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将来の資産形成や新たな収益源を確保する手段として、不動産投資への関心が高まっています。その入り口となるのが「不動産投資セミナー」です。専門家から直接知見を得られる貴重な機会である一方、その信憑性や勧誘手法に不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
本コラムでは、不動産投資に関心を持ち始めた方々を対象に、セミナーに参加する利点と留意点、ご自身の目的に合致したセミナーの選定方法、そして注意を要するセミナーの識別方法まで、専門家の視点から解説します。この記事が、皆様にとって不動産投資セミナーを有効に活用するための一助となれば幸いです。
この記事の要点まとめ
- 不動産投資セミナーは、専門家から最新情報や基礎知識を効率的に学べる有益な場である。
- 過度なリターンの強調、情報の偏り、セミナー後の強引な勧誘を行う事業者には注意が必要。
- 信頼できるセミナーを選ぶためには、主催会社の実績、講師の専門性、リスク説明の有無などを確認することが重要。
不動産投資セミナーに参加する4つの利点

不動産投資セミナーは、物件の選定手法から賃貸管理、税務に関する知識に至るまで、不動産投資に求められる情報を専門家から直接的に学べる場です。独学で情報を収集する場合と比較し、効率性の面で複数の利点があります。
専門家から体系的な知識を直接聞くことができる
不動産投資を成功させるには、法律、税務、金融、建築など多岐にわたる専門知識が要求されます。インターネットや書籍から断片的な情報を得ることも可能ですが、情報が最新でなかったり、自身に必要な情報を選別するのに多大な労力を要したりするケースも少なくありません。
セミナーでは、経験豊富な専門家や、実践経験のある不動産オーナーが、初心者が陥りやすいポイントを踏まえて解説します。これにより、短時間で不動産投資に関する基礎的な知識を学ぶ機会のひとつとなります。
弊社でも、弁護士や税理士、FP(ファイナンシャル・プランナー)のほか、実際に弊社物件を保有されているオーナー様を講師としてお招きし、セミナーを開催した実績があります。
最新の不動産市場の動向を把握できる
不動産市場は、経済情勢や金融政策、金利の動向など外部環境の変化を常に受けています。
最新のマーケット情報を分析している講師が登壇するセミナーに参加した場合、市況のトレンドや将来予測といった、一般的な媒体では得にくい時事性のある情報に触れられる可能性があります。どのエリアが注目されているか、どのような物件に需要が集中しているかといった具体的な情報を得ることで、ご自身の投資判断における参考情報のひとつとしてご活用ください。
ただし、市況トレンドや予測は経済状況により変動するため、それらを判断材料とする際は慎重な見極めが重要です。
個別の疑問や懸念点をその場で解消できる
不動産投資を検討する過程では、「どのようなリスクが存在するのか」「相続・贈与する際に事前に検討しておくことはあるか」など、個別の疑問や懸念が次々と生じるものです。
多くのセミナーでは質疑応答の時間が設けられており、講師に直接質問することが可能です。また、セミナー後に個別相談会を設けている場合もあり、ご自身の状況に基づいた具体的な情報を収集する機会として活用できるでしょう。
一般市場には流通していない物件情報の紹介
不動産会社が主催するセミナーでは、一般市場には流通していない、いわゆる「未公開物件」の情報が紹介されることがあります。立地に優れるなどよい条件を備えた物件は、一般市場に出る前に成約に至るケースもあります。しかし、一般公開前の情報=常に好条件とは限りません。重要なのはご自身の目的と状況にあった物件を選択できることです。セミナー参加者限定で提供される情報があったとしても、比較検討の材料のひとつとして活用するようにしましょう。
弊社を例にすると、会場セミナーにご参加いただいたお客様に、セミナー終了後に希望者を対象とした販売物件の現地見学をバスでご案内する場合があります(参加は任意)。関心を持たれた物件は、現地を確認することでより具体的な判断材料となる可能性があります。
不動産投資セミナー参加における留意点
多くの利点がある一方で、セミナーに参加する際には、事前に把握しておくべき留意点があります。これらを理解しておくことで、より客観的な視点でセミナーを活用することが可能です。
時間的・物理的な制約
セミナーへの参加は、当然ながら一定の時間を要します。
会場開催の場合は移動時間も発生し、オンライン形式であっても1時間から2時間程度の時間を確保する必要があります。
セミナー後の勧誘
セミナー後、主催会社から個別での連絡や勧誘を受けることは一般的です。事業者によっては、参加者の状況を真摯にヒアリングし、適切な情報提供を行う企業担当者がいる一方で、熱心に自社を紹介する企業担当者がいることもあります。
もし、ご自身の投資方針や考え方と合わないと感じた場合は、明確にその旨を伝えたほうがよいでしょう。
提供される情報の範囲とバイアス
セミナーで得られる知識は非常に有益ですが、すべての情報を受け入れる必要はありません。
主催する不動産会社は、自社の事業戦略に沿った投資手法や物件を中心に解説する傾向があります。例えば、新築ワンルームマンションを主に取り扱う会社は、その利点を中心に、中古アパートを扱う会社は、その物件種別ならではの戦略を解説するでしょう。
ひとつのセミナーで得た情報のみで判断せず、複数のセミナーや書籍などから多角的に知識を得て、ご自身の投資戦略を選択することが重要です。
【初心者向け】不動産投資セミナーの種別
不動産投資セミナーは、開催形式や費用、対象者によっていくつかの種類に分類されます。それぞれの特性を理解し、ご自身の目的や状況に合致したものを選択することが重要です。
開催形式(会場開催/オンライン)
セミナーの開催形式は、主に「会場開催」と「オンライン」に大別されます。会場開催は、講師や他の参加者と直接交流できる可能性があり、臨場感の中で集中しやすい環境が利点です。一方、オンラインは、場所を選ばず参加しやすい点が特長です。どちらが優れているというわけではなく、ご自身の学習スタイルや環境に応じて選択するのがよいでしょう。
開催形式 | メリット | デメリット |
---|---|---|
会場開催 | 講師と直接質疑応答がしやすい講義に集中しやすい環境セミナー後の個別相談へ移行しやすい | 会場までの移動時間と交通費が発生開催日時が限定される |
オンライン | 場所を選ばず参加可能移動時間や交通費が不要匿名での参加が可能な場合が多い(匿名可否はプラットフォームや主催者の設定によって異なる) | 通信環境にパフォーマンスが左右される講師との直接的なコミュニケーションは限定的 |
参加費用(有料/無料)
セミナーには、参加費が無料のものと有料のものがあります。無料セミナーは、不動産投資の基礎的な概念を学ぶのに適しており、気軽に参加できる点が利点です。多くの場合、主催企業側のマーケティング活動の一環として開催されるという側面もあり、セミナー後に企業担当者から自社商材の売り込みを受ける可能性があることは認識しておきましょう。
一方、有料セミナーでは、著名な専門家や実績ある投資家が登壇するケースがあり、より専門的な知見や具体的な成功事例を聴取できる場合があります。セミナー自体が事業となっている場合もあるため、無料セミナーと比べると売り込みが強くない場合もあります。
初心者が初めて参加する場合、費用や売り込みの有無もさることながら、セミナーの内容が自身の目的に沿っているか否かを見極めることが肝要です。
セミナー内容
セミナーは、対象となる参加者の知識レベルに合わせて内容が構成されています。不動産投資の全体像や基礎知識の習得を目的とする方は、「初心者向け」と明記されたセミナーが適しています。
例として弊社が開催するセミナー内容は、「資産運用の一環として行う方向け」、「相続・贈与に関するお悩みをお持ちの方向け」、そして「事業戦略として検討している経営層向け」などさまざまなものがあります。ご自身の状況と目的に合ったセミナーを選びましょう。
後悔しないための不動産投資セミナー選定ポイント5選

数多く開催されるセミナーの中から、ご自身にとって有益なものを見出すためには、以下の5つの要点を押さえておく必要があります。
主催会社の信頼性・実績の確認
重要なのは、主催企業の信頼性です。企業の公式サイト等で、設立年、事業内容、過去の実績(取引件数や入居率など)を確認します。宅地建物取引業の免許番号の記載は必須確認項目です。免許番号のカッコ内の数字は更新回数を示します(通常は5年ごとに更新)。数字が大きいほど業歴の長さを測る目安になります。
また、商材は居住系か非居住系か、どのような戦略・考え方をしているか、オーナーの事例などを掲載しているかも確認しておくとよいでしょう。
セミナーの目的・対象者の合致確認
セミナーの告知ページで、どのような層を対象とし、どんな内容が学べるのかを確認します。「初心者向け」「30代からの資産形成」「ワンルームマンション投資」など、具体的なテーマを参考にしながら、ご自身の知りたいこととセミナーの内容が合致しているかを見極めましょう。
講師の経歴・専門性の確認
セミナーの質は、登壇する講師によって大きく左右されます。講師がどのような経歴や実績を有しているのかを事前に確認すべきです。単なる営業担当者ではなく、自身も不動産投資を実践している講師や、関連資格(例:FP、宅地建物取引士など)を保有する講師の話は、より実践的で説得力があると考えられます。
リスク・デメリットに関する説明姿勢の確認
不動産投資には、さまざまなリスクが内在します。メリットのみを強調し、空室リスクや金利上昇リスク、災害リスクといった負の側面について一切触れない、あるいは説明が不十分なセミナーは、信頼性に欠けると言わざるを得ません。
リスクを客観的に説明し、その上で「どのような対策を講じるべきか」を具体的に解説するセミナーは、参加者に対して誠実な姿勢である可能性があります。
第三者による口コミ・評判の参照
実際にセミナーに参加した人の評価も、判断材料のひとつとなり得ます。「セミナー名 口コミ」での検索に加え、複数媒体を確認してください。広告やステマに該当する投稿が混在する可能性があるため、出所や記載根拠もあわせて確認しましょう。
ただし、肯定的な評価に偏っている場合は、作為的なものである可能性も否定できません。複数の媒体やSNSで、多角的な視点から総合的に判断することが重要です。
【要注意】慎重な判断を要する不動産投資セミナーの5つの特徴

残念ながら、中にはセミナー参加者の知識習得の段階を正しくない形で利用する事業者も存在します。ご自身の資産を守るため、以下のような特徴を持つセミナーへの参加は慎重に判断しましょう。
「絶対儲かる」など、過度なリターンを強調する
「元本保証」「絶対に損はしない」「驚異の利回り20%」といった、過度に有利な条件を提示し、参加者の射幸心を煽るセミナーは、極めてリスクが高いと考えられます。
不動産取引において、「絶対に儲かる」「必ず値上がりする」といった断定的な表示は、宅地建物取引業法(例:第47条の誇大広告等の禁止)で禁じられています。
不動産投資はあくまで投資活動であり、相応のリターンには相応のリスクが付随するのが原則です。リターンの大きさのみを過剰に強調するセミナーは、法律に抵触していることはもとより、その信憑性を疑う必要があります。
リスクに関する説明が皆無、または曖昧である
誠実なセミナーがリスクを客観的に説明するのとは対照的に、デメリットやリスクについて意図的に触れない、あるいは質問しても曖昧な回答に終始する傾向が見られたセミナーは疑念を持ったほうがよいでしょう。
その場での契約を執拗に迫る
「本日中に契約すれば特別割引を適用する」「この物件は希少価値が高く、すぐに成約してしまう」などと、冷静な判断を妨げる形で契約を急かすのは、以前から存在する勧誘手法です。
不動産は高額な資産であり、即断即決すべきものでは決してありません。検討の時間を与えないセミナーは、極めて慎重な判断が求められます。契約判断に必要な時間を与えないなど、著しく困惑させるような勧誘は不適切であり、宅地建物取引業法(例:第47条の2の不当な勧誘の禁止)に抵触するおそれがあります。
主催会社の情報が不透明である
主催企業の会社情報が、WEBサイト等で十分に公開されていない場合も注意が必要です。会社の所在地、連絡先、代表者名、宅建業免許番号などが明記されていない事業者は注意しましょう。実態のない会社である可能性も考慮すべきです。
物件購入の契約をして代金の支払いをしたところ、業者と連絡が付かなくなってしまった、という事例を一度は耳にしたことがあるでしょう。
セミナー内容と比して過剰な特典を提示する
「参加者全員に商品券○万円分」「高級ホテルでの食事付き」など、セミナー内容や条件と比して過剰な特典で集客を図るセミナーは警戒したほうがよいでしょう。
ただし、収入証明書や資産を証明できるものの提示や商談の実施など、金券等の提供は、景品表示法その他の法令や社内規程の範囲内で実施される場合があります。提供条件や上限は各社のルールで実施されています。
見極めのポイントは、特典内容と特典付与の条件が吊り合っているかという点です。
不動産投資セミナー参加後の一般的なプロセス

セミナー参加をきっかけに不動産投資への意欲が高まった場合、通常は以下のステップに進みます。一般的なプロセスとして解説します。
ステップ1:個別相談の実施
セミナー内容に関心を持った場合、次のステップとして個別相談へ移行するケースが多く見られます。ここでは、セミナーでは踏み込めなかった個人的な状況(年収、自己資金額、ライフプラン等)を共有し、より具体的な相談を行います。この段階で、強引な勧誘の有無や、担当者の専門性・対応を慎重に見極めることが肝要です。
ステップ2:具体的な収支シミュレーションと物件提案
個別相談で提供した情報に基づき、不動産会社が具体的な収支シミュレーションを作成します。月々の賃料収入から返済や諸経費を差し引いたキャッシュフローを数値で確認します。前提条件(賃料設定、空室率、金利、修繕計画など)を明示し、前提を変えた複数パターンで比較すると判断材料が増えます。
同時に、参加者の希望や条件に合致した物件の提案を受けることになります。物件の立地や築年数、価格といった諸条件を吟味し、不明点は納得するまで質問を重ねることが重要です。
ステップ3:購入申込と契約手続き
提案された物件に納得した場合、購入の申込手続きに進みます。その後、金融機関の審査、宅地建物取引士による重要事項説明と書面の交付を受けたうえで、売買契約へ進みます。契約書や重要事項説明書には専門的な内容が多く含まれるため、内容を十分に理解しないまま署名・捺印することは避け、慎重に手続きを進める必要があります。
重要事項説明とは、物件に関する法的・物理的な情報や、購入に際して注意すべき点を説明する法定手続きです。事業者によっては、取り扱う物件の特性上、重要事項説明を円滑に進めたいと考えるケースもあります。分からない用語や曖昧な説明があれば、聞き流さずきちんと確認しましょう。
不動産投資セミナーに関するよくある質問(FAQ)

執拗な勧誘はありますか?
事業者によります。多くの優良企業は、企業の信頼を損なうような勧誘は行いません。しかし、一部にそうした事業者が存在するのも事実です。本稿で解説した特徴を参考に、少しでも疑問を感じた場合は、明確に断る姿勢が重要です。
参加に必要なものはありますか?
基本的には筆記用具があれば十分です。オンラインセミナーの場合は、インターネットに接続可能なPCやスマートフォンがあれば問題ありません。セミナー内容によっては、シミュレーションを行う際に電卓があると便利です。
知識がなくても参加可能ですか?
知識がなくても参加自体に支障はありません。多くのセミナーは、知識ゼロの初心者を対象に構成されています。むしろ、自己流の不正確な知識を身につける前に、セミナーで体系的に基礎から学ぶことは非常に有益であると考えられます。まずは情報収集の一環として、参加を検討されてはいかがでしょうか。
まとめ
不動産投資セミナーは、適切に選択し活用すれば、ご自身の資産形成を検討する上で、有力な情報源となり得ます。重要なのは、ひとつの情報を無批判に受け入れることなく、常に客観的かつ冷静な視点を保持することです。
本稿で解説した選定の要点や留意点を参考に、まずは信頼性が高いと判断できる事業者の無料セミナーに参加してみるのもひとつの方法です。それが、将来の経済的な安定を構想するうえでの、着実な一歩となる可能性を秘めています。
しかし、会場やオンラインに関わらずどうしても時間が決まっているセミナーというものに抵抗があるという方もいるでしょう。時間的な制約からライブセミナーへの参加が難しい方には、ご自身の都合に合わせて視聴できるオンデマンド配信という選択肢もあります。
ライブ配信と比べると最新情報の反映が遅い場合が多いものの、最初の情報整理や基礎理解にはとても有効です。
ものによっては1時間以内で視聴可能、あるいは倍速再生が可能な場合もあります。
弊社でもオンデマンド配信のセミナーをご用意しています。ぜひご利用ください。
- 本記事に記載された情報は、最終更新日時点のものです。掲載されている情報は、予告なく変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
- 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、弊社では何ら責任を負うものではありません。資産運用・投資・税制等については、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。
- 期待どおりの税務上の効果が得られない可能性があります。
- 評価額は物件により異なります。
- 税制改正、その他税務的取り扱いの変更により効果が変動する場合があります。
- 税務の取り扱いについては、個別具体的な事情に応じて適用が異なる可能性がありますので、税理士等の専門家にご相談ください。
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