第13回
アクター別ランキングから見た東京の魅力とは?[1/2]

 アクター別ランキングは、人から見たランキングで、全70指標をマトリックスにして、5種類の人から見ています。
「経営者(マネージャー)」、「研究者(リサーチャー)」、「アーティスト」、「観光客(訪問者)」、「生活者(住民)」の5種類の人の視点から、70指標のうち何が該当するかを拾っています。そして最終的な評価を出しているわけです。

アクター別ランキング作成方法

現代の都市活動を牽引する5つのグローバル・アクターの視点に基づき、複眼的に都市の総合力を評価している。

アクター別ランキング作成方法

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

「経営者」が重視する要素
「研究者」が重視する要素
「アーティスト」が重視する要素
「観光客」が重視する要素
「生活者」が重視する要素

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

 具体的に言うと、「経営者」の場合の視点は仕事しやすいかどうか、「研究者」の場合は研究が進むかどうかで、住みやすさなども含まれます。
「アーティスト」の場合は芸術的な活動がしやすいかどうか、「観光客」は一般的に観光しやすいかどうか、食事や買い物などを含みます。
最後の「生活者」は地元の人が住みやすいかどうか、教育や医療水準などの視点から見ているわけです。

アクター別ランキング トップ4都市
(ロンドン・ニューヨーク・東京・パリ)
アクター別ランキング トップ4都市

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

 さてランキングですが、東京は結構上位にいます。特段の欠点はありません。
これはトップ4都市には共通のパターンで、大体みんな上位にいます。
ただし問題は「経営者」で、いま5位ですが、経営者が東京を好きにならないと企業は進出してくれません。

アクター別ランキング アジア主要都市
(東京・シンガポール・ソウル・香港・北京・上海)
アクター別ランキング トップ4都市

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 アジアではシンガポールと北京が上にいます。以前東京は9位で上海にも負けていましたが、オリンピック効果で5位にまで上がってきています。
しかしアジアではシンガポールと北京が上にいますから、経営者がアジアにヘッドクォーターを置きたいときに、東京ではないと考えていることが分かります。
このことはかなり以前から指摘していて、2011年に東京都がアジアヘッドクォーター特区構想をつくったとき、これはGPCI(世界の都市総合力ランキング)を使用していますが、このときまだ9位でしたから、アジアの中でいよいよ東京が危なくなったという危機感があって、東京都は慌ててつくったわけです。
残念ながらヘッドクォーター特区はさほど機能していませんが、国家戦略特区が出てきて後押しし、そこにオリンピック開催も決まって、両方の上潮効果で上がってきています。

アクター別ランキング トップ4都市

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

経営者が重視する要素別偏差値

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

 「経営者」ランキングですが、ロンドンは依然として強いです。
ただスコアを見てもらうと、東京の50.0に対して、ロンドンが62.0、北京が51.3と非常に近いですから、もしかしたら逆転できるかもしれません。
しかし新規に追加したドバイなども、東京にスコアが肉薄しています。これは政策的に投資を誘致すれば、都市は力が強くなるということを端的に表していると言えるでしょう。

プロフィール

日本の人口推移(2005年-2050年)

市川宏雄(いちかわ ひろお)
明治大学名誉教授
帝京大学特任教授、中部大学客員教授

 1947年東京に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同修士課程、博士課程を経て、カナダ政府留学生として、ウォータールー大学大学院博士課程(専門は都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。
 ODAのシンクタンク (財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所主席研究員の後、1997年明治大学政治経済学部教授(都市政策)。都市計画出身でありながら、政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本では珍しい学際分野の実践者。2004年から2018年3月まで明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長。2008年から2016年まで明治大学専門職大学院長、明治大学危機管理研究センター所長も務める。現在、日本自治体危機管理学会会長、森記念財団業務担当理事、町田市・未来づくり研究所所長、日本危機管理士機構理事長等、要職多数。Program Committee Member of Innovative City Forum, Steering Board 海外ではCheering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)。

専門とする政策テーマ:
大都市政策(都心、都市圏)、次世代構想、災害と危機管理、世界都市ランキング、テレワーク