第4回
世界の都市総合力ランキング(GPCI—2017)の結果について[2/3]

トップ10位都市の変化
トップ10位都市の変化

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

 過去10年間ランキングを行っていますから、やはり10年もやると色々と見えてきます。
そのポイントですが、2008年の時のランクと現在のランクは順位が大幅に入れ替わっています。2008年時のトップはニューヨークです。2位がロンドン、3位がパリ、そして東京は4位。そしてその後に続くのがヨーロッパと北米の都市。ウィーン、ベルリン、アムステルダム、ボストン、ロサンゼルス、トロント、このような構図でした。その年の9月には、あのリーマンショックが起きています。
それが10年経った今、トップはロンドンに交代して、さらに東京は3位に上がりました。5位以下については、北米の都市が落ちてしまって、代わりにアジアの都市がランクインしています。シンガポールを筆頭に、ソウル、香港、そしてシドニーと、非常に様変わりしていますが、変わらないのはトップ4の都市で、順位こそ変化していますがそのまま残っています。
シンガポールはとても重要で、2008年の時点ではトップ10以内にはなく、実際13位でした。これがこの10年間でとうとう5位。ある時期には東京と非常にスコアが肉薄して、東京が危ないと言われた時期もありました。それほど力を伸ばしたわけです。

世界の都市総合力ランキングの10年
世界の都市総合力ランキングの10年

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

 これはその全てをスコアで見たものですが、スコアの方がわかりやすく、上位4つの都市が分かれていて、第2グループのトップにシンガポールが浮上していて、残りの都市があるという構図になっています。
この構図は数年間変わっていません。

トップ4都市のスコアの変化
トップ4都市のスコアの変化

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 これはトップ4都市ですが、このトップ4について何がポイントかといいますと、一言でいえば2つの大きな分岐点があったことです。
1つ目は2012年で、ロンドンでオリンピックが行われました。ロンドンはこれを契機として、実は大幅にスコアを上げてきて、そしてニューヨークを抜いてしまった。これはニューヨークにとってはショックでして、私はニューヨークの都市圏計画、今年で第4回目を作成したRPAという団体の海外アドバイザーをしていますが、ニューヨークはこのことを結構気にしています。
ただ見ていただくと分かるように、スコアの上がり方について非常にロンドンは素晴らしく、ニューヨークは横ばいです。オリンピックを契機にロンドンはスコアを上げたわけで、これがポイントです。

 もう1つ重要なポイントが2015年です。2013年の9月に安倍首相がアルゼンチンに行って、オリンピックの東京開催を決めてきた。その後から東京ウォッチングが始まって、タイムラグがありますから2年後からですがスコアが上昇を始めたわけです。
その一方で、パリで何が起きたか。あいにくなことに、同時多発テロが起きたりして横ばいになっています。こうしてみると、東京のスコアは毎年上がってきていますから、東京が1位になるかもしれないという話もにわかに現実味を帯びます。このまま東京がスコアを上げていって、ニューヨークは横ばいで、ロンドンがブレグジット(EU離脱)の影響で、もしかしたらスコアを落とすかもしれない、ということも想定上あり得ます。
もちろん東京がスコアを上げることが必須条件ですが、2位や1位になる可能性も無きにしもあらず、という状況です。

プロフィール

日本の人口推移(2005年-2050年)

市川宏雄(いちかわ ひろお)
明治大学名誉教授
帝京大学特任教授、中部大学客員教授

 1947年東京に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同修士課程、博士課程を経て、カナダ政府留学生として、ウォータールー大学大学院博士課程(専門は都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。
 ODAのシンクタンク (財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所主席研究員の後、1997年明治大学政治経済学部教授(都市政策)。都市計画出身でありながら、政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本では珍しい学際分野の実践者。2004年から2018年3月まで明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長。2008年から2016年まで明治大学専門職大学院長、明治大学危機管理研究センター所長も務める。現在、日本自治体危機管理学会会長、森記念財団業務担当理事、町田市・未来づくり研究所所長、日本危機管理士機構理事長等、要職多数。Program Committee Member of Innovative City Forum, Steering Board 海外ではCheering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)。

専門とする政策テーマ:
大都市政策(都心、都市圏)、次世代構想、災害と危機管理、世界都市ランキング、テレワーク