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経営者インタビュー#22
協永堂印刷株式会社
代表取締役社長 萩原 俊長 様

目次

1950年の創業以来、「身近で頼れる印刷屋」として信頼を重ねてきた協永堂印刷株式会社。現在はカタログやポスター、会社案内といった印刷物はもちろん、ノベルティグッズ、映像、ホームページなど、デジタルの領域にも制作の幅を広げ、お客様のニーズに応えています。組織に活力を与える人材育成術や、従業員との関わりの中で大切にしていることなど、70年以上の歴史を築いてきた経営の源について、萩原俊長社長に話を伺いました。

所得が増えなければ生産も増えない
従業員の生活を豊かにすることで生産性を高める

創立者である萩原俊夫氏が東京都北区において前身となる「ジャーナル社」を開業してから、70年を超える着実な歩みを続けてきた協永堂印刷株式会社。事業を受け継ぎ、さらに継続,そして発展へと導くにあたり、トップとして意識していることに「経営と経済の2つの側面から物事を捉えること」を萩原社長は挙げます。

「経済には『GDP三面等価の原則』という考え方があります。支出(国内総支出)・生産(国内総生産)・所得(国内総所得)という3つの視点から国の経済を評価するというもので、この3つの要素は必ず一致するというものです。つまり国民の所得を上げるためには生産を上げる必要がありますが、同時に国民の所得が増えない限り生産も増えないという双方向の考え方ができます。これを企業の経営に置き換えると、事業を継続させるためには、従業員の生活の向上が重要であり、それが企業に反映され、最終的には日本を元気にすることにも繋がるのです」

経営者が数字やお金の流れを正しく理解し、経営と経済の両面から判断することで導き出された「従業員の生活を豊かにする」という原則。そこからさらに一歩踏み込み、萩原社長は未来への投資についても目を向けています。

「生活を豊かにするための『給料』というのは、私たちが行動したことに対する価値です。一方で、企業の未来を作るためには、投資や資産形成も重要。目先の給料のために働くことも重要ですが、『未来について考えましたか?未来を作っていますか?』という、『今』と『未来』のバランスを常に考えながら仕事をすることも大切。これが崩れ、同時にできていないと、企業の存続は難しいでしょう」

物事を一つの側面から見るのではなく、「企業と従業員」「今と未来」を常に双方向から捉え、判断していくことが、萩原社長の経営の源泉となっているようです。「もちろん、会社の継続には『運』も大きいと思います。長く取引を続けていただいているお客様との繋がりや、経営の軸となるような考え方を教えてくれた人がいたということも忘れてはいけないですね」と笑顔で答えてくれました。

経営は掛け算
今以上の力を発揮する人材の育成

経営者にとっての永遠の課題に、人材育成があります。もちろん萩原社長も「人を育てることができれば、どんなに不況でも乗り越えられる」と、その重要性については痛切に感じているといいます。

「『経営は掛け算』とよくいわれます。例えば一人の力を『1』としたときに、一人が今の自分の力より『0.5』でも多く努力することで、全体としては2倍の力に変わります。ところがその数が『0』という人がいたら、全体も0になってしまいます。今より『0.5』でも上の力を発揮する人材をどう育てていくのか、それを経営者としては常に考えています」

一人ひとりの力を高め、組織としての力を倍に増やしていくこと。一方で「個」に頼りすぎることなく、会社全体として営業スキルやノウハウを蓄積し、伝えていくことも重要です。「それは私が就任したときからの課題。残念ながらいまだに達成できていません」と、人材育成の難しさを萩原社長は、こう分析します。

「例えば、新人が入ってきたときに、先生やコーチなら明確に教えることができると思いますが、先輩では簡単なことを教える程度しかできないでしょう。逆に新人から先輩に“これ教えてくれませんか?”と自分からいく場合が多い。今の社会人はそれが当たり前になっています。“いつになったら教える側になる?”と聞いても、おそらく答えられません。これはよい先生に恵まれたかどうかにもよりますが、いつまでたっても教わる側の人間のままなのです」

「なぜ人が育たないのか」という多くの企業が抱える問題には「上司・先輩が悪い」「聞く側が悪い」という二つの側面があり、それを考察しながら対策を練るには時間がかかると萩原社長はいいます。

目的を明確にすれば
人は大きな力を得ることができる

では企業の繁栄のため、どのように人材を育っていくのか——。その命題に対し、萩原社長は「目的の明確化」をポイントとして挙げました。

「『あなたが働く目的は何なのか?』と社員に問いかけ、それを明確にするように話しています。目的が定まっていなければ、良い結果は得られません。目的が変われば前提が変わり、前提が変われば結果が変わり、結果が変われば人生が変わります。すなわち、目的が変われば人生が変わるということです。『働かなければいけないから、働く』のではなく、『なぜ働くのか』という目的を深く考えること。目的がわかったときに、働く前提が固まり、人は大きな力を得ることができると私は考えています」

目的を固めたうえでの行動こそが大切という萩原社長。その気づきを与えるためのコミュニケーションの場として、現在はコロナ禍で難しくなっているものの、かつてはいわゆる「飲みニケーション」も大事にしていたそうです。

「上司との会食が苦手という人は多いかもしれません。ただそれは、その目的がわからず、無理やり出席させられた感が強いからだと思います。酒を飲んでいるときまで、上司に気を使って何が楽しいのかと思っているのでしょう。しかしだからこそ『上司も部下も関係ない。1対1の人間として付き合いたい。本当に無礼講だから、ぜひ来てほしい」という目的を伝え、前提をしっかり作ることが大切だと考えます」

「あなたはなぜ協永堂印刷で働くのですか?」と従業員に聞くこと。その目的を共有することで組織力が高まるという萩原社長。「時間はかかりますが、そうやって人が育っていくと企業は勝手に続いていきます」と確信を込めて語ってくれました。

「大日本帝国海軍の指揮官だった山本五十六の『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』という有名な言葉があるように、まずは自分が実践することが大切ですね。私も例えば、大の苦手であるマラソンに挑戦したり、オフィスのトイレ掃除や床掃除をしたりと、人を動かすための行動を自分でやってみることから始めています」

経営の本質を常に冷静かつ多角的に捉え、自分なりの回答を実践する萩原社長。そこに永きに渡り繁栄を続ける協永堂印刷株式会社の経営の理想を感じることができました。

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