第7回
分野別ランキング―東京と主要都市の比較・分析[2/6]

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

 「研究・開発」ですが、これはかなり東京の強い分野です。
ただこれまでずっと2位だったのですが、昨年ロンドンに抜かされてしまいました。 簡潔に申し上げると、“研究者数”や“産業財産権(特許)の登録数”ではトップですけれども、円安の影響もあって、実は“研究開発費”というのは民間も入っているので公用と民間両方になりますから、それで少しだけ落ちてしまったという形です。
しかし、だいたい横ばいであるといえます。

世界トップ200大学
世界トップ200大学

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 そして東京が弱いのが「世界トップ200大学」。
そもそも大学ランキングがアメリカ有利に作成されているということもありますが、どうしても東京が弱い分野です。アジアのなかでは香港が良くて、香港大学など優秀な大学も多く、圧倒的に大学について強いのです。

研究開発費
研究開発費

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 「研究開発費」については、ニューヨークが圧倒的に多いです。

研究者の交流機会
研究者の交流機会

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 「研究者の交流機会」。これはトップ4のなかではロンドンが非常にスコアの良いことが分かります。
アジアではシンガポールが東京を上回っています。

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 次に文化交流ですけども、これはいま4番まできています。
実はこれが東京の弱点でしたが、毎年毎年上がってきています。ランキング開始当初は8番か9番でしたが、毎年毎年1つずつ順位を上げています。
これは当たり前ですけども、オリンピック効果になります。オリンピック効果によって、毎年毎年海外からの訪問者が増えているということがポイントです。
しかし問題がないわけではなく、“国際コンベンションの開催件数”ですとか“世界的な文化イベント開催件数”、“コンテンツ輸出額”、これらのスコアが実は低くなっています。

国際コンベンション開催件数
国際コンベンション開催件数

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 「国際コンベンション開催件数」ですが、シンガポールと東京で比較すると3倍位の開きがありますから、東京はこれを上げないといけない。
アジアのなかでダントツのシンガポールですが、今回もトランプ・金正恩による歴史的な米朝首脳会談が行われたわけですが、シンガポールは非常に施設が整っていてその数も非常に多いです。
ただしシンガポールも毎年スコアが下がってきていて、逆にソウルは今回異常に上がっています。それから東京はゆっくりゆっくり上昇している、という状況です。ただしこれは依然として東京の弱点になっています。

世界的な文化イベント開催件数
世界的な文化イベント開催件数

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そして「世界的な文化イベント開催件数」ですが、ロンドンは非常に件数が多い。
アジアでは東京は増えてきたということが分かります。

コンテンツ輸出額
コンテンツ輸出額

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 「コンテンツ輸出額」ですけれども、日本でコンテンツというと漫画です。漫画とアニメになります。
ただしそれだけではさすがに世界の趨勢には付いていけないわけで、色々な形で様々なものを輸出しているロンドンは圧倒的に強い。
アジアのなかでは香港、シンガポールが強いことも分かります。このあたりが、日本はコンテンツが豊富にありながら、うまくアピールできていない部分です。
これはこれから課題になることが分かっていますが、現状では弱いままになっています。

プロフィール

日本の人口推移(2005年-2050年)

市川宏雄(いちかわ ひろお)
明治大学名誉教授
帝京大学特任教授、中部大学客員教授

 1947年東京に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同修士課程、博士課程を経て、カナダ政府留学生として、ウォータールー大学大学院博士課程(専門は都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。
 ODAのシンクタンク (財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所主席研究員の後、1997年明治大学政治経済学部教授(都市政策)。都市計画出身でありながら、政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本では珍しい学際分野の実践者。2004年から2018年3月まで明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長。2008年から2016年まで明治大学専門職大学院長、明治大学危機管理研究センター所長も務める。現在、日本自治体危機管理学会会長、森記念財団業務担当理事、町田市・未来づくり研究所所長、日本危機管理士機構理事長等、要職多数。Program Committee Member of Innovative City Forum, Steering Board 海外ではCheering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)。

専門とする政策テーマ:
大都市政策(都心、都市圏)、次世代構想、災害と危機管理、世界都市ランキング、テレワーク