第10回
分野別ランキング―東京と主要都市の比較・分析[5/6]

© 2017 THE MORI MEMORIAL FOUNDATION

 それから「環境」ですけれども、東京はなかなかトップ10に入れません。
都市間でスコアが非常に近似していてあまり差がありませんが、他の都市もなかなか下がりません。
東京がなぜこの順位に甘んじているのかといいますと、CO₂排出量が多いためです。NO₂とか他の排出量については良いのですが、CO₂だけ多いのです。また再生可能エネルギーをあまり使っていません。
この2つの指標が東京の足を引っ張っている状況です。

再生可能エネルギーの比率
再生可能エネルギーの比率

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 これが「再生可能エネルギーの比率」。この部分について東京は遅れています。
いまでも遅れていて色々と騒がれていますが、世界の主要国のなかで遅れています。
これに対して、中国が非常に利用が進んでいまして、例のPM2.5の問題などがあったりして、非常に真剣に取り組んでいるというわけです。

CO₂排出量
CO₂排出量

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 これが先ほど指摘した「CO₂排出量」ですが、東京以外の都市も非常に力を入れています。
逆にCO₂排出量が非常に高いのが中国でして、中国はこの問題が依然として課題になっています。

SO₂濃度・NO₂濃度
SO₂濃度・NO₂濃度

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 そして「SO₂濃度・NO₂濃度」です。
今回のランキングではみな数値が上がっています。東京も上がってしまいましたが、世界のなかでも悪くはないと思います。

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 次に「交通・アクセス」です。これがいつも課題ですが、毎年徐々に順位を上げてきています。
前年の11位から6位に順位が上がった理由の一つとして、実は集計方法を少し変えたことがあります。これまで飛行機の本数は国際線だけカウントしていたのを、前回から国内線も含めてカウントしています。その理由は簡単で、ヨーロッパの空港は周辺諸国の規模がおおむね小さく、おおむね国際線になります。
しかしこれをアメリカに当てはめると、本数は多いですがほとんどが国内線となってしまい、不利になります。これは以前から不平等ではないかという意見があって、今回これを是正しています。
是正したら東京にとっても具合が良くなって、結果的にプラスに働いています。今まで国際線だけだったものを国内線も含めたことで、旅客数は国際線と国内線で換算しますが、ただし運航本数は依然として国際線だけです。
こうした背景もあって順位が変動したわけです。

 また“交通利便性”のなかで、スコアを上げたのは“通勤・通学の利便性”、逆にスコアを落したのは“タクシー運賃”になります。
いつも東京が良くない指標がこのタクシー運賃で、世界で最も高い水準です。
なぜ高いのかはミステリーですが、おそらく他国平均の2~3倍はします。やや近いのはロンドンだけで、例えばソウルに行くとタクシー運賃の安さに驚かされます。しかしこれは世界共通事項です。
なぜか日本だけが高い。これが東京の足を引っ張っています。

プロフィール

日本の人口推移(2005年-2050年)

市川宏雄(いちかわ ひろお)
明治大学名誉教授
帝京大学特任教授、中部大学客員教授

 1947年東京に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同修士課程、博士課程を経て、カナダ政府留学生として、ウォータールー大学大学院博士課程(専門は都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。
 ODAのシンクタンク (財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所主席研究員の後、1997年明治大学政治経済学部教授(都市政策)。都市計画出身でありながら、政治学科で都市政策の講座を担当するという、日本では珍しい学際分野の実践者。2004年から2018年3月まで明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長。2008年から2016年まで明治大学専門職大学院長、明治大学危機管理研究センター所長も務める。現在、日本自治体危機管理学会会長、森記念財団業務担当理事、町田市・未来づくり研究所所長、日本危機管理士機構理事長等、要職多数。Program Committee Member of Innovative City Forum, Steering Board 海外ではCheering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)。

専門とする政策テーマ:
大都市政策(都心、都市圏)、次世代構想、災害と危機管理、世界都市ランキング、テレワーク