事業承継や事業継続、不動産事業、オフィス購入なら、
区分所有オフィスの【ボルテックス】

経営者インタビュー#21
株式会社さくらさくプラス
代表取締役社長  西尾 義隆 様

目次

東京・埼玉・千葉・大阪で、認可保育所、認証保育所「さくらさくみらい」を運営する株式会社さくらさくプラスは、2009年、わずか5名の園児を預かる認可外保育所として誕生しました。
「社会に必要とされる仕事がしたい」という思いで、もともと働いていた不動産業界からまったく畑違いの「保育」という分野での起業した西尾社長。
そこからわずか10年余りで園児3,900名、施設数75園の保育事業を展開し、東証マザーズへの上場を果たす企業へと変貌を遂げました。
この原動力となった自社の強みや、今後の展望などについて、西尾社長に話を聞きました。

「働きたくても働けない」女性の声をヒントに
保育所運営事業で上場を達成

もともとは不動産会社に籍を置いていた西尾社長。しかし2008年、リーマンショックのあおりを受け、業績は急降下。それがきっかけで「この先、どう生きていこうか」という、人生の選択に迫られたといいます。

「そのとき耳に入ってきたのは、『働きたくても働けない』『復職したくても戻れない』という、子を持つ周囲の女性たちの声でした。優秀な女性がたくさんいるにも関わらず、子どもを預ける場所がないという理由で仕事ができないのは、社会にとっても大きな損失。女性の社会進出が叫ばれていても、それを支える仕組みが足りていない。だったら自分で作ってみよう、という発想で起業を思いつきました」

保育という事業の知見はなかったものの、現在の社会情勢から将来の国のあり方までを見据えて考えた場合、ニーズがあることは確実。ならば勝算はある、と踏んだ西尾社長。ある会社が運営していた認可外保育所の施設を引き継ぐ形で、この事業へ参入しました。

「私たちの子どもの頃は、両親が忙しいときには近所のおじちゃん、おばちゃんの家で夕飯をご馳走になる、なんていうことがよくありました。でも今は、そんなことができない社会になってしまった。だからこそ、働いている親が安心して子どもを預けることができる場所をつくることは、社会的にも意義のあることだと思います」

「100年続く企業をつくるためには、人に喜んでもらえる事業、社会から求められる事業でなくてはならない」と語る西尾社長。
創業から抱き続けるその想いは、規模を拡大し、上場を果たした今でも、この会社を根底から支えています。

これまでの保育事業にはなかった発想で
不動産業界の知見を活かした事業スキーム

創業当初は保育事業に関して「知見がなかった」という西尾社長。しかしそれ故に、これまでの保育業界にはなかった斬新な発想で施設づくりを進めることができたといいます。

「それまで培ってきた不動産業界での経験が大きく役に立ちました。保育所を『箱物』という施設として考えた場合、どこに人が集まり、どれほどのニーズがあるのかを、立地という観点から分析します。そう考えると、我々が求めるのは人口密度が高い都市部かつ働く親が利用しやすい駅近の土地ということになります。しかしそんな場所に保育所を建てるというのは、資金的に簡単ではない。そこで私たちがとったのが、不動産としての価値が高まるような企画を盛り込んで、社会貢献できる不動産投資という形でオーナーさんに買ってもらうというスキームでした」

保育所単体ではなく、オフィスや社宅、商業施設等と合わせた形で建物を企画し、運用による採算性を計算したうえで、賃貸物件として不動産オーナーを募るというユニークな手法は、不動産業界にいたからこそ生まれた発想。

「認可保育所は補助金を使って行う公共性の高い事業であると同時に、利用者のためにも事業として継続することを第一で、採算性とのバランスに注視し運営することが大事だと思っています。さまざまなチャネルで、その土地に合った提案を「保育所」という事業を軸に組み上げ、実際に数字を弾いて『こうすればビジネスとして成り立つ』という道筋を立てることができる。それが私たちの強みです」

都市部の人口密集地、しかも駅近。「施設の94.9 %が駅から徒歩10分圏内」という立地にこだわり、保育所を次々と拡大した背景には、利用者の利便性という観点と同時に、そこで働く職員の通勤のしやすさも考慮したいという西尾社長の狙いがあります。

「保育というのは、『人』が中心となるべき事業です。先生が笑顔で気持ちよく子どもたちに接することができる環境を整えることは、保育の質ということを考えた場合に重要なことだと思います。保育所の立地だけでなく、本社を東京の中心地に設けているのも、各園へ本部からのサポートがしやすいというのはもちろんのこと、 面談や研修で本社を訪れた職員が、帰りがけに映画やショッピングを楽しむことができるようにという意図もあります」

「働く人を中心に考えた組織づくりが大切。保育のホワイト企業を目指しています」と語る西尾社長。年に2回、本社と現場職員との面談の機会を設け、職場では打ち明けづらい悩みを聞き対話を深めています。またコロナ禍の前には 、誕生日を迎える職員にテーマパークのチケットをプレゼントする、2020年3月~当面の間はギフトカード等を進呈するなど、きめ細やかな配慮をもって職員と向きあうことを徹底しています。

「園のロゴマークに採用されている、ハート形を模した3枚の桜の花びらには、“子ども”“保護者”“職員”三者の笑顔で満ちた園になるようにとの意味が込められています。
職員に気持ちよく働いてもらわないことには、子どもたちや保護者が幸せな時間を送ることはできません。職員のマネジメントというのは、どの企業でも非常に難しいテーマですが、保育が人にしかできない仕事である以上、そこに一番気を配るのが経営者としての役割ではないかと思います」

“パブリックカンパニー”になることの意義
子どもたちの未来を社会全体で応援する仕組み

「子どもは国の宝と昔からよくいわれるように、子どもを社会全体で育てるためのしっかりとした基盤をつくることに貢献したい」と語る西尾社長。2020年に「株式上場」という大きなステップアップを実現した背景には、単なる「資金の確保」という観点以上の狙いが込められています。

「保育という『子どもたちの未来をつくる』という事業を、社会全体で応援してもらえるような仕組みを作っていきたいと考えていました。その一つの形として、保育所を運営する会社の株式に投資するという手法が活用できるのではないか。先ほどいいました、一昔前の『留守番をしている子どもが、近所の家で晩御飯をご馳走になる』というのと同じような、地域や社会で子どもを守るという環境を、私たちがパブリックカンパニーになることでつくれないかと思ったことが、上場を目指す一つの目的でした」

多くの人々の興味や関心が、自分たちの会社の株価の動向に向かうこと。それがすなわち、子どもたちの明るい未来へ社会の目を向けることになるという、西尾社長の理想を具現化したものなのです。

今後は、さらなる少子化により保育施設が「選ばれる時代」に突入することを見越して、広い視野での事業展開も構想していると西尾社長は話します。

「これまでは施設をつくることに特化してきましたが、保育所のニーズがピークアウトすることも考慮し、保育事業を通じて培った『子育ての支援、そして子育てをしやすい環境づくり』 のノウハウを提供する新たな展開も考えています。私たちには卒園生も含めた子育て家庭のデータベースがあります。子どもたちの成長を追っていきながら、その段階にあった教育プログラムを提供するような、『箱物』から『中身』へシフトしていく方向性も模索していきます」

社会の変化とともに、保育を取り巻く環境も早いスピードで変わっていくという西尾社長。「保育に関する理念は変えることなく、社会のニーズを捉えるアンテナを張り巡らして、柔軟に対応していきたい」と先を見据える西尾社長の経営から、今後も目が離せません。

事業継続の一覧に戻る
  • 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。掲載されている情報は、予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
  • 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、資産運用・投資・税制等について期待した効果が得られるかについては、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。弊社では、何ら責任を負うものではありません。

関連記事

Recommend