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最終章「ステーションタワー」竣工でついに真価を発揮する虎ノ門ヒルズ
21世紀の東京の「重心」は現在よりもやや南側へシフト

目次

港区虎ノ門周辺は、都内でも特に大規模な再開発が相次ぎ、超高層化が進んでいる地域のひとつです。2023年7月には虎ノ門ヒルズの4番目の棟、ステーションタワーの竣工が控えており、都市機能や交通アクセスの利便性が大幅にアップすることが期待されています。ステーションタワー開業で虎ノ門がどのように進化し、国際都市としての東京の発展にどう貢献するのか、都市計画、交通工学がご専門の岸井隆幸氏にお話をうかがいました。

主要な交通結節点としての虎ノ門ヒルズ

 虎ノ門ヒルズは「国際新都心・グローバルビジネスセンター」構想のもと、港区虎ノ門1丁目および2丁目の大規模再開発によって誕生した多機能複合都市です。これまでに、2014年の「森タワー」を皮切りに、2020年に「ビジネスタワー」、2022年に「レジデンシャルタワー」が竣工されてきました。そして、地上49階、高さ約266mと四棟のなかで最も高層の「ステーションタワー」が、この7月に竣工を迎えます。

 ステーションタワーの最大の特徴は、重層的な交通ネットワーク拠点としての役割です。虎ノ門ヒルズと東京メトロの新駅創設とが合わせて開発され、2020年に虎ノ門ヒルズ駅が開業しました。地下鉄の駅や路線は既存の道路の下に作るのが原則で、本件のように街の開発と一体的に新駅が計画されるのは、従来にはない試みであり、東京メトロにとっても重要なモデル事業であるといえます。

 同駅はこれまで暫定的な、反対側のホームと行き来できない相対式の設計でした。7月の竣工に合わせて改札が地下2階に移動するとともに、同タワー地下の吹き抜けの駅前広場「ステーションアトリウム」を経由して地上に出る構造へと生まれ変わります。これにより街と一体化した駅として、一帯の街づくりに大きく寄与することになります。

 地上では、森タワーとステーションタワーの間を走る桜田通りの上に、幅員20mの大規模歩行者デッキを設置。幹線道路に分断されることなく四棟の間を行き来できます。周辺のランドマークや虎ノ門エリア全体との調和も意識し、新虎通りから赤坂方面まで抜ける動線を意識した歩行者ネットワークが構築されています。すでにビジネスタワー1階から発着・運行している、臨海部と結ぶバス高速輸送システム「東京BRT」や羽田空港への空港リムジンバスも合わせ、虎ノ門ヒルズが東京サウスエリアの重要な交通結節点となることが期待されます。

国際都市を意識した開発が進む虎ノ門周辺

 都心の大規模再開発では近年、ビジネス施設・商業施設に加え住居施設も整備し、ひとつの街のような空間を生み出すスタイルが目立ちます。ライフスタイルに対する価値観が時代とともに変化し、職住近接を理想とする人が増えていることや、開発以前に当地にお住まいだった方の住居の確保という意味もありますが、虎ノ門ヒルズにおいては、世界のハイエンド層も認める最先端の都市空間を提供するという狙いがあります。ご承知のように虎ノ門周辺といえば多くの大使館や領事館があり、虎ノ門ヒルズは諸外国の、それも多くは富裕層やその家族が施設を利用したり居住することを大前提に計画されています。

 そのコンセプトのもと、ステーションタワーには、グローバル水準のオフィスや東京初進出のブランド「アンバウンドコレクション by Hyatt」を冠する「ホテル虎ノ門ヒルズ」のほか、「新しい東京を象徴する情報発信拠点」と銘打つ施設「TOKYO NODE」を最上部に据えています。TOKYO NODEはホール、ギャラリー、レストランなどの機能を一堂に備えることにより、イノベーティブなアイデアや文化を発信する場所として、開業前から大きく注目されています。

 世界から見た東京という観点でいえば、東京はエキゾティックな街としての魅力も保ちつつ、グローバルビジネスセンターとしての側面を磨いてきました。その先鋒のひとつが虎ノ門ヒルズであり、世界からのハイレベルなニーズにも十分に適うスペックのサービスを実現しているといえます。

 港区は国際競争力強化に資するビジネス拠点形成を念頭に、2012年から「新橋・虎ノ門地区まちづくりガイドライン」を策定し、国際都市としての魅力の向上と情報発信を推進しています。虎ノ門ヒルズも、環状2号線の築地〜虎ノ門間工事と一体的に、官民連携のプロジェクトとして発展してきた経緯があります。虎ノ門ヒルズとしての再開発は、ステーションタワーの開業をもってひと段落となりますが、近隣ではすでにホテルオークラや虎の門病院が建て替えられたほか、麻布台ヒルズをはじめとする大規模再開発もあり、周辺一帯は今後も進化を続けるでしょう。

国際競争力の向上を牽引する東京サウスエリア

 環状2号線全面開通やJR高輪ゲートウェイ駅の開業に加え、東京では今後10年ほどの間に、リニア中央新幹線の開通、羽田空港アクセス線の開通、羽田空港の国際線発着枠の増加なども控え、交通アクセスが飛躍的に向上することが見込まれます。これらはいずれも、東京臨海副都心に近いエリアに広がっています。東京都心部といえば「山手線の内側」のイメージがありましたが、長い目で見ると東京の重心は、現在よりもやや南側にずれていくと思われます。国際都市東京の中で、羽田空港に近いことは大きな利点となり、品川や虎ノ門といった東京サウスエリアの街の需要が高まることが予想されます。東京湾も「湾」といいながら、表面は海面というより湖面に近く、内陸水面のような様相を強めており、これもこの周辺エリアの価値を高める一因となってくるでしょう。

 もちろん、山手線の輪と、それより少し南側の輪、どちらかひとつという話ではありません。ふたつの都心エリアがダブルリングのごとく共存していく姿が、いまはうっすらと、そして次第に色濃く、未来の東京の形として見えてくるのではないでしょうか。なぜなら、都心部に多くの代表的な街が存在しながらも、それぞれが違う顔を持っていることが東京の良さだからです。渋谷、六本木、丸の内、銀座、浅草とあげてみても、ひとつとしてカラーは同じではありません。街同士の差別化がより顕著になれば、それだけ東京の魅力は増し、ひいては国際競争力の向上に結びつきます。その一翼を虎ノ門も担っています。

お話しいただいた方

岸井隆幸 様
きしい・たかゆき
一般財団法人計量計画研究所 代表理事

PROFILE
一般財団法人計量計画研究所代表理事、日本大学名誉教授。1977年東京大学大学院都市工学専攻修了。同年建設省(現国土交通省)に入省。その後日本大学専任講師、助教授、日本大学理工学部土木工学科教授を歴任。都市計画・交通計画の第一人者であり、日本地下鉄協会理事、新虎通りエリアマネジメント顧問なども務める。東日本大震災では日本都市計画学会会長(当時)として、被災地の復旧・復興に努めた。著書に『東京の都市づくり通史』(2019年、編纂委員長)ほか多数。

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