第8回
分野別ランキング―東京と主要都市の比較・分析[3/6]

ハイクラス客室数
ハイクラス客室数

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

 そして「ハイクラス客室数」ですが、これは東京のもう1つの弱点になります。
有名なのが、“ファイブスターホテルが世界の主要都市で最も少ない都市東京”といいまして、理由は分かりませんが、ファイブスターホテルの数が世界の4大都市、アジアの主要都市のなかで、東京は最下位になっています。
なぜかファイブスターが少ない。これは国際的な対応の可否という意味で我々の評価のなかでは低くて、東京の非常な弱点です。未だにまだ増えていかない。
少し異常なのが北京と上海で、彼らが建てればすべてファイブスターになります。このホテルのテーマは、東京にとってこれからも課題になるでしょう。

買物の魅力
買物の魅力

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 「買物の魅力」。こちらについては、東京は非常にスコアが良いです。

外国人居住者数
外国人居住者数

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 それから「外国人居住者数」。
実はロンドンが強い理由はここでして、伝統的に外国人を受け入れている国とそうでない国という差があって、依然として東京はロンドンの3分の1位しかない。
これは「文化・交流」のなかの重要な指標ですから、東京の順位が上がっていきません。なお、シンガポールは特殊なケースですけれども、非常に居住者数が多くなっています。

海外からの訪問者数
海外からの訪問者数

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 あと「海外からの訪問者数」ですが、こちらは増えています。
これは典型的なオリンピック効果で、毎年毎年、倍々とまではいきませんが、すごい勢いで伸びています。東京では年間200万人増えていますから、過去にこれほどのことは無かったわけで、すでにニューヨークやパリを抜いています。
例えば昼間に銀座に行けば分かりますが、外国人旅行者で溢れています。少なくともオリンピックまで、この傾向は続くだろうと言われています。
そうするとアジアのなかでもシンガポールを抜いて、東京がトップになる日も現実味を帯びてきます。

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 さて「居住」です。
これは実は“生活利便性”もありますが、“居住コスト”も高いので、どうしても東京は低くなっています。
それから最近はアジアの都市はみな安全になっていて、東京も、シンガポールも香港も、ほとんど安全状況は変わりません。とても安全です。
例えば、少し前の香港をご存知の方は驚かれますが、今の香港は本当に安全です。ですから東京だけが安全というわけではなく、アジアの主要都市は総じて安全になってきています。そのなかでソウルは若干異なるかもしれません。

詳細を見てみると、“生活良好性”のなかの“平均寿命”は良いのですが、“社会の自由度・公正さ・平等さ”や“メンタルヘルス水準”の数値が悪い。
特に今回東京がスコアを落とした原因は“社会の自由度・公正さ・平等さ”で、今回から指標として“女性の社会進出”を入れています。これが尾を引いて、東京は順位を下げてしまった。
世界的に見れば、日本は女性の社会進出が少ない国ですから、東京も順位を落としてしまったわけです。

プロフィール

日本の人口推移(2005年-2050年)

市川宏雄(いちかわ ひろお)
明治大学名誉教授
帝京大学特任教授、中部大学客員教授

 1947年東京に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同修士課程、博士課程を経て、カナダ政府留学生として、ウォータールー大学大学院博士課程(専門は都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。
 ODAのシンクタンク (財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所主席研究員の後、1997年明治大学政治経済学部教授(都市政策)。都市計画出身でありながら、政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本では珍しい学際分野の実践者。2004年から2018年3月まで明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長。2008年から2016年まで明治大学専門職大学院長、明治大学危機管理研究センター所長も務める。現在、日本自治体危機管理学会会長、森記念財団業務担当理事、町田市・未来づくり研究所所長、日本危機管理士機構理事長等、要職多数。Program Committee Member of Innovative City Forum, Steering Board 海外ではCheering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)。

専門とする政策テーマ:
大都市政策(都心、都市圏)、次世代構想、災害と危機管理、世界都市ランキング、テレワーク