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本業を核に数々の画期的製品を生み出す
会社を永続させるためにイノベーションは不可欠だ
會澤高圧コンクリート株式会社 代表取締役社長 會澤 祥弘氏

目次

創業から89年。會澤(あいざわ)高圧コンクリート株式会社は北海道を基盤に成長し、今では日本各地のほかグローバルに拠点を持ち、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)と製品を共同開発するなど、活躍の舞台を広げる企業です。3代目社長の會澤祥弘氏は、「コンクリート以外のことはやるな」という、創業者である祖父の遺訓を守りつつ、「コンクリート×テクノロジー」を駆使して、革新的な事業を次々に展開しています。長寿企業の秘訣を、3代目社長の會澤祥弘氏に伺いました。

お話を聞いた方

會澤 祥弘氏あいざわ よしひろ

會澤高圧コンクリート 株式会社 代表取締役社長

1965年北海道静内町(現・新ひだか町)生まれ。中央大学卒業後、日本経済新聞社に入社。12年間の記者生活では米州編集総局(ニューヨーク)駐在などを経験。1998年、家業である會澤高圧コンクリートに入社。旧態依然とした業界に激震を走らせた無人ネットワーク型生コンプラントの創設を主導するなど、次々とイノベーションを起こす。2008年、代表取締役社長に就任。現在は、真の老舗企業になるべく、4代目にバトンを渡す準備を進めている。著書に『コンクリート業界の革命児が挑む 老舗イノベーション』(幻冬舎)がある。
https://www.aizawa-group.co.jp

先代とともに会社を退いた役員の潔さと美学

私の祖父である會澤芳之介は、11歳で父を亡くし、17歳のときに兄、源壽を頼って北海道の土を踏みました。その源壽が創業した「會澤土木建築」で経理業務を行いながら、芳之介はコンクリートの研究に没頭し、1935年に「會澤コンクリート工業所」を創業することになります。戦後、會澤コンクリート工業所を法人化するとともに、「静内産業」に社名を変更し、コンクリート製品部、建材部、土木建設部、家具建具部、フローリング製造部というように多角化を進めました。このコンクリート製造部を分離独立させ、現在の會澤高圧コンクリートを設立したのが、私の父である實です。

そして今、3代目を継いでいる私ですが、最初は後継者として約束された立場に反発する気持ちから、日本経済新聞社の記者になりました。セゾングループの堤清二氏や、ダイエーの中内㓛氏を担当した後、1994年からはニューヨーク特派員として当時、インターネット黎明期だった米国で、さまざまな起業家を取材しました。

そして、12年間の記者生活に区切りをつけて帰国し、會澤高圧コンクリートに入社しました。社長の座を譲ってもらうつもりは、はなからまったくありませんでした。権力の座は自分の力で奪い取ってみせるものだと心に決めていたのです。それには結果を出さなければなりませんし、親の世代とは違うことをする必要があります。そこで、自分と近い世代を集め、会社を変えるためにさまざまなプロジェクトを立ち上げました。

当然、父に仕えてきた役員たちからすれば、存在を否定されているようなものですから、思うところもあったでしょう。でも、何も言わずに見守ってくれました。後になって気付いたのですが、父に仕えてきた役員たちは世代交代に際し、父とともに会社を退いており、自らの進退についても潔さ、美学を持っていたのです。

チームラボで修業してきた息子が現に入社し、今、同世代の仲間とともに試行錯誤を重ねているところです。少なくとも10年は並走する形になると思いますが、私たちが思いもよらないビジネスモデルをいつの日か立ち上げ、誰から見ても世代交代が当然という瞬間が来ることを期待しています。

コンクリート×テクノロジー=イノベーション

コンクリートは、セメントに砂利や砂などの骨材(こつざい)と水を混ぜて練り上げたものであり、昔ながらの製品のイメージがつきまといます。典型的な成熟産業と思われているフシはありますが、実はまだまだ進化していく可能性があるのです。

また、当社には、祖父からの遺訓があります。それは「コンクリート以外のことはやるな」です。

文字通りに捉えれば、コンクリート製造以外のことには手を出さず、保守的な経営に徹しろというように聞こえます。確かに、経営の多角化と称して、本業とはまったく違うジャンルのビジネスに手を出した挙句、経営を傾かせてしまった会社は少なくありません。

しかし、この遺訓を私は別な解釈で捉えました。コンクリートを核にして、ほかのテクノロジーをかけ合わせることによって、イノベーションを加速させていくことだ、と。「コンクリート以外のことはやるな」の意味を、より深掘りして研究し極めろ、と理解したのです。

例えば「Basilisk自己治癒コンクリート」は、コンクリートにバイオテクノロジーをかけ合わせた製品です。特殊培養したバクテリアを生コンクリート製造時に処方することで、経年劣化でひび割れが生じても、バクテリアが自動的に治し続けます。コンクリートの寿命が飛躍的に延びるため、メンテナンスの手間が省け、コンクリート製造時に発生するCO2の削減にもつながります。

またAIを用いたコンクリートの品質判定技術も開発しました。コンクリート製造は典型的な“すり合わせ技術”で、砂利や砂などの骨材の品質や、骨材とセメントを混ぜる際の温度や湿度によって品質が変わり、それらの条件を微妙に調節しながら作る必要があります。こうしたコンクリートの製造データをAIに学ばせることによって、品質のばらつきを最小限に抑えた、高品質のコンクリート製造を可能にします。

バクテリアが自然にひび割れを治す「Basilisk自己治癒コンクリート」はサステナブルな製品としても注目される

直近のトピックとしては、コンクリートに炭素の微粒子を混ぜることで電気を蓄える「蓄電コンクリート」のコンソーシアムを、米国のMITと立ち上げました。蓄電コンクリートを住宅やビルの基礎に使えば、再生可能エネルギーで発電した電力を生活や仕事に効率的に活用できます。

私たちはコンクリートにさまざまなテクノロジーをかけ合わせて、イノベーションを次々に生み出しています。イノベーションは、会社を永続させるためにも必要不可欠なものなのです。

ファミリーエンタープライズによる長期目線の経営

当社は今では米国、ロシア、シンガポール、香港、ミャンマー、モンゴルにも進出するグローバル企業ですが、祖父が立ち上げた頃からずっと、會澤家のファミリーエンタープライズであり、今後もそれは変わらないと思います。

ファミリーエンタープライズには、「オーナーによる会社の私物化」「自浄作用が働かない」「ガバナンスが効かない」といった負のイメージがある反面、長期的な視点で経営を行える利点もあります。実際、私自身も祖父や父の姿を見て経営に携わり、さらには自分の後ろ姿を私の子供に見せてきました。そして、私の子供に子供が生まれれば、都合5代にわたって、會澤家のファミリーエンタープライズの歴史を生で見ることになります。

この歴史を永続化していかねばなりませんし、子供の代、孫の代にも社会から必要とされる會澤高圧コンクリートであり続けるために、必然的に長期目線でもって経営にあたるようになります。

しかし、株式を上場したりすれば、長期的な目線での経営は難しくなります。何しろ四半期ごとに売上、利益を厳しくチェックされますから、経営者は目先の利益だけを追うようになります。それでは、会社の永続性は担保されません。

日本は長寿企業が世界一多い国として知られています。一番古い企業は、西暦578年創業の金剛組で、今も続いています。それらの歴史は米国企業の比になりません。長く続くことには必ず理由があります。当社にとっては「コンクリート×テクノロジー」によって生み出されるイノベーションと、ファミリーエンタープライズであること。この2つの強みを、創業100年に向かって揺るぎないものにしていく所存です。

[編集]株式会社ボルテックス コーポレートコミュニケーション課
[制作協力]株式会社東洋経済新報社

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