第6回
分野別ランキング―東京と主要都市の比較・分析[1/6]

分野別ランキング
分野別ランキング

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

 それでは分野別にその中身を見ていきます。
その前にこちらが一覧表で、東京がランキング上どこにあるかを示していますが、東京はどの分野もトップは取っていません。ただ著しく低いものもありません。
では他の都市はどうかというと、トップ4には色が付いていますが、赤色はロンドンです。ロンドンと東京の構図は非常に良く似ていて、東京が最もそのターゲットにすべきはロンドンで、ロンドンの強い分野が東京はいま2位とかになっていますから、これを上げていけば良い。
黄色がニューヨークです。ニューヨークは分野ごとかなり極端なことが起きています。
それから緑色のパリですが、東京が順位を抜きましたので、今のところ心配ありません。
トップ4の都市は、総じて「経済」、「研究・開発」、「文化・交流」、「交通・アクセス」が強いですが、その一方で「居住」と「環境」は必ずしもトップになっていません。これがトップ4の都市の特徴になります。

分野別ランキング
アジア主要都市(東京・シンガポール・ソウル・香港・北京・上海)
分野別ランキング

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 あとアジア諸都市との比較になりますが、「経済」ではとうとう北京に抜かされてしまいました。
あとは大体、東京は好順位をキープしていますが、「環境」ではシンガポールに大きく差を付けられてしまっています。

トップ10位都市の変化

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 こちらは各分野を詳しく説明したバージョンになります。昨年1位だった東京ですが、円安の影響で4位に落ちました。実はそれまで東京はずっと経済のトップで、今回初めて4位まで落ちてしまい、北京にも抜かれてしまった。
一方の北京は、かなり飛躍していて毎年力を上げています。その内訳ですが、“市場の規模”や“ビジネスの容易性”などで東京はスコアを下げています。
何が原因かといいますと、“ビジネスの容易性”のなかの法人税率がまだ高いことで、これがいまだに足を引っ張っています。
またGDPの伸びがそれほど無いので、この2つが影響して順位を落としたわけです。

 円安の影響で4位に落ちました。実はそれまで東京はずっと経済のトップで、今回初めて4位まで落ちてしまい、北京にも抜かれてしまった。
一方の北京は、かなり飛躍していて毎年力を上げています。その内訳ですが、“市場の規模”や“ビジネスの容易性”などで東京はスコアを下げています。
何が原因かといいますと、“ビジネスの容易性”のなかの法人税率がまだ高いことで、これがいまだに足を引っ張っています。またGDPの伸びがそれほど無いので、この2つが影響して順位を落としたわけです。

GDP
GDP

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 これは他の都市との比較で、赤色が2017年のものになります。
GDPについては、そもそも東京という都市は高い都市でした。これがあったためにトップを維持していましたが、とうとう円安の影響もあって、初めてニューヨークに抜かれてしまった。なおアジアのなかでは東京は今もダントツの規模を誇っています。

GDP成長率
GDP成長率

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 それからGDP成長率。これがかなり前から東京の課題で、ようやく安倍政権で上向きましたが、それでもほとんど0に近い。このような都市は、世界中どこにもありません。
GDPというものは、一般的に上がっていくモノだからです。主要国のなかでは、日本だけが上がっていない。
これが東京の足を引っ張っている部分です。

法人税率
法人税率

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プロフィール

日本の人口推移(2005年-2050年)

市川宏雄(いちかわ ひろお)
明治大学名誉教授
帝京大学特任教授、中部大学客員教授

 1947年東京に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同修士課程、博士課程を経て、カナダ政府留学生として、ウォータールー大学大学院博士課程(専門は都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。
 ODAのシンクタンク (財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所主席研究員の後、1997年明治大学政治経済学部教授(都市政策)。都市計画出身でありながら、政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本では珍しい学際分野の実践者。2004年から2018年3月まで明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長。2008年から2016年まで明治大学専門職大学院長、明治大学危機管理研究センター所長も務める。現在、日本自治体危機管理学会会長、森記念財団業務担当理事、町田市・未来づくり研究所所長、日本危機管理士機構理事長等、要職多数。Program Committee Member of Innovative City Forum, Steering Board 海外ではCheering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)。

専門とする政策テーマ:
大都市政策(都心、都市圏)、次世代構想、災害と危機管理、世界都市ランキング、テレワーク