輪とデザインの輪という2つの輪が、しっかり両輪として回ることと考えています。例えば不動産投資の輪だけが先行して回ると、収益性のみを追求しがちになり、魅力のない建物になってしまい、長期的な競争力に欠け、価値創造ができなくなります。一方、デザインの輪が先行すると、コストがかかりすぎたり、実用に耐えられなくなったりして採算が取れず、持続的な運営が困難になります。
そこで、開発プロジェクトが収益性を持ち、持続的な運営ができる経済的な合理性を持たせつつ、その不動産が持つ本質的な価値を、より高められるようなデザインの輪も追求する必要があります。
デザインの輪とは、単なる箱物としての建物ではなく、そこで生活する、あるいはそこを訪れる人たちの成長を促せるようなコミュニティーを形成する、新しい付加価値を生み出せる場を具現化することです。
不動産投資とデザイン、運営という3つの機能がバラバラになっている状態では、魅力的な不動産開発は成し遂げられません。だからこそその三位一体を重視し、かつ投資の輪とデザインの輪という両輪をしっかり回すことが大事だと考えているのです。
多様性あふれる「コミュニティレジデンス」の場づくり
現在、私どもが最も注力しているプロジェクトは、「UShare」というコミュニティレジデンスの建築・運営です。
私は34歳のとき、ハーバード大学デザイン大学院に留学しました。とくに印象に残っていたのが、ハーバード大学の学生寮です。Metaのマーク・ザッカーバーグ氏もハーバード大学の学生寮で創業しました。20代から60代までの学生が世界中から集まって生活し、時にはビールを飲みながら議論を深め、各々が研究を行うという毎日。しかも家族と住む人たちもいて、まさに多様性を絵に描いたような生活だったのです。
これを日本にも導入したいという思いで、5年前に開発したのが「U Share Waseda WC1」です。日本の学生も入居していますが、全体の6割は米国、欧州、東南アジア、オーストラリアなどから集まった学生です。ただ住むだけでなく、住人同士がさまざまなパーティーを企画したり、ボランティア活動やキャリア構築のための勉強会を開いたりして自己研鑽を積んでいます。
また、かつては仕事と生活、そして遊びの場は街として明確に区分されていましたが、そういう時代ではなくなりつつあります。
米国ではすでに、Live(生活)、Work(仕事)、Play(遊び)の場が混然一体になってこそ、新しい価値を生み出し、クリエイティブな都市ができるという認識が一般的になってきました。例えば、IT企業の集積地であるシリコンバレーが成功例の一つで、スタンフォード大学があることによって、仕事と学び、そして生活の場が凝縮されています。
大学と企業が極めて近いところに併存することで、企業は大学から優秀な頭脳の持ち主を採用でき、スタートアップ企業は、研究機関である大学とのディスカッションを通じて、新しい付加価値を創出する機会に恵まれます。こうした場ができれば、都市はよりクリエイティブになり、高い付加価値を生み出せる人材も輩出されるでしょう。まさに場が人をつくっていくのです。このような都市の開発に、私たちも注目しています。
日本の都市・地方の不動産活用も変わる
日本も、不動産開発の現場では徐々に変化が見られ始めています。私が大学に入学するために上京した当時は、オフィスビルを建てれば儲かる、ワンルームマンションもまた然り、という時代でした。その結果、個性のない建物が林立する街が形成されたわけですが、ここ10年くらいで、街づくりが徐々に変化しつつあることを実感しています。おそらく、大手不動産デベロッパーも、企画の工夫によって魅力的な不動産開発ができることに、ようやく気づいたからだと思います。
例えば2034年度の完成を目指して再開発が進行している渋谷は、Live、Work、Playの場が混然一体化した街として魅力を高めていますし、八重洲・日本橋などの再開発も同様です。
場づくりは都心に限った話ではありません。例えばジンズホールディングス代表・創業者の田中仁氏は、出身地の群馬県前橋市で、まちづくりと起業家支援を行っています。さらに、私たちがコンセプトと設計を手がけた、リトリートサウナホテル「The Hive」(富山県立山町)は地元のMAE(旧・前田薬品工業)社長の前田大介氏が中心となって運営しています。前田氏の村おこしに共感して、数千万円なら出資できるという投資家や企業家が集まってThe Hiveを建設し、革新的なサウナ施設を表彰する「サウナシュラン2022」にも入賞しています。前田氏が仲間を集めて魅力的な場をつくったからこそ、場が活性化したのでしょう。
このように企業家として成功した人たちが、地元の再生プロジェクトに関わる動きが出てきており、「クリエイティブ・デベロッパー」が地方にもっと生まれるべきと感じています。不動産投資の輪とデザインの輪という両輪を組み合わせれば、東京も地方も魅力的な場づくりの動きがさらに広まるのではないかと期待しています。
[編集]株式会社ボルテックス コーポレートコミュニケーション部
[制作協力]株式会社東洋経済新報社
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