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事業用不動産の未来~価格をとおして見る物件の価値を決める条件(前編)

目次

株式会社ボルテックス主席研究員の安田です。みなさんいかがお過ごしでしょうか。

記念すべき1回目となる研究員コラムは、「事業用不動産の未来」と題して、「価値が維持される物件の条件」について連載していきたいと思います。

まずは、事業用不動産市場で物件がどのように評価され、その価値が将来どのように変化していくのか「価格」という視点から、その理解を深め、将来的に価値が維持される物件とはどのような要素をもったものなのかについて解説していきます。

1.価格とは?

価格とは、商品やサービスの対価として市場で決定される金額を指し、経済活動の中心的な役割を果たす重要な要素です。

価格は、みなさんご存じの通り、需要と供給の相互作用によって決定されます。この基本原理は「価格理論」として知られ、市場においては、需要量と供給量が一致する点、すなわち均衡点で価格が決まること示しています。この価格よりも高い場合は供給過剰が、低い場合は需要過剰が発生していますが、市場の調整メカニズムが働き、均衡点の価格へと動いていきます。

また、価格の決定要因は需要と供給の基本的な関係のほかに、生産コスト、技術の進歩、政府の政策、消費者の期待、市場競争、外部要因など多岐にわたります。

もう1つ、価格を理解するうえで、価格弾力性の概念も重要です。価格弾力性とは、需要量や供給量の変化の度合いを示すものです。需要の価格弾力性が高い商品は、価格変動に対して需要が大きく変化し、供給の価格弾力性が高い商品は、価格変動に対して供給が大きく変化します。例えば、必需品は価格が上昇しても需要があまり変わらないのに対し、贅沢品は価格が上昇すると需要が大きく減少する傾向にあります。このように、価格弾力性の理解は、価格の変動に対する市場の反応を予測することに繋がっていきます。

■需要の価格弾力性のイメージ

2.事業用不動産の価格の決定要因

事業用不動産の価格は、企業の立地戦略、投資判断、そして経済活動全般において極めて重要な役割を果たします。特にオフィスの価格は、企業のコスト構造や投資リターンに直接的な影響を与えるため、その決定要因を理解する必要があります。

2.1 事業用不動産の価格を決める3要素

事業用不動産の価格決定要因として、以下に示す「立地」「規模」「グレード」の3つの要素があげられます。

・立地

立地は、事業用不動産の価値を決定する最も重要な要素の1つです。特に日本の都市部においては、交通の便がよく、多くの企業が集まるエリアが高い価値を持ちます。東京都心の大手町や丸の内は、主要な公共交通機関へのアクセスが良好で、多くの企業が集積しているため、常に高い需要があります。さらに、レストランやカフェ、銀行などの施設が近くにあることで、従業員の利便性が向上し、企業の魅力が増します。また、品川エリアのように大規模な再開発が進行中の地域では、将来的な価値上昇が期待されます。例えば、品川駅周辺では「高輪ゲートウェイシティ」プロジェクトが進行中で、オフィスや商業施設、ホテルなどの多目的複合施設が建設されています。

■各主要都市 地価公示価格の上昇率比較

(出所)国土交通省のデータを基に弊社作成

・規模

不動産の規模も、価値に大きく影響を与える要素です。大規模な物件は、テナントの幅広いニーズに対応しやすく、レイアウトの変更や拡張が容易であるため、多種多様な企業に対応できます。特にオフィスビルでは、広いフロア面積が多くの従業員を収容できるため、大企業やIT企業など、多くの従業員を必要とする業種にとって重要です。さらに、オフィス、商業施設、住宅が一体となった複合施設は、利用者の利便性が高く、物件の価値をさらに高めます。例えば、六本木ヒルズや東京ミッドタウンのような複合施設は、その規模と多様性により高い評価を受けています。

オフィスには、働く場や資産など、さまざまな側面がありますが、オフィススペースを使用するための価格は、規模によって顕著に差があります。

■都心規模別オフィス賃料推移

(出所)三幸エステートのデータ(2024年5月末時点)を基に弊社作成※坪数は専有面積

・グレード

建物のグレードは、品質、デザイン、設備の先進性などによって評価されます。ハイグレードの物件は企業にとっての魅力的で、賃料も高く設定されることが多いです。例えば、耐震性や防火性能が高い物件は安全性が確保されているため、企業にとって安心して利用できる点が魅力です。最新のICT(Information and Communication Technology)設備やエネルギー効率の高いHVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)システム、先進的なセキュリティシステムが整備されている物件は、テナント企業の業務効率を向上させるため、高い評価を受けます。また、建物の外観デザインや内装の美しさも企業のブランドイメージ向上に寄与します。特に、著名な建築家によって設計されたビルや歴史的価値のある建物は、そのデザイン性と希少性から高く評価されます。

■オフィスイメージ

2.2 事業用不動産における価格変動要因

次に、事業用不動産における価格変動要因について解説していきます。

事業用不動産市場は、オフィスビル、商業施設、工業用地、物流センターなど、多岐にわたる資産クラスで構成されています。また、需要と供給のバランス、地域の経済状況、インフラ整備、規制環境、技術革新など多くの要因によって価格が決定されています。

・需給バランス

需要が高まると価格は上昇し、供給が増えると価格は低下します。特に、東京都心5区のオフィス市場は、ビジネスの中心地として高い需要を誇る一方、供給が限られているため、価格が高騰しやすい傾向があります​​。

・地域の経済状況やインフラの整備状況

経済が好調な時期には企業の拡張や新規参入が増え、事業用不動産の需要が高まる傾向にあります。また、新しい交通インフラの開発や再開発プロジェクトの進行は、特定の地域へのアクセスを向上させ、その地域の不動産価値を高め、事業用不動産の価格は上昇します。例えば、新たな地下鉄の開通や主要道路の整備は、オフィスビルへのアクセスを向上し、その価値を高めています。

■再開発事例 (虎ノ門ヒルズ 森タワー)~虎ノ門駅周辺の地価公示価格の推移~

(出所)国土交通省のデータを基に弊社作成

・技術革新

近年では、センサーやIoTデバイスを活用した「スマートビルディング技術」や、「エネルギー効率の高い設計」が事業用不動産市場の価格形成において重要な役割を果たしています。これらにより、エネルギー消費の削減や環境負荷の低減が可能となり、結果として長期的な運用コストが低減しテナントにとって魅力的な選択肢となります。また賃料や販売価格の上昇につながりますので、導入するビルオーナーが増加傾向にあります。

※スマートビルディングとは?
IoTやAIを活用し、管理プロセスを自動化して効率的な運用ができるようにした建物のことです。暖房、換気、空調、照明、セキュリティ、その他のシステムを含む建物の運用を自動的に制御し、エネルギー消費を最小限に抑えながら市民の生活の質を向上させる集中管理を実現します。
新しい制御システムと自動化技術は、エネルギー消費を削減し、居住者や施設を頻繁に利用するユーザーの環境と安全を改善するだけでなく、資源を有効活用することで環境に配慮した建物の開発を可能とします。
世界のスマートビルディング市場は2022年から2029年までの間、年間平均成長率(CAGR, Compound Average Growth Rate)22.2%で成長し、2029年には3,286億ドルの市場規模に達すると予測されています。 スマートビルディングには、センサー、アクチュエーター(機械を構成する部品の中で動きを発生させる役割を担う部品)、マイクロチップで構成される、換気、空調、暖房、照明など、建物の動作を制御する高度な制御システムが含まれています。これらの建物は、運用コスト、テナント管理、セキュリティ管理、および建物のパフォーマンス管理を削減する機能を提供するため、注目のマーケットです。 さらに、5G 技術、スマートシティ、ZEB(Net Zero Energy Building, ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の台頭により、スマートビルディング産業の成長に有利な機会が生まれると予想されています。

・投資資金の流入

さらに、事業用不動産、特にオフィスは、国内外の投資家にとって非常に魅力的な投資対象です。

その理由の1つは、オフィスビルが安定した収益をもたらすことにあります。テナントは通常長期契約を結ぶため、収益の安定性が高いといえます。例えば、東京都心のオフィスビルは、大企業や多国籍企業がテナントとなることが多く、信頼性の高い収入源となっています。

下記のグラフが示すとおり、近年、国内不動産取引市場については市場参加者が拡大しており、なかでも外資系のプレーヤーが日本の不動産を選好していることが、不動産市場への資金流入が不動産価格を押し上げる要因の1つになっているといえます。

■買主数の推移

(出所)一般財団法人日本不動産研究所のデータを基に弊社作成

このように、事業用不動産市場の価格形成には、多岐にわたる要因が絡み合っており、それぞれが市場動向に大きな影響を与えています。これらの要因を詳細に分析し理解しすることで、企業や投資家はより適切な意思決定を行うことができるでしょう。

弟1回のコラムはここまでです。いかがでしたでしょうか。今回は、①価格の決定要因「事業用不動産の価格を決める3要素」、②事業用不動産における価格変動要因「需給バランス・地域の経済状況やインフラの整備状況・技術革新・投資資金の流入」について、実例を踏まえ解説しました。この2つの要素は、商業不動産の価値を決める基本となる要素となりますので押さえていただくとよいでしょう。

次回は、オフィス価格の経済的影響について解説していきたいと思います。次回コラムもどうぞご期待いただけますと幸いです。

著者

安田 憲治やすだ けんじ

株式会社ボルテックス 主席研究員

一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。塩路悦朗ゼミで、経済成長に関する研究を行う。 大手総合アミューズメントメント企業で、統計学を活用した最適営業計画自動算出システムを開発し、業績に貢献。データサイエンスの経営戦略への反映や人材育成に取り組む。

現在、株式会社ボルテックスにて、財務戦略や社内データコンサルティング、コラムの執筆に携わる。多摩大学サステナビリティ経営研究所客員研究員。

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