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経営者インタビュー#18
株式会社印傳屋上原勇七
代表取締役社長 上原 重樹 様

目次

これまで弊社メールマガジンにて人気シリーズとして全15回にわたりお届けしておりました 『経営者インタビュー「未来へ繋ぐ、わたしの羅針盤」』を、メールマガジン読者の皆様からの反響を受けまして、Vコラムとして掲載をすることとなりました。
完全新作のインタビューはもちろん、過去にメールマガジンで配信をしたインタビューについても、ご承諾いただいたものについては、再編集してVコラムとして更新をしていく予定です!
今回は 株式会社印傳屋上原勇七  代表取締役社長 上原 重樹 様へのインタビューをVコラム版としてお届けします。

鹿革に模様をつける革工芸「印伝」は、鮮やかな色彩の模様を生み出す技法が印度(インド)から伝来したことがその名の由来とされ、戦国時代は武将たちの鎧や兜に活用されていました。
江戸時代に入ると、遠祖上原勇七が鹿革に漆で模様をつける独自の技法を創案。後に「甲州印伝」と呼ばれる山梨県の伝統工芸の礎を築きました。
その革工芸の技法を「家伝の秘法」として伝承し、美しい革工芸文化を今に伝える株式会社印傳屋上原勇七の上原重樹社長に、400年以上の歴史を誇る企業を経営するうえでの哲学や、変化する時代に対応した事業展開について、話を伺いました。

コロナ禍で製造、販売を見直し
ピンチをチャンスに変える経営手法

古くはその柔らかな感触が人肌に最も近いとされ、 軽く丈夫なことから、生活の道具や武具などに使用されてきた鹿革。その加工や装飾の技法は、職人の手により磨き上げられ、時代に合わせた新しい商品が生み出されてきました。

創業1582年の老舗革工芸メーカー・株式会社印傳屋上原勇七は、その伝統の技法を受け継ぎ、現在は小銭入れからボストンバックといった、いわゆる「袋物」を主力商品として製造・販売を手がけています。

本社工場での企画・製造、さらには甲府本店をはじめ、東京・青山、大阪・心斎橋、名古屋・伏見といった大都市に構えた直営店舗、百貨店、駅構内、オンラインショップ、さらには海外セレクトショップなどでの販売を牽引する上原社長。

同社の個性的で高品質な革製品の人気は、地元・山梨を飛び越え、首都圏、日本国内、さらには海外へと広まっています。

「子供の頃から、工場で働く職人さんとの距離が近い環境にいましたので、将来は家業を継ぐという意識は自然と身についていました」と話す上原社長。

大学卒業後に入社。2年間の海外留学を経て復職してからは、現場で職人たちから製造工程のすべてを学び、「秘法」と呼ばれる伝統技法の修得と、14代目となるための営業や経営の理解を深めたそうです。

2004年に社長に就任。その後、リーマンショックや東日本大震災といった大きな危機に直面しますが、「それらと比較しても、今回のコロナ禍による危機は厳しい」といいます。

「感染状況により、先行きが読めないというのが一番困るところ。東京、大阪、名古屋の直営店では、販管費はかかる一方で、1カ月休業という体力勝負を強いられました。困難な時代を生き抜くためには、現状の分析とこれまでの経営の見直しが重要です」

このピンチに直面し、経費の削減、販路の見直しといった思い切った改革を進めたという上原社長。

「製造に関しては、在庫を抱えることを極力避け、短納期で対応する仕事の割合を増やしました。またオンラインでの販売にも力を注ぎ、直販や取扱店に足を運べないお客様からの購入も増えてきました。結果的に、アフターコロナの時代を見据えた戦略としても有益なものとなりました」と自己評価します。

また生産量が減ったことを前向きに捉え、稼働時間の削減により生まれた時間を、普段はできない研究に充てるよう職人に指示。新たな商品の開発へつなげるなど、まさに「最大のピンチをチャンスに変える」ための経営を実行しています。

「平常時に大鉈を振るうのは難しいですが、今回のような大きな危機を乗り越えるには待ったなしです。まだまだ先行きは不透明ですが、いろいろなものを見直すよい機会にはなったと感じています」

「人間尊重の事業経営」を実行
先を見据えた、計画的な組織づくり

どんな危機が訪れようと「従業員の雇用だけは守る」というのが、上原社長のポリシー。実際にリーマンショックや東日本大震災、そして今回のコロナ禍でも、従業員の削減は行わないという決断の原点には、人を大切にする「人間尊重の事業経営」という理念があります。

機械による大量生産とは対極にある、職人による丁寧な製造で、技法の伝承にも長い時間を要します。そのため、社員とともに過ごす長い時間と厚い信頼関係が必須であり、経営者と従業員という立場を超えた「人の関わり方」こそが、事業を継続するための鍵となっているのです。

「もちろん経営者と社員では、理念の認識や理解度は異なります。しかしその意識を共有するのは大切なこと。朝礼などの時間を活用し、例をあげながら丁寧に説明していますが、それだけで終わらせず、それを形にした企業理念ハンドブックを社員とともに作成して、配布することにしました」

土曜日の午前中に、「これから会社をどうするべきか」「自分たちはどうあるべきか」をディスカッション。そこから「人間尊重」というテーマへと導き、外部の専門家の力を借りながら1冊のハンドブックとして仕上げたそうです。

「しかし本当の意味で企業理念を伝えていくためには、私自身が社員と同じ視点に立つことが大切だと思っています。例えば電話対応を聞き、クレームなのか、お褒めの言葉なのかを感じとることは、社長室に籠っていてはできません。社員と同じフロアで仕事をして、常日頃のやりとりから現場の感覚を得る。現場に身を置き、お客様の反応を真っ向から受け止める。せっかくのハンドブックを形だけのものにしないよう、そういった姿勢を率先して示していくようにしています」

この経営哲学に関しては、上原社長が「最も尊敬する経営者」とする、13代目である父の影響が大きいといいます。

「父がまだ二十二歳のとき、当時の当主だった祖父が急逝しました。ほとんど準備もなく会社を継ぐこととなった父は、年上の職人さんや諸先輩方を相手に、経営者として上手くやっていこうと若い頃から奮闘したと周囲から聞いています。人や組織づくりにおいても、逃げずに真っ向から向き合った父の姿は、今の私の経営の礎となっています」

次世代に伝統を伝えていくために、今後は職人の確保も避けては通れない課題とする上原社長。父から受け継いだ「人間尊重の事業経営」で、常に先を見据えた、計画的な組織づくりを行いたいと語ります。

新商品やコラボレーション商品を積極展開
「甲州印伝」のブランド力をもっと高めたい

数々の先達が紡ぎあげてきた伝統を、現代に受け入れられる形に発展させ、これからも新たな革工芸の可能性を切り拓いていく上原社長。この先に見据える戦略を聞いてみました。

「鹿革に漆で模様をつける技法は、絶対に変えてはいけない。一方でデザインや販路は、時代に合わせて変えていかなければ生き残っていけないと思います。そういう意味で実際に使っていただけるユーザーの声は何よりも貴重。それを直に聞くことができる直営店での販売は特に重視しています」

また最近では、大手企業とのタイアップ商品や大学の校章を入れた商品、さらには海外のラグジュアリーブランドとの企画商品など、外部とのコラボレーションも積極的に展開。変化を織り交ぜながら、格式ある伝統と柔軟な発想を融合させています。

「時代にあったコラボレーションというのは弊社の従来のファン層ではないお客様と接することができる機会につながります。協力する先方の意図とも噛み合い、お互いのビジネスが活性化するのであれば充分にやる価値はあります」

確かな技術力と、それに基づいた商品力を武器に、新たな市場開拓への意欲も膨らませる上原社長。その視線は、常に外へと向かっています。そしてここまで長きにわたり事業を育んできた地元・山梨への強い思いも持ち続けています。

「材料の仕入れや作業の発注は、なるべく地元企業を活用するようにしています。柄つけはもちろん自社で手がけますが、最終的な縫製は地元の業者へ外注する。技術を一から勉強して、内職としてやってくださる個人の方もいます。せっかくの山梨の地場産業ですから、当社の仕事で安定的な収益をあげていただきたいです」

先代は甲府商工会議所の会頭まで務め、地元経済界へ多大な貢献をしたことで知られていますが、その意志を受け継ぎ、甲府市や山梨県の発展のために力を尽くしたいという気持ちが強いといいます。

「『甲州印伝』のブランド力をもっと高めたいと考えています。売上や利益を求めることは事業継続には当然必要ですが、商品の価値・ブランド力が上がれば、その結果はついてくる。私たちの企業努力が、山梨を盛り上げるためのPRにつながればいいですね」

高校時代の恩師から習ったという孔子の言葉「恕(じょ)」の一文字を大切にしているという上原社長。「思いやりの心」を意味するこの言葉を胸に、家業へ、社員へ、地元へと深い愛情を注ぎ続けることが、企業を繁栄させる原動力となっていくでしょう。

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