第8回
小泉内閣「三位一体改革」~ 地方法人特別税の創設

図1

©Hiroo Ichikawa

 その後の2004年ですが、小泉内閣によって「三位一体改革」が開始されます。
“補助金を廃止・削減し、その代わりに国税を地方に移譲した上で、地方交付税を見直す”という小泉内閣の税財政改革によって、「地方にできることは地方に」という方針の下、04~06年度の3年間で、地方交付税5・1兆円、補助金4・7兆円が削減され、代わりに3兆円の財源が地方に移譲されました。これは地方分権という視点より国の財政再建が優先された形となって、地方交付税の大幅な削減によって地方が疲弊してしまったわけです。


図2

©Hiroo Ichikawa

 『まちづくり3法』とは、ゾーニング(土地の利用規制)を促進するための「都市計画法」、社会的規制の側面から大型店出店の調整の仕組みを定めた「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」、中心市街地の空洞化を食い止め活性化させる「中心市街地の活性化に関する法律(中活法)」の3つの法律の総称です。
この3法の最大のターゲットは、流通国内最大手のイオングループで、要するに大店立地法の改正等で、とにかく強いものが強くなってはいけないということで、それを止めにかかるわけです。
ですから3法を改正して、地方都市などで郊外に向かうロードサイド型の店舗開発を止めようとしました。これが2006年のことです。
結局、都市計画行政は必ず規制する側に回るというわけです。


図3

©Hiroo Ichikawa

 1998年3月の「21世紀の国土のグランドデザイン(五全総)」策定後、国はそれまでの「国土総合開発法」を中心とする国土計画の制度を抜本的に改めて、2005年7月に「国土形成計画法」へと改定します。
この新法に基づき2008年7月、全総計画の後継として「国土形成計画(全国計画)」を策定し、翌年8月には国土形成計画(広域地方計画)を決定しました。
この改革のポイントは、国土計画体系を簡素化・一体化することにより、わかりやすい国土計画体系に再編しようとしたことです。
これにより量的拡大を図る「開発」を基調としたこれまでの国土計画から、国土の質的向上を図るため、計画対象事項を見直し、国土の利用、整備及び保全に関する施策を総合的に推進する国土計画に改編しました。
また「全国計画」のほか、ブロック単位ごとに、国と都府県等が適切な役割分担のもと相互に連携・協力して策定する「広域地方計画」を創設したりしています。
しかし、過去に5回策定された全国総合計画とは思想が異なるもので、地方ブロックの提案を貼り合わせたようなものになりました。


図4

©Hiroo Ichikawa

 小泉内閣による「三位一体改革」によって、およそ3年間で地方交付税は5兆円超も大幅削減されて、地方が非常に疲弊してしまいました。
そこでどうしたかというと、都道府県ごとの偏在性が強かった法人事業税(地方税)の一部を、2008年10月1日から「地方法人特別税」(国税)として徴収して、人口及び従業員数(2分の1ずつ)を基礎として、国が都道府県に財源を再分配することにしたわけです(「地方法人特別譲与税」)。
もっとも、「地方法人特別税」は国税ではあるものの、賦課徴収は都道府県が行なって、法人事業税とともに徴収されます。
なお、2019年10月1日に消費税率の引き上げに合わせて、「地方法人特別税」は廃止され、法人事業税に復元される予定です。


プロフィール

市川宏雄(いちかわ ひろお)

市川宏雄(いちかわ ひろお)
明治大学名誉教授
帝京大学特任教授、中部大学客員教授

 1947年東京に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同修士課程、博士課程を経て、カナダ政府留学生として、ウォータールー大学大学院博士課程(専門は都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。
 ODAのシンクタンク (財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所主席研究員の後、1997年明治大学政治経済学部教授(都市政策)。都市計画出身でありながら、政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本では珍しい学際分野の実践者。2004年から2018年3月まで明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長。2008年から2016年まで明治大学専門職大学院長、明治大学危機管理研究センター所長も務める。現在、日本自治体危機管理学会会長、森記念財団業務担当理事、町田市・未来づくり研究所所長、日本危機管理士機構理事長等、要職多数。Program Committee Member of Innovative City Forum, Steering Board 海外ではCheering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)。

専門とする政策テーマ:
大都市政策(都心、都市圏)、次世代構想、災害と危機管理、世界都市ランキング、テレワーク