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経営者インタビュー#2
株式会社サギサカ
代表取締役社長 匂坂 慎祐 様

目次

これまで弊社メールマガジンにて人気シリーズとして全15回にわたりお届けしておりました『経営者インタビュー「未来へ繋ぐ、わたしの羅針盤」』を、メールマガジン読者の皆様からの反響を受けまして、Vコラムとして掲載をすることとなりました。
完全新作のインタビューはもちろん、過去にメールマガジンで配信をしたインタビューについても、ご承諾いただいたものについては、再編集してVコラムとして更新をしていく予定です!
今回は 株式会社サギサカ  代表取締役社長 匂坂 慎祐 様へのインタビューをお届けします。

「自転車文化の裾野を広げ、底上げを図る」を理念に、愛知県豊田市から日本全国にサイクルパーツを供給する株式会社サギサカ。健康のためのツール、家族共通の趣味、地球環境への負荷の少ない交通手段として、子供からお年寄りまで利用する自転車のさまざまな魅力や楽しみ方を提案しています。3代目経営者である匂坂慎祐社長に、経営に関する信念や方向性を伺いました。

縁だけに頼らず、商品力と組織力を重視した経営へ

法人設立からは46年目が経過した株式会社サギサカ。創業者である祖父は、街の自転車屋さんとして開業し、地域に根付いた商売をしていました。

そこから事業を拡大した先代は、20代で入社したばかりの匂坂社長に「10年で社長を譲るから覚悟しておきなさい」と宣言。その言葉のとおり、入社して12年目、先代が63歳のタイミングで社長を交代しました。

「入社早々にそれをいわれたときは、本当に驚きました」と振り返る匂坂社長。「しかし先代との並走期間中に、組織改革も含めてすべて環境を整えてくれたこともあり、非常に恵まれた状況で事業を引き継ぐことができました。今でも先代には本当に感謝しています」と語ります。

まさに事業承継の成功事例として語り継がれるようなエピソードです。それでも経営の舵取りを任された後に大変な時期もあったのでは、と話を向けたところ「有り難いことに、経営に致命的なダメージを受けたことはほとんどありません」としながらも、事業承継に関するあるテーマを実現する過程での苦労を聞かせてくれました。

「先代の人柄、人望、人脈で企業の魅力を伝え、事業を拡大してきたという経緯から、『人のつながりから仕事が取れる。取引先と上手く付き合えば何とかなる』という高度経済成長時代に築かれた社風があり、これからの時代に合わせて『変革が必要だと感じていました。もちろん取引先との縁は大切ですが、それだけに頼った商売の仕方ではなく、純粋にサギサカのよさ・コアコンピタンスを理解していただき、取引を継続していただくために商品力と組織力に重きを置きたかったのです」

その変革期において一時的に離れてしまった取引先やステークホルダーもいたそうで「今思い返すと大変な時期だったといえるかもしれません」と振り返ります。

「思い切った営業スタイルの変革を断行した一方で、『人と人との縁や商売を通じて人間関係を大事にするという価値観』は、一つのノウハウとして先代から承継したつもりです。そのためにさまざまな交流会や業界団体にも加盟し、とにかく質の高い情報を得るということは継続しています」 先代の思いや効果的な手法はしっかりと承継しつつも、事業継承時に思い切った変革を図った匂坂社長。同じようなテーマを抱える企業にとって、確かな成功事例として参考にできる決断といえるでしょう。

社員一人一人のワークライフバランスに向き合う

最近の経営状況では、ほかの業界と同様、自転車業界もコロナウイルス感染症による影響を受けたと匂坂社長は語ります。

「当社は、いわゆる『ママチャリ』などの一般自転車や、鍵、ライト等の関連パーツをメインの商材として取り扱っています。ところが緊急事態宣言の影響で外出の禁止、学校の休校、さらには世の中の混乱により人の流れが止まってしまい、本来繁忙期であるはずの4月に売上が激減。私が入社してからの25年間で、月次売上としては一番苦労しました」

しかしホームセンターの営業が再開され、世の中が次第に落ち着きを取り戻すと、状況は一変します。

「『電車よりも自転車通勤の方が安心』と、密を避ける動きが加速し、6月は一転して過去最高の月次売上となりました。1年を通じての落ち込みを埋められるほどではなかったのですが、それでもなんとか数字は残せたと思います」

また、多くの企業にとっての経営課題である「働き方改革」については「人を大事にするという意味で『社員一人一人のワークライフバランス』に向き合う姿勢を常に心掛けています」という基本方針を聞かせてくれました。

「私が子供の頃は、父と遊んだ記憶がほとんどありません。常に仕事一筋で、休みの日も会食やゴルフ…仕事仕事の毎日でした。私も『お父さん』よりも『社長』と呼ぶ方が多かったくらいです(笑)。そんな経験から、仕事ばかりの人生が美徳ではなく、家庭や趣味など生活も大事にしてほしいと考えるようになりました」

そんな自身の経験に基づく、社員の幸せを第一に考える姿勢。匂坂社長は、こう続けます。

「社員には心地よく仕事をしてほしいのです。『家庭が上手くいかなければ、何かしら仕事に影響がでる』ということは、どこにでもよくある話ですから。『心・技・体+生活』と、バランスをしっかりとることが重要だと思います」 社員が自分の時間を犠牲にして売上を達成するような仕事の仕方は継続しない。事業を次の世代に引き継ぐために安定させるには、社員のことも中長期で考えるべき、と匂坂社長は強調します。この姿勢こそが、「働き方改革」という、日本中の企業が直面する課題への根本的な指針であるでしょう。

常に自然体を意識し、不自然をも受け入れる準備をする

尊敬する人物に「先代」と迷わず答える匂坂社長。「時代に合わせてサギサカを評価していただいているのは、間違いなく先代の経営手腕によるもの」とし、「私は引き継いだ基盤を活かして、とにかく真面目に前向きに取り組んできただけ」と謙遜します。

「だからこそ逆に、私と違う価値観を持った方々との出会いや交流は大切にしています。私が特に面白いと感じるのは、業界団体ではなく、むしろPTAなど会社と全く関係のない組織や組合の運営に携わること。『社長!社長!』と気を使われることもなく、自然にさまざまなコミュニケーションが生まれ、そこから仕事へのヒントになることもあります。仕事と関係のないところに時間を割けるようになると、常にゆとりを持つことができます。これはとても大事なことだと考えています」

最後に匂坂社長の考える事業継続の秘訣を聞いてみました。

「私は、自分自身を『凡人』だと思っています。だからこそ、自己分析・自社分析を徹底的に行うように心がけています。主観・客観の両面から物事を見据え、常に自然体を意識しながら、不自然をも受け入れる準備をしておくことで、変化に気づく『遊びの部分』を持つことができます。またそうすることで、当社のビジネスに直結する・しないに関わらず、相手が誰であろうと物事を学ぶ姿勢を保つことができるのです。会社にこのような文化を醸成する第一歩として、社員間の共通認識を持つためのコミュニケーションに重きを置いています。先代から引き継いだ課題を解決し、時代の変化に対応できる組織へと進化させ、次世代へつないでいきたいと考えています」

尊敬する先代のよいところを吸収しながら、自身を謙虚に分析したうえで、信じる方向をしっかりと見据えた経営を続ける匂坂社長。これからも永く活躍する企業として、大切な姿勢を学ばせていただきました。

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