第14回
アクター別ランキングから見た東京の魅力とは?[2/2]

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

研究者が重視する要素別偏差値

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 「研究者」ランキングですが、これは決して悪くありません。
“研究機関や研究者の集積”などはロンドンを上回っています。

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アーティストが重視する要素別偏差値
アーティストが重視する要素別偏差値

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 「アーティスト」ランキングになります。
これは例えば作品を“創造”するだけではなくて、マーケッターとして“売る”など、一連のワンセットが必要になります。
その意味では、東京はまだまだ弱いわけです。ですから6位から上がっていません。

 ただ1位のパリとのスコア差もそれほどあるわけではありませんから、アーティストが集まりたくなるような場所を造っていけば、決して悪い状況ではありません。

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観光客が重視する要素別偏差値
観光客が重視する要素別偏差値

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 「観光客」ランキングです。いま東京は非常に伸びてきていますけれども、ロンドンはやはり観光客からの評価が高くてスコアは58.2、東京が48.3ですから、この10ポイントの差は歴然としてあるわけです。
ただしミシュランで最も多いのが東京ですから、食事や買い物などは世界トップレベルです。
しかし、いま東京で問題なのは“デスティネーション”といわれる観光対象先で、ワッと訪れる観光客がどこに行っていいのか分からないことです。まず初めに浅草行って、銀座行って、渋谷のスクランブル見て、あとは終わってしまう。今それをもう少しどう増やせるかという作業を、行政も含めて考えなくてはなりません。
今後2年間くらいこの作業を頑張って行えば、このスコアならパリとニューヨークを抜いて、ロンドンの次に付けるかもしれません。

 やはりロンドンの強さは、“観光の対象の存在”です。デスティネーション。
それから“一定水準以上の宿泊施設”です。東京はファイブスターホテルが少ないですが、一般の宿泊施設も少ない。民泊がいま騒ぎになっていますが、ロンドンもパリもけっこう民泊がたくさんあります。
パリなどでは、何気ない建物が実はホテルになっていたりします。おそらく以前は民家だったはずで、その意味では、違法にならない範囲でどこまでできるかということが東京の課題と言えるかもしれません。

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生活者が重視する要素別偏差値
生活者が重視する要素別偏差値

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 それから「生活者」ランキングですが、各都市のスコアが近似しています。
そのなかでパリとロンドンは60ポイント台、続いてチューリッヒ、フランクフルト、ベルリン、その下に東京がいます。ヨーロッパ、北欧の都市のなかに東京がいるわけで、決して悪くはありません。

 トップのパリですが、特に“医療水準”が高いことが特徴です。
東京は“就業環境”や“安全”の項目でパリを上回っています。

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本コラム掲載データの詳細等につきましては、『世界の都市総合力ランキング YEARBOOK 2017』(一般財団法人 森記念財団 都市戦略研究所)をご覧ください。

プロフィール

日本の人口推移(2005年-2050年)

市川宏雄(いちかわ ひろお)
明治大学名誉教授
帝京大学特任教授、中部大学客員教授

 1947年東京に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同修士課程、博士課程を経て、カナダ政府留学生として、ウォータールー大学大学院博士課程(専門は都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。
 ODAのシンクタンク (財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所主席研究員の後、1997年明治大学政治経済学部教授(都市政策)。都市計画出身でありながら、政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本では珍しい学際分野の実践者。2004年から2018年3月まで明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長。2008年から2016年まで明治大学専門職大学院長、明治大学危機管理研究センター所長も務める。現在、日本自治体危機管理学会会長、森記念財団業務担当理事、町田市・未来づくり研究所所長、日本危機管理士機構理事長等、要職多数。Program Committee Member of Innovative City Forum, Steering Board 海外ではCheering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)。

専門とする政策テーマ:
大都市政策(都心、都市圏)、次世代構想、災害と危機管理、世界都市ランキング、テレワーク