第2回
世界の都市総合力ランキング(GPCI)とは?[2/2]

 では実際に「総合力」をどう見るか、というというお話です。
世界には様々なランキングがあって、例えば、ビジネスセンターランキングですとか、金融センターランキングですとか色々ありますが、それらはかなり特定の機能に焦点を当てています。我々が始めたのは、これは世界で初めての試みでしたが、都市の総合力を見ようとしました。
ほぼ同時期に偶然、“A.T.カーニー”という会社が始めていましたが、現在はGPCIの方が有名になって総合力を見るにはこれだということで評価が高まっているわけです。
何をしたのかというと、「経済」、「研究・開発」、「文化・交流」、「居住」、「環境」、「交通・アクセス」という6つの大きな都市機能で都市力を測る作業をしています。

 それぞれに複数の指標があって、全部で合計70指標あります。そして各指標2~3つで、1つの指標グループを形成していますから、例えば「経済」の場合には6つの指標グループがあります。
ご覧いただければ分かるように、「経済」は指標グループが6つ、一方で「環境」は3つです。ですから自動的にウエイトがかかっていて、この中で最も大きく比重を占めるのが「経済」であって、続いて「文化・交流」ということになっています。
どれくらい各々の機能にウエイトをかけるのかということは、それぞれのランキングが工夫しているところで、我々はこれでやってきておよそ問題ないだろうと考えています。

6分野70指標

6分野70指標

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

策定体制
策定体制

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

 実はこのランキングを2008年に始めた時、いきなり世界で有名になりました。
なぜかというと、このエクゼクティブ・コミッティーの顔ぶれがポイントで、このなかで日本人は、作業部会の座長である私と竹中氏(一般財団法人森記念財団の都市戦略研究所所長)だけです。なぜこれほど有名になったかというと、ピーター・ホール卿というロンドン大学の元教授ですが、世界都市研究の分野において世界で最も権威ある方に入って頂けたことです。
それから女性で有名なサスキア・サッセン氏(コロンビア大学教授)もおります。偶然、私はご両名とも親しくさせて頂いていましたので、ランキング制作を始めるときに入って貰えないかとお願いしたら入って頂けた。これらがとても大きかった。

 要するに、日本人のみでランキングを発表しても、世界は誰も聞きません。ところが世界的に権威ある方々が入っていると、人々は聞く耳を持つのです。
ですからGPCIは、その発表の翌年から世界4大都市ランキングの1つに位置付けられました。今もその動きは変わっておらず、エクゼクティブ・コミッティーや第三者評価コミッティーには相応の権威の方々に入って頂いていて、おかげさまで高く評価されるに至っています。これは重要なことで、いいことをやっても人は簡単には信じません。
その一方で、あの人がやっているのなら、ということで聞く耳を持つ。特にこの世界で何が重要かというと、世界を引っ張っているアメリカやイギリスの学者の存在で、そのトップが入らない限り物事は動きません。
ですから無事に入って頂けたことはラッキーなことでした。

 その実際の作業ですが、私がワーキングコミッティーを動かしています。森記念財団のほかに、作業量が多いので三菱総合研究所にも依頼していますが、これを基本的なプラットフォームとして動いています。
あとポイントは、必ず第三者委員会に評価してもらうこと。最近怪しげな第三者委員会が実際にありますが、こちらは列記としたピア・レビューアーでして、このご両名とも権威です。
ですから集計したデータに対して、きちんとチェックが入っています。
これはこのようなランキングを発表するときには非常に重要で、「信じてもらって大丈夫」ということを示しているわけです。

プロフィール

日本の人口推移(2005年-2050年)

市川宏雄(いちかわ ひろお)
明治大学名誉教授
帝京大学特任教授、中部大学客員教授

 1947年東京に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同修士課程、博士課程を経て、カナダ政府留学生として、ウォータールー大学大学院博士課程(専門は都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。
 ODAのシンクタンク (財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所主席研究員の後、1997年明治大学政治経済学部教授(都市政策)。都市計画出身でありながら、政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本では珍しい学際分野の実践者。2004年から2018年3月まで明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長。2008年から2016年まで明治大学専門職大学院長、明治大学危機管理研究センター所長も務める。現在、日本自治体危機管理学会会長、森記念財団業務担当理事、町田市・未来づくり研究所所長、日本危機管理士機構理事長等、要職多数。Program Committee Member of Innovative City Forum, Steering Board 海外ではCheering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)。

専門とする政策テーマ:
大都市政策(都心、都市圏)、次世代構想、災害と危機管理、世界都市ランキング、テレワーク